高等学校における反転授業とゲーミフィケーションを 取り入れたヘルス

高等学校における反転授業とゲーミフィケーションを
取り入れたヘルスリテラシー教育の意識面に対する効果
Effects of Health Literacy Education Using Gamification
and Flipped Class on the Learning Awareness in High School
江藤 真美子*
井上 功一**
山田 政寛*, ***
Mamiko Eto*
Koichi Inoue**
Masanori Yamada*,***
九州大学大学院人間環境学府*
福岡県立糸島高等学校**
九州大学基幹教育院***
Graduate School of Human-Environment Studies, Kyusyu University*
Itoshima High School**
Faculty of Arts and Science, Kyusyu University***
<あらまし> 本研究では,高等学校の理科の授業において,反転授業とゲーミフィケー
ションを取り入れたヘルスリテラシー教育の,
意識面に対する効果について検討を行った.
具体的には反転授業に加え,グループで感染症について調べ,発表を行い,学校で一番の
脅威になる感染症を投票で決定する授業を行い,授業の実施前後で意識の変化について調
査した.その結果,感染症への関心・理解が高まり,情報収集をして冷静に対処できる等
ヘルスリテラシーへの意識が高くなったことが示された.
<キーワード>
反転授業 ゲーミフィケーション
知識構成型ジグソー法
1. はじめに
近年,疾病構造の変化に伴う健康課題に対
応していくため,世界的な健康政策により健
康教育が推進されている.我が国においても
Health Promotion の理念に基づいた実践
力の育成が求められている(文部科学省
1997)が,この実践力は Health Literacy
(以下“HL”と略す)の育成と強く関係し
ている.HL とは,
「健康情報を獲得し,理解
し,評価し,活用するための知識、意欲,能
力であり,それによって,日常生活における
ヘルスケア,疾病予防,ヘルスプロモーショ
ンについて判断したり,意思決定をしたりし
て,生涯を通じて生活の質を維持・向上させ
ることができるもの」と定義されている
(Kickbusch et al . 2013)
.Nutbeam(2000)
は,HL を問診票や医療的説明書を読み書き
できる機能的 HL,エビデンスに基づいた情
報等を得て理解するソーシャルスキルを含む
相互作用的 HL,さらに高次の認知スキルで
批判的に情報を分析し,管理することができ
ヘルスリテラシー
健康教育
る批判的 HL の3つのレベルを提唱し,
Health Promotion の成果と位置づけ,健康
教育で HL を育てることの重要性を示唆して
いる.
我が国においても学校における健康教育
の課題として,HL が育つ授業の必要性が指
摘されている(山本・渡邉 2011).しかし,
HL を育てる健康教育において,その知識が
Linn ら(2004)の WISE プロジェクトで言
われている,日常生活で役に立つ「使える」
知識であることを理解させることが重要であ
る.そこで,本研究では,新しく覚えたスキ
ルが役に立つ文脈を理解しながら,適切な形
でスキルを使う方法を学び,複雑な概念の理
解や経験的な学習につながりやすいゲームの
要素を教育現場に導入するといったゲーミフ
ィケーションの考え方(藤本 2015)を取り
入れた.マクゴニガル(2011)は,ゲームは
生活の質の向上の可能性を無限に高め,プレ
イし続ける意欲や世界の様々な問題を解決す
ることが出来る力を持っていることを示唆し
授業1 「 生物探究 」~エキスパートグループでの学び~
授業前学習 ・『 NHK高校講座 「 第4回生物 いろいろな微生物 」「 第5回生物 科学と人間生活 」を視聴
(宿題など) して、課題に取り組む 』という宿題を出し、事前学習させる。⇒内容については、3年生で生物
基礎の中で感染症に関連するほとんどの授業を終えている時期なので、今までの復習を兼ね
て視聴し、多角的にグループ学習できるようにする。
・各グループのジグソー法のエキスパートとして、グループ学習に参加できるように、事前に各
自に指定した感染症の各項目について割り振りし、調べてくるように宿題を出しておく。
授業
0分〜10分
内 容
備 考
導入
「 人はなぜ病気になるのか? 」についてスライドを使って簡単に
説明する。
10分〜30分 グループ学習(エキスパートグループ)
指定された感染症の
① 特徴 ② 感染経路 ③ 感染の広がるしくみ ④ 病気にな
るまでのしくみ ⑤ 予防方法 ⑥ その細菌・ウィルスの歴史
項目別にグループを作り(エキスパートグループ)、例えば感染経
路のグループではどんな感染経路があるのかをそれぞれが調べ
た学習内容についてグループ内で発表し共有する。様々な感染
経路があることを学ぶ。
⇒調べてきた内容をグループ
に伝えることになるので、何を
調べてくるのかを事前に用紙
を渡し、記入してくるようにして
おく。
30分〜40分 各グループでのまとめ
グループで共有した知識をまとめる。
⇒次回の授業でジグソーグ
ループでの学習時にエキス
パートグループの生徒が持つ
資料とする。
41分〜50分 全体のまとめ
今回の授業についてまとめ、宿題について
の説明と次回のグループ学習についての
説明を行う。
個人のまとめ
自分の考えをまとめる。
グループ学習をしたことから学んだことや感想を
書く。
図 1 1回目の授業
ている.
