論 −下層兼業農の動向と農地賃貸借1 四 下層兼業農家の農地所有 国 完 全 自 作 農 家 口 部 分 作 業 委 託 農 家 H 経営委託農家 ③ 下 層 農 の 稲 作 経 営 ω 館林市の概況と調査集落の特質 飯 二 下層兼業農の農地固着︵群馬県館林市K集落の分析︶ 一 課 題 目 次 下層兼業農の動向と農地賃貸借 文 島 充 男 1論 文− ⑥ 水田賃貸借限定の要因 H 水田賃貸借限定の基本的要因 口 下層の稲作継続の具体的要因 三 恒常的賃労働の激増と零細農地所有︵統計分析︶ ω 恒常的賃労働の激増 ω 恒常的賃労働農家の農家経済 H 多就業形態と低賃金問題 口 零細農地所有の意義 四 結論と展望 題 二 益が残る。上層の純収益には自家労賃部分︵農業臨時雇賃金率で評価︶が控除されているのだから、六.五千円の利 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ 三加以上層の純収益六九・五千円から下層の農業所得六三・○千円を地代として支払っても、なお六.五千円の利 た事態が、遂に都府県平均にもあてはまることになったのである。 ハ ロ 今村奈良臣氏が新潟県蒲原平野において示され、また梶井功氏が昭和四二年米生産費調査の九州の分析で指摘され 費−雇用労働費︶を上回る︵第1表︶。 土地純収益︵粗収益一物財費一労働費1資本利子︶が、下層農︵○・三勉未満層︶の一〇α当り所得︵粗収益−物財 昭和四九年米生産費調査結果によれば、都府県平均においても、上層農︵水稲作付規模三厩以上層︶の一〇α当り 課 秘 本 粗 ︷費働 用労 資本利子!1(4,958113,364 a 3 ,r,,・ 勉上 46 6﹁ つ 7 0 ∠ −6 5 6 βフ 費費賃 ﹃フ 3 0 ア 玩満潮 4 4 4 積 益 作 付 面 収 中 .物労費 財働自 労 家 一1ーー− 。未石 0 ︻フ Ω∪ ∩ソ 3 ζノ フ一 〇 8 3 2 工 3以2 う 単位:円,時間 所 得i63・・3・1(91,462)1 I I I 自家労働時間い1・・4156、6ヨ 旧当り自家労賃12・939i2・6351 注)農林省「米生産費調査」 益は﹁萌芽的利潤﹂とも考えられる。労賃部分を確保し、 地代を支払ったのちに、投下資本額一〇三・八千円の六・ 二%の﹁利潤﹂を得るのであるから、三位一体の戦後自作 パ ロ 農体制にかわりうる﹁借地制資本家的農業の成立﹂を意味 するかとも考えられよう。 実際にも、借地形態での規模拡大は近年増大している。 農林省﹃農業調査﹄によれば、北海道を除く都府県で昭和 四八年中に経営耕地を増加させたもののうち、借地形態に よるものが二一丁八千加と三三%を占め、購入による一一 ・六千加をおさえて主役にある。地域的には北陸・東山で 後述するようになお 端 緒 的 で はあ れ 、 水田を中心とする農地賃貸借の進展 純 収 益i(17,514)!69,4571 ド 梶井功・伊藤喜雄氏等の現状把握は、 ﹁生産力視点﹂からの農民層分解論と称される。近年の農民層分解を 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− 三 生産力とは、マルクスを引用するまでもなく、労働手段・労働対象・人間労働の三つの要素から構成される。現在の としている。 めぐる論 議 の昂 揚 は 、 両 氏 等 の ﹁生産力視点﹂からの豊富な実態調査報告、統計分析、鋭角的な問題提起を一つの軸 をみる、 農地賃貸 の 中 に 、 ﹁借地制資本家的農業﹂の成立を展望し、自作農的農業構造変革の﹁基本論理﹂の成熟 借 の 進 展 は、現在まぎれもない事実である。 借地形態による規模拡大は顕著であり、 第1表 100当り米生産費 (49年・都府県) 四 −諭 文− 日本の農業生産力を問題にする場合置、労働手段としての農業機、労働対象としての土地、そして農業蕩力の三 つが具体的には重視されねばなるまい。ところで梶井氏等の一連の業績が注目されるのは、氏等が農業生産力一般を 問題にされるからではない。梶井氏の﹃農業生産力の展開構造﹄ ︵弘文堂、一九六一年︶を先駆とする﹁農民間の経 済的矛盾の総体﹂への接近の方法が、それまでの﹁形態的・静態的分解論﹂と異って、﹁分解の彊﹂の検出簡題 にし、その場合農民諸階層の内部での生産力格差、すなわち﹁階層間格差﹂を、農機具投資の動向を基軸にしておさ ヤ ヤ ヤ ヤ や えて、新たな生産関係︵もちろん、資本主義的な、労賃・利潤・地代の三範疇の自立である︶を展望したからである。 梶井氏は・都鷹農藩﹁構造変動の条僅が成熟してきたとして、次の三宴あげえる.笙懸、上述の米 生産費調査結果にみられるような、上層農と下層農との間の生産力格差の﹁質的な形成﹂である。この生産力格差は、 上層農における機械装備の相対的充実と、 ﹁なお、周密細心な投入労働の質がものをいう稲作技術のもとにおいて、 生産諸力のうちでも、基礎的な重要性をもつ労働力構成における質的差異、一方が良質の家族基幹労働力を従前以上 に稲作に傾注しているのに対し、他方はそういう労働力は非農業就業に出てしまい、劣質労働力による粗放化の方向 に傾斜しているといった義﹂基づくものではある.しかし、下層のあげえる所得を上票地代化できうるのであ るから、 ﹁生産力の低いものの離農を促進する農業内的メカニズム﹂を形成する質的な差であるとされる。 ヤ ち ヤ ヤ ヤ コ ヤ ヤ ヤ パらロ ヤ ヤ ヤ や 第二点は、下層兼業農家における農業のもつ意義の蜀的変化だとされる。指標は農林省﹃農家経済調査﹄の︹農外 としての賃金所得で充分に家計費をまかなうことができ、家計維持というかぎりでは農業を必要とはしなくなった﹂ 所得一家計費︺であり、これがプラスになり、地域によってはこれが農業所得をも上回る点からみて、﹁他産業労働者 パ ロ 段階へと変化したのであり、農地固着メカニズムは消失したとされる。 ︵7︶ 第三点は、地価高騰である。農業的採算を超えた﹁土地価格化した農地価格﹂の下では、賃貸借による農地移動が 主流となるように方向づけられるとされる。 以上の三点の構造変動の条件成熟の下での農民層分解は、上層における﹁小企業農﹂あるいは﹁資本型上層農﹂ ︵伊藤氏︶への展開と、下層における﹁土地持ち労働者﹂への変質である。所得原理のエンゲルス段階的小農から、 パ ロ 利潤原理の﹁資本型上層農﹂、あるいは、 ﹁V範疇確立の基礎上での利潤追求の資本主義的経済法則﹂に律せられる パ ロ ﹁小企業農﹂と、 ﹁資産としての農地保持者﹂であり、零細レントナーたる﹁土地持ち労働者﹂への二階級構成が、 ︵10︶ この論理装置の下での最終的帰結である。 ︵n︶ こうした問題提起に対しては、様々な批判が出されている。 ﹁生産力視点﹂なる概念そのものについての批判はさ ておき、第一にとりあげたいのは、上層農の地代負担力の問題である。 ﹁米生産費調査﹂の場合、自家労賃の評価を 農業臨時雇賃金水準︵”︶で行なっている。第1表でみた3肋以上層の﹁純収益﹂も、一日︵八時間︶当り二、六三 五円という低水準で自己労働の評価の切り下げを行なった結果として、得られたものである。これをもって﹁労賃範 疇の形成﹂を言うのは困難であり、農民全般に作用する社会的生計費水準と対応する他産業均衡労賃︵V︶を評価の 基準とした時に、その﹁純収益﹂n﹁剰余﹂は急速にとり崩されてしまう。 ︵12︶ 実際に、自家労働の投下を律する賃金水準を恒常的賃労働労賃四、七六三円︵昭和四九年度﹃農家経済調査﹄、都 府県平均︶としても、 ﹁純収益﹂は五四・四千円に低下し、下層の農業所得の地代化はできない。職員勤務労賃七、 二一六円では、更に三七・○千円に低下するのである。借地中心の﹁借地型﹂経営の成立が困難なのはもちろんであ る。 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− 五 1論 文− 六 また、三〇α未満の農業所得を地代化して、一〇4を借地形態で耕作する場合、借地者の労働報酬は、一日当り三、 五四三円にしかならない。自家労賃評価を日雇労賃程度に切り下げても、総所得を拡大するという就業行動は、まさ に戦後自作農的土地所有のそれであろう。異質の論理の下での上層農の地代負担力の形成は、現在なお主張できない と考える。 パたロ パいロ 梶井氏も、こうした点は充分留意されているようにも考えられる。下層農の土地持ち労働者への変質論がそれであ る。 ﹁自ら耕作したときに期待される所得相当分をもとめるのは、⋮⋮︵それが︶家計維持の不可欠の要素になって パおロ いるときの地代要求水準であり、それは農業地代のアッ。ハーリミットを構成する﹂とし、下層兼業農民の農地所有の 性格が、資産保有へと変りつつある現在、 ﹁地代要求の水準をかならずしも農業地代のアッ。ハーリ、・、ットまであげる ことをしないこともあり得る﹂とされる。こうした下層農側の事情からくる低地代を前提として、地代上限まで支払 ︵16︶ わなくとも﹁公正地代﹂に近い形で賃貸借が展開しうるという想定があることが、氏をして﹁小企業叢論﹂を積極的 に主張させた理由でもあろう。 この下層農の土地持ち労働者化・農地固着メカニズムの消失論にたいして、喜多克己氏は﹁下層における農業膠着 の性格、その強さを見落してはならない﹂として、次の二点を示して批判されている。 パレロ 第一は、臨時的賃労働が収入の中心である農家世帯では、家計費水準は全国勤労者世帯を一八%も下回っており、 かつその家計費さえ農外所得のみでは充足できていないという点であり、第二に、梶井氏が零細兼業層における︹農 外所得V家計費︺の実態を示すさいに用いる﹃農家経済調査﹄の調査対象農家は、賃金水準の最も高い職員勤務世帯 に偏っており、したがって下層の農業依存度は統計に示されるものよりも高いという批判である。 本稿は、こうした最近の分解論争をふまえて、梶井・伊藤理論でいうところの、下層兼業農民における農地固着メ カニズムの消失、土地持ち労働者への変質・移行論の批判を主要課題としている。 先述したように、賃貸借による土地移動は、売買によるそれを凌駕しているとしても、その絶対量自体はなお端緒 ︵18︶ 的なものでしかない。石井啓雄氏は、請負耕作︵ヤミ小作︶による賃貸借面積を二〇万加前後と推定されている。二 〇万加全てが水田だとしても、全国水田面積三〇〇万肱の七%程度である。けっして小さな数値ではないが、一割に 満たない事実を農民層分解の﹁基本論理﹂の反映だとして、一般化する方法には疑念を禁じ得ない。 ︵m︶ こうした請負耕作の端緒的な進展状況に鑑みて、梶井氏等とは逆に、階層間格差の発現を阻止し、請負耕作の進展 をチェックし、限定的なものにする要因の検出に重点を置いた。 この問題を全面的に解明するには、上層農における生産力構成、農地市場等を含めた総括的考察が不可欠であるが、 本稿では下層農の土地持ち労働者への移行の困難性という側面から主として接近している。下層兼業農民が、自立し た労働者と零細貸付地主としての性格をあわせ持つものとして純化し得ない要因を、下層農民に開ける農外労働市場 の性格と、下層農の米作の﹁生産性﹂の二点から明らかにしょうとしたのが、以下の分析である。 以上の視点から、調査対象には、請負耕作がそれほど進んでいない複合経営地域たる群馬県館林市の一集落を選定 した。 ︵1︶ 今村奈良臣﹁稲作の階層間格差﹂ ︵﹃日本の農業第六二集﹄農政調査委員会、一九六八年︶ 梶井功﹁農業構造変革への展望﹂ ︵農政調査委員会国内調査部編﹃成長メカニズムと農業﹄御茶の水書房、一九七〇年︶ −下層兼業農の動向と農地賃貸借一 七 一論 文1 梶井功﹃小企業農の存立条件﹄五二頁。 後 に 同 氏 著 ﹃ 小 企 業 農 の 存 立 条 件 ﹄ ︵東京大学出版会、一九七三年︶収録。 パ ) ) ) ) ) ) ) ) ) 八 佐伯直美﹁農民層分解論争批判﹂、 ﹃経済学論集﹄第四〇巻第二号。玉城哲﹁高度成長と農民層分解論の軌跡﹂、高橋七五 たらしい上層農﹂ ﹃農業協同組合﹄一九七三年五月号、九三頁︶。 産条件をそなえた新しい上層農と、それに土地を提供している土地持ち労働者という二階級構成である﹂︵﹁中農の消滅とあ 伊藤喜雄氏は明言される。 ﹁分解の到達点はいまや明らかである。中型一貫機械化体系という本質的には資本としての生 同前四一頁。 同前九一頁。 同前第三章。 同前﹃小企業農﹄三〇頁。 同前﹁農業構造に:・﹂二頁。 前出・梶井﹃小企業農﹄六三頁。 梶井功﹁農業構造に関する若干の問題﹂、﹃農村と都市をむすぶ﹄一九七五年二月号、二頁。 