IBC2015 速報 !! IBC2015 速報 !!

IBC2015
IBC2015 速報
速報 !!
!!
石田 武久 観測史上初と言われた記録的な猛暑の夏
キポール空港と IBC 会場の中間付近に手頃
動向を概観してみたい。詳細な技術的動向
を越え、ようやく秋風が感じられだした東
の宿を確保した。ホテルと空港間はシャト
や各企業の状況については次号にて詳説す
京から直行便なら 12 時間あまりで、晩秋
ルバスが運行されており、空港駅からコン
ることにする。
の肌寒さが感じられる北海に面したアムス
ベンション会場へは、別のシャトルバスか
テルダムに行って来た。言わずもがな、4
会場最寄りの RAI 駅までは電車を利用し通
今年の IBC は 9 月 10 から 15 日まで開
月米国ラスベガスで開催される NAB、11
った。コンベンション会場は RAI 駅から歩
催された。全体的には、世界 160 ヶ国以
月幕張で開かれる Inter BEE と並び、世界
いて 10 分位、広大な公園のような敷地の
上の 1700 社・団体から出展があり、来場
3 大放送機器展である IBC の取材が目的で
中にある。
者数は NAB に比べると少ないが InterBEE
展示会場は NAB や Inter BEE のように
よりは多く、昨年を上回る 55128 人を数
昨今の円安の影響もあり、航空運賃は割
大きなホールに集約されておらず、別図に
え盛況だった。会場内を廻ってみた印象で
高となり、ホテル代は秋の観光シーズンと
あるように大中小規模の 14 ものホールが
は、日本からの展示関係、メディア関係、
も重なる上、IBC には世界中から大勢の見
通路や渡り廊下、階段を介して複雑に入り
見学者は少ないように感じた。
学者が来るのを見込み高騰していた。取材
組んでいる。その上、今年は第 4 ホール横
に地の利が良く安いホテルを見つけるのは
に新施設として Amtrium が開設された。
広告は、例年に比べ日本企業より欧米系や
難しく、インターネットでホテルを探しス
各ホールに分散する展示ブースやコンファ
豪州企業の看板が目立っていた。日本企業
レンス会場を廻るには時間と体力も要し、
の出展状況は、幾つか常連企業が出展をや
重いカメラとショルダーを抱えた取材はか
めたのもあったが、概ね、ブースの規模や
なりこたえる行程だった。
展示レイアウトも例年通りだった。日本企
ある。
写 1:スキポール空港からの電車で会場へ
コンベンション会場内外の壁面の大きな
それはともかく、昨今の成長、変革が目
業の御三家ともいえるソニーは第 12 ホー
覚しい最新放送・映像技術に直接触れ、そ
ル全面を使い、パナソニックは第 9 ホール
れらを使ったコンテンツやサービスを体感
に、キヤノンは第 11 ホールにてそれぞれ
できたことは得がたいことだし、何よりも
広大な展示ブースを設け、日本が誇る放送・
多くの人達と交流できたことは楽しい日々
映像メディアをリードする最先端技術を公
だった。本稿では実際に現地でこの目で見
開し、大勢の見学者を集めていた。
た IBC の状況、そこで注目されていた放送・
また、NTT グループは第 2 ホールにて
映像・情報メディアの展開や最先端の技術
世界に冠たる符号化や配信・伝送関連技術
を、日立国際電気や池上通信機、JVC は第
11 ホールにて最新の 4K/8K カメラなど
を、フジフイルムは 4K 対応の多彩なレン
ズ系や記録メディアを、朋栄は第 2 ホール
にて 4K や IP 制作環境に備えた多彩な機器
を、NEC は第 8 ホールにて符号化関連技
術やデジタル放送機器などを展示していた。
写 2:コンベンション会場レイアウト
16
FDI・2015・10
写 3:新設された AMTRIUM の情景
近未来の技術を集中して公開する第 8 ホー
ルに隣接する Future Zone では、NHK が
IBC2015 REPORT
写 4:場内随一の規模を誇るソニーブース
写 9:最大の動向は 4K 関連技術
写 7:新設のビルで独立展示した Imagine
写 10:多くのブースで見られた HDR 技術
写 5:最新技術で評判のキヤノンブース
写 8:雰囲気、印象が一変した SAM(旧 Quantel)ブース
ンの仕方もまったく違っていた。長年放送
業界で親しまれてきた Quantel のブランド
名が消えたのは、時の流れかも知れないが
一抹の寂しさを感じた。コンテンツ業界の
写 11:ますます進展する IP 化の潮流
雄の AVID は例年より大きめのブースで従
写 6:8K を公開し人気の NHK ブース
来以上に多彩な展示をしていたが、常連だ
った AutoDesk はブース出展を見送り市内
2020 年東京オリンピックを目標に着々
の別会場で独自の公開をしていたようだ。
と準備を進めている 8K SHV の最新機器
これまでも何度か社名を変えてきた
と そ れ ら を 使 い 制 作 し た SHV コ ン テ ン
GrassValley は、 昨 年、BELDEN Brand
ツ を 公 開 し、BBC R&D、NTT Network
傘下になったことを受け、従来とひと味変
Innovation Lab. や ETRI Korean
わった雰囲気の大きなブースで、派手めな
Research & Development Organization
パフォーマンスと共に多種多彩な機器、ソ
などが特徴的な最先端技術を公開していた。
リューションを公開し大勢の見学者を集め
IBC には、当然ながら欧州企業をメイン
写 12:人気のドローン技術の公開
ていた。
に北米、豪州、中近東そして韓国や中国系
NHK、 ド ル ビ ー、 ソ ニ ー、GrassValley
今回の技術動向の注目点を幾つか上げて
など多くのブースで関係技術が公開され注
に企業の合従・連衡が進んでいる影響で、
おこう。最大のテーマと言えるのは超高精
目を集めていた。もうひとつの注目の動向
企業名やブランド名が変わり、レイアウト
細映像 U HD である。ほとんどの機器、シ
は IP 化で、撮影・制作系、配信系まで多く
や雰囲気ががらりと変わった企業も目につ
ステムが 4K 対応となり、符号化、配信系
の企業から様々な出展がなされていた。さ
いた。昨年、HARISS から企業名を変えた
も HD のみならず 4K 対応になっていた感
らに昨今、急速に注目を集めていたのが、
Imagine は、新装成った Amtrium に単独
があった。8K については Future Zone で
取材、制作用のドローン技術で、屋外の特
ブースを設け、自社や連携する企業の製品
NHK が SHV システムを公開したが、他に
設会場での実演だけでなく、屋内でも中国
やシステムを展示し、さらに LiveShow と
も数は少ないながら 8K を視野に入れた展
企業など多くのブースで実機が展示されて
銘打ったパートナー企業のコンファレンス
示物も見られた。
いた。
企業も数多く出展している。最近、世界的
やプレゼンテーションをし大勢の聴講者を
集めていた。
今回注目ポイントとしては、画素数、解像
度だけでなく HDR(High Dynamic Range)
昨年 Snell を吸収合併した Quantel は企
映 像 で、Advanced in Technology の セ
業名を SAM(Snell Advanced Media) と
ッションでも講演されていたが、展示会場
変え、ブースの雰囲気やプレゼンテーショ
でも欧州の放送コンソーシアムの DVB、
Ph.D. Takehisa Ishida
映像技術ジャーナリスト
電気通信大学特任講師
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FDI・2015・10