健康教育の中でも感染については,病棟看
7項目,感染症についての興味関心に関して
5項目,HL に関して 11 項目となっている.
護師の手指消毒についてゲーミフィケーショ
ンを取り入れた研究もされており(Lapao et
al. 2015),教育課程の中でも保健や理科で横
断的に扱われ,
重要な健康教育の一つである.
そこで,これらのゲーミフィケーションの考
え方を理科の授業の単元を用いて『インフェ
クション・バトル』を行い,自分たちの身近
な世界に引き寄せて考えながら学ぶ授業設計
を行った.
2. 方法
2.1. 研究対象
福岡県内の公立高等学校3年生1クラス
41 名(男子 22 名,女子 19 名)に,2015 年
7 月 8 日~13 日の間に4時間授業を実施した.
受講者には授業期間の前後に5段階評価
(1:全く当てはまらない-5:非常に当て
はまる)と自由記述の質問紙への回答を求め
た.その結果 36 名(回答率 87.8%)から回
答が得られた.質問項目は反転授業について
2.2. 授業デザイン
授業デザインについては1回目を図 1 にて
示 す. ICT 機器とし て は, Google 社の
Chromebook を使用した.学習管理システム
として Google Classroom を使用し,反転授
業の事前学習教材,課題提出エリアの設定,
これらの活用に関するインストラクションを
行った.反転授業の事前学習教材として,
NHK アーカイブより『NHK 高校講座 生物』
を利用した.事前学習課題として自分のグル
ープの感染症のエキスパート担当部分につい
て調べ学習してくることを課した.そして,
授業ではジグソー法による協調学習を取り入
れることで批判的 HL の育成を目指し,グル
ープ対抗で発表内容を競うことで相互作用的
HL の育成を目指した.発表後は,投票によ
り自分の学校の中で一番の脅威となり得る感
染症を決定する方式をとった.
2.3. 感染症の選択とグループ構成
感染症の選択については,身近な感染症で
あり,
毎年流行が見られる
「インフルエンザ」
,
2013 年に患者数が急増し,出生児が先天性風
疹症候群を発症するなど将来的にも知ってお
いた方が良いと考えられる「風疹」
,日本にお
いても死の病と恐れられていたが治療薬が出
来てから過去の感染症となっていたものの,
最近になって増加傾向になっていることから,
「結核」も感染症の一つに加えた。また,世
界で最初のワクチンである種痘法に関連して
おり、そのことが生物基礎の教科書でも扱わ
れている「天然痘」
,海外旅行中の若者の感染
例が報告され,コウモリなど実践校でも見ら
れる動物が関係する「狂犬病」
,2014 年夏に
約 72 年ぶりに日本で確認された
「デング熱」
,
これら6つの感染症について1グループ5~
6人で構成した。
また,ジグソー法のエキスパートグループ
は,
感染症について理解を深められるように,
感染症の特徴,感染経路,感染の広がるしく
み,病気になるまでのしくみ,予防方法,そ
の細菌・ウィルスの歴史の6つに分けた.課
題を調べてくる際には,
『現在・過去・未来』
図 2 導入スライドの一例
の脅威,
『世界・日本・福岡県・本校』での脅
威をもとに考えることを提示した.