1098765432 ︵15︶ 梶井﹁農業構造に⋮﹂三−四頁。 ︵14︶ 梶井﹃小企業農﹄八九一九一頁参照。 調査研究報告書一﹄農政調査委員会、一九七五年︶等参照。 ︵13︶ 磯辺俊彦﹁請負耕作の論理、︵﹃農業構造問題研究﹄Z9目︶、 同﹁農業生産組織分析の課題﹂ ︵﹃農業の基本問題に関する ︵12︶ 喜多克己﹁現局面における農民層分解の形態﹂、 ﹃経済志林﹄第四一巻第三.四号、九四頁参照。 三編﹃論争・日本農業論﹄亜紀書房、一九七五年。 ( 11 ) ︵16︶ 同前四頁。 ︵17︶ 喜多克己、前掲積日〇八頁。 ︵18︶ 石井啓雄﹁農地賃貸借の現状と問題点﹂、﹃不動産研究﹄第一七巻第三号、一九七五年七月、三二頁。 ︵19︶ ﹁︵梶井・伊藤理論は、︶格差の形成面にのみ注意を集中し、格差を形成し難い構造についての配慮が不充分だ﹂ ︵玉城 哲、前掲稿一六六頁︶。 二 下層兼業農の農地固着︵群馬県館林市K集落の分析︶ ① 館林市の概況と調査集落の特質 館林市は、群馬県の東南端にあって、渡良瀬川と利根川にはさまれた平担水田地帯︵水田率七五%︶である。かつ ては典型的な米麦二毛作地帯であったが、現在では畑地・水田での施設園芸によるきゅうりの一大産地を形成してお り、その他野菜作も盛んである。昭和四九年には総生産額中野菜五割強、畜産と米それぞれ二割を占めており、首都 圏の大市場をひかえた、近郊・複合農業地域である。 市内の工業化の動向を概略すれば、かつての食品工業︵日清製粉、正田醤油︶と繊維工業︵神戸製糸︶中心の構造 から、カルピス︵五〇〇人強︶を例外に昭和四〇年以降日産自動車関連の下請中企業、弱電関係中小企業等の工場団 地への立場が相次ぎ、内陸型機械・金属工業中心の構造へと変化してきている。 また近隣の太田市・大泉町には、富士重工、東京三洋、東芝などの大規模工場が立地し、若年労働力の吸収力は強 い。しかし、野菜・畜産経営の相当数の存在によって農外からの労働力吸引に一定対抗し、専業農家率は一八・二%と 1下層兼業農の動向と農地賃貸借一 九 1論 文− 一〇 全国平均︵一二・四%︶を大きく上回り、第二種兼業農家の比率も相対的には小さくなっている︵七五年センサス︶。 ハエロ 調査集落には、館林の中では最も農協あっせんの受委託事業“請負耕作の進展しているW地区︵農協あっせんによ る受委託量は、水稲作付面積の約六%︶のK集落︵七五年センサスでは農家数五〇戸︶を選定し、農地飾存者五九戸 パ ロ に対してほぼ悉皆調査を行なって、五三戸の結果を得た。 本集落は、館林市北部の渡良瀬川の沿堤にあり、水田率七三二%、農家率九〇%以上の農村的地域だが農地価格 は代替地需要にけん引されて、一〇α当り三〇〇万円は下らない。改造論ブームの終焉以降自作地売買は畜産農家の 事例を除いてほとんどみられない。 K集落の水稲作の特質は、まず、第一に、きゅうりを中心とする施設園芸︵一五戸︶、畜産︵四戸︶、なすのトンネ ル・露地栽培など、米以外の作目がとりいれられている地域のそれであるという点である︵第2表︶。とくに施設園 芸は盛んであり、そのため専業農家率は三〇%︵センサス︶と非常に高い。他作目に特化し、農家経済の基盤も水稲 作以外に置く農家が、水稲作に関してもそれなりの機械投資を行なって、水田・陸田の受託と若干の作業受託をして いる点が特徴的である。米作に特化して上向しようとする上層農家はまだあらわれていない。 第二の特質は、水回りが遅いために乾田直播栽培が圧倒的に普及している点である。乾田直播は、田植という水稲 栽培過程での作業ピークを消滅させることによって、上層米作大経営の面積処理技術として評価される側面もあろう が、テーラーないし人力による安価な播種機で一日四Cσ前後が可能であるため、下層兼業農家の水稲作継続の一つ の技術的要因となっている側面も考えられる。しかし、かわって除草に多くの労働を必要とするとともに、この地域 では耕耘回数を一∼二回増やすことが必要とされており、必ずしも省力技術で下層兼業農家にあった栽培技術である 産 す な 畜 ラ スりす 艶つ ハきな一 ウ︶ 〆■、. 加 5 3 ⑤ 麦・養蚕 その他 米 の み 12⊂不兼,安)… △③ 2.5 4 ⋮ 1下層兼業農の動向と農地賃貸借一 第2表K集落の作目別・経営耕地規模別農家概要 ⑨ 18(不兼) ⑥ 7(安) ⑩なし(自営) 1 2.0 ﹁ 1 ⑫ ⑪(安) ⑬麦・いちご ⑭ ⑮ 7 ⑯ 18(安) ヒ 1⑰(不兼) ⑲ 欧自営) ⑳(不兼・安) ⑳ 1、5 ⑳(安) ⑳(安) I I22(不兼)、 127 1⑳(不兼) I i @(不兼)31(不兼)⑳(不兼・安) .⑳いちご △⑳自営・不兼), 1.0 ⑳(不兼)△⑳ i⑯(安) ゆ(自営) ⑳t安) i⑳(不兼・安) …⑳ ⑳(不兼) 1△@(不兼) 0.5 △@(不兼) ⑬(安・不兼) △⑭(不兼・安)一 ⑮(安) ⑯(不兼・安) △⑳(不兼・自営) 0.2 実質0 ⑯(安)⑭(不兼)⑭(安)⑪(自営)⑫(安)⑲(自営) 注1)⑳と⑱一㊥を除いて,水稲作は全ての農家で行なっている。 2)太字は,水田(陸田)受託農家,△と⑱一⑭は委託農家である。 3) r安」はr安定」兼業, 「不兼」は「不安定」兼業・ r自営」は自営業 の略である。直系家族の農外就業だけを記載したものである。 1論 文一 一二 とは言い切れないかもしれない。ともかく本地域の乾田直播は、田植作業をゼロにするかわりに耕耘と除草の労働時 間を増大させることを銘記されたい。 また、肥料の流芒等が激しいため、収量は平均的には植付より一俵落ちる七俵程度であるという。 第三の特質は、基本法農政以降展開される大型機械・施設の導入や、大区画の基盤整備事業などの公的投資が、ほ とんどなされていない点である。戦前・戦後に一〇α単位の区画整理がなされているが、新潟県蒲原地域のように、 大区画で個別的水利用が可能であり、階層問格差もより顕著に発現する地域とは異っている。 ② 下層農の稲作経営 ハウス農家で近い将来息子も帰農する⑳番農家を除く経営耕地一如未満の兼業農家は、完全自作型日曜農業農家二 戸、部分作業委託農家一〇戸、所有耕地の一部を全面貸付し残部を完全自作する農家一戸に分けられる。部分作業を 委託する農家のうちには、所有地の一部を貸付けている農家もある。以下、経営委託農家、部分作業委託農家、完全 自作農家の順に考察する。 e 経営委託農家 水田︵陸田︶の経営委託農家は、個別相対も含めて、二二戸ある︵第3表︶。これを兼業種類別に、﹁安定﹂兼業型 パ レ ・不安定兼業型・自営業型・他作目特化型・欠如型の順で考察する。 ω ﹁安定﹂兼業型 表にあるように自作田は皆無であり、零細畑で自家用野菜を作る程度にすぎない。農外就業 パ レ 部面の賃金水準が相対的に高い﹁土地持ち労働者﹂層も含んでおり、農地貸付者として最も期待される階層である。 しかし、K集落ではなお少数であり、また一戸当りの平均所有面積も、不安定兼業型農家よりも若干小さい。 農家番号 醤営耕籍1薔瀦稲触 1 安定兼業型 ⑱ ⑳ ⑫ ⑭ 14412 −下層兼業農 の 動 向 と 農 地 賃 貸 借 一 第3表 経営委託農家 1 16. 24.51 @ 5. 4.o… @ 4. ⑭ 3. @ 2. ⑲ 1帰 H 不安定兼業型一 1 単位:10σ 考 備 0 庄人56 丁電力(東京),次女事務員 1女主人52学校給食調理員,長女看護 1婦・次女事務員 主人30 丁鉄道 1主人47市役所,妻縫製業自営,雇用 iあり 11.51 L人62K被服(日給),長男A製作 ll綾織)畜産農家手伝、、(年間) 12.α 1 2.51 2.oI i ! 4、OI 2.・搬)羅齪給)・長男K製糸 主人56 人夫日雇,長男接骨院開業 2・7(51年) 一 女主人49 U工業(日給) l 11−51 皿 自営業型 12. ⑳ 11− i主人47不動産業,妻畜産農家手伝い ⑪ 0. <⑭> o 11乏(年間) _ 住人44 鉄工所経営,妻その手伝い, 11人雇用 _ 1主人47 市役所,妻縫製業自営,雇用 iあり l W イ也作目特化型 i幸会ll 85 │3・21 ⑳ v欠如型t 1 ③ ! 25・9 A・ 計 肥育牛,妻・長女・次女その ! 1 2 0 主人39農業専業,弟夫婦死亡, 19’6その分も一時耕作 1 48.91 1 注)自営業型の〈㊥>は,重複して掲げてある。 1論 文− 一四 ⑬を除いて、最近まで自作化の努力を続けてきており、 ﹁安定﹂兼業といってもその賃金水準は余裕のある高さと はいえない。 ︹⑱︺ 東武線を使って東京まで片道約二時間の距離をこの三〇年間通っている。三年前長女の交通事故のため、 一年のつもりで委託した。しかし機械化の遅れや、農業所得の二〇万円からの課税、それに伴う主人の扶養家族手 ヤ ヤ 当の減少を考慮すれば、自作するよりも委託に出したほうが楽なだけよい。主人の定年後は自作する予定である。 ︹⑭︺ 食糧事務所に勤めていた主人が、一四年前に突然亡くなった。妻がかわりに勤めに出たが、その頃は給料 も安かったので一.五反くらい自作し、残りの三反を貸していた。だんだん給料も上ったので、五∼六年前から全 部委託に出すようになった。 ︹⑫︺ 昨年から親戚に全面委託。それまでの一〇年間には、追肥・水管理・除草等の管理的作業と田植の人の手 配のみ自ら行ない、残り全ての作業をその親戚に委託していた。委託料金を安いながらも払っていたが、収量八俵 とすると四俵は手元に残った。現在の地代は二俵で安いが、そう虫のいいことをいうわけにもゆかない。長男は丁 鉄道に勤務している。 Gの 不安定兼業型 ⑲を除いた全ての農家で、所有水田の一部を自家飯米用以上は確保し、手余り地を委託してい る。本来ならば全て自作化して、所得に繰り込みたいのだが、所有農地規模の零細性による農業の収益性の低下︵お そらく旦雇賃金水準以下︶と、多就業形態による農業労働力の欠如ないし不足のために、止むなく貸し付けている層 である。全て委託している⑲はその典型であり、母子家庭で長女はまだ高校生、撚糸工場へ日給形態だが恒常的に勤 務していて、アイドルなレーバーは全くないし、農繁期の一時休暇もとりにくい状況にある。母子家庭でアイドル・ レーバーがないのは、@も共通であり、二〇σを残して全面委託している。 ⑳番農家は、耕転機とバインダーを所有し、四八αを耕作しているが、六二才の主人と三二才の長男が日給二、○ ○○∼二、三〇〇円で就業しており、 ﹁水回りが悪く、自宅から遠い水田﹂四〇αを委託している。また⑰では、五 六才の主人が年間通して︵実質一二〇日弱︶市内の土方に出ているが、長男もまだ接骨院を始めたばかりで軌道にの らず、 ﹁自分の家で食べる分は、自分で確保したい﹂し、 ﹁町うちの親戚に送る﹂ためにも二七αは自作している。 二〇αを委託に出すのは、田植作業を除いた他の作業は、日曜・祭日の半日で済ますことを原則としているからであ るという。 多就業と所有農地規模の零細性のため、零細農地からの所得を重視しながらも、一部ないし全部の水田︵陸田︶を 委託せざるを得ないのが、この型の基本的特徴である。したがって、事あらば自作化しようという志向︵⑫︶も強く、 また安くないと考えられる地代に対しても不満をもらす農家︵⑳︶もある。 一方⑭は、H←1への過渡期にある。五四才の主人は日給制の不安定現業部門に就業しているが、長男・次男とも 大学を卒業してK製糸の営業部等に勤務しており、二〇αの自作地も今年度から全て委託に出している。今年長女も 幼稚園に就職して、経済的余裕が出てきたのが、具体的なまた本質的な全面委託への契機であろう。 第3表にもあるように、この型の農家の農地供給量が二四五σと過半をしめる点は、注目に値する。 ㈹ 自営業型 この型は、北陸の機業地帯で数多くみられ、所有面積も相対的に大きく、その全てを委託するのが 一般的である。この館林でも印刷業を自営する﹁農家﹂が一・六㎞を委託している例などがあるが、調査集落では層 として特徴づけできる程の材料はない。自営業といっても、⑳のように主人のみが行なう不動産業などと@のように 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− 一五 !論 文− 一六 主人も妻もともに働く自営業とでは委託のしかたがかなり異なっている。一般的には後者の型の場合に委託がされる が、なおこの村では層として形成されるに至っていない。 パらロ ㈹ 他作目特化型 これは、専業農家間の水田賃貸借であり、埼玉県鴻巣市の花卉農家の事例が倉本氏によって報 告されている。