スポーツ消費者の観戦目的特性と最終目的達成が

スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
スポーツ消費者の観戦目的特性と最終目的達成が満足度と幸せに与える影響
The effects of sport consumers’ goal types and goal valence on satisfaction and happiness
佐藤晋太郎 1) ,押見大地 2) ,原田宗彦 2) ,佐藤幹寛 3) ,朝倉雅史 4) ,高鏞在
1)
ジョージアサザン大学健康・人間科学部
2)
3)
4)
5)
5)
早稲田大学スポーツ科学学術院
ジェームズ・マディスン大学経営学部
早稲田大学グローバルエデュケーションセンター
フロリダ大学観光レクリエーションスポーツマネジメント学部
Shintaro Sato 1) , Daichi Oshimi 2) , Munehiko Harada 2) , Mikihiro Sato 3) ,
Masashi Asakura 4) , Yong Jae Ko 5)
1)
College of Health and Human Sciences, Georgia Southern University
2)
3)
Faculty of Sport Sciences, Waseda University
College of Buisiness, James Madison University
4)
Global Education Center, Waseda University
キーワード:スポーツマネジメント,主観的幸福感,自己決定理論,スポーツ観戦,顧客満足
Key words: Sport management, subjective well-being, self-determination theory,
sport spectator, customer satisfaction
抄 録
Drawing on the self-determination theory, the current study employed a 2 (Goal type: Enjoyment vs.
Victory) × 2 (Goal valence: Positive vs. Negative) factorial experiment to test how sport spectators’
satisfaction and happiness were influenced by their sport consumption. The results indicated that there
were no differences regarding satisfaction and happiness when consumers achieved their consumption
goals. However, having enjoyment relative to victory as a consumption goal created more negative impact on their consumption satisfaction and happiness when they failed to achieve their goals. Furthermore, when the consumption outcome became negative, having goals supporting their favorite
teams’victory worked as a shield to alleviate the negative impact elicited by the negative consumption
experience.
スポーツ科 学 研 究 , 12, 101-120, 2015年 , 受 付 日 :2015年 4月 7日 , 受 理 日 :2015年 9月 30日
連 絡 先 :佐 藤 晋 太 郎 Hollis Building 1129A 62 Georgia Avenue PO Box 8076, Statesboro GA 30460 USA.
Tel: +1-404-434-5288, [email protected]
Ⅰ.緒言
心理学を代表とした多くの学術領域において,幸
「幸 せになりたいか?」という根 源 的 な問 いに対
福感の科学的解明が近年発展してきている
して,否 定的 な回答をする人は極めて少ないであ
(Blanchflower and Oswald, 2011; Dunn et al.,
ろう.Frey and Stutzer (2010)によれば、幸せは人
2011; Liu and Aaker, 2008).幸福感研究領域で
間 が持 つ最 も大 きな共 通 目 標 である.経 済 学 や
は,経験的消費と物理的消費を比較した際,どち
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らがより幸 福 感 に貢 献 するかという研 究 トピックが
きたい.この二 人 のサッカーファンは,ワールドカ
存在する(Nicolao et al., 2009; Van Boven and
ップサッカーを大 いに楽 しみ,スポーツ消 費 経 験
Gilovich, 2003).経 験 的 消 費 とは,経 験 そのもの
に満 足 し,幸 福 感 を得られたとしよう.一 人 目 はス
に本 質 な価 値 があるプロダクトやサービスの消 費
ポーツ観 戦 という消 費 経 験 を通 して,サッカー日
を意 味 し,物理 的 消 費 は経 験 的 消 費 に比 べて,消
本代表選手が披露する素晴らしいパフォーマンス
費 者 の物 理 的 所 有 欲 求 と深 く結 びつく消 費 であ
に満 足した結果 ,勝 敗 に関 係なく幸福 感を得 るこ
る(Holt, 1995). Nicolao et al.(2009)は,経験的
とができた.一方で,二人目のサッカーファンは日
消 費 をした消 費 者 の方 が物 理 的 消 費 をした消 費
本が他国の代表チームよりも相対的に優れている
者 に比 べて,長 く幸 福 感 を得 られることを明 らか
ことにこだわり,結 果 として日 本 代 表 選 手 の勝 利
にしている.すなわち,消費活動から得られるポジ
によって幸福感を得ることができた.二人は異なる
ティブな心 理 的影響 に消 費者が慣 れてしまい,そ
要 因 に動 機 づけられ,異 なる最 終 目 的 を達 成 す
の消 費 活 動 に飽 きてしまうまでの順 応 速 度 が,経
るためにスポーツを消 費 し,そしてそのスポーツ消
験的消費 の方が物理 的 消費よりも遅 いのである.
費を通 して満足 と幸 福 感を得 ることができた.しか
原 田 ほか(2008)が指 摘 するスポーツプロダクトの
しながら,二人は同程度に満足や幸福感を得るこ
特 性 (e.g.,不 可 視 性 ,無 形 性 )を考 慮 すると,スポ
とができたのであろうか.また二 人 がスポーツ消 費
ーツ参 加 や観 戦 行 動 は経 験 的 消 費 に位 置 づけ
目的を達 成 できなかったとき,同 程度 に不満 足や
られる.すなわちスポーツ参 加 や観 戦 行 動 は,ス
不幸せを感じるのだろうか.
ポーツ消 費 者 注
1)
スポーツ消 費 行 動 と顧 客 満 足 の関 係 性 は,先
の幸 福 感 に貢 献 する可 能 性 を
行 研 究 の中 でも頻 繁 に検 証 されている.Yoshida
秘めているものと推察される.
体 育 ・スポーツ参 加 分 野 に着 目 した先 行 研 究
and James(2010)や Tsuji et al.(2007)は,サービ
を 概 観 す ると , 高 齢 者 の ス ポー ツ参 加 者 を 研 究
スクオリティの観点から,スポーツ消費活動を中心
対 象 とし,スポーツ参 加 が参 加 者 自 身 の幸 福 感
的 サービス(Core service)と接 客 などの関 連 サー
や生 活 満 足 度 といった社 会 的 側 面 に与 える影 響
ビス(Peripheral service)に分 類 して,スポーツ消
に着 目 した研 究 が存 在する(石 澤 , 2004).一 方,
費 者 の顧 客 満 足 や再 購 買 意 図 の理 解 に貢 献 し
スポーツ観 戦 行 動 を取 り扱 った研 究 では,スポー
た.山 口 ほか(2011)は,上 述 の関 連 サービスに該
ツ観 戦 者 のチームに対 する態 度 やスポーツ観 戦
当 するであろうファンサービスイベントの顧 客 満 足
における満 足感 を明 らかにすることで,プロスポー
を独 立 変 数 として,実 際 の観 戦 行 動 への影 響 を
ツチームの収 益 に繋 げるといったスポーツ観 戦 に
検 証 した.先 行 研 究 においては,サービスクオリ
おける経 済 的 な側 面 に着 目 した研 究 が盛 んに行
ティを主軸として顧客満足に関する研究が行われ
われてきた(Gladden and Funk, 2002; Trail, An-
ることが多 いが,スポーツ観 戦 動 機 からスポーツ
derson, and Fink, 2000; Yoshida & James, 2009).
消 費 者 の満 足 を検 証 することも可 能 であろう.
スポーツマネジメント研究領域では,スポーツの社
Oliver(1980)は消 費 者 が特 定 のプロダクトに関 し
会 的 側 面 の中 に経 済 的 側 面 等 を含 めることもあ
て持 っている期 待 が,確 認 される(もしくは不 確 認
るが(e.g. Balduck et al., 2011)、スポーツがもた
される)ことによって,満 足 (もしくは不 満 足 )が生 ま
らす社 会 的 効 果 を経 済 的 側 面 とは分 けて着 目 し
れるとしている.ワールドカップの例 に戻 ると,純
(e.g. Inoue & Havard, 2014)スポーツ参加者や
粋 に楽 しみたいという動 機 (i.e., 楽 しみ)を持 って
観 戦 者 がスポーツを通 してどのような便 益 を享 受
観戦しているスポーツ消費者や勝利を求めている
できるかを解明していく必要がある.
スポーツ消 費 者 の期 待 (i.e., 勝 利 )が達 成 される
ことで消 費 者 の顧 客 満 足 が創 り出 されると考 える
人 々が幸 福 感 を絶 対 値 で評 価 できるのか,ま
ことができる.
たは相対的 に評価するかという問いも注目を集 め
ている(Diener et al., 1993; Hsee et al., 2008).
本研究ではスポーツ消 費者の顧客 満足に加え
例 えば,二 人 のサッカーファンを想 像 していただ
て,幸 福 感 に関 する検 証 も行 う.スポーツ消 費 者
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の幸 福 感 を解 明 しようとした研 究 は極 めて少 ない
はスポーツという強 大 な社 会 的 機 関が社 会 にもた
ものの,レジャー研 究 や心 理 学 ,消 費 者 行 動 領
らす強 い力 に対 して警 鐘 を鳴 らし,スポーツの社
域 に お いては ,レ ジ ャー活 動 へ の 参 加 が 人 生 満
会 的 責 任 の理 解 の重 要 性 を説 いた.これらの点
足 度 などの概 念 にもたらす影 響 を調 査 した研 究
から,スポーツ消 費 者 の満 足 や幸 福 感 との関 係
が頻繁に行われてきた(e.g., Galak et al., 2013;
性 を、スポーツ観 戦 という枠 組 みの中 で理 解 する
Ngai, 2005; Sato et al., 2014; Spiers and Walker,
ことは,商 業 スポーツの持 つ一 つの社 会 的 価 値 ,
2008).例 えば,レジャー研 究 領 域 では,レジャー
すなわち人 々の幸 福 感 への貢 献 を理 解 すること
活 動 に参 加 してその活 動 を楽 しむことは,幸 福 感
に繋がると思われる.