2.4. 授業構成
1回目の授業では,導入として「人はなぜ
病気になるのか?」というスライドで,感染
症の機序と人類と感染症の戦いの歴史につい
て触れ,事前学習と合わせ,
『インフェクショ
ン・バトル』の趣旨について確認した.その
後「エキスパートグループでの学び」をテー
マに協調学習を行い,各自の特徴などを話し
授業4 「 生物探究 」~発表!〇〇高校1番の脅威~
授業外学習
( 宿題など ) 発表で必要な補足事項などを調べてくる。
授業
0分〜5分
内 容
発表の順番、方法について説明。
備 考
5分〜35分 各グループでまとめたことを発表。
<発表の流れ>
・発表時間は、5分程度×5・6グループ=30分程度。
・先に感染症の脅威の部分→予防で5分程度。
・自分のグループの感染症が1番脅威だと考えた根拠で発表。
しかし、そう思わないグループがあれば、どうしてそう思わない
のかを発表内容にしてもよい。
⇒後日Google Classroomに
アップし、振り返りができるよう
にする。
35分~45分 教員からのインストラクション
個別学習
・質疑応答
クラス全体の話し合
・全体の発表を終えて、感想や考えたことな い・知識の共有。
どをディスカッションするよう働きかける。
⇒クラス全体が感じたことや発
見した知識、感染症への考え
方などを共有できるように、教
員は授業の雰囲気を作る。
45分~50分 全体のまとめ
授業全体についてまとめ、後日「 〇〇高校
1番の脅威はこれだ! 」というアンケート結
果をアップしておくことを伝える。
⇒予防については、一番の脅
威についての結果発表を知る
と同時に予防方法についても
知ることが出来るようにしてお
く。(一番予防について知りた
いと思うタイミングで知ることが
出来るように)
個人のまとめ
各グループの発表を聞いて、学んだことや感想を
用紙に記入する。また、どの感染症が一番脅威に
なると思ったかもアンケート用紙に記入する。
図 3 4 回目の授業
表1 意識の変化
質
問
Q1 授業中, 先生の話をよくきいてると思
う
Q2 授業中、クラスメイトの発言や発表をよ
く聞いていると思う
Q3 授業についてわからないことがあった
時、先生に聞きに行ったことがある
Q4 授業に対して、自分は積極的だと思う
Q5 宿題をするのは手間がかかると思う
Q6 宿題をやらないといけないという意識
は高いと思う
Q7 理科への興味・関心が高い
Q8 感染症をはじめとする細菌やウイルス
等の微生物について、興味・関心がある
Q9 自分は感染症をはじめとする細菌やウ
イルス等の微生物について、よく理解して
いると思う
Q10 感染症をはじめとする細菌やウイルス
等の微生物について、学習することは大切
なことだと思う
Q11 感染症は正しい予防方法を知れば予防
できると思う
Q12 感染症をはじめとする細菌やウイルス
等の微生物についてできるだけたくさんの
予防方法について知りたいと思う
Q13 感染症の予防については、専門家に任
せておけばいいと思う
Q14 自分はどんな感染症が流行っても、自
分で予防方法について情報収集し、冷静に
対処できると思う
Q15 あなたは、病院や薬局からもらった説
明書(お薬手帳を含む)やパンフレットな
どを読んで、その内容が理解できる
Q16 あなたは、病院の先生から自分のけが
や病気についての説明(診察結果)を聞い
て、その内容を理解することができる
Q17 病気になりそうな時(初期症状)
、予
防しようと人に聞いたりインターネットな
どで調べて予防方法の情報収集をしたりす
る
Q18 自分は病気になりそうな時(初期症
状)
、自分の症状や考えを親や先生、友達な
どの身近な人、病院で医師に伝えることが
できる
Q19 見聞きした知識や情報をもとに、食事
に気をつかったり、寝る時間を決めるなど、
生活を変えてみたことがある
Q20 見聞きした知識や情報が、自分にもあ
てはまるかどうか考えることができる
Q21 たくさんある情報の中から、自分の求
める情報を選び出せていると思う
Q22 病気の予防やダイエットなどで、間違
った知識を信じていたことがある
Q23 いくつかの健康情報について、本当に
その情報は合っているのかなど聞いたり、
調べたりできる
平均値(SD)
事前
事後
3.83
(0.70)
3.53
(0.84)
2.31
(1.39)
2.86
(0.99)
3.25
(1.11)
3.44
(1.08)
2.89
(1.12)
2.94
(0.98)
4.06
(0.67)
3.92
(0.69)
2.56
(1.32)
3.08
(1.00)
3.50
(0.85)
3.56
(0.84)
3.92
(0.87)
3.53
(0.70)
2.31
(0.86)
Z
p
事前
事後
4.00
4.00
2.83
p < 0.01
4.00
4.00
2.12
p < 0.05
2.00
2.50