⑳の場合は、肥育牛八○頭と農協乳牛去勢雄育成センターの管理︵オペレーター︶の畜産専業農家 で、四七年当時バインダーを購入しようとしたが、二・五反の水田では明らかに採算が合わず、農協委託を決意した。 二・五反の水田を維持するよりは畜産に専門化するほうが、所得が高まると判断したわけである。 ところで本集落では施設園芸農家の場合、稲作を切り離して委託に出すどころではなく、逆に受託している例が多 い。これは施設園芸の連作障害を避けるための堆肥の原料として稲ワラの確保と、野菜作の歴史の浅さ・価格の不安 定性に対比される稲作の伝統・価格安定性等が関係している。米以外の農産物価格の不安定・相対的低水準がなお農 業の基調としてある限り、この専業農家間の水田賃貸借を一般的に期待することはできないであろう。 “δ 欠如型 これはまさに労働力そのものが欠如してしまった農家︵③︶で、分家の弟夫妻が四八年に死亡し、現 在高校生の甥だけになったため一町余を一時預っている例である。しかし、この農地を自己所有地と同じく扱えず、 ハウス園芸の関係もあって二反の陸田を委託している。 他の型に区分した中で、⑳、@、⑲の三戸が、小農家族の基幹労働力たる夫の死亡を具体的契機として貸付地を供 給しているのだが、こうした農家の農地供給量全体に占める比重は無視できない。 ⇔ 部分作業委託農家 , 水稲農作業を部分的に委託している農家は第4表のように一六戸ある。一・五肱以下の農家の実に六割︵一肱以下 で七七%︶が農協ないし個人に委託している。全国統計では、上層農家もかなりの外部依存割合を示すのだが、ここ では大分様相を異にする。 ハ ゆマロ ここで注目されるのが、第一に耕耘作業における農協委託であり、第二に親戚・友人の間にみられる金銭の授受を 伴わない﹁ゆい﹂的な作業受委託関係と機械貸借の存在である。 OD 農協トラクター事業 農協直営の親縁作業受託は三八年から始まっている。国の深耕対策事業によって三五馬 力のトラクターを三台導入し、当初は各事業所に配置していたが、四六年から本所で一元管理するようになった。稲 作転換補助事業等で導入台数を増やし、現在では八五馬力五台、四五馬力八倉、三五馬力一台の計一四台を五人の正 オペレーター︵農協職員︶が運転している。 減反以降の利用実績は、延べ面積で七〇〇∼一、○○○厩を前後するようである。耕耘料金は四七年度で、一〇σ 当り一、○○○円、四九年度まで一、五〇〇円で、現在は標準的な圃場で一番耕︵第一回目の耕転︶で二、四〇〇 円、二番耕で一、八○○∼二、○00円になっている。 パ ロ 経営耕地規模別にみた階層間の生産力格差は農業機械装備の優劣に大きく左右される。しかし、大型機械による農 パ ロ 協や生産組織あるいは上層農家の作業受託は、作業料金が︹機械償却費+燃料費等の雑費+労働費︺であれば、階層 間の﹁生産力格差﹂を減殺させる方向で働く。この階層間格差を抑制する方向に働く作業受託は、それだけでは年間 就業が不可能であり、従って労賃の確保や機械償却が困難であるといった問題があることが指摘されてきている。館 林市の農協直営型耕耘作業受託組織の場合も、そうした問題がないわけではない。 第5表にみるように、若干会計方式の変更があるが、四九年度、五〇年度ともに赤字となっている。費用科目のう −下層兼業農の動向と農地賃貸借− 一七 軸譜表ゆ寄舞聯講矯槻8津寄讐 首 封 霞 薄 靄 癌 蟄 躊 露 Ψ湘ひ黙薯贈槻 階>”羅爵号λて一黛一 ヘφ嘩一回”興業聯器 ︾母ヌd、再Cぐ’誉3 ㊥π購面通 灘単韓淋3律呂 一八 糠喜じO肉 肖ヨe覇ゆいhOO∼倉80ヨ 蝋×二4一図繭照。蹴作料>・卦珊π嚇器。 融 郭 艱難 鍵・薔薯・… ⑱・ 薗 ○ 〕 叢一瞭奪塑撃 ︵口回︶ ︵国国︶ 函聾 ○ ○︹⑱︺ ○ ○ 、○ ○ ㊥ ○ ○ ︹闘詩︺○ ︹飛脚︺ ︹㊨︺ 。。 贈爵 ︵一回︶ 贈爵 ○ 羅函 ︵孟眞旨︶○ ︵団回︶ 贈爵 ︵一回︶ 眼爵 ︵一回︶ 漆函 贈爵 ︵図画︶ ○ ︹戦鼎︺ ○ ︹㊥︺ ⑥○○○○○○○○○○ [ 雌回︶︹腕鼎︺ ○○○○OOOO あ 悼ひ)ひNFご9ド曾P る66』i⊃o凱。卑9Ψ ︵悼回︶ ○○OO◎OOOO 雑文 一 一 ←一 一 ト」 贈爵 ︹◎︺ 〕 ︹◎︺ 〔 O⑨ 〕 1 輪 ◎⑧⑧⑧⑳㊥⑧⑧⑧⑤◎ ︵ω回︶ 津臨 ○ ︹書>︺ ○ ○ N︶醗郵算曄 パ 簸 宙 e 謹 独 醗 郵 づ 轡 ぴ 。 ︹‡>︺ ︹套>︺ ︹喜>︺ ○ ︹⑤︺ ○ ○ ︹⑤︺ ○ ○ ︹㊦︺ ○ ⑧ ︹専>︺ ○ ︹◎︺ ○ UH甜サ①曄書割謙 ︹藤薄奔讃颪藤3勢4一 膨障算曄^謡箆 サ①奪Oが︺ 壽繭︹⑤︺ 壽顧︹⑧︺、︹毒煙藤確説︺ ︹⑧︺再診襲爵需ぴ蝶︸ 1下層兼業農の動向と農地賃貸借1 ● 一九 くとして、ここで指摘したいのは、運送事業︵米麦・肥料・農薬等の運搬︶とトラクター事業との間のオペレーター ○○○万円の事業規模に対して八00万円の赤字を出しても、農協全体のバック・アップでやっていける点はともか 民相互の機械共同利用組織に比して農協直営型受託組織にそれなりの優位性・経営的強靱性があるからである。二、 しかし、この耕耘作業受託が現在まで一〇数年間継続され、今後も維持されていく︵農協参事氏の発言︶のは、農 補助がなければ機械更新できないという他地域の機械共同利用組織と同様の問題がある。 ちの車輛償却費二六〇万円は、補助部分を差し引いた圧縮原価に対する三六%の定率償却法でやられており、新たな 轟魯浸密鍔民苺%が﹁◎σ﹂雷雨斎懸幽螂灘南蜘叫。 蒔︶○再応8需鞘酵m舜ψ臼伴郎勃∼⑧興⑱離離脚置遼重餅譲ψ宍醤酬翻酵C持臼伴歯軸叫。 ω︶臨画9誉球蝉鄭嶺姻e嘘醒宍懸興曄^応需Cパつ変 ○ ∪■淑 ドO鴻爵 ︵u回︶ 贈爵 ドO ︵一回︶ 藩褻 ︵N回︶ 矯爵 一6 ド∼ ○ ⑧ ㊤ ⑧ ⑧ ○ 饒一︶田面南δ伊捷戦併母び豆”耐麟・田颪南琳舘Cパつぴ泌醤舜舜づ。 ㊧ 目 3,530 2」662 176 167 4.981 8.160 作 業 費 3!447 用 共通管理費 3,1091 計 ⑧ 7,7721 ハソ 0 2,596 2,647 2.829 2G 28 費費③ 却 務償 輌 業車計 233 管理費 1,216, 諸引当金繰入 内部資金利息 文1 294 2 7 ”73397595 盟 3,920 費寮費費険⑧ 品 保 務料備繕 耗 輔 労燃消修車計 1,117 750 費 △1,643!△7,94・ 差引(A−F) 1,530 163 28.789 エ7・648128・789 (F) B十C十D十E 8,995 140 2,647 雑 費 ⑨ 20,849 130 16,005 入㈹ 収 前年比 (%) 51年度 50年度 項 一論 単位:千円 昭和51年2月28日現在 注)館林市農協資料 ● 二〇 の相互交換である。 トラクター耕耘作業は、減反時の 除草のための夏期耕耘などの一時的 ・経過的な要素を除いて考えれば、 季節的な繁閑を避けられない。春耕 時の忙しさ︵五〇年度四月耕耘料三 七九・三万円牝一五八肋、五月三八 七・三万円牝一六一加︶に対して、 夏期は全く休眠状態になってしまう ︵七月一〇・二万円“四・三加、八 月一七・八万円札七・四肱︶。これ が運送事業を手伝う割合が多く、労務費がトラクター事業に過大に算定されているきらいがあるという。 手当︵時間当り二五〇円、時間外五五〇円︶を含むが、むしろどちらかといえばトラクター事業所属のオペレーター 5表の労務費一・三九二万円とぢオペ養が確保されている.これ篤農員としての基本的な俸給ととも箋車 といった形で、季節的繁閑が調整され、年間就業でもアイドルなレーバーが出ないようになっている。こうして、第 一応所属する一四名は、春耕で忙しい時期はトラクター耕耘を手伝い、逆に秋期にはトラクタ;事業の五名が手伝う に対して運送事業は比較的平均化されており、一〇月以降の米の出荷時期が相対的に忙しくなっている。運送事業に 第5表 トラクター事業実績 以上述べてきたように、総合農協の﹁総合﹂性を生かして直営型受託組織が継続・維持されてきている。 ﹁小回り がきかない﹂ ﹁赤字だ﹂等の非難がありながらも、補助金の支えで消えては浮ぶ大型機械利用組織に比して生産組織 としては強靱であるといえよう。 ハれロ 農協直営の作業受託としては、このほかに請負防除がある。オペレーターは農協職員だけではまかなえず、農家から の出投もあるが、市全体で実面積約一、一〇〇肱︵ほぼ五割︶に及び、トラクター散布とヘリコプター散布を組み合 わせた大懸りなものである。年六∼七回やるというきめの細かさであるが、全体収量の維持・向上を狙ったこれも、 ︵12︶ 階層間格差の縮小、下層兼業農家の米作継続に寄与していることは疑いを入れない。 K集落の下層兼業農家︵一厩未満︶の六四%が依拠している農協直営耕耘作業請負は現在だけでなく、今後とも館 林市域の兼業下層農の米作継続の具体的手法として位置づけられ得るであろう︵請負防除も同様である︶。 ㈹ ﹁ゆい﹂的関係による作業受委託と機械貸借 耕耘作業における農協請負は一六戸中一五戸に及んでいるが、 これに次いで重要とみられるのが、農家への相対による作業委託である。 とくに⑫、⑬、⑯番農家は、追肥、水管理、除草の管理作業のみを行なうだけで、耕耘も農協に委託し、播種、刈取, 脱穀、乾燥、調整の全てを他の農家に委託している︵⑯は、田植えの人の手配は自分で行なう︶。委託先は、それぞ れうずら採卵農家、仲人、親戚であり、いずれも金銭での精算は伴わず、受託者が自らの機械で作業をするかわりに、 @の場合はうずら採卵の手伝い︵月六万円程度の手間賃が入るが︶、⑬は田植・刈取の際の稲架掛け等、⑯は蚕あげ ・なすの定植等の手伝いを行なっている。 こうした﹁ゆい﹂の如き労働交換による作業受委託関係は上述の三戸の他に、五戸みられる。この﹁ゆい﹂的受委 一下層兼業農の動向と農地賃貸借− 二一 −論 文一 二二 託関係の特徴は、第一に分家・本家などの親戚・友人など個人的にも親しい人間関係の間にとり結ばれることであ り、第二に裸の労働を提供するだけの労働力が委託する側になければならないことからして、老人なり婦人なりの ﹁社会化されていない﹂余剰労働力や、。ハートや日雇︵木こりの例あり︶などの不安定就業についている程度の流動 的な労働力が委託側にあることである。第三に、田植・刈取の際の稲架掛け、米俵の運搬など米作に関連した作業を 手伝う場合もあるが︵四例︶、この地域の複合的農業の展開を反映して、蚕の上ぞく︵一例︶、なす、きゅうりの定植 ︵三例︶などの稲作以外の作目での作業ピークが媒介環をなしていることである。なす・きゅうりの接木や移植.定 植、施設園芸のビニールの張り替えは一挙になされねばならず、なす作り農家、きゅうり作り農家は、それぞれ四∼ 五軒のグループを作って共同作業nゆいでこれを処理している。接木などはかなりの技術を要するため野菜作を行な っていない下層兼業農家の﹁不熟練﹂労働力を必須のものとして上層農家が受けとめているわけではないが、午前中 に二〇人程度の手間をかけてなすやきゅうりの移植・定植をやらねばならず、下層農家の手伝いもそれなりの意味を もっている。 う ヤ 以上のような特徴をもつ﹁ゆい﹂的作業受委託関係は、上層の︹機械+労働︺の提供に対して、下層の労働提供を 基本とするが、上層の機械のみの提供・下層の物︵ハウスの古材、贈答品︶・通常の半額以下の金銭提供︵コンバイ ン作業で一〇σ当り三、五〇〇∼四、○○○円の例あり︶などの様々の亜種がある。いずれも、 ﹁農民﹂的な﹁人縁 ・地縁共同体﹂的な関係に基づく作業受委託・機械の貸借であり、老人・婦人等の余剰労働力や不安定就業で比較的 流動的な労働力のある下層兼業農家の米作の継続に大きな役割を果しているのである。そして、これが野菜作の発展 と関連していることからみても、単純に消え去るべきものとしてのみあるのではないという点が、重要であろう。 ㈹ 作業委託農家と農外就業 経営耕地一如以下︵第4表では⑭番以下の農家︶で部分作業を委託して米作を継続 している農家を農外就業状態で類型分けすると、大きくいって二つある。 ひとつは、兼業は相対的に安定しており、所得水準も高いが、老人・婦人などの余剰労働力のある農家の場合で、 ⑭番農家︵主人獣医、農業労働力は妻だけ︶がその一例であろう。 もうひとつは、不安定兼業ないし、安定兼業だが給与水準の低い仕事に従事しており、農業所得も一定の意味を持 たざるを得ない⑯、⑯︵主人五五才で木こり、妻縫製工場にほぼ年間勤務、息子三人とも市内の中小企業に恒常的勤 務︶、⑰︵前出︶等である。⑯︵主人六七才が農業中心。