と密接に関わっていることが報告されており(Lloyd
and Little, 2010; Mannell, 2007) . Wang et
Ⅱ.理論的背景
al.(2011),レジャー活 動 に参 加 して他 者 との関 係
1.自己決定理論
を築いたり,ありのままの自分を感じたりすることは,
スポーツ消 費 活 動 における目 的 は多 岐 に渡 る.
人 々の幸 福 感 と密 接 な関 係 を持 つことが明 らか
例 えば,スポーツ消 費 者 の観 戦 動 機 アプローチ
にされている.上 記の先 行研 究においては,参 加
か ら 研 究 を 行 っ た James and Ross(2004) や
型 のレジャーやスポーツが研 究 対 象 となっている
Wann(1995)が指 摘 する よう に ,勝 利 からも たらさ
が,スポーツ観 戦 者 における消 費 行 動 と幸 福 感
れる自己肯定感を求める者もいれば,純粋にエン
の関 係 性 について研 究 された事 例 は珍 しい.
ターテインメントとしてスポーツを楽 しむ消 費 者 も
Branscombe and Wann(1991)の研究では,スポー
いる.このように異 なる要 因 に動 機 づけられた消
ツ観 戦 も自 尊 心 の向 上 などを通 じて,人 の幸 福
費者を理解 する際に有 用な理論として,自己決定
感 へ影 響 を与 えると言 及 しているものの,実 証 的
理論(Ryan and Deci, 2000)が挙げられる.自己決
検証はほとんど行われていないのが現状である.
定 理 論 は,人 々が特 定 の行 動 を起 こす際 の動 機
本 研 究 の目 的 は,みるスポーツやするスポーツ
を内 発 的 ・外 発 的 という大 きな二 つの側 面 から理
といったスポーツ消 費 活 動 (松 岡 ,2010)の中 でも
解 し,それらが達 成 されたかという消 費 目 的 を考
スポーツ観 戦 に着 目 し,スポーツ観 戦 がどのよう
慮 しながら消 費 者 行 動 を説 明 する.内 発 的 な動
に消 費 者 の顧 客 満 足 と幸 福 感 に影 響 を与 えるか
機とは,人々が特定の行動を起こす際の,純粋な
検 証 することである.具 体 的 には,スポーツ消 費
興 味 深 さや楽 しさという動 機 を意 味 し,外 発 的 な
者 の 消 費 目 的 特 性 と目 的 達 成 に着 目 した 実 験
動機とは,ある特定の行 動によってもたらされる結
研 究 を行 うことで,スポーツ観 戦 行 動 の満 足 と幸
果 を 求 め る 動 機 と さ れ て い る (Ryan and Deci,
福感に与える影響を検証した.数々のスポーツ観
2000).つまり,純粋な楽 しみに代表 される内発 的
戦 動 機 の理 解 に貢 献 した研 究 から概 観 すると
な動 機 は,それ自 体 が最 終 目 的 になる一 方 ,外
(e.g., Funk et al., 2012; James and Ross, 2004;
発 的 に動 機 づけられた行 動 は,何 かの最 終 目 的
Trail and James, 2001; Wann, 1995),スポーツ消
を 達 成 す る 手 段 と し て 捉 え ら れ る (Funk et al.,
費 者 は異 なる要 因 に動 機 づけられてスポーツ観
2012; Ryan and Deci, 2000).さらに,自己決定理
戦 行 動 を行 うため,スポーツ消 費 と言 ってもその
論 は心 理 学 領 域 において人 々の幸 福 感 の説 明
観 戦 経 験 は多 種 多 様 であることが考 えられる.つ
を試 みた近 年 の研 究 に,大 きく貢 献 してきた理 論
まり,観 戦 者 の顧 客 満 足 や幸 福 感 を検 証 するた
の一つであり、その有用 性も過去の研究で確認さ
めには,スポーツ消 費者 の動 機を踏 まえた上でそ
れ て い る (Nix, Ryan, Manly, and Deci, 1999;
のメカニズムを検証する必要があると考えられる.
Ryan, Huta, and Deci, 2008: Ryan and Deci,
我 が国 においては,内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研
2000).したがって,スポーツ消 費 者の満 足 と幸福
究所(2013)が経済的成 長がもたらす幸福感には
感 を彼 らの動 機 という側 面 から検 証 するアプロー
限 界 があるという考 え方を背 景 に,本格 的 に国 民
チを採 用 した本 研 究 において,自 己 決 定 理 論 を
の幸 福 度 の科 学 をスタートさせた。Zeigler(2007)
援 用 するこ とは妥 当 であると思 わ れる。そこで 本
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2.スポーツ消費行動と顧客満足
研 究 は自 己 決 定 理 論 に基 づき,スポーツ消 費 者
顧 客 満 足 とは,プロダクトやサービス,それらの
の動 機 の観 点 からスポーツ消 費 者 の観 戦 目 的 を
特 徴 によって提 供 される消 費 活 動 に関 連 する満
設定した.
自 己 決 定 理 論 は,動 機 づけの観 点 から人 々の
足反応(Oliver, 1997) である.スポーツ消費行動
行 動 を理 解 できるという有 用 性 を理 由 に,体 育 ・
と顧 客 満 足 の関 係 性 を検 証 した研 究 は,スポー
スポーツ研 究 においても幅 広 く援 用 され始 めてい
ツ観戦者(e.g. Matsuoka et al., 2003; 押見・原
る(藤田・杉原, 2007; 藤田ほか, 2008).特にスポ
田, 2013; Tsuji et al., 2007; Yoshida and James,
ーツ心理学領域では、自己決定理論を元に青少
2010),スポーツ参加者(e.g. Cronin et al., 2000;
年 の運 動 へ の動 機 づけ を測 定 する 多 次 元 尺 度
Murray and Howat, 2002),又はスポーツツーリス
の開発を行った研究や(上地ほか, 2012),内発的
ト(e.g. Kozak and Rimmington, 2000: Petrick and
動機を高める要因の一つとして考えられる同一視
Backman, 2002)などを対象に,多岐に渡り研究さ
に着 目 した研 究 などがある(上 地 , 2011).先 行 研
れてきた.吉 田 (2011)が指 摘 したスポーツ消 費 行
究 の傾 向 としては,人 々がより内 発 的 に動 機 づけ
動 を踏 まえた顧 客 メトリクスでは,スポーツ消 費 者
られるように,その心 理 過 程 の理 解 を深 める研 究
行 動 を順 に,「消 費 者 の望 むもの(e.g. ニーズ,
が盛んに行われてきた.
ウォンツ,動 機 )」,「企 業 の取 り組 み(e.g. マーケ
しかしながら,本 研 究 で扱 うスポーツ観 戦 行 動
ティングミックス,ブランディング)」,「消費者による
は,内 発 的 ・外 発 的 動 機 の観 点 から研 究 されるこ
評 価 (e.g. 価 値 ,ブランドイメージ)」,「消 費 者 の
とが極 めて少 なかった.消 費 者 は様 々な要 因 に
全 体 評 価 (e.g. 顧 客 満 足 、顧 客 ロイヤルティ)」,
動機づけられているのにも関わらず,スポーツとい
そして「消 費 者 の行 動 (e.g. 再 購 買 、口 コミ)」と
う強 いエンターテインメント性 を持 つ消 費 対 象 の
いう各ステージの連続性から説明できるとしている.
特 性 上 ,スポーツ観 戦 場 面 における消 費 者 は多
顧 客 満 足 は顧 客 ロイヤルティと並 んでスポーツ消
くの場 合 自 発 的 であり,すでに内 発 的 に動 機 づ
費 者 行 動 における消 費 者 の全 体 的 な評 価 局 面
けられていると解 釈 されてきたからではなかろうか.
にあたり,ある商 品 やサービスに対 する消 費 者 の
ところが,スポーツの本来持つ性質を考慮すると,
態 度 形 成 を表 すとしている.この連 続 性 を備 えた
ス ポ ー ツ 観 戦 に お いても , 内 発 的 ま た 外 発 的 に
理 論 的 枠 組 みを用 いてスポーツ消 費 者 の動 機 と
動 機 づけられた消 費 者 が存 在 すると考 えられる.