1.94
p < 0.1
3.00
3.00
1.31
n.s
3.00
4.00
0.93
n.s
4.00
3.50
0.23
n.s
3.00
4.00
3.46
p < 0.01
3.00
3.00
3.31
p < 0.001
2.97
(0.65)
2.00
3.00
4.08
p < 0.001
4.06
(0.89)
4.25
(0.77)
4.00
4.00
1.94
p < 0.1
4.06
(0.79)
4.17
(0.70)
4.00
4.00
0.73
n.s
4.25
(0.73)
4.11
(0.71)
4.00
4.00
0.64
n.s
2.67
(0.89)
2.39
(0.87)
3.00
3.00
1.51
n.s
2.72
(0.78)
3.25
(0.60)
3.00
3.00
3.34
p < 0.001
3.33
(0.89)
3.69
(0.79)
4.00
4.00
2.71
p < 0.01
3.61
(0.96)
3.92
(0.73)
4.00
4.00
2.06
p < 0.05
3.28
(1.16)
3.36
(0.96)
3.50
3.00
0.52
n.s
4.00
(0.63)
3.81
(0.86)
4.00
4.00
1.38
n.s
3.28
(1.00)
3.22
(0.90)
3.00
3.00
0.39
n.s
3.81
(0.67)
3.25
(0.77)
3.31
(0.92)
3.89
(0.82)
3.39
(0.80)
3.39
(0.77)
4.00
4.00
0.95
n.s
3.00
3.00
0.79
n.s
3.00
3.00
0.39
n.s
3.58
(1.00)
3.53
(0.84)
4.00
4.00
0.09
n.s
合い,感染症によって様々であることを学ん
だ.図 2 に導入スライドの例を示す.
中央値
2回目の授業では,事前学習として自分の
グループの感染症の微生物がもし生息してい
るとしたらどこにいると考えられるか予測し,
質問紙の結果では,
「Q1 授業中,先生の話を
校内地図を用いて示し,身近に感じられるよ
よく聞いていると思う」や「Q2 授業中,ク
うにした.そして,授業では「〇〇高校1番
ラスメイトの発言や発表をよく聞いていると
の感染脅威」をテーマに各感染症グループで
思う」という質問に有意差がみられ,積極的
協調学習を行い,感染症の全体像をまとめる
な授業参加を感じられるようになっている.
作業を行った.
また,
「Q7 理科への興味・関心が高い」や「Q8
3回目の授業は,
「感染症の脅威から〇〇高
感染症をはじめとする細菌や微生物について,
校を守ることはできるか?」として,各グル
興味・関心がある」といった興味・関心と,
ープに教師からヒントカードが渡され,違っ
「Q9 自分は感染症をはじめとする細菌やウ
た視点から感染症を見直す“ゆさぶり”が与
ィルス等の微生物について,よく理解してい
えられた.
ると思う」という理解についても有意差がみ
そして最後の4回目の授業(図 3)では,
られ,意識の変化が確認された.
各グループ5分程度で自分たちのグループの
HL については,
「Q14 自分はどんな感染
感染症がいかに自分たちの高校にとって脅威
症が流行っても,自分で予防方法について情
になり得るかという点を中心に予防方法も絡
報収集し,冷静に対処できると思う」という
めながら発表した.発表後は,一番自分たち
批判的 HL や「Q16 あなたは,病院の先生か
の身近な生活の中で脅威になる感染症に対し
ら自分のけがや病気についての説明(診察結
て投票した.
果)を聞いて,その内容を理解することがで
きる」という機能的 HL について,有意な差
3.結果・考察
3.1.意識面の変化
質問紙の回答データについて,Wilcoxon の
符号付順位検定を用いて,事前事後の変化に
ついて分析を行った.
その結果を表1に示す.
が見られた.しかし,
「Q19 見聞きした知識
や情報をもとに,食事に気を遣い,寝る時間
をきめるなど,
生活を変えてみたことがある」
という批判的 HL の行動への変化について有
意差は見られなかった.自由記述においてグ
図 4 反転授業の負荷などに関する評価
ループ学習で学んだ感想については,
「皆それ
ぞれのやり方で調べているのだなと感じた」
「感染症はそれぞれ全く別物だと思っていた
けど、感染経路とか類似点があったりしたの
で結構面白いなと思った」
「グループで話し合
いをすることでいろいろな情報が飛び交って
いた」
「病気の中でも特徴を調べる人,予防方
法を調べる人,予防方法を調べる人などを分
けたことで一人一人が自分の担当のことを深
く調べるので,たくさんの知識を詳しく知る
ことができる点がとても良いなと思った」と
ジグソー法でのグループ学習に関して興味・
関心を高く持ち, 取り組まれたと思われる.