妻は病気で農業できず、長男二一二才でM産業に恒常的勤務︶ はこう語っている。 ﹁父ちゃんは三反でも作るのが楽しみなんだろう。息子も刈取機の運転等をやってくれる。三反 くらいなら日曜にやればできるはずだが、日曜日になると雨がふる。だから休んでやることになる。いい会社なら農 協に委託するが、小さな会社だから自分で作る﹂ ︵妻の発言︶。 一応第一類型に含めた⑭も主人の年収は三〇〇万にはとてもゆかず二〇〇万円程度だと答えており、大学在学中の 息子二人もあって、七〇〇の水稲作からの収入も無視できない面はあろう。その意味で﹁典型﹂とすることは誤りか もしれない。しかし、⑳番農家で主人の給料だけでほぽ家計費をまかなえるにもかかわらず、主婦労働力中心で二四 馬力のトラクターと二条刈りのコンバインを導入して一二〇〇の水稲作を行ない、更に三〇〇坪の施設園芸を行なっ ている農家があるのをみれば、安定兼業でありながら、労力的に余裕のある場合、部分的に委託に出しながらも米作 を継続する農家を一つのタイプとして定立するのは誤りではないだろう。 しかしながら、こうした第一類型はこの集落で一般的とは言えず、不安定兼業農家が部分的に作業を委託しながら −下層兼業農の動向と農地賃貸借− 二三 1論 文一 二四 も自作して所得に繰り込む場合が優勢であることは確認されねばならない。 白 完全自作農家 水稲作業を他に頼らず、自己完結的に行なっているのは三戸である。この型の特徴は、第一に四八α∼六三αとあ る程度のまとまった水田を所有していることであり、第二に耕耘機・バインダーなど一応の農業機械を装備︵パイン ︵13︶ 、、 ダーを⑳は⑳と、⑭は妻の実家と共有︶していることである。第三に不安定兼業もある︵@︶が ﹁安定﹂兼業の場 合﹁日曜農業﹂で農作業がやられている。 ⑰の場合、五〇σの水稲面積だが、まず耕耘は農協に勤める主人が日曜毎にやり、播種には︹日曜+有給休暇︺の 二日で、追肥も日曜日、刈取も日曜日で済ませるという。また⑯の場合も、N鋼機︵鉄工所︶に勤める主人が、⑳と ほぼ同様な形で耕耘から刈取、脱穀、調整まで行なっている。 ﹁安定﹂兼業であるからこそ、 ﹁日曜﹂農業が可能だ ともいえよう。 だが、 ﹁安定﹂兼業に従事する主人だけではやはり農作業全般は担えず、⑳の場合は妻が補助し、⑳の場合は追肥 を母が時折、また水管理を中風の父がやるというように、家族内に若干の余剰労力を抱え込んでいることが必要と考 えられる。不安定就業で完全自作している⑪の例とあわせ考えるなら、部分作業委託農家と同様に家族内に余剰労働 力を抱えているか、休暇を簡単にとれる臨時的賃労働に従事しているかが、家族内の就業構成からみた完全自作型農 家の特徴である。 ㊨ 下層兼業農家の農地所有 経営委託農家・作業委託農家・完全自作農家の検討結果から導き出されるべき点は、第一に、貸付地供給者層形成 の経路の問題である。具体的には三つあり、ひとつは、梶井氏らが期待されるような﹁安定﹂兼業所得の増大−←農 外所得による家計費の充足←農地貸付であり、もうひとつは、農外所得水準が低いにもかかわらず、多就業−←農 地貸付であり、最後に農地所有の零細惟一←農業収益性の臨時的賃労働水準以下への低下←農地貸付である。 そして館林市K集落の実態は、 ﹁安定﹂兼業従事者が総耕地供給四八九、の中に占める割合は二四%でしかなく、 第一のルートが主流ではないことを示している。不安定兼業従事者のとる第二・第三のルートがむしろこの地域の耕 地供給の主体であり︵全体の五〇%︶、世帯主の死亡による主婦の農外就業が、以上の三ルートの前段にあって、かな りの比重を占めている︵四一%︶ことからも、農外所得が家計費を上回ってくることによるスムーズな農地貸付を、 耕地供給の主体とみることはできないのである。 第二に、 ﹁安定﹂兼業農家といわれる部分においても、農地耕作への強い執着を示している点である。日曜農業の 形︵二事例︶であれ、部分作業委託の形︵一事例︶であれ、老人・主婦という管理作業担当者が家族内にあれば、耕 作を継続する場合が多い。 これは、 ﹁安定﹂兼業農家といいながらもなお兼業所得水準が低いことを示すとともに、 ﹁安定﹂兼業が水稲農作 業に従事しやすい面もあることを示す。 第三に磐重要蕉だが・多数の不安定兼業従事券作業委託し禁らの耕作継続である.盤や親戚.友人など に委託しながらの耕作継続は、この層の強い農地固着、農業膠着の様相を示すものであり、下層農の零細レントナー としての土地持ち労働者への変質が、K集落においてはなお困難であることを意味するのである。 本集落の下層兼業農家にとって、農地は資産としてだけでなく、農業生産の対象そのものとして、なお意味をもつ 二五 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− −論 文− 二六 ているといわざるを得ないのである。 筒 水田賃貸借限定の要因 e 水田賃貸借限定の基本的要因 今村奈良臣氏は、貸付地供給者に関して、 ﹁これまでの実態調査﹂によればと断りながらも﹁多就業形態をとる農 外所得収入の低い不安定兼業農家の方がかえって耕地供給者として量的には多く現われてきており、職員勤務的兼業 農家の方がかえって劣弱であれ農業労働力︵老人・婦人︶を保有しているか、土、日曜百姓として対応する事例が多 いのである﹂と述べておられる。そして数少ない事例ではあれ、館林市K集落の実態も、この事実認識と一致する。 パはロ しかし、多就業による下層農の経営委託農家への移行を、安定した土地持ち労働者、零細レントナーへの純化とと らえることには無理があろう。後藤光蔵氏は兼業深化地帯である愛知県安城市の場合、やはりコ家総兼業化によっ て管理労働主体の消滅した農家﹂が貸付者の主体であることを示されながら、そうした農家が﹁老齢化して兼業をや パおロ めたときには⋮⋮自作しうる部分は引き上げて自作する﹂可能性もあることを指摘されている。つまり、安定した耕 ヤ ヤ ヤ や 地供給者層として期待することが出来ないのである。 本集落の場合には、調査時点の違い、農外労働市場の展開の度合、また圃場整備その他の構造政策実施の違いなど から、零細不安定兼業農家の強い農業膠着性をみた。耕地の一部は委託しながらも、自家飯米程度は自分で確保する 農家や、 ﹁いい会社なら農協に委託するが、小さな会社だから自分で作る﹂という農家の発言などをみれば、水田賃 貸借の展開に占める農外兼業労賃・所得水準の決定的な重要性をみてとれよう。 そして、館林市でもっとも賃貸借が進行していると考えられるK集落でさえ、水稲作付面積の八・九%、四八九αし か下層兼業農家から供給されていない事実は、農民に用意される農外労働市場の賃金水準が決して高くはないこと、 農外所得のみで家計費をまかなうことがかなり困難であることを示しているといわざるを得ない。これこそが、水田 賃貸借の展開を限定的にしか行なわせない基本的要因であるといってよいだろう。 ⇔ 下層の稲作継続の具体的要因 −下層米作﹁低生産性﹂批判一 ところで、部分的に作業を委託して米作を継続する方が選択されるのは、全面的に経営委託するより経済的エ有利 だからであろう。第6表はそれをみたものである。 ω まず、K集落⑭番農家︵水田面積七〇α、四九才の主婦労働力のみ。耕耘を農協に、脱穀も親戚に委託.調整も 手伝ってもらう︶は、邑楽郡の米生産費調査農家二︵︶戸の平均と純所得においてほぼ均衡するという結果を示す。 ヒアリングから作成した数値であるが、完全自作に近い農家︵邑楽郡の調査農家︶とほぼ匹敵しうるだけの純所得 を⑭があげているのは次の点によっていると考える。第一は、収量の高さ︵一〇〇当り八俵︶である。これは堆肥の 継続的投入、比較的綿密な肥培管理が大きいようである。第二は、﹁農業薬剤費﹂、﹁光熱動力費﹂、 ﹁農具費﹂、 ﹁雇 用労働費﹂、﹁賃借料及び料金﹂の合計額が⑭の場合二八、二四五円、邑楽郡二七、八六二円とほぼ一致しているから である︵表にも示されるように、⑭のような作業委託農家の場合、一般に﹁農具費﹂と﹁光熱費﹂が減少して、 ﹁賃 借料及び料金﹂が増大する。この地区の場合、本来農業薬剤費に算入されるべき防除が農協請負でやられているた め、上記の五費目をみたものである︶。さてこの五費目の合計額が、作業委託農家と完全自作に近い農家とでほぼ一 致しているということは、基本的には、水稲自作農の高い一〇σ当り農具費負担︵﹁過剰投資﹂ないし﹁価値収奪﹂︶ −下層兼業農の動向と農地賃貸借一 二七 1論 第6表 作業委託農家(⑭,⑰)の10σ当り生産費(50年産) 単位:円,時間 ‘ 区 種 苗 費: 1,500 肥 料 費; 10,00q 農 業 薬 剤 費1 光 熱 動 力 費1 ! 3241 1 2601 2,206 ! 1,382 1,235 1,569− i 1・300 奄P・852! 2,224 用 その他諸材料費! 土地改良及び水利費: 1,3001 建物及び土地改良設備費… 1・754 農 具 費1 雇 用 労 働 費: 賃借.料及び料金… 所 1,873i 1,703’ P1・754i 2,254− 9・4491 14,609: 15,8う2: 15,5841 1・143… 1 9,2591 800 2,8291 15,829」 14・3811 5・1991 2,892 1・754 42,458 37,623 1 12・,…i127,75g1 収 入 合 計 5,628 1,11r 3,805− 44,181154,056 費 用 合 計 1,067 1 10,000 8,237− 1,500; 1β82 純 一 1,518 119,43引 95,935 75,81g173,7・3176・9771 得 労 働 時 間 58,312: ド 73・01 5L41 53.6 文1 費 1霧藷 露幣鵬翻「琶鵬 分 97.5i I 1 注1)作業委託農家の費用中, 「その他諸材料費」は,館林市農協「座談会資料」 の51年度稲作所得試算による。 2)作業委託農家の「建物及び土地改良設備費」は,便宜上邑楽郡平均のそれに よった。 3)邑楽郡平均は,群馬統計情報事務所館林出張所の提供資料による。 4)群馬県の数値と@の労働時間は, 「49年米生産費調査」による。 二八 か、あるいは相対的に安い作業 委託料金のどちらか、ないし両 者を意味していると考えられ る。 K集落においても四五年以 降、上層農家にトラクター、コ ンバイン、乾燥機が導入されて きているが、トラクターは一一〇 ∼二四馬力で一〇〇万円を越 え、コンバインと乾燥機で一五 〇万円前後となっている。完全 自作農家であり続けるために は、最低三〇〇万円の機械投資 が必要なのであり、償却期間を 六年と計算しても年間五〇万円 となる。この場合、二五〇αの 水稲作付を行なっていたとして も一〇〇当り二万円の償却費となる。邑楽郡の農具費一五、八五二円は、ごうした水稲作業の機械化の進行を反映し たものであり、その意味で⑭番農家が重作業の作業委託で﹁過剰投資﹂をさけたことの有利性が前記五費目合計額の 一致を招いたものであろう。 一方、作業委託料金も相対的に安いのは事実である。農協の耕耘料金も低いが、調整機の賃借料は一万円、手間賃 は一日当り四千円であり、同一集落の親戚に委託しているためか、農協の作業委託あっせんの場合の料金︵一〇α当 り八千円︶より大分低くなっている。地縁・人縁的につながりの深い農民相互の間でとり結ばれる受委託関係のため に、作業委託料金が低額となり、そうした結果として前記五費目合計額が一致したのである。 ハめロ 更に作業委託の場合の純所得七五、八一九円から、全面委託の場合の地代三万円を差し引いた四五、八一九円が問 題になる。これが日雇労賃以下であれば、全面委託に出して、日雇に出るという行動が経済法則にあうからである。 そこで地代との差額所得を所要労働時間五三・六時間で割れば、一日当り六、八三八円となる。これはこの地域の女 以上のようにみてくると、⑭番農家が全面委託をするよりも、機械の過剰投資を避け部分的に作業を委託して米作 子日雇労賃だけでなく男子のそれをも大きく上回る。 を継続するのが、純所得の面からみてもかなり有利であることは明らかである。 GD @番農家は、二七αを作付している。耕耘︵一番耕のみ︶、代掻、防除、刈取を委託しており、主要な農機具 はテーラーと脱穀機であるが、経営耕地規模小なるがゆえに一〇4当り農具費は一四、六〇九円と邑楽郡平均に近接 している。 ﹁賃借料及び料金﹂と﹁農具費﹂、﹁雇用労働費﹂などが大きく、生産費用は、郡平均を一一、六〇〇円程上回って 一下層兼業農の動向と農地賃貸借− 二九 1論 文− 三〇 いるが、夫婦二人の手による、日曜・祭日、朝・夕等を利用しての相当に周密な管理作業によって、種籾出荷を行な っており、収入は比較的高い。 したがって、純所得は、七万円を越えており、一日当り家族労働報酬は一一、五〇〇円弱と大きく、全面委託の場 合の地代分との差額は四・四万円近くとなり、労働時間五一・四時間に対して、六、八○○円と日雇い賃金水準を大 幅に凌駕している。つまり、現在の@農家の﹁生産性﹂は、 ︹地代+日雇労賃︺の水準をも上回るものであり、ここ に米作継続の根拠があるのである。 ㈹ この調査集落にもみられた管理作業︵追肥・水管理・除草︶のみを行なうだけで他の作業は全部委託する場合 を考えよう︵第7表︶。管理作業︵輩肥培管理技術︶の巧拙は個々の農家間に勿論あるが、階層間の格差として整序 的には現われない。この階層的規定性をうけない管理作業労働に対する労働報酬が﹁ある程度﹂の水準にあればこの 部分だけでも自作化するという行動は成立するであろう。 直播の場合の試算1では、委託料金計三・三万円、費用合計四八、六八二円となり、収量七俵で約五六・三千円の 純所得、六俵でも四一⊥二千円となる。問題になるのは、この純所得と全面委託の地代との差額︵この地区の場合水 利費は委託者側負担なので地代は約三万円︶であるが、これは収量約七俵で二六二二千円、六俵で一一・三千円であ る。管理作業の労働時間を一〇8当り二四・五時間とすれば、それぞれ一日当り労働報酬は地代部分を除いて八、五 九四円、三、六九六円となる。老人・婦人という劣弱な労働力に対する報酬としてはかなり高額なものと言わねばな らない。収量六俵の場合の一日当り所得約四千円は、中高年男子労働力の農閑期の人夫・日雇賃金にほぼ対応してお り、婦人・老人の農外臨時雇賃金へ調査集落の場合一、五〇〇∼二、四〇〇円︶を大きく上回っており、ここに農外 図 油 論 瞼慧 議 課 碧刈爆 略濯壽罧S墜酵串舜中庸尉S嶺壕菊判︵一〇“脹P凱魯︶ 珍 百慧 悼本も 8㍉一。。 UPご。。 一〇yOOO﹃蕩\δ“ 遣る。。悼 驍nO ︺ふOO 隷 国界︵ω回︶ ゴΨOO UooふOO 目 ム添OO 購麟嚇器︵N回︶ ご嬉OOO 圃 =沸︵曝誉・議雷・謀薗︶ ぎ80 一yひ。。団 0。るO O、、 一〇bOO 一VOO 一も。。M ごUOO ヒ陣8一− :パ。・辱ひ。・M Uρビ。。 昌2︺司ヨ 一〇yOOO﹃粛\一。“ まも一〇。 お岳翻濁・渇忌︺。1一〇“ 命重 藤 講蕪・盤瞬 津 振欝一沮︸黒譜 宝﹂OO ゴUOO 馨煎 U一80冷厳 驍nO 磯瞬 熬u 団“も 賦も一〇。 ヨも一〇。 るPOOO V\一。“ ひ♪﹃o。図 Z〇 一POOO又﹁﹂愚・豫難 UふOO癬郵 yOOO 田面︵藩蔦︶ 憲 三一 隷 H 隷 贈O 爵︵蝶諏・曝首・猷畝︶ yOO 雲 蔦るOO 臨圏嚇甜伴3講慧 譲●U 黶Z 画 切ふ8 贈爵 ζ苗図=昂3嚇謙輩ゆ 一PO8 お》孕i躍増迷踊躍適曝還郷謙鐵降 皿 糠喜黒翻︵山︶ ε ρまU 。。 o。 0。 o。 。。 蜀隷 艦 肇 >\ω×oo o。 欝気畑 小 嚇 1下層兼業農の動向と農地賃貸借一 pU 1誉郎昇諸颪3欝邑漂鼠輩 >導渓嘘醜﹂eゆ加+面づ翫び。 三二 ﹁一 膳田一臨諸,鄭樋︸せ 出轡器醗再﹁※映鰍海劃協﹂e温潤・渇E昌図eωO一㎝O爲奇融擁臓e諸寄ヨ畑線審興醒eψ嚇 踏謡︸ Ω 新 喪 算 ヨ e 呼 喫 伴 σ 薄 颪 酵 粛 謡 。 1論 文1 , 隣一︶ 卜。︶ 賃作業を若干減らしても、管理作業のみであっても稲作を継続していく第一の経済的必然性があるのである。 なお、植付の場合の試算では反収八俵として純所得は約五五・二千円、地代三万円を除いた部分に対する労働報酬 は約八千円となる。直播より反収が一俵前後高いことを考えれば直播の七俵水準とほぼ同一の値を示しており、植付 の場合も老人・婦人の農外臨時雇賃金水準を大きく凌駕している。 管理作業のみの作業委託農家を水稲作から駆逐していくためには、現在の作業料金と農外所得水準を与件とするな ら一〇σ当り三俵∼四俵の地代を生み出しうる経営でなければならない。七俵の収量に対して三儀を一般的に支払い ︵17︶ うる程の隔絶した生産力水準をもつ農民経営は現在もまた近い将来においても期待することはできない。 稲作継続の第二の理由は、前節で述べたところの﹁ゆい﹂的作業受委託関係・機械貸借の問題である。老人・婦人 の劣弱な労働力であっても、上層農家の農作業において一定の意味を持ち、上層による作業受託料金の﹁対価﹂とし て機能することは、社会的には通用しない労働力ないし低額でしか売ることのできない労働力が、具体的有用性をも って迂回的な形で価値を実現したことを示す。農外労働市場において価値実現しえない労働力が、最終的には米販売 によって所得を得るのであるから、これは下層兼業農家にとって経済的意味を有することは勿論である。 更にこの﹁ゆい﹂的作業受委託関係の亜種として若干の金銭関係を伴う場合であっても、その場合の労賃評価は農 パせロ 業臨時雇賃金水準を基本的には上回っていないと考えられる。 以上のように、 ﹁農具費﹂が急減して、 ﹁賃借料及び料金﹂が相対的に低廉におさえられれば稲作の純所得は増大 する。しかもそれが、 ︹地代+日雇労賃︺水準を若干越えるとともに、社会的には販売不可能ないし低額にしか評価 されない労働力によって実現されるのであるから、零細農地を保持して稲作を﹁継続﹂するのである。 ヤ ヤ ヤ 階層間における生産力格差は、以上のように基本的には下層兼業農家における農外兼業の低賃金・低所得によっ て、具体的には部分作業の受委託等による下層米作所得の相対的﹁高水準﹂によって、その正常な発現を阻止されて ヤ ヤ ヤ いる。 それを逆にいいかえるならば、館林市における二俵という借地地代水準をつきぬけて、三俵なり四俵なりの地代を も﹁搾出地代﹂でなく﹁公正地代﹂として受けとめうるだけの農民経営がまだ存在していないということである。そ の意味で︵﹁低賃金構造﹂との対比で︶、農業内的な生産力格差など﹁片々たるもの﹂、﹁媛少なもの﹂としか言いよう がないのである。 ︵1︶ 農協あっせん農業経営受委託事業が始められにのは、四七年である。牧草地も含んでいるが、水田・陸田が中心であり、 四七年七・五加、四八年二四・五厩、四九年三六・七肱、五〇年五三・二肱と順調に拡大し、五一年には七〇磁近くに達す ロ るうと し う しかし、なお館林市域全体の水稲作の二∼三%を占めるにすぎず、 一戸当りの平均委託規模は二八・七4、受託規模は三 八・七4と零細である。なお、この館林市農協の受委託事業については、既に倉本器征氏が一端を紹介されている︵﹁大中 型機械体系における組み作業と生産組織﹂、﹃農業経済研究﹄第四七巻第三号、一九七五年︶。 1下層兼業農の動向と農地賃貸借一 三三 −論 文− 三四 また、市農協ではトラクター耕耘作業受託︵三八年開始︶、集団栽培︵四三1四八年︶、請負防除︵四三年開始︶、直播作 業受託︵耕耘・整地・播種の三作業、四六年開始︶、などを行なっており、下層兼業農家の米作継続に重要な役割を果して いる。 ︵2︶ 調査できなかった農地所有者は、七九σ、三八σ、一八4、一一σ、一〇α、五8の六戸である。 ︵3︶ 伊藤喜雄氏は、委託者を、労働力の量と質、農外所得水準の二点を主たる基準にして、破滅型、土地持ち労働者型、摩 擦調整型、資産所有型の四つに区分しておられる︵同氏稿﹁富山県礪波市における生産組織の変容と請負耕作による規模拡 大﹂、農政調査委員会﹃農業規模拡大の道2﹄一一九∼一二〇頁︶。また田代洋一氏は、蒲原の事例をもとに職員型、労力不 足型、作目転換型、多就業型を発生要因から分類しておられる︵田代・宇野・宇佐美﹃農民層分解の構造﹄御茶の水書房、 一九七五年、七四∼七頁︶。本稿では、後の統計分析との関連もあって、兼業種類別に分析した。 ︵4︶ ﹁土地持ち労働者﹂は論者によって様々に使用されるが、本稿では他産業均衡労賃水準︵V︶を得る層、労働者として自 立している層の意味で用いている。 ︵5︶ 倉本、前掲稿一四七頁。 ︵6︶ 上層で作業を委託している二戸のうち、⑨はテず↑採卵経営であり、⑱は農協職員でトラクター・オペレーターである。 ︵7︶ 農林省﹁稲作経営における農作業の外部依存状況調査報告書一昭和四九年一月調査一﹂によれば、全国平均で七四. 八%の農家が作業委託をしているが、三馳以上の六九二二%を下限に、○・三∼○・五加の七六.四%を上限にする範囲に おさまっている。下層の場合、 ﹁農家への相対﹂委託が、上層の場合、 ﹁共同利用組織﹂への委託が多く、比率的同一性に もかかわらず、性格の違いをおもわせる。 ︵8︶ 労働費は、農業臨時雇賃金水準︵ッ︶よりかなり高い他産業均衡労賃︵V︶と考えてよい。 ︵9︶ ﹁︵作業︶受託農家に残された労働は主として管理労働であり、規模の差異のないものとしてよく、機械化のメリットは、 受委託関係を通して小規模層にも貫いてゆく﹂︵倉内宗一﹁埼玉県騎西町﹂、農政調査委員会﹃農業規模拡大の道1﹄一九七 三年、八六頁︶。 ︵m︶ 一人平均月額二三・二万円になるが、これには管理職の相対的高労賃も含む。 ︵n︶ 農協直営型作業受託組織が、機械・施設の共同利用組織や集団栽培組織に比して生産組織としては強固である点は、全国 的にも確認しうる︵農林省﹁農業生産組織調査報告書一昭和四七年八月調査一﹂参照︶。 ︵12︶ 先述の請負直播作業は、 ﹁館林農業青年会議﹂に再委託の形をとる。四九年には四〇厩を越えたが、全面委託に移行する 部分もあって五〇年には二五加に減少している。 ︵13︶ 乙の集落では、トラクター・バインダー・コンバインの共同導入は盛んである。トラクター導入農家数二七戸中一二戸、 コンバイン一七戸中ゴ二戸が共有である。バインダーはすでにコンバインに更新されたものが多いが、現在も用いられてい るバインダーだけについてみれば、二二戸中一〇戸が共有である。階層性はそう明確ではないが、 一・五∼二・○肱の中間 でその比率が高いようである。 ︵14︶ 今村奈良臣﹁観念的農民層分解論の破産﹂、前出﹃論争・日本農業論﹄、 一四七頁。 ︵15︶ 後藤光蔵﹁兼業深化の現段階と経営委託農家の形成﹂、﹃農業経済研究﹄第四六巻第一号、四五頁。 ︵16︶ しかしこの場合でも一日当り労賃は農業臨時雇賃金の一般的水準に合致していることも注目する必要がある。全く経済的 法則性に則っていないというわけではない。 ︵17︶K集落の水田受託農家は九戸あるが、①と⑱を除けば、二〇σ程度の小地片借り足しである。稲作以外の部門︵ハウス園 芸、兼業も含めて︶拡大のために、中型トラクター、コンバインを導入し、その機械の償却のために拡大するという﹁機械 の論理﹂にひきずられた農家が多く、米作主体で展開しようとする農家は未だない。 一四八σを受託する①にしても、ハウスのきゅうり二作で六〇〇万円以上の粗収益をあげており、米作をやるのは、 ﹁昔 −下層兼業農の動向と農地賃貸借− 三五 三六 −論 文1 からの習慣﹂であり、 ﹁義務的﹂にやるに過ぎないという。一〇4当り地代の二儀水準は妥当であるとしながらも、六俵∼ 六・五俵の低収量のため、それ以上の地代を受け入れることは困難のようである。 K集落とあわせて、館林の他地域における相対的大規模受託経営も調査したが、M地区のH氏だけが、現在の地代二様を ﹁安すぎる﹂と答えている。この論拠は、借地しながら、なおかつ重作業を委託している農家が相当数あり、そうした農家 が委託料金と地代を払っても、なおかつ若干の﹁利益﹂が残るからであるという。 自作地三二二肱に、借地三肱の水田経営を行なうH氏は、他にかなりの作業受託量を乙なしており、除草.追肥.水管理 久防除︶等の鐘作業を除いた、他作業の全て藷負う、全作業請負に近い部分が西留る.しかし、あ丙健、 三俵程度の地代を提示することはやはり困難だという。その理由は、圃場の広範囲への分散に伴う作業能率の低下、とりわ け管理的作業の不充分さによる収量の低下である。 稲作上層農の詳細な検討ば別稿を期しているが、七七馬力のトラクターを中心とする大型機械化一貫体系のH氏にしてさ え、現在以上の地代を﹁公正地代﹂として、受け止めることはできていないのである。 ︵18︶ コンバイン作業が一〇4当り四千円、六ヒ七千円の事例や、代掻二七σを委託して二千円相当の贈答品を送った等の事例 がある。 