Vol.20 - 時事通信社

新国際時代を読むための情報・解説がここに
Vol. 20
戦争・記憶の
克服
2015/9
400
¥
20
イー・ワールドプレミアム Vol.
cover story
世界は戦争の記憶をいかにして乗り越えるのか。戦後70年が
改めてわれわれに問うている。写真は広島の平和記念公園で行
われた灯籠流し。(AFP=時事)
4
特集
6
8
in sight
夏を惜しむ黄色の大輪
松谷 稔 フォトグラファー
戦争・記憶の克服
五百旗頭 真 氏に聞く
Historical
recognition
「安倍色」薄めた談話を評価
五百旗頭 真 熊本県立大学理事長、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長
13
18
Bosnia
時間の止まった町「スレブレニツァ」
20年も「消せない記憶」
China
長 有紀枝 立教大学教授
安倍談話を読む
21世紀構想懇談会の主要メンバーによる解析
川島 真 東京大学大学院教授
22
S.korea
硬直した日韓歴史認識に風穴を
歴史認識問題をどう切り離すか
木村 幹 神戸大学教授
28
S.korea
朴槿恵大統領は
なぜ戦後70年談話を評価したのか
浅羽 祐樹 新潟県立大学大学院教授
34
Media
戦後70年談話、
米国人にとって日本の「謝罪」とは
長沼 亜紀 ジャーナリスト
38
43
世界最高峰のハイテク・スパイ活動最前線
Intelligence
米諜報機関の盗聴の手口を探る(上)
黒井 文太郎 ジャーナリスト
「オマル師死亡」で加速するアフガン流動化
Afghanistan
タリバン強硬派離脱にパキスタンの影
出井 亮太 時事通信社ニューデリー特派員
48
Cyber Intelligence
窃取された?膨大なセキュリティー情報
首脳会談控え中国の強力なカードか
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学学長補佐・教授
52
56
Economy
Oman
TPP年内署名は困難か
漂流する交渉と中国の台頭
真壁 昭夫 信州大学経済学部教授
小国オマーン、独自の仲介外交で存在感
核合意の「影の立役者」、日本の 中東外交展開の鍵となるか
池滝 和秀 時事総研客員研究員
61
64
国別好感度調査
戦後70年影響か「嫌韓」5・2ポイント減
全年代で5割切る・嫌中も減
石田 麻菜 時事通信社外信部記者
若きレンツィ首相に和食を売り込む
西川 恵 毎日新聞社客員編集委員
神奈川県座間市の相模川沿いの敷地に咲き誇る約45万本のヒマワリ。夏の風物詩
「ひまわりまつり」が開かれ、多くの人でにぎわう。(フォトグラファー・松谷 稔)
in sight
夏を惜しむ黄色の大輪
6
特 集 戦争・記憶の克服
プラハのブブニ駅に展示されたユダヤ人の写真。第2次世界大戦時にこ
の駅から5万人が収容所に送られた。(2013年6月、EPA=時事)
7
紀構想懇談会の報告書と
化 な ど、 戦 後 の 生 き 方 を
これからの途上国援助強
和 的 発 展 主 義 に 基 づ い て、
歴史学者で元防衛大学
校校長の五百旗頭 真氏
いう知識層の蓄積の上に
継 承 し つ つ、 積 極 的 平 和
世
は時事通信社のインタ
乗 っ た 形 と な っ た。 長 過
主義を展開すると語って
思 っ て い ま し た が、
ビ ュ ー に 応 じ、 安 倍 晋 三
ぎて焦点が散らばったと
容 は 次 の 通 り。( イ ン タ
た。 イ ン タ ビ ュ ー の 内
外交の在り方などを語っ
中 関 係、 安 保 法 制 と 日 本
や中国の台頭と今後の日
論 で す。 第 1 次 世 界 大 戦
全体で見ると立派な歴史
け で は あ り ま せ ん。 た だ
私にも不満な点が無いわ
を強いられた 」という見方
囲網によって日本が戦争
─五百旗頭先生はかね
て、「 い わ ゆ る A B C D 包
見 え る か も し れ ま せ ん し、 います。
配と帝国主義が終わる頃
手 = 解 説 委 員・ 市 川 文 隆、 つ い て い け ず、 植 民 地 支
た。今回の談話でも「欧米