満 足 の関 係 性 を捉 えると,動 機 は消 費 者 行 動 に
例えば,スポーツ消 費者 が消費 行動 を通して,純
おいて最 初 のステージに該 当 し,その後 企 業 は
粋 にスポーツ観 戦 を楽 しんでいるのであれば,彼
消 費 者 の動 機 を踏 まえたマーケティングやブラン
らは内 発 的 に動 機 づけられていると考 えられるで
ディングを行 う.そして,そうした取 り組 みに対 して
あろう.一 方 ,スポーツの重 要 な性 質 の一 つであ
消 費 者 が評 価 する局 面 に該 当 するのが顧 客 満
る競争(Kahle et al., 1996)は,純粋な楽しみに比
足 となる.つまり,消 費 者 が持 つ動 機 に対 する目
べてより外発 的に動 機づけられていると捉えること
的変数として顧客満足があることが理解できる.
ができる.つまり,勝利を求め,相手チームに勝つ
消 費 者 の動 機 が顧 客ロイヤルティ(目 的 変 数 )に
ことによる相 対 的 な優 越 感 や自 己 肯 定 感 を求 め
与 える影 響 は,これまでの研 究 で明 らかにされて
ている消費者は,純粋な楽しみを求めている消費
きており(Funk and James, 2006; Trail and James,
者に比べて,外発的に動機づけられているスポー
2001),上 述 の顧 客 メトリクスの中 で同 一 のステー
ツ消 費 者 と考 えることができるだろう.このように,
ジに属 する顧 客 満 足 を目 的 変 数 として,シーズン
異 なる要 因 に動 機 づけられた観 戦 経 験 によって
チケットホルダー(Beccarini and Ferrand, 2006)や,
生 まれる心 理 効 果 の違 いを理 解 することは,スポ
自転車レース参加者(Caro and Garcia, 2007)に
ーツ観 戦 における過 去 の動 機 研 究 に新 たな見 地
着 目 した研 究 が散 見 される.このように動 機 と顧
を提供することができると思われる.
客 満 足 の関 係 は様 々なアプローチで検 証 されて
きたが,Funk et al. (2012)は内発的・外発的動機
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と目 的 達 成 を考 慮 した理 論 的 枠 組 みが,スポー
2002),心 理 的 幸 福 感 (Compton, 2005),生 活 へ
ツ 観 戦 者 研 究 に お いて欠 如 し ている 背 景 か ら ,
の満足(Brockmann et al., 2009; 石澤, 2004)な
自 己 決 定 理論 がスポーツ消 費 者 行動 の更 なる理
ど,多くの異なる類似概念で操作されることも多い
解に貢献することを示唆している.
(Frey and Stutzer, 2000, 2002).幸福感の定義
Oliver(1980)は,消費者の満足は,彼ら/彼女
は学術的に体系化できているとは言い難いものの,
らの期 待 が確 認 される(もしくは不 確 認 される)こと
Veenhoven(1994)は幸 福 感 を「総 合 的 に考 えて,
で創 り出 されるとした.自 己 決 定 理 論 によれば,
個 人 が自 らの生 活 をどれだけ肯 定 的 に捉 えてい
内発的に動機づけられたスポーツ消費者は,スポ
るか」と定義している.本研究ではこの定義に則っ
ーツ観 戦 の内 容 を楽 しいと感 じられれば顧 客 満
て「みるスポーツやするスポーツに関 与するスポー
足 を得 ることができる.一 方 ,外 発 的 に動 機 づけ
ツ消 費 者 が,スポーツ消 費 を通 して彼 らの生 活 を
られたスポ ーツ消 費 者 は,自 チー ムが勝 利 す れ
どれだけ肯 定 的 に捉 えているか」と定 義 づけ,ス
ば顧 客 満 足 を得 ることができる.しかしながら,
ポーツ観戦者によって得られる幸福感に着目して
Funk et al. (2012) や Ryan and Deci (2000)らの
検証を進めた.
研 究 が示 唆 すように,内 発 的 なスポーツ消 費 者 と
幸 福 感 研 究 においては,経 済 学 や心 理 学 など
外 発 的 なスポーツ消 費 者 の消 費 目 的 に対 する重
を中心に多くの異なるアプローチで研究が行われ
みは異 なると考 えられる.つまり,純 粋 な楽 しみな
てきた.その中 でも,スポーツ消 費 者 行 動 研 究 に
どの内 発 的 な動 機 は,スポーツ観 戦 の最 終 目 的
おいても着 目 されるべき研 究 側 面 がある.物 理 的
そのものになるため,スポーツ観 戦 において達 成
消 費 と経 験 的 消 費 のどちらが消 費 者 の幸 福 感 に
されなければならない重 要 な要 素 となりうる.一 方 ,
より強 く影 響 を及 ぼすかである(e.g., Van Boven
勝 利 などの比 較 的 外 発的 な動 機は,最 終 的 な目
and Gilovich, 2003) . 例 え ば , Nicolao et
的 を達 成 するための数 ある手 段 の一 つに過 ぎな
al.(2009)は,経 験 消 費 の方 が物 理 消 費 に比 べて,
いため,目的達成に対する重みが低いと考えられ
人 々の幸 福 感 により強 い正 の影 響 を与 えることを
る.したがって,内 発 的 に動 機 づけられた最 終 目
発 見 した.彼 らの研 究 では,消 費 者 は経 験 的 消
的 を求 めるスポーツ消 費 者 は,外 発 的 に動 機 づ
費 から得 られた幸 福 感 に比 べて,物 理 的 消 費 か
けられた最 終 目 的 を求 めるスポーツ消 費 者 に比
ら得 られた幸 福 感 により早 く順 応 してしまうことも
べて , 目 的 が達 成 さ れ た際 には よ り高 い 顧 客 満
報 告 している.つまり,仮 に物 理 的 ・経 験 的 消 費
足 を得 る一 方 ,目 的 が 達 成 されなかった時 には
から得 られた幸 福 感 の強 度 が同 程 度 だとしても,
顧 客 満 足 がより低 くなると思 われる.以 上 の理 論
それらの中 長 期 的 な幸 福 感 への影 響 を考 慮 する
的背景から,以下の仮説を設定した.
と,経 験 的 消 費 がもたらす幸 福 感 への影 響 の方
仮 説 1:純 粋 な楽 しみ(i.e., 内 発 的 )をスポーツ観
がより強 いことを示 唆 している.スポーツ参 加 のコ
戦 の最 終 目 的 に設 定 している消 費 者 は,勝 利
ンテンツや試 合 をスポーツ組 織 や団 体 が提 供 す
(i.e., 外 発 的 )を最 終 目 的 に設 定 している消 費 者
るサービスと捉 えると,人 々が行 うスポーツ消 費 活
に比 べて,消 費 目 的 が達 成 された時 の顧 客 満 足
動はその不可視性や無形性などの特性から
度が高い.
(Cowell, 1984; 原 田 ほか, 2008)経 験 的 消 費 に
仮 説 2:純 粋な楽 しみをスポーツ観 戦 の最 終 目 的
分 類 される.したがって,Nicolao et al. (2009)の
に設 定 している消 費 者 は,勝 利 を目 的 に設 定 し
知 見 を考 慮 すると,スポーツ消 費 から生 まれるポ
ている消 費 者 に比 べて,消 費 目 的 が達 成 されな
ジティブな心 理 的 効 果 は順 応 が遅 いことが考 えら
かった時の顧客満足度が低い.
れるため,多 くの物理的 消費に比 べて人々は長 く
幸 福 感 を感 じることができ、人 々の生 活 の全 体 的
3.スポーツ消費行動と幸福感
な幸 福 感 により貢 献 する可 能 性 を秘 めていると考
先 行 研 究 における幸 福 感 は,主 観 的 幸 福 感
えることができる.
(Diener, 2000; Pawlowski et al., 2013; 安永ほか,
105
自己 決定 理 論における内発 的・外 発的 動機は
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
人 々の 幸 福 感 に密 接 に 関 わってい る(Ryan and
仮 説 4:純 粋な楽 しみをスポーツ観 戦 の最 終 目 的
Deci, 2000).例えば,純粋な楽しみに代表される
に設 定 している消 費 者 は,勝 利 を目 的 に設 定 し
内 発 的 動 機 は,人 々の自 主 性 と密 接 に関 わって
ている消 費 者 に比 べて,消 費 目 的 が達 成 されな
おり,自 主 性 が満 たされることは心 の充 足 と密 接
かった時の幸福感が低い.
に関係している(Daley and Maynard, 2003; ParⅢ.研究の手順
fitt and Gledhill, 2004) . さ ら に Kasser and
Ryan(1993)も,内発 的 に動機 づけられた目的は,
設 定 された 仮 説 検 証 を 行 うため、本 研 究 では
外 発 的 に動 機 づ けら れ た目 的 に 比 べて , より 幸
観 戦 目 的 特 性 (楽 しみ vs. 勝 利 )と最 終 目 的 達
福 感 と関 係 していることを報 告 している.これらの
成(達成 vs. 失敗)を独立変数とした二元配置法
点 から,スポーツ消 費 行 動 においても,内 発 的 に
による実 験 計 画 を採 用 した.本 研 究 では二 つの
動 機 づけられた最 終 目 的 (i.e., 純 粋 な楽 しみの
実 験 計 画 を用 い,異 なるスポーツ観 戦 経 験 を研
ためのスポーツ観戦)を求めるスポーツ消費者は,
究対 象として設定 することで,実験 結 果の再 現性
外 発 的 に動 機 づけられた最 終 目 的 (i.e., 勝 利 を
の向上に努めた.実験 1 ではアメリカ4大プロスポ
求 めるスポーツ観 戦 )を求 めるスポーツ消 費 者 に
ーツとして人 気 の高 いプロバスケットボール(i.e.,
比 べて,目 的 が達 成 された際 に人 生 の評 価 に対
NBA)の観戦経験を研究対象とし,実験 2 ではメ
してよりポジティブな心 理 的 影 響 を受 けると思 わ
ジャーリーグベースボール(i.e., MLB)を研究対象
れる.