三 恒常的賃労働の激増と零細農地所有︵統計分析︶ 本章での課題は、前章でみた下層兼業農家の農業膠着の構造、貸付地供給の円滑な進行を阻止する基本的要因たる 農外就業場面の賃金・所得水準の劣弱性をみ、都府県レベルの下層兼業農になお働く農地固着メカニズムを具体的に 検証することにある。 区 兼業従 雇 わ 雇われ兼業 事者数撮晶犠簸 1出かせぎi合㌔ 100.OI 20.2 100.α 19.2 331△2・4 (49−46)ノ46 Q/7 14 Q/ 構成化憐 2 5 62 17 3 8,45011,711 8,731 1,670 , , 3つコ n∠ 実数{親 2 つノ 数 自営兼業! 7 352!2,104i1,654 290i1・943:1・566 3.4 24.9… 19.6 3・3122・217・9 △17.6! △ 7.7 △ 5.3 1 1 … 1 : 5478 110gl 1754: 325t 1,321 969 実数偽 男 一下層兼業農の動向と農地賃貸借1 分 総 単位1千人,% 兼業従事者数(全国) 第8表 5;5111;058!21120 26511,143 925 1 1 118:8111:1β1:1ほlill弔1:1 構成比偽 0・6△4,6120・9一△18・51△135一△45 (49−46)/46 W75 281 6・1: 女 実数倦 2,973 3,220 783 800 685 6151 1,138 25! 20.2 29.4 0.9− 19.11 35.5 0.7 26.3 24.8 23.O 2.2 △6.3 642 E 構成比傷 100.0 100.0 I9.9 ド (49−46)/46 2.3i 30.1 8.3 △10.71 1 ! 注1)沖縄県を除く。 2)農林省『昭和49年農業調査結果報告書』 ① 恒常的賃労働の激増 昭和四〇年代後半に﹁米過剰﹂を直接的契機とし て打ち出された総合農政は、四六年の﹁農村地域 工業導入促進法﹂、四七年の﹁工業再配置促進法﹂ などと連動して、農民からの労働力吸収と土地収奪 を、基本法農政をはるかに上回るピッチで進行させ た。 四〇年代後半の農家労働力の農外流出の様相は、 第8表で概括される。その特徴は、第一に﹁安定﹂ 兼業の一種たる﹁恒常的賃労働勤務者﹂の激増であ る。表にみる通り、四六年から四九年までの三年間 に六二・八万人増加し、出稼と人夫・日雇いという ﹁不安定﹂就業者の減少をカバーして、農外就業者 総数の増加を現象させている。こうして、四〇年代 パ ロ 後半の兼業化は、 ﹁安定兼業への傾斜﹂として特徴 づけられるのであるが、それがもっぱら肉体的単純 作業労働を内容とする﹁恒常的賃労働﹂によってな 三七 一論 文− 三八 されたものであり、管理的・事務的・専門技術的な﹁精神的﹂労働たる﹁恒常的職員勤務﹂によるものではなかった ことが銘記されねばならない︵恒常的職員勤務者は一七一万人から一六七万人へと二.四%減少している︶。 第二の特徴点としては、女子労働力の農外流出であり、この三年間の兼業従事者数の増大は、比率的にも︵女子八 ・三%の増、男子0・六%︶、また実数でも︵女子二四・七万人増、男子三・三万人︶この女子の農外流出に大きく 依存しているのである。そして、年齢的には三五∼五九オの中高年女子労働力の流出者数の増加に起因している。 以上の特徴点にあわせて﹃農家就業動向調査﹄、﹃労働力調査﹄等をみれば、基幹的農業労働力の急減、農業主体か ら在宅兼業・通勤兼業への移動がみられるのであり、農村工業化を基軸に、基幹的農業労働力の通勤形態による﹁恒 常的賃労働者﹂化、女子も含む中高年労働力の農外流出という兼業深化の系譜をたどることができるのである。 Po。Oひ 駅﹂ ︺﹂ミ .冨註窪き 浦蘇苺 一PO ごOお ンさM 憎卜O ご㍉ [> 鵠一箇 熟淋賭珊 ンまひ 一も旨 一〇・O 医学呼磯 >冷・ m 譲 8・凱 団団、一 悼●O 一ω・O 嵩﹂ ひ認 $O 皿、瞬藩 いテンポでの減 総農家数のより高 政時と比較しての ような、基本法農 相は第9表にみる でみた兼業化の様 をうけて、家単位 農家労働力の流出 蹟O悠 嶺罧首嫌望賄剥隊︵陣圖︶ 無爵一糸コ零 さて、こうした 膠漆醤踏 愚淋濤醤 Uも2 ﹃Ooo yO曽 ひ勘oo ひW﹄ 図oo:oo−oooo o憎1窃ひ一→ω一 〇、q 皐藩強 P﹃ ゆσ■N 本“■一 〉 冷 温婁鼓 巽墨継 団本し ﹀2し ﹀鴬6 ひH』一〇〇〇r 射し1 一〇〇。〇 悼団: 一一 D切1一ムー『『 H卜。 漆潔遷 一〇〇●O d匡 一〇90 嵩﹄ 一〇90 一ドU ﹀合切 ﹃購襟翻餅﹄ ︵お一ま︶\ま 劃疇國蕊 隣︶ 一ト⇒ 一 ℃一 〇、〇一ω℃一ひ団 v}」P 暴目 皿蘇 曇一一 蟄蓼 〉 図 1・・蘇満11・7・5:3741757142… 一一6− [夫 営 業 8 3 自兼 区 分終編轟舗1出壷 ﹂,ド副−鴎の 1 ヒ兼農家… 雇われ兼業 ■人日一 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− 単位:千戸,% 第10表 第二種兼業農家の内訳(都府県) 単位: 104 !05∼0・7 1 564… 1311 248: 21 実1 0.7∼1.0 490− 117… 225− 16 1 1 i 51ヨ 82 311 49 い・・一151287…7・1128…10 / 1.5∼ 2.0 1 64 16 251 3 7 13 4 6 298 640 数 2.剛上1261718!2 、合計 3・13771411・3921 94 ☆1瓢ilii陰i、iiiii ii 2.5F 8.5 22.6 111目lll口lll 3.71 10.6 18.4 I 3.51 10.8 17.1 比/ 1.5−2.。 1。。.。125.。139.114.7 1 4.71 10.9 20.3 1 2。。鰐上 1。。.。i26.913・。8卜7。7 7。7i 15.4 23.1 合計i1。。.。122.8…44.413.。 3.0 9.5… 20・4 一 I I 一 注) 『農業調査』 少、専業農家・第一種兼業農家の激減、第二種兼業 農家の増大である。第二種兼業農家は四九年に至っ て六割を越えるが、うち四四%は﹁恒常的賃労働﹂ を主たる兼業内容としており、この三年で八ポイン トもその比重を高めている。 更に経営耕地規模別に二兼農家の内訳をみる︵第 ¥︶。第一に、﹁安定﹂兼業のうちの職員勤務は上 層になるほどその比重を高めており、耕地供給者層 として期待される下層兼業農家、とりわけ○・五加 未満農家では二一・九%と都府県平均値を下回って いることが注目される。不安定兼業たる出稼ぎ、人 夫・日雇いは一・五勧以上層で高く、下層では低い が、その分を補っているのは、最も安定的でかつ賃 金水準も高い﹁恒常的職員勤務﹂ではなく、 ﹁恒常 的賃労働﹂や﹁自営兼業﹂なのである。 そして、五反未満層においても、四〇年代後半に おいて、職員勤務世帯は、実数、比重とも減少してお 三九 10 1論 第11表 都市勤労者世帯と恒常的賃労働農家 単位:人,千円 奮晦、㌔賃 晦…,篭賃 分 区 3.86 就 業 人 員 (2} 1.52 実収入・農家所得 (3) 1,526.8 可処分所得〔4〕 家 計 費 〔5〕 1,399.4 1,636.o1 Q,288.1 2,934.7 1,124.9 』362.6 1,743.7 2,27L2 就業人員1人当り所得 〔3〕/(2〕 1,004.5 604・8 P1・674・4 1,086.3 〃 可処分所得 (4ソ〔2) 920.7 6i5.OI 1,525.4 1,095。0 1人当り家計費 (5)/(1〕 291.4 283.3 457.7 460.7 779.6 一 1,343.8 恒常的賃労働就業人員 一 人 当 り 所 得 4.59 4.80… 3.81 k 2.66’ 1.50 2.68 1,6・8.712,511.61 文1 世 帯 員 {1〕 2,91L4 1 注1)総理府『家計調査年報』,農林省『農家の型態別にみた農家経済』より作成 2)都市とは人口五万人以上 3)n・恒賃は,第二種兼業農家のうち恒常的賃労働を基本収入とする世帯であ る。 4)都市勤労者世帯は, 1月∼12月, 四〇 り、これらの減少を補って恒常的賃労働世帯が急増し ているのである︵実数四六年六〇八千戸←四九年七五 七千戸、比率三六・二%←四四・四%︶。 四〇年代後半の農外就業動向の以上の検討から、下 層兼業農家の貸付地供給の今後の動向を占う上で、第 二種兼業農家のうち﹁恒常的賃労働﹂農家の農家経 済、とりわけその兼業所得水準を明らかにすることが 不可欠の課題であることは明らかであろう。 ω 恒常的賃労働農家の農家経済 H 多就業形態と低賃金問題 恒常的賃労働を主業とする農家世帯と人口五万人以 上の都市勤労者世帯とを比較したのが、第n表であ る。物価水準の違い、住宅条件の違いなどから単純な 比較はできないが、一応の生活水準を示す指標と考え られる一人当り家計費は、四六年時点では、H兼・恒 常的賃労働農家がなお下回っていたが、四九年に至っ てほぼ均衡し、若工−都市勤労者世帯を上回るようにさ 上 ∬・恒賃は4月∼3月の集計値である。 えなってきている。都市と農村を貫く家計費平準化の傾向は、戦後日本農業における一貫した傾向であり、農民層分 解の基本的モメントであるが、少なくとも昭和四〇年代の後半においては、都市勤労者世帯とH兼.恒常的賃労働農 家の生活水準︵消費面における︶はほぼ均衡しているのである。住宅条件等を考慮すれば、消費生活はむしろ都市勤 労者を上回ってさえいるといえるかもしれない。 問題は、こうした都市世帯と均衡し凌駕する生活水準を、家族員の如何なる労働の形態で確保したかであり、その 家族員の労働条件が如何なるものであるかである。表から読みとれるのは、第一に農家世帯員の多就業形態であり、 第二に、就業人員一入当り所得の低水準、恒常的賃労働従事者の一人当り賃金水準の低さに示される、農村労働市場 の低賃金問題である。つまり、主業とする恒常的賃労働の低賃金、そして低い農業労働報酬に規定されて、家族員の 多数が、老人・婦人も含めて、農業だけでなく農外労働市場に狩り出されているという構図︵そしておそらくは、こ の逆に多就業形態が低賃金構造を維持するという因果関連もあろう︶がみてとれるのである。 第一の多就業形態については、四九年においては、都市世帯員三・八一人中、就業者一・五〇人、非就業者二.三 一人に対して、恒常的賃労働農家世帯では四・五九人中、非就業者は一・九一人を残すのみで、残りの二.六八人が 恒常的賃労働︵一・四三人︶と農業︵○・八○人︶中心に就業するという多就業構成になってる。 世帯員が多いにもかかわらず、非就業者数が少ないという事実そのものが、多就業形態の証左であるが、それは単 に都市においては就業し得ない老人・婦人世帯員が、農村においては農業労働力として機能しうることだけによるも のではない。 四九年における恒常的賃労働農家世帯員四・五九人から農業就業者○・八○人を差し引けば、三.七九人となり、 1下層兼業農の動向と農地賃貸借− 四一 十 1論 文− 四二 ャ ヤ ほぼ都市勤労者世帯員三・八一人と一致する。この両者だけを比較しても、恒常的賃労働農家の農外への就業者数は 一・八八人であり、都市世帯就業人員一・五〇人を大きく上回っている。恒常的賃労働就業者の一・四三人だけで都 市世帯就業者とほぼ均衡し、更に労働条件の劣悪な臨時的賃労働に〇二一六人︵一日当り賃金二、七一〇円︶、恒常 ハ ロ 的賃労働賃金五、二五八円を下まわる四、一六八円の職員勤務に〇二五人が就業しているのである。 ここにおいて、H兼恒常的賃労働農家の多就業形態は、農業の存在だけによるものではないことは明白である。農 外労働市場に、それも主業たる恒常的賃労働だけでなく、労働条件のより劣悪な臨時的賃労働・職員勤務に都市世帯 よりももっと強烈に吸引されていることこそが、農村における多就業形態の本質であろう。館林市の調査にみられ、 また各地の実態報告にもみられるような、じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃんまでもが農村進出零細工場に吸引さ れている状況が、農業以外の就業者数一・八八人に反映されているのである。 また、この多就業形態は、四六年以降更に強固になっていることも重要である。表にもあるように恒常的賃労働農 家の世帯員数は、四六年の四・八0人から○・二一人も減少している。にもかかわらず、就業人員は、一・七四人か ら一・八八人へと○・一四人も増加している。