3.2. 反転授業の負荷について
反転授業については,図 4 に示す.全体的
に大きな負荷を生徒に与えることなく, 好意
的に受け入れられたと思われる. たとえば
「事前に講義内容を聞いてくるのは負担だっ
た」が 2.85, 「事前に授業の教材を見て,課
題に取り組み,授業ではグループワークを主
にすることで,授業内容理解が進んだ」3.51,
「他の授業も,事前に講義を聞いてきて,授
業はグループワークや応用問題を取り組む時
間を増やしたほうがいいと思う」3.72 という
平均値であった.これらのことから,反転授
業に対して生徒たちは有効性を感じていると
推察される.
3.3. ICT 機器類の活用について
ICT 機器類の活用については,図 5 に示す
ように,
「支給されたノートパソコンはグルー
プワークに役に立った」4.51,
「支給されたノ
ートパソコンは自分の学習に役に立った」
4.00, 「今後もノートパソコンを活用した授
業を受けてみたい」4.18 といった高い結果が
みられ,生徒たちは ICT 機器の活用について,
学習に役立つと感じられていることが示され
た.また,自由記述においても「たくさんあ
る情報から自分で探すところがよかった」や
「家で提示されたサイトを見ながら課題に取
り組むことは面白く意欲向上につながった」
,
また「多くの情報が自分の新しい知識になっ
た」と回答されている.
4.今後の展望
本研究において,反転授業とゲーミフィケ
ーションを取り入れた健康教育におけるヘル
スリテラシー育成について,意識面において
効果があることがわかった.反転授業での個
人理解の差を協調学習で埋め,さらにゲーミ
フィケーションの要素を入れることで授業参
加への積極的態度と今までになかった様々な
視点での思考を促すことができた.
しかし,発表によってどう競うかという趣
旨についてあまり理解が得られなかった部分
図 5 ICT 機器・アプリケーションの使用感に関する評価
もあり,他のグループの発表を聞いて,その
e/0008/190655/e96854.pdf(参照日 2015.
場で発表の流れを変え,付け足しをするグル
11.1)
ープもあった.ゲーミフィケーションの要素
ジェイン・マクゴニガル(2011).妹尾堅一郎
である「〇〇高校で一番の脅威になる」とい
(監修)
,藤本徹・藤井清美(訳)
,幸せな
う部分をアピールできていなかったグループ
未来は「ゲーム」が創る.早川書房,東京
もあり,発表内容を競うというゲーミフィケ
Lapao, L.V., Marques, R.,Gregorio, J.and
ーションの要素を取り入れた形式について,
Mira-da-Silva,
もっと理解が得られるようにすることも必要
self-improvement hand-hygiene compliance
だろう.今後は,事前にアニメーションやビ
in a hospital ward: combining indoor location
デオを使って簡単な導入ストーリーを見せる
with
など, 内容面への没入を促す部分の改善が求
Antimicrobial
められる.また, ICT 活用の期待も大きいこ
Control
とから, ICT とブレンドできる部分の検討も
10.1186/2047-2994-4-S1-I11
進めていく予定である.
M . (2015).
gamification
presentation ,
data
Resistance
2015,
Nurses’
and
4(1):11
Infection
doi:
Linn, M.C., Davis, E.A., and Bell. P. (2004).
Inquiry and Technology. In M.C. Linn, E.A.
謝 辞
本実践研究の実施にあたり,公益財団法人
パナソニック教育財団より研究助成を受けた.
また,福岡県教育庁,ミカサ商事株式会社の
ご支援により,実施された.この場にて感謝
を申し上げる.
Davis,
P.
Bell
(Eds.),
Internet
Environments for Science Education (pp.
3-28). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum
Associates
Nutbeam,D .(2000). Health literacy as a public
health goal: a challenge for contemporary
health
参考文献
藤本徹(2015).ゲーム学習の新たな展開,
放送メディア研究,12:235-252
Kickbusch, I., Pelican, J.M., Apfel, F. and
Tsouros, A.D. (Eds.)(2013). The Solid Facts:
Health Literacy
http://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_fil
&
education
and
communication
strategies into the 21st century , Health
Promotion International 15(3):259-267
山本浩二,渡邉正樹(2011).日本の中学校健
康教育における課題とヘルスリテラシー
の必要性に関する一考察-中学校新学習
指導要領の実施に向けて-.東京学芸大学
紀要 芸術・スポーツ科学系 63:87-97