とした.さらに,実験 1 の結果が再現されるかをよ
一 方 ,目 的 が達 成 できなかった時 の消 費 者 の
り強く支持するために,実験 2 においては満足度
幸福感を検証した研究は極めて少ない.Hsee et
と幸 福 感 に影 響 を与 えると示 唆 される、独 立 変 数
al.(2008) は,幸 福 感 の向 上 に重 要 な要 因 として
以 外 の動 機 を統 制 して実 験 結 果 の再 現 性 を検
正 の経 験 の最 大 化 と,負 の経 験 の最 小 化 を指 摘
証した.
している.この考 え方 に基 づくと,消 費 行 動 が幸
福感に与える影響をポジティブな消費活動からだ
Ⅳ.実験 1 の研究方法
けでなく,ネガティブな消 費 活 動 からも理 解 する
1.実験 1 における研究デザイン
必 要 がある.自 己 決 定 理 論 から考 えると,内 発 的
実験デザインは,スポーツ消費者の観戦目的特
に 動 機 づけら れ た行 動 (i.e., 純 粋 な 楽 し み のた
性 (楽 しみ vs. 勝 利 )と最 終 目 的 達 成 (達 成 vs.
めのスポーツ観 戦 )は,それ自 体 が最 終 目 的 にな
失 敗 )を独 立変 数 とした二 元 配 置 法による実 験研
り,外 発 的に動機 づけられた行動 (i.e., 勝 利を求
究 を実 施 した.実 験 研 究 は,多 くの要 因 を統 制 し
めるスポーツ観 戦 )は,優 越 感 や自 己 肯 定 感 など
ながら,着 目 している心 理 的 要 因 が従 属 変 数 に
の最 終 的 な目 的 を達 成 するための通 過 点 として
及 ぼす効 果 を検 証 する際 に非 常 に優 れた研 究
捉えることができる(Funk et al., 2012).すなわち,
手法 である(Ellsworth et al., 1990).実際 ,消費
純 粋 な 楽 しみといった内 発 的 に動 機 づけられ た
者 行 動 研 究 においても,心 理 的 要 因 を統 制 して
目 的 を求 めるスポーツ消 費 者 が幸 福 感 の評 価 を
幸 福 感 を科 学 した研 究 が多 く存 在 する(e.g., Ni-
した場 合 ,勝 利 という外 発 的 に動 機 づけられた目
colao et al., 2009; Liu and Aaker, 2008).被験
的 を求 めるスポーツ消 費 者 に比 べて,消 費 最 終
者は Amazon Mechanical Turk(Mturk) 注 2) を用い
目的 が達 成 されたか否 かが,より強 い影響 を持 つ
て募集 された.Mturk は,実 験研 究デザインを用
と思 われる.これらの点 から以 下 の仮 説 が設 定 さ
いる場 合 に多 く活 用 されている大 規 模 オンライン
れた.
パネルであり,特 に心 理 学 や消 費 者 行 動 研 究 領
仮 説 3:純 粋な楽 しみをスポーツ観 戦 の最 終 目 的
域 で 頻 繁 に 用 い ら れ て い る (e.g., Galak et al.,
に設 定 している消 費 者 は,勝 利 を目 的 に設 定 し
2013; Saslow et al., 2013).被験者は少額の金銭
ている消 費 者 に比 べて,消 費 目 的 が達 成 された
的 報 酬 を受 け取 り本 実 験 に参 加 し,無 作 為 に四
時の幸福感が高い.
つの実験 条 件の中の一 つに割り付 けられた.この
106
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
無 作 為 割 り付 けを行 うことで,スポーツ観 戦 に関
ープ内 の媒 介 変 数 を統 制 するのに優 れているが,
するその他 の動機や,消費者の人 口統計的 変 数
本 研 究 では グル ー プ外 の媒 介 変 数 を最 大 限 に
な ど を 統 制 す る こ と が で き る (Ellsworth et al.,
統 制 するため,制 限 機 能 を用 いてアメリカ人 の被
1990).Mturk の回答者はアメリカ人が多くを占め
験者のみを募集した.本研究の実験フレームワー
るが,国 籍 は様 々である.無 作 為 割 り付 けはグル
クは図 1 に示した通りである.
図 1 本 研 究 の実 験 フレームワーク
の評 価 は,研 究 目 的 によって使 い分 ける必 要 が
2.実験 1 におけるデータ収集
実験 1 では Mturk を用いて 220 名の被験者が
ある.瞬 間 ベースの幸 福 感 評 価 は,実 際 の消 費
募集された.過去に NBA の試合観戦経験のない
場 面 における満 足 感 や幸 福 感 をより細 かく調 査
被 験 者 ,並 びに全 ての質 問 に回 答 しなかった被
することができ、幸福感の変動も把握することがで
験者を合わせた 37 名は,最終的なデータ分析か
きる.一 方 ,記 憶 ベース評 価 においては,特 定 の
ら除外し,合計 183 名の被験者(男性 = 57.4%;
イベントの最 も感情が高 ぶった場面 と最終 場面 の
平 均 年 齢 = 34.4)から得 られた回 答 が分 析 に用
二場面によって幸福感が判断される(Fredrickson,
いられた.それぞれの実 験 条 件 下 における最 終
2000).つまり実 際 の消 費 経 験 と想 起 された経 験
的 な被 験 者 数 は,(a)楽 しみを最 終 目 的 に設 定 し
は 必 ず し も 一 致 し な い (Kahnemann & Tversky,
楽しめた群に 52 名,(b)楽しみを最終目的に設定
2003).特 定 のスポーツ観 戦 において時 系 列 を追
し楽しめなかった群に 50 名,(c)勝利を最終目的
った満足感や幸福感の調査をする場合は瞬間ベ
に設定し勝利できた群に 36 名,(d)そして勝利を
ースの実 験 計 画 が有 用 であると考 えられる.しか
最終目的に設定し勝利できなかった群に 45 名で
し,本研究のように内発的・外発的動機,そしてス
あった.全体の実験時間はおおよそ 5 分程度のも
ポーツ消 費 における最 終 目 的 に着 目 した研 究 に
のであった.
おいては,記 憶 ベース評 価 を基 にした実 験 計 画
が求められる.
本 研 究 で使 用 した実 験 刺 激 は,先 行 研 究 に基
3.実験 1 に用いられた実験刺激
本 研 究 では,瞬 間 -記 憶 ベース評 価 に関 する
づ い て 英 語 で 作 成 さ れ た (e.g., Nicolao et al.,
先 行 研 究 を参 考 に(Fredrickson, 2000; Hajiran,
2009).被 験 者は,最近 スタジアムで観戦 した彼 ら
2006) , 被 験 者 に 特 定 の 経 験 を 想 起 さ せ る 実 験
のお気 に入 りのプロバスケットボールチームの試
計 画 を採 用 した.瞬 間 -記 憶 を基 にした幸 福 感
合 を想 起 さ せた.スポーツ消 費 経 験 に関 する 一
107
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
般性を向上させるため,おおよそ 70 米ドルかかっ
2002).一 項 目 の使 用 は,被 験 者 がオンライン上
たスポーツ観 戦 経 験 を想 起 するよう刺 激 を与 えた.
で質 問 に答 える場 合 (Jordan and Turner, 2008)
この消費金額は Team Marketing Report(2013)が
や,時 間 や調 査 項 目 数 に限 りがある研 究 におい
発表している The Fan Cost Index を基に,プロバ
て有効であるとされている(Robins et al., 2001).
スケットボール観 戦 に必 要 な一 人 あたりの平 均 金
過去のスポーツ観戦者の態度測定を一項目で行
額を算出して設定した.
った先 行 研 究 においても,複 数 項 目 による測 定 と
被 験 者 はスポーツ観 戦 経 験 を想 起 した際 ,観
同程度の有用性があることが報告されている
戦 時 の目 的 (楽 しみ vs. 勝 利 )に関 するシナリオ
(Doyle et al., 2013; Kunkel et al., 2014; Kwon
から一つ,最終目的達成(達成 vs. 失 敗)に関す
and Trail, 2005; Jordan and Turner, 2008).以上
るシナリオから一 つを無 作 為 に受 け取 り,実 験 刺
の理 由 より,オンライン調 査 を用 いた本 研 究 にお
激 が与 えられた.楽 しみを刺 激 するシナリオには
いては,一 項 目 による顧 客 満 足 と幸 福 感 の測 定
「その時 の私 の目 的 はただ純 粋 に楽 しむことであ
は有用であると考えられる.