を厳しく批判しておられ
写真は時事通信社神戸総
の経済ブロック化により
局・越智小牧)
ことが書かれている。
日本が孤立感を強め…」と
有識者懇の内容に意見具申
戦 争 を 反 省 し て い る。「 戦
五 百 旗 頭 真 氏 非 常
に 心 の こ も っ た も の で す。 後 の 平 和 的 発 展 を 総 決 算
代 の 日 本 を 批 判 し、 侵 略
この談話では1930年
う。 し か し、 そ れ を 言 い
めたのは、その通りでしょ
ロック化やABCD包囲
作 用 の 産 物 で す。 経 済 ブ
評価されますか。
すべきだ」とも言ってい
立 て て、 自 ら の 暴 挙 を 正
網 に、 日 本 が 孤 立 感 を 強
当初は安倍さんが独自の
た が、 今 回 は 戦 後 の 平
い っ た く だ り が あ り ま す。
─安倍晋三首相の戦後
年 談 話 に つ い て、 ど う
「 東 京 裁 判 史 観 を ひ っ く
り返せ」という趣旨のこと
五 百 旗 頭 氏 人 間 関 係
を 言 っ て い た 安 倍 さ ん が、 と 同 じ く 国 家 関 係 も 相 互
義に狂った日本になった
に な っ て、 軍 事 的 決 着 主
ビューは8月
後の日本が世界の変容に
首相による戦後
年談話
21
日、 聞 き
70
19
ものを書くのだろうと
70
五百旗頭 真 氏に聞く
「安倍色」薄めた談話を評価
8
Historical
recognition
が 訪 日 し た 際、「 和 解 と
だと認識されたのでしょ
五 百 旗 頭 氏 せ っ か く
心のこもった立派な談話
当化することはできませ
ん。「 誰 が 私 を こ ん な に し
なのに、
「謝罪はこれまで」 ド イ ツ は 申 し 訳 な い と (
世紀構想懇談会座長代
い う の は 相 互 的 な も の だ。 う。 そ こ に 北 岡 伸 一 さ ん
た!」 と 自 立 し た 大 人 は
略の季節を切り開いた先
も 前 の こ と で す。 軍 事 侵
年)より
年)やAB
を 開 始 し た の は、 経 済 ブ
かしながら責任はあるの
その次のパラグラフで「し
す。 今 お 読 み に な っ た 文
に受け取られたら残念で
年) 議 論 を し て い る か の よ う
優しくせよ」なんて言う
引 用 し て「 周 り が も っ と
方がドイツ首相の言葉を
な 言 い 回 し で す。 加 え て、 い っ て も、 戦 争 を や っ た
章はかなり和らげた巧み
の は 立 派 な こ と で は な い。 省 」 と い う 言 葉 を 使 わ れ
す 」 と 言 わ れ た。 そ う は
方があっての和解なので
け 止 め て く れ た。 そ の 双
がそれに寛容を持って受
思 っ て い る け ど、 周 辺 国
インにしたいです。
の教科書などのボトムラ
を 表 し ま す。 こ れ を 日 本
まで首相を導いたと敬意
プ の 皆 さ ん が、 よ く こ こ
理)をはじめ有識者グルー
ロ ッ ク 化(
C D 包 囲 網(
と い う た め に、 そ う い う
導 者 は、 残 念 な が ら 日 本
だ」と受けている。バラン
た こ と に つ い て、 考 え る
言 わ な い も の で す。 そ れ
の 方 な の で す。 こ こ は や
ス を 取 っ て、 も ろ に 批 判
今回の談話で、寛容を持っ
ところはありますか。
に、日本が満州事変(
はり日本の間違いだった
を受けないようになった。
て戦後の再生を支えてく
─天皇陛下が 日の戦
没 者 記 念 式 典 で「 深 い 反
と 言 っ て 潔 く 謝 り、 戦
れ た、 そ の こ と に 感 謝 す
それを戦争に責任のあっ
る と 言 っ た の は 正 し い し、 五 百 旗 頭 氏 も し、 安
倍さんの前日の談話がナ
ショナリスティックなも
の心を持って戦後を支え
やはり世界の中で日本外
思 い ま す。 で も 談 話 が ま
と 言 わ れ た の で は、 と も
で 成 熟 し た と 思 い ま す。 て 心 か ら 申 し 訳 な か っ た
