「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択

TTI PRESS
豊田工業大学プレスリリース
vol.96
Toyota
Technological
Institute
2009.4.23
研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし (豊田佐吉翁遺訓 豊田工業大学建学の理念)
文部科学省
平成21年度「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択
プロジェクト名 「局所構造制御によるスマート材料・素子の研究」
平成21年度の文部科学省 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に、豊田工業大学(学長:
生嶋 明)のプロジェクトが採択されました。この事業は、大学の経営戦略や研究戦略に
基づき、各大学が特色を活かした研究を実施するため、その研究基盤の形成を支援
することを目的に、文部科学省が実施している事業です(平成20年度より名称変更。旧名称「私立大学
学術研究高度化推進事業」)。
このたび採択されたプロジェクトは、「局所構造制御によるスマート材料・素子の研究」
(センター長: 神谷 格)です。本プロジェクトの内容は以下の通り。
■研究目的・意義
【目的】
材料・素子の開発・研究に関する問題の
一つに、表面・界面、欠陥等の「局所構
造」がある。 設計通り作製されたはずの
材料・素子もその表界面や欠陥により、例
えば発光素子・太陽電池の効率の低下、
酸化等表面劣化による短寿命化、素子機
能の質的変化等、特性が左右される。
本研究では、「局所構造」の基礎的な物
性を研究し、この理解と制御を通じこれを
積極的に利用して材料・素子開発への基
盤を構築することを目的とする。
特に高性能・新機能・新材料等の特徴を
持ち、エネルギー・環境・健康維持等に寄
与するものを「スマート材料・素子」と位置
づけ、「局所構造」によるエネルギー変換
の質的・量的制御を通じこれらの実現を
目指す。
図1:参加研究者の保有する要素技術を土壌に、花・葉に
相当する「スマート材料・素子」を咲かせるために、幹であ
る「局所構造制御」の科学と技術をしっかり育てる。そし
て「局所構造制御」により、材料・素子研究に新たな視点
を創造する。
【意義】
「スマート材料・素子」を題材に、これまでの作製法に留まらず、「局所構造制御」という切り口で、
(次頁へ)
新規材料や機能を創出する展望を開くところに本プロジェクトの意義がある。
〒468-8511 名古屋市天白区久方2-12-1 豊田工業大学渉外広報部
上中健人、橋本信也、金光美佳
TEL:052-809-1778 FAX:052-809-1741 e-mail:[email protected] URL: http://www.toyota-ti.ac.jp/
■研究体制
量子界面物性(神谷教授:統括、結晶成長、表面界面物性)、半導体(大下准教授:太陽電池、結
晶成長、欠陥制御)、表面科学(吉村准教授:表面物性、ナノカーボン作製・応用)と連携大学院講
座(豊田中央研究所 元廣教授:エネルギー・環境技術)の研究室が協力し、1)表面・界面、2)構造
欠陥等の「局所構造」の制御の基盤研究に基き、a)光機能材料・素子、b)化学機能材料・素子等の
「スマート材料・素子」の実現・高効率化・新コンセプトの考案を題材に進める。
特に局所構造への原子分子吸着等のように、テーマ横断型の課題について、重点的に基礎から
応用までを含んで取り進める。 要素技術を土台に、「スマート材料・素子」という花や葉をつけるた
めの「局所構造制御」技術という幹として育てるという概念を前頁の図1に示す。
■研究により期待される効果
従来材料・素子の特性は、材料の選択・構造・大きさで決まると考えられてきたが、近年、上述の
「局所構造」の影響が大きいことが認識されてきている。本研究では、逆に「局所構造」という切り口
での「エネルギー変換過程=機能」の制御を考えることで発想の転換を図り、「局所構造制御」によ
りなし得る材料・素子開発の例を示すと共に、その基盤構築により、新たなアプローチが提供される
ことが期待できる。 即ち「局所構造制御」により、機能の量的向上(例:蛍光体の効率向上)に留ま
らず、質的転換(例:発光材料からの化学機能創出)も示すことで、個々の材料の機能に関し従来捕
らわれていた発想の殻を破るための展望が示されることが期待できる。
こうした考え方・手法の応用として、特にエネルギー・環境・健康、等の問題に対応する「スマート
材料・素子」を想定している。 この例として、表界面のパシベーション(不活性化)による太陽電池
や発光素子の効率向上、不純物導入・表面改質による光触媒の高効率化や機能付加、微小不
純物吸着による電子物性変化を利用した環境・健康対応センサー、等が考えられる。 本研究で
は、これらを基礎的な電子物性の理解の上で行い、開発へ一石を投じたい。
ナノ粒子を用いた「局所構造」改質による機能制御
の概念図。ここでは、「局所構造」である表面終端・
配位子等の制御により、構造内部での電子的な緩
和過程=エネルギー変換過程が変えられることを
示す。その結果、例えば発光・熱放出・化学反応等
の機能が選択できる。
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■年次計画
a)光機能材料・素子、b)化学機能材料・素子に関し、「局所構造」の基礎的な物性の理解、作
製・制御法、構造形成・制御、機構検討といった物性基礎研究を軸に据え、素子設計・試作・改
良といった応用研究をスパイラルアップで取り進める。
1年目 大型装置・設備の整備、光・化学機能材料の試作、基礎データの取得、物性解析
2年目 光・化学機能材料・素子の試作、基礎データの取得、物性解析、局所構造制御法検討、素子設計
3年目 光・化学機能材料・素子の試作と局所構造制御、基礎データの取得、物性解析、新規素子設計
4年目 光・化学機能材料・素子の試作と局所構造制御、物性解析、原理検討、新規素子設計・試作
5年目 光・化学機能材料・素子と局所構造制御、新規制御法と機能提案、物性解析、原理検討、新規素子試作
【参考】
本学では現在、上記7つの大型研究が採択されています。
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