った」であり,勝 利 を刺 激 するシナリオには「その
観 戦 目 的 と最 終 目 的 達 成 に関 する実 験 刺 激
時 の私 の目 的 は相 手 チームに勝 つことであった」
を確 認 するため,実 験 刺 激 チェック項 目 をそれぞ
であった.その後 ,被 験 者 に最 終 目 的 達 成 に関
れ一項目 ずつ本実験 の最後に測 定 した.観戦目
する刺 激 を与 えた.達 成 を刺 激 するシナリオは
的の実験刺激をチェックするために用いた項目は
「最 終 的 に私 は観 戦 時 の目 的 を達 成 した」であり,
二 択 形 式 であった.被 験 者 は「そのスポーツ観 戦
失 敗 条 件 下 のシナリオは「最 終 的 に私 は観 戦 時
の目 的 は純 粋 に楽 しむことであった」もしくは「そ
の目的を達成できなかった」であった.
のスポーツ観 戦 の目 的 は相 手 チームに勝 つこと
であった」のいずれか一つを選 ぶよう促 された.最
終目的達成に関する実験刺激チェックは,この観
4.実験 1 の尺度と分析手法
戦 経 験 は「1. ネガティブだった」から「7. ポジティ
顧 客 満 足 と幸 福 感 は,消 費 者 行 動 研 究 ,心 理
ブだった」までの七件法で測定した.
学 や政 治学 で頻 繁に用 いられる包 括 的 尺度
(global measure)を用 い,それぞれ英 語 による一
項 目 で測 定 した.この包 括 的 尺 度 は先 行 研 究 の
Ⅴ.実験 1 の結果
中でも多用され(Blanchflower and Oswald, 2011;
1. 実験刺激チェック
Inglehart, 1988;Kahneman et al., 2006),研究の
観 戦 目 的 に関 する実 験 刺 激 チェックの結 果 ,
蓄 積 を考 える上 で整 合 性 のとれる測 定 尺 度 であ
被 験 者 は与 えられたシナリオを注 意 深 く読 んでい
ると言 える。スポーツ顧 客 満 足 を測 定 するために
れば,楽 しみ,もしくは勝 利 に関 する観 戦 目 的 の
使われた実際の質問項目は「あなたはそのスポー
シナリオと合 致 するように,実 験 刺 激 チェック項 目
ツ観 戦 にどれだけ満 足 しましたか?」であり,「0.
に回 答 できる.その結 果 ,全 体 の 8.9%の被 験 者
まったく満 足 しなかった」から「10. 非 常 に満 足 し
が与 えられたシナリオとは異 なる回 答 をしたため,
た」までの 11 段 階 の尺度 で測 定 した.幸 福 感 を
シナリオを注 意 深 く読 んでいなかった被 験 者 とみ
測 定 するために用 いた項 目 は「全 ての事 柄 を考
なし,後 の分 析 から除 外 した.観 戦 目 的 に関 する
慮 した上 で,あなたはどれくらいあなたの生 活 に
実 験 刺 激 チェックは良 好 であった.最 終 目 的 達
満 足 していますか?」であり,こちらも「0. まったく
成のシナリオを読んだ群は( M = 5.52),最終目的
満 足 していない」から「10. 非 常 に満 足 している」
失敗 のシナリオを読 んだ群( M = 1.74)に比べて,
までの 11 段階の尺度で測定した.
有 意 に 高 い 値 を 示 し た ( F (1, 182) = 438.33, p
多 くの先 行 研 究 では,消 費 者 の態 度 は信 頼 性
< .01).仮 説 検 証 に使 われたそれぞれの実 験 条
の問 題 などから複 数 項 目 で測 定 する傾 向 がある
件下における最終的 な被験者 数,従属変 数の平
ものの,状 況 によっては一 項 目 による測 定 も有 効
均値と標準偏差は表 1 に示した通りである.
であるとしている(Kwon and Trail, 2005; Rossiter,
108
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
表 1 実 験 1 における実 験 条 件 毎 の平 均 値 、標 準 偏 差 、被 験 者 数
実験要因
実験水準
独 立 変 数 1: 観 戦 目 的 特 性
楽しみ
勝利
独 立 変 数 2: 最 終 目 的 達 成
達成
失敗
達成
失敗
被験者数
顧 客 満 足 度 ( M ( SD ))
52
7.88
50
4.24
36
7.15
45
5.88
( M ( SD ))
6.79
5.50
6.70
6.69
幸せ
ーツ消 費 の目 的 特 性 と最 終 目 的 達 成 の交 互 作
2. 観 戦 時 目 的 特 性 と 最 終 目 的 達 成 の 顧 客 満
用が確 認された(Wilks’s λ = .92; F(2, 178) =
足と幸福感への影響
スポーツ消 費 者 の観 戦 時 の目 的 (i.e., 楽 しみ
7.99; p < .01, η p 2 = .08).交互作用効果をより
と勝 利 )と最 終 目 的 達 成 (i.e., 達 成 と失 敗 )が,顧
詳 しく検 証 するため,単 変 量 解 析 を行 った結 果 ,
客 満 足 と幸 福 感 に与 える影 響 を検 証 するため,
スポーツ観 戦 最 終 目 的 が達 成 された時 の,純 粋
多 変 量 分 析 (MANOVA)を行 った.独 立 変 数 と従
な楽しみを目的としている消費者( M = 7.88)と,勝
属変数の関 係を,分散 分析(ANOVA)を用いて検
利を目的としている消費者( M = 7.15)の間に,顧
証する前に,複数ある従属変数を MANOVA によ
客 満 足 に関 する統 計 的 な有 意 差 は認 められなか
って一 度 に分 析 することで,第 一 種 の過 誤 (i.e.,
った( F (1, 179)= 2.82, p = .95, η p 2 = .02).した
帰 無 仮 説 が真 であるのに棄 却 されてしまう)が起
がって,仮説 1 は棄却された.しかしながら,スポ
きる可能性を抑えて分析することができる(Hair et
ーツ観 戦 最 終 目 的 が達 成 されなかった時 の,純
al., 2006).
粋な楽しみを目的としている消費者( M = 4.24)は,
勝利を目的としている消費者( M = 5.88)に比べて,
全 体 的 な MANOVA の結 果 ,スポーツ消 費 の
有 意 に 低 い 顧 客 満 足 を 報 告 し た ( F (1, 179)=
目的特性(Wilks’s λ = .98; F(2, 178) = 1.87; p
2
= .16, η p = .02)が有意でなかったのに対し,最
63.56, p < .01, η p 2 = .08).したがって,仮説 2
終目的達成(Wilks’s λ = .72; F(2, 178) = 34.67;
は支持された.図 2 にスポーツ顧客満足に関する
2
p < .01, η p = .28)は有意であった.さらに,スポ
図2
単純効果のまとめを示した.
実験 1 の結果: スポーツ消費行動の顧客満足度への単純効果
109
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
幸 福 感 に関 しては,スポーツ観 戦 最 終 目 的 が
最 終 目 的 が達 成 されなかった時 の,純 粋 な楽 し
達 成 された時 の,純 粋 な楽 しみを目 的 としている
みを目 的 としている消 費 者 ( M = 5.50)は,勝 利 を
消 費 者 ( M = 6.79)と,勝 利 を目 的 としている消 費
目的としている消費者( M = 6.69)に比べて,有意
者 ( M = 6.70)の間 に,統 計 的 な有 意 差 は認 めら
に低い幸福感を報告したことから( F (1, 179)= 6.89,
2
れなかった( F (1, 179)= .17, p = .85, η p < .01).
p < .01, η p 2 = .04),仮説 4 は支持された.図 3
したがって,仮説 3 は棄却された.スポーツ観 戦
に幸福感に関する単純効果のまとめを示した.
図 3 実 験 1 の結 果 : スポーツ消 費 行 動 の幸 福 感 への単 純 効 果
Ⅵ.実験 2 の研究方法
消 費 者 が持 っていたかもしれない異 なる観 戦 動
1.実験 2 の研究デザイン
機 を 統 制 せ ずに 実 験 を 行 った .こ れ らの 動 機 は
無 作 為 割 付 によって統 制 されるものと思 われるが,
実験 1 は,スポーツ観戦における消費者の内発
的・外発的動機に基づく観戦目的と,その目的が
実験 2 においてはいくつかの観戦動機を測定し,
達 成 されたか否 かによって,顧 客 満 足 ならびに幸
共 分 散 として統 制 して分 析 を行 った.最 後 に,実
福 感 にどのような影 響 があるのか考 察 する上 で有
験 1 ではプロバスケットボールの試合観戦のみに
用な情報を提供するものであった.実験 2 は以下
着目して研究を行った.実験 1 で得られた結果が,
の 3 つの点に着目して実験 1 の研究デザインを
異 なるスポーツ競 技 においても得 られるのか検 証
拡張 し,新たな知 見を提 供することを目的 とした.
するため,実験 2 では,メージャーリーグベースボ
まず最 初に,実験 1 においては,消費者 が内 発
ールの試 合 観 戦 を対 象 に実 験 を行 った.実 験 デ
的 もしくは外 発 的 のいずれか一 方 のみの動 機 に
ザインは実験 1 と同様に,スポーツ消費者の観戦
基づく観戦目的を持っていたと仮定して実験を行
優 先 目 的 特 性 (楽 しみ vs. 勝 利 )と最 終 目 的 達
った.しかしながら、消 費 者 は内 発 的 ・外 発 的 動
成(達成 vs. 失敗)を独立変数とした二元配置法
機の両方を持っている可能性があるため,実験 2
による実験研究を実施した.