の に な っ て い た ら、 陛 下
ど も た ち に、 謝 罪 を 続 け
てくれたという感謝の言
交をやっていこうと思っ
安倍さんはもっとイデ
オロギッシュな人だと思
る宿命を背負わせてはな
葉が基調となっている。
は責任を感じて日本とし
りません」というくだり
と も な も の に な っ て、 首
い ま し た が、 よ く こ こ ま
あ る の で し ょ う。 で も、 いい書き方だと思う。
きだ」という強い信念が
後 は 平 和 的 に や り ま し た、 首 相 に は「 謝 罪 を 続 け
るのはいいかげんにすべ
21
た ら、 こ う で な い と 駄 目
た方から言うと逆効果に
─ 談 話 の 中 の「 子 や 孫、
そ し て そ の 先 の 世 代 の 子 な る の で、 皆 さ ん が 寛 容
しないと。
あ り が と う、 と い う 風 に
寛容に受け止めてくれて
31
ドイツのメルケル首相
にも議論があります。
9
15
41
36
相と陛下の論調は違わな
フィリピンやベトナムが
と い う 含 み で す。 だ か ら、 に し た 新 た な 力 を 各 国 が
て 動 き が 鈍 い。 そ の た め、 か な り 厳 し い 対 応 を す る
ド イ ツ は「 自 分 た ち が 手
いものとなりました。
と 言 っ て、 慰 撫 し て も 全
中 国 は 安 易 に 考 え な い で、 嫉 妬 し て 認 め な い 」 な ど
主張していたのに対し、日
ン ジ ャ ー 元 米 国 務 長 官 は、
を す る 国 が 無 か っ た。 各
て、 そ ち ら が い つ の ま に
五 百 旗 頭 氏 現 状 維 持
で は 駄 目 で す。 で も、 破 か 基 準 に な っ て い る。 南
五 百 旗 頭 氏 中 国 は、
南 シ ナ 海 や 東 シ ナ 海 で 力 壊 す る わ け に は い か な い。 シ ナ 海 で は そ う い う こ と
とを気にしている」と指
う思っているかというこ
い る し、 世 界 が 中 国 を ど
以上のことが可能ですか。
く 納 得 せ ず、 付 け る 薬 が
制すべきでしょう。
─南シナ海の埋め立て
に 対 抗 す る に は 何 が で き 東 シ ナ 海 で 以 前 中 国 は、 な い 状 況 だ っ た。 そ の 故
る で し ょ う か。 現 状 維 持 「境界は沖縄トラフから」と 事 を 引 き な が ら、 キ ッ シ
一方的にならないよう自
苦しんでいる。
南シナ海の対応、
中国の孤立化図れ
─中国をめぐる日本の
対 応 に つ い て、 ど う 考 え
本 が 日 中 中 間 線 と 主 張 し 「 今 の 中 国 は 違 う。 中 国 の
運 が 悪 い の は、 現 在 は イ
国は中国に面と向かって
ますか。
を使って現状を変更しよ
ラクやアフガンの戦争か
摘した。
トップリーダーは非常に
う と し て い る。 こ れ を 仕
ら「 撤 収 す る オ バ マ 政 権 」 争 え な い。 米 国 や 日 本 が
聡明に世界のことを見て
方がないと言ってやらせ
国際的連携をいかに支え
は古いコンプレックスと
し ま う。 上 り 調 子 の 大 国
ンヘンの宥和」になって
ド イ ツ に 譲 歩 し た )「 ミ ュ
いう判断があったのかど
実をつくってしまえ」と
厳 し く な る か ら、 既 成 事
政権は恐らくオバマより
ば「 今 の う ち だ 」「 次 期
る事態にどう対処すべき
─将来に向け米国が衰
退 し、 中 国 が 勃 興 を 続 け
が自分の国の立場を相対
が い る。 そ う し た 知 識 人
国にも日本専門家や識者
て い た ら、 そ れ は( 戦 前、 な ん で す。 中 国 か ら す れ
新しいプライドがないま
う か。 大 層 工 事 を 急 い だ。 ですか。
化 し て、 広 い 観 点 か ら 中
私 も そ う 思 い た い が、
結局自ら大きくなってい
ぜになって自己陶酔に陥
で も、 甘 い オ バ マ 政 権 で