すなわち、この多就業形態はいずれ消え去るものとして一時的に現わ れているのではなく、四〇年代後半の農民層の動向そのもののうちに、傾向として存在することに注目せねばなるま い。 第二の低賃金問題について触れよう。まず農業労働報酬も含めた就業人員一人当り所得は、四九年において都市世 帯一六七万円、恒常的賃労働農家世帯一〇九万円となっており後者は前者の六五%でしかない。更に後者の所得の主 要な源泉であり、かつ一日当り賃金も雇われ兼業のうちで最も高い、恒常的賃労働に従事する者の一人当り賃金でさ 第1図 1日当り賃金・所得(都府県・平均) 1 下 円 層 8,000 兼 業 農 各職員勤務 の 7,000 、‘(職員俸給 向 と 動 ノ JJ ,・ 農 地 6,000 賃 貸 借 1 /f/▲自営業所得 5.000 ///響働 4,000 線タノ齢 3,000 副イ /:蔚\一臨時的賃労艶 2,00C −交ノ (被用労賃 X一 1,000 47 46 45 N N 49 48 N N N 注) 『農家経済調査』 え、都市世帯の就業 者のそれの八○%で しかない。 恒常的賃労働農家 に開ける労働市場 が、低賃金であるこ と、それにもかかわ らず家計費水準の平 準化傾向は農村にも 貫ぬき、多就業形態 が必然化されている 事情は以上で明白で あると考えられる が、更にここでもう 一点つけ加えておこ 一ワ。 第1図は、農家の 四三 1論 文1 四四 それぞれの一日当り所得・賃金をみたものである。注目されるのは、農民に開ける賃労働市場のうち、恒常的賃労働 パ ロ は、臨時的賃労働より高い水準にある︵一・五六倍、四九年︶が、職員勤務よりかなり低い水準にある︵○・六六倍︶ という点である。 ﹃農家経済調査﹄の統計標章でみる限り、農民の雇われ兼業労働市場は、三層の構造からなっているようにみえる。 この農村地域労働市場の重層構造に関しては、田代洋一氏の注目すべき﹁二層構造論﹂がある。すなわち、 ﹁新規学 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ う ヤ ヤ ヤ 卒労働力の定期採用を通じて、少なくとも県あるいは県を越える地域平均的な賃金水準の貫徹する﹂第一の型の労働 ヤ ヤ ヤパ ロ 市場と、 ﹁既就業労働力の中途採用を通じて、雇用形態のいかんを問わず、農村日雇賃金が賃金形成の起点“基盤を 制する﹂第二の型の労働市場との重層構造として把握される見解が、それである。 そして、経済危機下における労働市場の展開は、﹁﹃第一の型﹄の企業の順調な発展ではなく、むしろ﹃第一の型﹄ の﹃第二の型﹄への移行、さらに﹃農村工業化﹄のもとでの零細企業の造出による﹃第二の型﹂の労働力需要の一方 パ ロ 的な増大、による底辺部の肥大化を基調とするものであった﹂と総括される。 田代氏の見解に従えば、第1図の﹁恒常的賃労働﹂は、職員勤務の賃金水準に近い部分と、臨時的賃労働のそれに 近い部分との二つを単純平均した結果生まれた﹁統計的虚構﹂であるということになろう。具体的には、高校を卒業 した、相対的には大規模工場に働く若年労働力と、農村零細工場に就業する中高年労働力との平均として、想定され る。 しかし、第12表にみるように、製造業労働者における、生産労働者と管理・事務・技術労働者の一日当り賃金は、 総平均で五、九八四円と八、四三八円であり、また従業員三〇∼九九人程度の﹁職員勤務﹂的労働者でさえ、五〇〇 ∼ 2g l(4・450)!(5・599),(2・804)1 一 以以4 T 人人∼ ∼ ∼ 5 1 O0 人以上を擁する大企業の生産労働者の平均賃金を上回っていて、いわゆるブルー カラーとホワイトカラーとの賃金格差はなお厳然と存在している。 ﹁恒常的賃労 働﹂中から分離されうる比較的賃金水準の高い若年労働力は、第1図に示される 恒常的賃労働賃金曲線より上方にあるとしても、職員勤務賃金の水準をなかなか 上回ることはできないと思われるのである。 一方、臨時的賃労働にくくるべき部分も、ボーナスその他の手当の存在によっ て、その賃金水準は臨時的賃労働の描く曲線より若干上方にあると考えられる。 そして資料的確定はできないが、実態見聞等から判断すれば、恒常的賃労働が独 自の曲線を描いているのは、この日雇労賃プラスアルファの賃金水準にある賃労 働の影響が大きいと考えられる。 は三〇∼九九人という小企業の生産労働者の賃金水準とほぼ一致している。三〇 人以下の零細企業に就業する農業労働力も多数存在することからみれば、妥当な 結果であるといえる。しかし、恒常的賃労働賃金が、製造業労働者賃金の基底に 四五 i下層兼業農の動向と農地賃貸借一 R0 女 4.403 O0 男 5,030 8,397 999929働への男女別労働投入量に対応させて計算すると、恒常的賃労働の平均賃金水準 更に、それを企業規模別賃金と比較したのが第13表である。農家の恒常的賃労 は、職員勤務のそれを大幅に下回っている点を確認されたい。 ともかく、四〇年代後半の農民の兼業化を担った﹁恒常的賃労働﹂の賃金水準 注)労働省「毎月勤労統計調査」 5,472 9,193 −99人i4,69615,856i3・・6717・287 5,013 0,312 上上 人 平均 1平均男1女 従業員数 9,499 篠㌧i概iii羅i廉i 30 管理事務及ぴ技術労働者 1 生産労働者 単位:円 製造業労働者賃金(昭和49年) 第12表 文1 (4,700) 1 3,761 2・24012・5962・978 (5 ∼ 29) i(2・228)1(2・611)i(3・004)1(3・691) 4,986 30 ∼ 99 生産労働者 2,680!3,044 3,567 4,391 5,930 100 ∼ 499 6,953 4,531 2・7443・174i3・763 ド 5,248 3・25513・70514・265 6,041 30人 以 上 500人 ∼ 一般製造業 2・33・12,7・93・・67i3・77914・763 恒常的賃労働 −論 1昭和碑昭和46年1昭和47年1昭和48年1昭和49年 分 区 単位:円 第13表 1日当り賃金の比較 注1)一般製造業は,労働省「毎月勤労統計調査」から男女別賃金を算出し『農家 経済調査』の恒常的賃労働への男女別労働時間に対応させて算出した。 2)5∼29人規模では生産労働者と管理・事務及び技術労働者との区分がされて おらず,両者の平均値しかつかめないため, ()でくくった。 四六 ある賃金水準に照応してしまう事実は、 ﹁安定兼業化﹂といわれなが らも、農民に開ける賃労働市場がなお劣悪な条件で低賃金労働力を吸 収する場でしかないことを示しているといってよいのではなかろう か。 口 零細農地所有の意義 次に、低賃金・多就業の恒常的賃労働農家にとっての農地所有の意 義を考察する。第14表は、四類の第n種兼業農家をみたものである。 まず、梶井、伊藤氏らが、賃貸借の円滑な展開の一つの指標として 重視される農外所得による家計費充足率をみると、四六年段階におい て既に、臨時的賃労働を除いた他の型態では一〇〇%近くなってお り、職員勤務農家では農外所得が一〇%も上回っている。こうした状 況が職員勤務、自営兼業農家等の貸付地供給の背景となっているのは ヤ ヤ 確かであろう。 四九年に至ると恒常的賃労働農家でも一〇七%となり、四〇年代 後半の農家兼業化を支えた恒常的賃労働世帯の増大は、下層兼業農民 における農業所得の意味をネグリジブルなものとしているかにみえ る。 皿疎誹騰 無翌一 一ふd一 P=︺一 Uひ﹃ ωQo“ ムO一 もコ 聾Nし ご800■ω. ﹃一﹄ HO凱.ム じト8 ヨ 罫餌3痴愚.喜 ㌣。。$ ρ一8 ンU遷 ω、o。Oω ン80。 直講書漁8.§ 田無嵩淋 羅驚攣誤 蝿 響 羅 一>脹ご潟孕増 露卦ヨお\醤翌・寒 零墨ぴと>王 ヒ』鳶曽糸 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しかし、恒常的賃労働農家の収入の内訳をみると事態はいささか異ってくる。すなわち恒常的賃労働農家の基本所 得では、四六年に七七・八%の家計費しかまかなえず、四九年に至っても八四・六%しかカバーできていない。基本 所得の一日当り賃金を上回る自営業所得を加えても、四六年八三・四%、四九年八八・四%でしかない。 四六年から四九年にかけての基本所得による家計費充足率の増大も、恒常的賃労働への就業世帯員・就業時間の増 加︵それぞれ一・三六人←一・四三人、二、八五九時間←二、九二四時間︶と総世帯員の減少︵四・八一人←四.五 九人︶に伴う総家計費の伸びの鈍化によるところが大きく、賃金率の上昇︵四六年一〇〇とすると四九年一七七︶は 一人当り家計費の上昇︵一〇〇←一七五︶に相殺されて、充足率の増大にほとんど寄与し得ていない。 ﹁高度成長﹂から﹁安定成長﹂への移行が叫ばれる現在、賃金水準の急激な上昇や就業率の一層の増大は、今後も そう期待できまい。 となれば、低賃金、低収益であっても、基本収入を補う何らかの所得が必要となってくる。農業や臨時的賃労働が そこでは一定の意味をもってこざるを得ない。 ここで問題になるのが、農業と農外労働の時間当り所得、とりわけ米作の一日当り所得と臨時的賃労働の一日当り 賃金との相対関係である。自給的低生産性農業も含むため農業所得全体としては、臨時的賃労働の賃金水準をほぼ下 回っているが、第2図にみるように米作所得としては四六年の三〇σ未満層を除いて軒並みに上回っている。館林市 にみられたように、 ︹地代+日雇賃金水準︺を上回るという統計的実証はもちろんできないが、恒常的賃労働を主業 とする農家の日雇賃金水準を米作所得が上回る場合、そうした農家が米作を継続するのはけだし当然であろう。 地域的にみた場合︵第3図︶、下層の米作所得と地域日雇労賃との相対関係にはかなりの地域差がある。四九年に 1日当り賃金・米作所得(都府県) 円 4,000・ X30∼50a米作所得 /知一 3,000 一下層兼業農 の 動 向 と 農 地 賃 貸 借 一 第2図 2,000 X 1,000 46 47 48 49 年 年 年 年 注1) 「米生産費調査」, 『農家の型態別にみた農家経済』 2)臨時的賃労働賃金は,H兼・恒常的賃労働農家世帯のそれである。 おいても、近畿・東海は、三〇〇 未満層、三〇∼五〇〇層とも、そ の一日当り家族労働報酬は、建設 業︵軽作業︶の労賃を下回ってい る。しかし、東北を典型として、 九州、関東・東山、北陸とも、三 〇〇未満層ではあっても、水稲作 付を止めて、それに要する時間を 日雇に振り向けるのは有利ではな ん い。例えば、東北では三〇σ未満 四、五〇〇円に対して、建設業日 毒 層の米作一日当り家族労働報酬 P 雇労賃はその六割に満たない二、 六〇〇円でしかない。 東海・近畿・中国の一部など、 労働市場が厚みを持っている地域 を除いて、全体として米作所得水 四九 1論 文一 . 五〇 準の日雇労賃に対する優位は、なお存在しているのである。 これに対しては、館林で検出したような下層の米作所得が、地代プラス日雇労賃を上回るような関係にないので、 請負耕作の限定要因の統計的実証として不充分だとの批判もあろう。この批判への反批判として、請負の担い手が全 ての地域に必ずしも存在し得ない点はともかく、以下の四点をあげておく。 第一は、 ﹁米生産費調査﹂の﹁下層﹂の農業所得は、実際より低くなっているのではないか、という点である。 ﹃農家経済調査﹄と同様に、調査技術上の問題から、作付面積の小さな下層米作農家の調査対象は、統計事務所や農 協職員などの安定兼業職員勤務に偏奇しがちであろうことは容易に想像される。 パ ロ 実際に、米生産費調査の下層の農業機械装備は、一般農家のそれよりも若干優れている。これは相対的な農外高所 得を背景に、過剰投資を冒して、収益性が低下しても、労働時間の軽減と楽な農作業をめざす職員勤務農家の行動の 当然の反映といってよいだろう。 また、作業請負に出す率も一般下層農家より高いようである。例えば、賃餅では、米生産費調査対象農家のうち、 四八年では○・三加未満で五〇%︵面積率︶が委託に出すのに対し、一般農家は三三.五%︵農家率︶であり、○. ︵7︶ ︵8︶ 三∼○・五勧では前者の三四%に対し、後者は二〇二%となっており、委託農家率を面積率でさえ上回っているの である。 相対的に農外所得水準の低い一般農家は、以上のように、現実には機械の過剰投資をさけて、数戸での共有や機械 貸借等で対応し、あるいは現金支出の要する作業委託をできるだけ避けていると予測され、 ﹁米生産調査﹂に示され る一〇σ当り所得より高い所得を実際にはあげていると予想されるのである。