では消 費 者 によって「優 先 されていた観 戦 目 的 」
2.実験 2 におけるデータ収集
として実験刺激を行った.2 つ目に,実験 1 では
110
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
実験 1 同様,実験 2 においても Mturk を用いて
が勝 つと自 分 が勝 ったような気 分 になるため),そ
被験者を募集した.180 名の被験者が募集され,
して逃 避 (i.e., 日 常 生 活 の気 晴 らしのため)の 4
過 去 にメジャーリーグの試 合 観 戦 経 験 のない被
項 目 であった.これらの質 問 項 目 は「1. まったく
験者,並びに全ての質問に回答しなかった 29 名
当 てはまらない」から「7. 非 常 当 てはまる」までの
の被験者を除く,合計 151 名の被験者からの回
7 段階尺度で測定した.
答が最終的な分析に用いられた(男性 = 51.7%;
実 験 刺 激チェックに関しては,観 戦優 先 目 的 特
平 均 年 齢 = 30.8).それぞれの実 験 条 件 下 に割
性に 2 項目,目的達成に 1 項目の合計 3 項目を
り付 けたれた被 験 者 数 は,(a)楽 しみを優 先 目 的
用 いた.実 際 に観 戦 優 先 目 的 に用 いられた項 目
に設定し楽しめた群に 38 名,(b)楽しみを優先目
は,「そのスポーツ観 戦 で優 先 された目 的 は純 粋
的に設定し楽しめなかった群に 37 名,(c)勝利を
に楽 しむことであった」と「そのスポーツ観 戦 で優
優先目的に設定し勝利できた群に 38 名,(d)そし
先 された目 的 は相 手 チームに勝 つことであった」
て勝 利 を最 終 目 的 に設 定 し勝 利 できなかった群
の 2 項目であった.これらの項目は「1. まったく当
に 38 名であった.
てはまらない」から「7. 非常に当てはまる」の 7 段
階 尺 度 で測 定 した.最 後 に,最 終 目 的 達 成 に関
する実験 刺 激チェックは,実験 1 と同様 ,この観
3.実験 2 に用いられた実験刺激
戦 経 験 は「1. ネガティブだった」から「7. ポジティ
実験 2 では,実験 1 で使用した実験刺激を修正
ブだった」までの七件法で測定した.
し,観 戦 時 に優 先 されていた目 的 (楽 しみ vs. 勝
利 )に関 するシナリオから一 つ,最 終 目 的 達 成 (達
成 vs. 失 敗 )に関 するシナリオから一つを無 作 為
Ⅶ.実験 2 の結果
に受 け取 り,スポーツ観 戦 経 験 を想 起 させた.楽
1. 実験刺激チェック
しみを刺 激 するシナリオは「その時 の私 は何 よりも
F 検定を用いた実験刺激チェックの結果,純粋
純 粋 に野 球 観 戦 を楽 しむということを優 先 してい
に楽 しむことをスポーツ観 戦 の目 的 として優 先 し
た」であり,勝 利 を刺 激 するシナリオには「その時
た消費者は( M = 6.21, SD = 1.23),勝利を優先
の私は何よりも相手チームに勝つということを優先
目 的 に設 定 していた消 費 者 に比 べて( M = 4.93,
していた」であった.観 戦 目 的 達 成 を刺 激 するシ
SD = 1.26),純粋に楽しむことに対してより強い動
ナリオは「最終的に私は観戦時の目的を達成した」
機を示した F(1, 149) = 39.79; p < .01).さらに,
であり,失 敗 条 件 下 のシナリオは「最 終 的 に私 は
チームの勝 利 を何 よりも優 先 して観 戦 したか否 か
観戦時の目 的を達成できなかった」であった.さら
という問 いに対 しては,純 粋 な楽 しみを優 先 した
に , 研 究 対 象 が メ ジ ャ ー リ ー グ で あ る た め , The
消費者に比べて( M = 4.40, SD = 1.69),勝利を
Fan Cost Index を基に,観戦にかかったコストの
優 先 目 的 に設 定 した消 費 者 の方 がより強 く同 意
目安をおおよそ 30 米ドルに変更した.
を示したため( M = 6.11, SD = .79; F(1, 149) =
63.11; p < .01)),観戦優先目的特性に関する実
4.実験 2 の尺度と分析手法
験刺激は良好であったと判断した.
従属変数 である顧客満足と幸福 感に関しては,
最終的に消費者の目的が達成されたか否かの
実験 1 で用いられた尺度をそのまま使用した.消
質問に対しては,最終目的達成のシナリオを読ん
費 者 がスポーツ観 戦 の際 に持 っていると考 えられ
だ群は( M = 5.53, SD = .64),最終目的失敗のシ
るその他 動 機 を共 分 散 として統 制 するために,先
ナリオを読んだ群( M = 2.16, SD = 1.61)に比べて,
行研究を参考にいくつかの動機をそれぞれ 1 項
経験したスポーツ観戦をよりポジティブに捉えてい
目で測定した(James & Ross, 2004; Funk et al.,
ると回答したため( F (1, 149) = 285.78, p < .01),
2009).実 際 に測 定 された動 機 は,社 交 (i.e., 他
最 終 目 的 達 成 の実 験 刺 激 も良 好 であったと判 断
者 と交 流 する機 会 を得 るため),審 美 性 (i.e., 試
した.
合 の優 雅 さを見 るため)達 成 (i.e., 自 分 のチーム
111
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
1.00; F(2, 142) = .14; p = .99, η p 2 < .01),以降
2. 観 戦 時 目 的 特 性 と 最 終 目 的 達 成 の 顧 客 満
足と幸福感への影響
の分析からは除外した.
まず最初に,実験 1 同様,全体的な MANOVA
次 に,交 互 作 用 効 果 をより詳 しく検 証 するため
を行い独立変数が従属変数に与える影響を検証
単 変 量 解 析 を行 った結 果 ,スポーツ観 戦 最 終 目
した. そ の 結 果 ,ス ポ ーツ 消 費 の 優 先 目 的 特 性
的 が達 成 された時 の,純 粋 な楽 しみを優 先 目 的
(Wilks’s λ = .88; F(2, 142) = 9.43; p < .01, η
としていた消 費者( M = 8.71)と,勝利 を優先 目的
p
2
としていた消費者( M = 9.02)の間に,顧客満足に
= .12)と,最終目的達成(Wilks’s λ = .35; F(2,
2
142) = 130.81; p < .01, η p = .65)の主効果が有
関 する統 計 的 な有 意 差 は認 められなかった( F (1,
意 であった.さらに,優 先 目 的 特 性 と最 終 目 的 達
147)= .46, p = .50, η p 2 < .01).この結果は,仮
成 の交 互 作 用 が確 認 された(Wilks’s λ = .92;
説 1 を棄 却するものであった.一 方 ,スポーツ観
2
F(2, 142) = 6.21; p < .01, η p = .08).共分散と
戦 最 終 目 的 が達 成 されなかった時 の,純 粋 な楽
してモデルに組 み込 まれた動 機 は ,全 て有 意 な
しみを優 先目 的 としていた消 費 者 ( M = 2.22)は,
結果を示さなかったため(達成; Wilks’s λ = .97;
勝利を優先目的としていた消費者( M = 4.81)に比
2
F(2, 142) = 2.27 p = .11, η p < .03; 社 交 ;
べ て , 有 意 に 低 い 顧 客 満 足 を 報 告 し た ( F (1,
2
147)= 32.98, p < .01, η p 2 = .18).したがって,仮
< .01; 審 美 性 ; Wilks’s λ = .99; F(2, 142)
説 2 は支持された.図 4 にスポーツ顧客満足に
Wilks’s λ = .99; F(2, 142) = .90; p = .41, η p
2
関する単純効果のまとめを示した.
= .45; p = .64, η p < .01; 逃避; Wilks’s λ =
図 4 実 験 2 の結 果 : スポーツ消 費 行 動 の顧 客 満 足 度 への単 純 効 果
幸 福 感 に 関 しては ,ス ポーツ観 戦 最 終 目 的 が
純 粋 な楽 しみを優 先 目 的 としていた消 費 者 ( M =
達 成 された時 の,純 粋 な楽 しみを優 先 目 的 として
5.85)は,勝利を目的としていた消費者( M = 6.96)
いた消 費 者 ( M = 7.74)と,勝 利 を目 的 としている
に比 べて,有 意 に低 い幸 福 感 を報 告 したことから
消費者 ( M = 7.35)の間 に,統 計的 な有意差は認
( F (1, 147)= 5.57, p < .05, η p 2 = .04),仮説 4 は
め ら れ な か っ た ( F (1, 147)= .72, p = .40, η p 2
支持された.図 5 に幸福感に関する単純効果の
< .01).したがって,仮説 3 は棄却された.一方,
まとめを示した.