られるかでしょうね。
り、 止 ま ら な く な っ て し
す ら「 認 め な い 」 と 言 っ
る、 そ う い う 層 が 政 権 を
国と他国とのことを考え
う 甘 い も の で は な い。 中
く時の心理というのはそ
ま う。 日 本 も 米 国 も、 巨
て い る の は、 次 の 政 権 は
五 百 旗 頭 氏 強 者 の 自
制 が 必 要 で す。 か つ て の
大化する中国にはばかっ
10
Historical
recognition
これまで習近平政権は
自由な議論をけん制し
支えないと持たない。
ま く 乗 り 越 え て、 ち ゃ ん
国の今のバブル経済をう
は 大 丈 夫 で し ょ う か。 中
し ょ う。 で も、 A I I B
慣れなのです。
ロ ー チ な の で、 中 国 は 不
いうやり方は新しいアプ
加 え、 国 際 関 係 で も 中 国
指導者が超法規的なのに
が ち で す。 国 内 で は 最 高
い た。 国 内 の 動 乱 を 恐 れ
の か、 そ れ を 見 極 め な が
して立派にやっていける
い い が、 お ま え の 国 は 使
加 減 を 加 え て「 こ の 国 は
か も し れ ま せ ん が、 さ じ
時事通信社 e-World
全保障と利益を組み合わ
了 承 し ま せ ん。 中 国 は 安
e-World premium
た い と。 そ れ で は 世 界 は
が超法規的存在で差配し
て、 識 者 が 自 由 に も の を
米国の第7艦隊は同盟
国の安全を保障している
て、 締 め 付 け を 強 化 し て
ら日本もいずれ加わった
の を 言 っ て、 こ れ で は ま
ずいということを中国に
想 が 古 い の で、 宗 主 国 的
─一帯一路構想をどう
見 た ら い い の で し ょ う。 な 思 い で 自 分 が 支 配 的 な
安全保障は取り合いの
世 界 で す。 ど っ ち が 取
る か、 中 国 は そ れ を 好
み 過 ぎ る。 ル ー ル の 下
で皆がコモンとして共
ご購入は各電子書店へ
分からせる外交をしてい
五 百 旗 頭 氏 結 局 そ
う し た い の で し ょ う が、
ます。
表の関係という気がし
安全保障と経済が裏と
Vol.16 (2015/5)
戦後をめぐる攻防
有 財 と し ま し ょ う、 と
インタビューに答
える五百旗頭 真氏
(8月19日、時事)
特 に 海 の シ ル ク ロ ー ド は、 立 場 を つ く り た い と 考 え
と は 言 わ な い。 中 国 は 発
い る。 日 本、 米 国、 南 シ
時事通信社 e-World
わせぬ」というようなこ
時事通信社 e-World
らいいとは思います。
(検索用キーワード)
ナ海の関係国が中国にも
Vol.14 (2015/3)
テロと言論の自由
Vol.15 (2015/4)
深化する安全保障政策
かないといけない。
共有財との考えに
不慣れな中国
─アジアインフラ投資
銀行(AIIB)は、戦後
の金融秩序への挑戦では。
五 百 旗 頭 氏 少 な く と
もドルがすべてではない
と い う と こ ろ へ、 相 対 化
にもっていきたいので
せ て や ろ う と す る が、 そ
れには限界があると思い
ます。
中国が軍事的破壊活動
をやり始めたら協商も何
も な い で す。 だ か ら 一 緒
に豊かさと互恵関係を
つくりましょうという
ところへ連れて行かな
い と い け な い。 そ の た
めの装置として安保法
制は悪くないと思って
います。
─ 最 近、 北 京 で 現 地
の識者たちと議論され
た そ う で す が、 中 国 経
済についてどういう見
11
e-World premium
と筋を通して国際機関と
今をビジュアルに
言いにくい状況となって
続きは本編をご覧ください
戦争・記憶の
克服
Vol.20 (2015/9)
e-World
Vol.17 (2015/6)
統合と分離が併存する
欧州
Vol.18 (2015/7)
一帯一路の幻影
Vol.19 (2015/8)
拡散する
イスラム過激派