したがって各地域の請負耕作の実勢地 米 作 所 得 建設業労賃都府県平均 建醜業労賃都尉県半巧」 ψ・し Xは30α未満 @ノム、 円 5,000 f t f 1 ● @ △は30∼50q f 陰 轣@,東J l北 ●=; 1 一: ’、X、ノ 、一 −下層兼業農の動向と農地賃貸借1 第3図 日雇労賃と米作所得の地域比較(49年) 齔J !△、 f = / =@i関 / P淳 / 4,000 : . / 九州 戟@l東 / A’×・3 =■ o ’一、 1抑 /・ 1 ノ . 1 ■ ’−、 t!△纏 1 嘱 : 1仏三: :’ 」 ・ 筑x’ @ 中i瞥 国: l l I! ・ 1! 四iムオ /,芯 ∼r3・α未瀞均 / ∫ 1 ^■ @ l l @ : = : : 3,000 @ l l し カ浴 目i l近 l l l土畿 1 : l t l l = =I l = 1: 1 亀 =tx’ ・ = Iノ ノ @ ノ @/ @/ \一4 、X= ∼ ’ 噂.’ m/ ! ^! 2,000 ! 2,000 五 2,500 3,000 3,500 4,000円建設業労賃 注1) 「米生産費調査J,「農村物価賃金統計」より作成。 2)地域別日雇労賃は,建設業軽作業の男女別賃金を,それぞれの地域・階 層の男女別稲作所要労働時間で加重平均して算出した。 −論 文− 五二 代水準を上回っているがために、水田賃貸借市場への供給量が限定されているのではなかろうか。館林の調査結果も それを示していたといえる。 第二は、日雇い賃金水準も容易に確保しえない老人・婦人などの労働力が、農業労働力として機能し得るという点 の収量水準を保ってこられたところに兼業農家を存続させている基盤があった﹂と指摘されている。水稲作業は、か である。金沢夏樹氏は、 ﹁多肥が農薬や品種の改良等によってカバーされつつ、その障害を表面化することなく一定 パ レ つての苦汗的な篤農的肥培管理作業による高収量の確保から、無機質肥料と農薬とによって兼業を中心とする農家家 族員の劣弱労働力によっても可能なものへと変化してきたのである。 こうした労働力にとっては、日雇賃金水準との対比は現実的意味を有さない。問題となるのはその地域の地代水準 のみであり、それを米作所得が上回ってさえいれば、米作は継続されることとなるのである。 ﹁安定﹂兼業農家で、 管理作業担当者たる老人・婦人労働力が存在すれば、委託に出さずに米作を継続するのはその証左でもあろう。 また、農外就業を主業とする基幹労働力が、日曜日の投下労働の﹁生産性﹂などは考えず、総所得を配慮して、日 曜農業で対応しているのも同様の事情である。 第三に、下層農の機械償却費の問題がある。〇二一涜未満農家の一〇σ当り機械償却費は、四九年で約一.五万円 となっており、一厩以上作付農家のそれを上回っている。水田を賃貸借に出す場合、この償却費の回収方途が絶たれ ることになる。中古品としての売却は、一定の損失を前提とするため、現実的にはこの一・五万円の機械償却費は所 ヤ ヤ や 得としての意味を持ってくる。 これは、建物及び土地改良投資の償却にももちろん共通である。下層農を農業生産から円滑に︵経済合理的に︶駆 逐していくためには、このように償却費のかなりの部分をも含みうる地代水準が必要となってくるのであり、それが ヤ ヤ ヤ 困難な生産力格差形成の現段階においては、米作の継続に結果するであろう。 第四に、当然のことであるが、家計費を農外所得のみで上回ることが、農地貸付の具体的理一由になるわけではない。 ﹁農家経済余剰﹂が不可欠であるという点もある。また、恒常的賃労働農家に保障される家計費支出が都市勤労者世 帯のそれを上回っていても、自らの闇囲に自分を上回る消費支出を行なう職員勤務農家が一定の層として存在するの だから、その消費水準はなお抑制的なものであり、ム﹁後も膨張せざるを得ない性格のものだといってよい。更にまた、 現代日本における半強制的な家計費の膨張も、 ﹁低成長﹂への移行で若干の揺ればあれ、資本によって進められる基 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ 本的戦略であろう。 現在の家計費を、現在の農外所得で上回っても、明日の家計費は膨張するのであり、総所得を最大にすることが、 ヤ ヤ ヤ 常に求められている。 こうして、農外所得が家計費を若干は上回ったとしても、基本的にはその低賃金水準の故に米作は継続される。そし てまた日雇労賃と比べた場合、水稲生産が必ずしも低生産性でないことが、その具体的根拠となってくるのである。 ヤ ヤ ヤ この段階では下層兼業農家の零細農地所有は、現在的には低賃金所得の現実的補てんとしての意味を持たざるを得 ない。自立した労働者たる土地持ち労働者に転化することの困難な下層兼業農民が、貧困な社会保障策の代替として、 ヤ ヤ ヤ 資産としての農地に執着するだけでなく、米作に、そして農業に執着し、農地に固着するメカニズムはなお働いてい るといってよいだろう。 ︵1︶ 弘田澄夫﹁強まる安定兼業への傾斜一最近の動向についての統計的検討一﹂、﹃農林統計調査﹄一九七五年二月号参 −下層兼業農の動向と農地賃貸借− 五三 一論 文一 五四 照。 ︵2︶ 一般に職員勤務の賃金水準は、恒常的賃労働のそれを上回る。恒常的賃労働世帯において、その関係が逆転するのは、傍 系女子家族員の事務員勤務などの影響が考えられる。 ︵3︶ ﹃農業調査﹄と﹃農家経済調査﹄の職員勤務、恒常的賃労働、臨時的賃労働の定義は若干異なる。 ﹁恒常的﹂を一応形式 的には厳密に規定するのが、 ﹃農業調査﹄であり、後者の場合は字義に反して、恒常的”一ケ月以上であり、臨時的一一ケ 月未満として使用されている。しかし四九年度の職員勤務者、恒常的賃労働勤務者の一人当り就業日数は、それぞれ二六五 ヤ ヤ 日、二五〇日であり︵一日を八時間換算︶、恒常的賃労働に実質的な短期不安定兼業が入り込んでいる割合が高いが、後者 でいうところの﹁恒常的﹂も、ほぼ字義通りに解釈してよいであろう。 また﹃農業調査﹄の場合も、実際には不安定雇用形態をも、 ﹁恒常的賃労働﹂に含んでいるとみられる。 ︵4︶ 田代洋一・宇野忠義・宇佐美繁著﹃農民層分解の構造−戦後現段階−﹄、御茶の水書房、一九七五年、三一頁。 ︵5︶ 同前、四二頁。 ︵6︶ ﹁米生産費調査﹂農家の四八年の田植機所有台数は一〇戸当りで水稲作付O.三助未満○.三台、O.三∼○.五加は○ ・七台となっており、 ﹃農業調査﹄によれば、水稲作付○・五加未満全体で〇二二台となっている。また、刈取機は﹁米生 産費調査﹂で一・二台と二・九台、 ﹃農業調査﹄で一・二台となっている。耕転機ではもっと格差があると予測されるが、 直接比較しうる資料はない。 ︵7︶ 農林省﹁昭和五〇年度、農業の動向に関する年次報告﹂一四〇頁。 ︵8︶ 農林省﹁稲作経営における農作業の外部依存状況調査﹂による。 ︵9︶ 金沢夏樹﹁戦後における稲作肥培管理体系の経済的評価﹂、古島敏雄編﹃産業構造変革下における稲作の構造−理論篇﹄ 東京大学出版会、一九七五年、二四二−三頁。 四 結論と 展望 ① 館林市の一集落においては下層兼業農の貸付地供給には、大きく分けて、兼業所得水準の相対的に高い層によ る安定的兼業収入の増大から貸付する場合と、不安定兼業層による場合との二つがあった。調査集落においては、請 負耕作は全水田面積の八・九%でしかないが、その少ない耕地供給のうちでも後者のルートを経て、耕地が供給され る場合が主流であった。 ﹁安定﹂兼業農家であっても、管理労働主体たりうる老人・婦人を家族内に抱え込んでいる場合、容易に貸付には 出さないのである。 農地貸付者層の微弱な形成に対して、部分作業を委託しても、農地に固着し耕作を継続する大量的部分が存在する。 その基本的要因は、農外労働市場の低賃金水準にあると考えられる。また具体的要因としては、下層であっても、農 協や上層農家への委託によって、機械を基軸として成立する﹁階層間格差﹂の発現を阻止ないし減殺して、 ︹地代+ 日雇労賃︺の水準をも往々上回る米作所得を上げうることがあげられる。その場合、旧慣的な﹁ゆい﹂的作業受委託 .機械貸借関係と、農業的・一般的臨時雇賃金をも実現しえない劣弱労働力が水稲作の主体たりうるという現在の米 作の技術的特性の二点が、その具体的要因の発現の度合いを一層強めていることが確認されねばならない。 都府県レベルにおいても、基本的には下層兼業農民が農地になお固着している状況は変わらない。昭和四〇年代後 半の﹁安定﹂兼業化を担った恒常的賃労働農家世帯においては、都市勤労者とほぼ同水準ないしそれ以上の生計費支 出を示す。しかし、それを支えているのは、家族員の低賃金労働市場での多就業形態である。基本所得源たる恒常的 −下層兼業農の動向と農地賃貸借− 五五 ヤ ヤ 1論 文− 五六 賃労働収入で家計費をまかなえず、臨時的賃労働や農業所得に依存せざるを得ないのが、統計からみたH兼恒常的賃 労働農家世帯の実態である。 この場合、米作の一日当り所得と臨時的賃労働の一日当り所得とを比べると、前者は後者をむしろ上回っている。 下層兼業農家における米作を低生産性であるとするのは、若干精確さを欠くと言えるし、 ﹁米生産費調査﹂における 下層の米作所得の過少の可能性、臨時的賃労働の賃金水準をも実現しえない劣弱労働力が、管理労働主体たりうると いう米作の特性、農業機械償却費の所得としての意味合い等を考慮すれば、この点は更に明白である。 下層兼業農家の農地固着のメカニズムは現在なお機能し続けているし、自立した労働者としての土地持ち労働者へ パェロ の移行はなお困難であると言わざるを得ない。 図 以上の結果として、現在の米価と他物価との相対関係に大きな変動がないならば、賃貸借市場への農地供給量 は限定的とならざるを得ないし、供給農地に関しても強い地代要求を持たざるを得ない。 従って、水稲請負耕作における地代は、下層の農業所得を上限とし、現実にそれ以下の水準にあるにしても、今後 その急速な低下傾向を言うわけにはゆかない。 現在の地代を﹁公正地代﹂と受け止めて、米作において︹C+V+R︺ ︵VH他産業均衡労賃︶を実現する経営も 都市近郊などに部分的に存在しているが、農地貸付量の限定性による借地圃場の分散などのため、現在の地代水準以 上を支払うことは困難であろう。 今後とも請負耕作は、世代交替などをきっかけに進展するであろうが、その耕地需要側は、稲作所得を家計の必須の 構成要素とする中農層からも構成される。そうした層における採算は、 ︹C+∂+R︺ ︵”一農業臨時雇賃金水準︶ であろう。そうした自作農的土地所有の論理と共通な地代負担方式を持つ農民が、現在既に都市近郊の一部で成立し ︵2︶ ている中型ないし大型機械化一貫体系を備えた︹C+V+R︺を実現する﹁借地型﹂経営に転換するのも、農地供給 量の限定性による借地圃場の分散等のために、容易ではないだろう。 伊藤氏の﹁資本型上層農﹂とそれに土地を提供する﹁土地持ち労働者﹂への二階級構成論、あるいはその二階級構 成への移行を﹁分解の基本論理﹂とみる梶井氏の見解には、やはり批判的にならざるを得ないのである。 ③ 問題は何よりも下層兼業農の農地固着を基本的に規定している低賃金構造の打破でなければならないし、農業 内的にはそうした下層農の農地を含めた広い意味での土地利用調整の手法の確立であろう。 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ︵1︶ この点に関して、御園喜博氏は﹁ごく一部の余裕ある小資産︵土地︶もち高級サラリーマン的兼業農家を別にして、圧倒 的に大多数︵の兼業農家︶は、不安定で窮迫的な﹃土地持ち労働者﹄として、低所得、低生活水準の多就業兼業農家世帯と しての経済しか実現していない﹂︵石橋・御園編﹃兼業農家の構造﹄東京大学出版会一九七五年、九頁︶と述べておられ る。傍点部分︵筆者による︶は、そのままでは首肯できないが、多就業による楼少な所得の寄せ集めで、 ﹁高い﹂消費支出 を示す農民の生活を総体として﹁低所得・低生活水準﹂として把握するのは、賛成である。 ︵2︶ 倉内宗一﹁借地料水準と請負耕作﹂ ︵﹃日本農業の基本動向に関する研究﹄農政調査委員会、一九七三年︶参照。 五七 ︹一九七六年六月成稿、同九月一部改稿︺ 一下層兼業農 の 動 向 と 農 地 賃 貸 借 一
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