スポーツ観 戦 最 終 目 的 が達 成 されなかった時 の,
112
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
図 5 実 験 2 の結 果 : スポーツ消 費 行 動 の幸 福 感 への単 純 効 果
芽 になると思 われる.第 一 に,先 行 研 究 において,
Ⅷ.考察
本 研 究 は,自 己 決 定 理 論 を援 用 して,スポーツ
内発的に動機づけられた人々の方が外発的に動
消費活動が消費者の顧客満足と幸福感に与える
機 づけられた人 々に比 べて,より幸 福 感 を得 られ
影 響 を,二 つの消 費 優 先 目 的 特 性 (i.e., 楽 しみ
るという報告があるものの(Kaser and Ryan, 1996),
vs. 勝 利 )と,二 つの最 終 目 的 達 成 結 果 (i.e., 達
この両 者 の関 係 性 は,スポーツ観 戦 者 という対 象
成 vs. 失敗)に着目して検証した.実験 1 ではプ
において十 分 議 論 されてこなかった.特 に,内 発
ロバスケットボールを,実験 2 ではメジャーリーグ
的 ・外 発 的 動 機 の観 点 から,正 だけでなく負 のス
ベースボールを研 究 対 象 として上 記 の仮 説 の検
ポーツ消費 経験の顧 客 満足と幸 福 感への影 響 を
証 を行 った.その結 果 ,二 つの実 験 において同
検 証 した研 究 は,筆 者 らが知 る限 り皆 無 である.
一 の結 果 が得 られた.スポーツ観 戦 と顧 客 満 足 ・
したがっ て 本 研 究 は , 自 己 決 定 理 論 に 基 づき ,
幸 福 感 に着 目 した本 研 究 の貢 献 は,大 きく分 け
観戦目的 特 性と最終 目 的達成の違 いによる顧 客
て以 下 の二 つのまとめることができる.まず(1) 消
満 足 ,幸 福 感 への影 響 を検 証 した数 少 ない研 究
費 者 が消 費 目 的 を達 成 できた場 合 ,楽 しみを消
の一 つである.第二 に,レジャー活 動がどのように
費 優 先 目 的 に設 定 している消 費 者 と勝 利 を優 先
幸福感に影響を及ぼすかについての研究は過去
目 的 に設 定 している消 費 者 との間 で,顧 客 満 足
にも多くなされてきたものの(e.g., Lloyd and Lit-
度 と幸 福 感 の知 覚 に差 は認 められなかった.しか
tle, 2010; Sato et al., 2014; Spiers and Walker,
しながら,(2)消 費 者 が消 費 目 的 を達 成 できなか
2008 ) ,ス ポーツ観 戦 者 行 動 と幸 福 感 の関 係 性
った場 合 には,楽 しみを消 費 優 先 目 的 に設 定 し
について研 究 された事 例 はない.本 研 究 では,ス
ている消 費 者 の方 が,勝 利 を優 先 目 的 に設 定 し
ポーツ観 戦 者 の観 戦 目 的 の違 いに着 目 し,その
ている消 費 者 に比 べて,有 意 に顧 客 満 足 と幸 福
幸 福 感 への影 響 について検 証 した点 において新
感の知覚が低いことが明らかになった.
たな知 見 を提 供 したものと考 えられる.以 下 ,上
記 二 つの学 術 的 貢 献 に従 い,本 研 究 で得 られた
これらの結 果 は,スポーツ消 費 者 研 究 における
結果について考察する.
幸 福 感 研 究 に,二 つの学 術 的 貢 献 を果 たす萌
113
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
まず最 初 に,目 的 が達 成 できた場 合 ,楽 しかっ
しみという最 終 目 的 を求 める内 発 的 なスポーツ消
たと感じた消費者と勝利した消費者は,同程度に
費 者 に比 べて,幸 福 感 への負 の影 響 は小 さいも
顧客満足と幸福感を感じることができるという結果
のと考えられる.つまりスポーツ観戦行動において
が 示 さ れ た . こ の 結 果 は , 自 己 決 定 理 論 (Ryan
外発 的な動 機を持 つことは,目 的を達成できなか
and Deci, 2000)を基に設定した,楽しみを感じる
った時 に,消 費 者 の顧 客 満 足 と幸 福 感 の減 少 を
ことができたスポーツ消 費 者 の方 が,より顧 客 満
防 いでくれる盾 のような役 割 をすると解 釈 できる.
足(仮説 1)と幸福感(仮説 3)を感じることができる
本 研 究 で明 らかになった,スポーツ観 戦 最 終 目
という仮 説 を棄 却 するものであった.言 い換 えれ
的 が達 成 されなかった際 の外 発 的 目 的 を持 つこ
ば,スポーツ消費においては,結果が良ければ消
とによる「盾の効果」は,スポーツ観戦者研究の知
費目的は内 発的であっても外発的 であっても,消
の蓄積に貢献したものと思われる.
費 者 は顧 客 満 足 や幸 福 感 というポジティブな心
本研 究は,一般 的なスポーツ消 費 者とプロスポ
理 的 便 益 を得 られるということを意 味 する.先 行
ーツチームなどのスポーツ団 体 に対 し,いくつか
研 究 においては,内 発 的 に動 機 づけられたスポ
の提 言 を与 えることができると思 われる.まず一 般
ーツ消 費 者 にとって,純 粋 な楽 しみ自 体 が消 費
的 なス ポ ーツ 消 費 者 は, 純 粋 な 楽 し み など の内
活 動 の最 終 目 的 になる一 方 で,外 発 的 に動 機 づ
発 的 動 機 に加 えて,自 分 自 身 が応 援 するチーム
けられた 消 費 者 に とっ ては,勝 利 は最 終 的 な 目
を持 ち,チームの勝 利 を目 的 にスポーツ観 戦 をし
的 (e.g., 自 己 肯 定 感 や優 越 感 )を達 成 するため
た方 が,顧 客 満 足 や幸 福 感 の醸 成 という観 点 で
の 通 過 点 に な る と 言 及 さ れ て い る (Funk et al.,
はより良いと思われる.純粋に楽しみを求めるスポ
2012;Ryan and Deci, 2000).しかしながら,本研
ーツ観 戦 は,楽 しければ良 いものの,退 屈 でつま
究 において内 発 的 に動 機 づけられたスポーツ消
らない試 合 になってしまった場 合 ,本 研 究 の結 果
費 者 と外 発 的 に動 機 づけられたスポーツ消 費 者
が示 唆 するように,顧 客 満 足 ,そして幸 福 感 への
が同 程 度 の顧 客 満 足 と幸 福 感 を感 じた理 由 は,
負 の影 響 は否 めない.スポーツを観 戦 する多 くの
競争を原理とするスポーツ(Kahle et al., 1996)に
消 費 者 が,自 分 のお気 に入 りのチームを持 ち,そ
おいては,消 費 者 が持 つ外 発 的 な動 機 (i.e., 勝
のチームの勝 利 を目 的 にスポーツ観 戦 をすること
利 )が最 終 的 な目 的 にもなり得 る重 要 なプロダクト
は,彼 らの満 足 感 や幸 福 感 を退 屈 な消 費 経 験 か
の特 性 の一 つと捉 えられるのかもしれない.その
ら守 る盾 になると考 えられる.消 費 者 の顧 客 満 足
結 果 ,勝 利 という外 発 的 な目 的 が,内 発 的 な目
は再 購 買 意 図 や口 コミなどの行 動 意 図 に影 響 を
的と同程度の顧客満足や幸福感をもたらしたもの
与 えることが先 行 研 究 において支 持 されている
ではないかと考えられる.
(Tsuji et al., 2007; Yoshida and James, 2010)こ
一 方 ,最 終 目 的 が達 成 できなかった際 ,純 粋
とからも,内 発 的 に動 機 づけられたスポーツ消 費
な楽 しみを得 ることができなかった消 費 者 は,自
者がつまらないと感じてしまったときの対処は極め
チームが負 けたという消 費 者 に比 べて,より低 い
て慎 重 に行 われるべきである.スポーツ観 戦 にお
顧客満足(仮説 2)と幸福感(仮説 4)を感じたことが
いては,純 粋な楽 しみという消 費者 の内 発的な動
示された.この結果は,先行研究(Ryan and Deci,
機 を満 たすことはもちろんだが,消 費 者 にお気 に
2000; Funk et al., 2012)にあるように,純粋な楽
入 りのチームの勝 利 を願う観 戦 行 動 を生 起 させる
しみという消費活動の最終目的が達成されなかっ
ようなマーケティングプロモーションを継 続 して行
た場 合 と,勝 利 という最 終 的 な目 的 を達 成 するた
っていくことも重要であると考えられる.
めの通 過 点 が達 成 されなかった場 合 の,負 の影
Ⅸ.研究の限界と今後の研究指針
響 の違 いが如 実 に表 れたことを示 している.外 発
的 に動 機 づけられたスポーツ消 費 者 は最 終 目 的
本 研 究 では,自 己 決 定 理 論 に基 づいて,スポ
を達 成 できない場 合 においても,最 終 的 な目 的
ーツ消 費 者 の観 戦 目 的 特 性 を,内 発 的 (i.e., 楽
が達 成 できなかったわけではないため,純 粋 な楽
しみ)と外 発 的 (i.e., 勝 利 )に分 類 してスポーツ顧
114
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
客 満 足 と幸 福 感 への影 響 を,単 純 な実 験 計 画 を
ツ観戦 者の消費行 動に着目して顧 客満足 と幸 福
用 いて検 証 した.このような実 験 計 画 を遂 行 する
感 の解 明 を行 った萌 芽 的 研 究 に位 置 づけられる
際 , 回 答 者 が 研 究 の 目 的 を 予 測 して し ま う可 能
だろう.スポーツ消 費者 行動といっても,その対象
性 がある.今 後 の研 究 においては,このバイアス
範 囲 は幅 広 い.今 後 はスポーツ参 加 者 の顧 客 満
を統 制 する工 夫 が必 要 になってくるだろう.例 え
足 や幸 福 感 の解 明 についても研 究 の蓄 積 を行 っ
ば,データ収 集 を何 度 かに分 けることで,回 答 者
ていく必要があるだろう.
に研 究 目 的 を予 測 させない方 法 や,従 属 変 数 の
最 後 に,今 後 のスポーツ消 費 者 の幸 福 感 研 究
測 定 を認 知 的 な質 問 項 目 にするのではなく,回
の指 針 は二 つに大 別 される.一 つ目 はスポーツ
答 者 の無 意 識 の反 応 を測 定 する方 法 (i.e., 反 応
消費者 が消 費経験を通 して感 じた満 足や幸 福感
速度)を用いることも必要になってくるかもしれない.
が,どれだけ長く持続するのかという問いに答えて
自 己 決 定 理 論 の観 点 から問 題 があるとは考 え
いかなければならない.本研 究では,被験 者 の最
がたいものの,本 研 究 では内 発 的 ・外 発 的 動 機
近 のスポーツ観 戦 を基 に,彼 /彼 女 らの顧 客 満
の操作的分類に関していくつかの課題が残った.
足と幸福感を検証したものの,それらのポジティブ
内 発 的 な動 機 を持 っているスポーツ消 費 者 が外
な心 理 的 影 響 がどれだけ持 続 するかはわかって
発 的 な動 機 を全 く持 っていないとは言 えない.実
いない.消 費 者 行 動 研 究 では,本 稿 の冒 頭 で紹
験 2 においては,両 方 の動 機 をもっていることを
介 し た よ う に , 消 費 者 の 順 応 速 度 (Adaptation
前 提 に,どちらか一 方 の動 機 が優 先 されているこ
rate)に着 目 した研 究 も報 告 されている(Galak et
とを確 認 した上 で分 析 をおこなったが,実 生 活 に
al., 2013; Hsee et al, 2009).多くの場合,物理
おいては内 発 的 動 機 が優 先 される場 合 もあれば,
的 消 費 と経 験 的 消 費 から得 られた幸 福 感 を,時
状 況 によっては外 発 的 動 機 が優 先 されることもあ
系 列 を追 って検 証 する研 究 デザインが採 用 され
る.実 際 過 去 の研 究 において,賞 罰 などの外 発
ているが,スポーツ消 費 者 研 究 においては,消 費
的 な刺 激 を与 えられることによって,内 発 的 な動
者 の経 験 的 消 費 をより細 かく分 類 したデザインも
機 が 弱 ま る と い う 報 告 も あ る (Deci et al., 1999;
今 後 必 要 に な っ て く る だ ろ う . 例 え ば , Tsuji et
Lepper et al., 1973).今後の研究では内発的か
al.(2007)や Yoshida and James(2010)のように,ス
外発的 かの分類を熟 考 し,より綿 密 な実験デザイ
ポーツ消 費 をスポーツの試 合 に関 連 する中 心 的
ンで再 検 証 することでスポーツ消 費 活 動 との関 係
サービス(Core service)と接 客 などの関 連 サービ
性の理解を深めることができるだろう.
ス(Peripheral service)に分 類 して,それぞれがど
さらに,本 研 究 では社 会 心 理 学 的 なアプロー
のように消 費 者 のスポーツ顧 客 満 足 に影 響 を与
チを用 いてスポーツ消 費 者 の顧 客 満 足 と幸 福 感
えるか検 証 したアプローチも存 在 する.この理 論
の解明を試 みた.しかしながら,これらの変数を説
的 背 景 に,スポーツ消 費 者 の内 発 的 ・外 発 的 動
明するには多くの媒 介 変数が存在 することが考 え
機 を組 み込 むことで,新 たな知 の蓄 積 ができるも
られる.例 えば,経 済 学 的 なアプローチでは,金
のと思 われる.二 つ目 の指 針 としては,幸 福 感 か
銭 的 収 入 や 教 育 レ ベ ル (Clark et al., 2008;
ら誘 発 される認 知 的 ・行 動 的 変 数 の解 明 が挙 げ
Diener et al., 1993),家族や友人とのコミュニケー
られるだろう.本研究では,すでにスポーツ観戦を
ションも幸 福 感 に影 響 を与 える要 因 であると思 わ
行ったスポーツ消費者に着目して,顧客満足と幸
れる(Lelkes, 2006).今 後 の研 究 において,包 括
福 感 を従 属 変 数 に設 定 して研 究 を行 った.今 後
的なモデルを検証する場合は,上 記のような的 確
は,幸 福 感 を感 じている消 費 者 と感 じていない消
な 説 明 変 数 と , ス ポ ー ツ 特 有 の 説 明 変 数 (e.g.,
費者の,その後の消費 行動を解明することも重要
チームアイデンティフィケーション)を理 論 的 に取
な貢献になるだろう.
捨 選 択 し,それらを統 制 しながらスポーツ消 費 者
の動 機 づけの違 いによる顧 客 満 足 ・幸 福 感 への
注 1) スポーツ消 費 者 行 動 とは,金 銭 的 および非 金 銭 的
影 響 を解 明 していく必 要 がある.本 研 究 はスポー
コストを費 やして,身 体 的 および心 理 的 ベネフィットの獲
115
スポーツ科学研究, 12, 101-120, 2015 年
得 を目 的 としてスポーツに参 加 ・観 戦 するスポーツ消 費 者
affecting soccer club season ticket holders’sat-
の行 動 を指 す(松 岡 , 2010).吉 田 (2011)はスポーツ消 費
isfaction: The influence of club image and
者 行 動 研 究 を「企 業 が消 費 者 に直 接 的 に提 供 する最 終
fans’motives.
財 としてのスポーツプロダクトに対 して,スポーツ消 費 者 が
Quarterly, 6: 1-22.
Eourpean
Sport
Management
何 を求 め,どのように評 価 し,その結 果 どのような行 動 を
 Blanchflower, D. G., and Oswald, A. J. (2011)
取 るのか」という疑 問 に答 えていく研 究 領 域 であるとして
International happiness: A new view on the
い る . 先 行 研 究 にお い ても , 企 業 活 動 の発 展 に直 接 貢
measure of performance. The Academy of Man-
献 すると考 えられる「消 費 者 態 度 」や「購 買 意 図 」などが
agement Perspectives, 25: 6–22.
従 属 変 数 として扱 われることが多 い.親 学 問 の一 つとされ
 Branscombe, N. R., and Wann, D. L. (1991) The
る消 費 者 行 動 研 究 領 域 では,消 費 者 行 動 をより幅 広 く理
positive social and self concept consequences of
解 することを目 的 として,多 種 多 様 な従 属 変 数 が扱 われ
sports team identification. Journal of Sport &
るようになってきている(e.g.,幸 福 感 ,消 費 者 選 択 ,消 費
Social Issues,15: 115-127.
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注 2) Mturk は,研 究 者 がオンライン上 で研 究 に協 力 し
ies, 10: 387–405.
てくれる被 験 者 を募 ることができる大 規 模 オンラインパネ
 Buhrmester, M., Kwang, T., & Gosling, S. D.
ルである.被 験 者 は,研 究 に参 加 することで研 究 者 か ら
(2011) Amazon's Mechanical Turk a new source
少 額 の金 銭 的 報 酬 を受 け取 取 ることができる.Mturk で
of inexpensive, yet high-quality, data?. Perspec-
は,被 験 者 の地 理 情 報 や過 去 に行 われた研 究 への参 加
tives on psychological science, 6: 3-5.
の有 無 ,どれだけ真 剣 に参 加 してきた被 験 者 かを示 す回
 Caro, L. M., and Garcia, J. A. M. G. (2007) Con-
答 受 理 率 などでスクリーニングを行 うことができる.アメリカ
sumer satisfaction with a periodic reoccurring
合 衆 国 に関 して言 えば,募 られた回 答 者 は母 集 団 に比
sport event and the moderating effect of motiva-
べ てや や 若 くて高 学 歴 ・ 自 由 主 義 ・ 低 所 得 である も のの
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学 生 サンプルやその他 のオンラインパネルと比 較 するとよ
 Clark, A. E., Frijters, P., and Shields, M. A.
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(Buhrmester, Kwang, & Gosling, 2011).
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本研 究 に関 して,三名 の査読 者 の先 生方 に丁寧
な査読をしていただき,論文の質を向上させること
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 Cowell, D. W. (1984) The marketing of services.
ができました.多 くの貴 重 なアドバイスをいただい
た査読者の先生方に感謝いたします.
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