北海道札幌英藍高等学校 青山 和弘教頭

旅行先現地調査レポート
グアム(4泊5日)
北海道札幌英藍高等学校
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教頭
青
山
和
弘
はじめに
北海道札幌英藍高校(以下「英藍高校」という。)は、札幌市北区にある北海道札幌篠路高校と
北海道札幌拓北高校の再編統合により、平成25年4月に開校した全日制課程普通科単位制(募集
人員320名)の高校です。
開校3年目を迎え、現在945名の生徒が在籍し、学習や部活動などに励んでいます。
開校当初から、生徒一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育て
ることを通して、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していくことを
促す教育、いわゆる「キャリア教育」の視点に立った教育活動を推進しています。
現在のところ、見学旅行は近畿地方(京都、大阪、奈良)と関東地方(東京、千葉)を目的地と
して実施しており、名所旧跡の見学やテーマパーク訪問のほかに、キャリア教育の観点から、生徒
が東京や横浜の企業、医療機関、公共機関、大学、大使館などを訪問し、インタビューや見学、職
業体験などを通して見聞を広めるとともに、将来進むべき方向性や職業選択の在り方についての理
解を深める機会を設定しています。
今回の調査では、英藍高校(ひとつの年次が8学級)のような学校が海外見学旅行を計画・実施
する場合を想定して調査を行いました。
このレポートの構成については、各日の調査テーマに基づき、学校が見学旅行を計画するに当た
って検討する観点から記述します。
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(1)
調査結果等
8月3日(1日目)-移動日
新千歳空港集合が9時55分というのは、札幌市内の学校の生徒が集合するには不都合のない
時刻です。新千歳空港の国際線ロビーはかなりの人数であっても、ほかの旅行者の不便にならな
い程度の集合スペースが確保できます。
生徒数が多い場合は、搭乗手続きや出国審査などにかなりの時間を要することになるので、機
内に持ち込むことのできない物品や預ける荷物などについての事前指導を徹底する必要がありま
す。
機内の様子
グアム国際空港ロビー
-1 -
機内では大きな問題はないと思いますが、到着時に入国審査で提出する用紙(機内で配布)へ
の記入方法がわかるように、可能ならば記入例を配布するなどの配慮が必要だと思います。
大規模校が海外見学旅行を計画するに当たって検討する重要な要素の一つは、航空機の乗客定
員がどの程度であるかということです。国内での見学旅行では、320名全員が1度に搭乗する
か、2班に分けて2つの便に搭乗するかのどちらかになると思いますが、今回搭乗したユナイテ
ッド航空の航空機の乗客定員は120名ほどですので3班に分ける必要があります。また、1日
1便の運行ですから、当初から3班に分けて出発日をずらす必要があります。
英藍高校のような規模の学校では生徒を3班に分けて、1日ずつずらして出発し、現地のホテ
ルで合流するといった方法をとることになると思います。
(2)
8月4日(2日目)-ホテル視察・グアム島内研修メニュー調査
ア
ホテル視察(レオパレスリゾート)
1、2日目に宿泊したホテルです。空港から車で25分、グアム中心街から車で35分ほど
の丘陵地に立地しています。テニスコート、陸上競技場、サッカー場、ソフトボール場、野球
場、ゴルフコース、多目的グラウンド、プールが備わっているので、スポーツプログラムの実
施に適しています。
また、ホテル本体とスポーツ施設等がほかの施設や商店街と隔絶していることから、生徒の
安全管理という点では安心できるという長所があります。その一方で、海岸(ビーチ)や商店
街との往復には交通機関(バス)での移動が必要となります。
朝食はホテルでビュッフェ方式です。7時30分から食事ができるとともに、座席数もかな
りあるので、大人数でも混乱はないと考えられます。
レオパレスリゾート
イ
ホテル内の売店
グアム島内研修メニュー調査
この日は、いわゆる観光地、名所旧跡、大型商業施設を見学しましたが、8学級つまり8台
のバスがまとまって駐車するスペースが十分確保されているとは言い難いことから、2班ある
いは3班の分けて、見学地の順序を工夫することが必要だと思います。
大型商業施設については、一般客も食事をしていること、食事は各生徒が注文することなど
から、昼食とショッピングの時間を十分に確保する必要がありそうです。
グアム政府観光局表敬訪問では、地元の高校教諭との情報交換を行いましたが、現在、グア
ム島にある高校が受け入れている、日本の高校がのべ160校とのことで、高校の受け入れは
限界状態とのことでした。受け入れ時期や規模、内容を検討することで実施が可能になるとの
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ことです。交流内容としては、スポーツプログラムやダンスプログラムなどが考えられます。
受入先の高校と事前の打ち合わせをしっかりすることが必要です。
南太平洋戦没者慰霊公苑
(3)
ショッピングモール内での昼食
8月5日(3日目)-交流施設見学・体験施設見学・ホテル見学・商業施設見学
ア
交流施設見学
(ア)
グアム大学
1952年創立の、島内唯一の総合大学で海洋学が有名な大学です。現在約3,000名の学
生が在籍しています。
大学として「English
Adventure
Progu
ram」を用意し、日本の大学生や高校生とグ
アム大学生との交流を実施しているとのこ
とです。学生はボランティア登録しており、
300名くらいまでの受け入れが可能との
ことです。
プログラムには、キャンパス・ツアー、
伝統料理体験、ヤシの葉細工体験、伝統ダ
ンス体験、英会話体験、熱帯の海洋生物の研
グアム大学
究施設見学などが用意されています。高校生
の研修ということであれば、午後の半日日程が最適とのことです。
(イ)
グアム・コミュニティ・カレッジ
日本の学校制度に当てはめると、短期大学に相当します。学生は2,500名ほどで、そ
の多くが18~21歳とのことです。
交流事業として受け入れることができる人数は最大100名ほどとのことです。学内の施
設を利用するとすれば、スポーツ体験(サッカー、バレーボール)、料理体験、ヤシの葉の
帽子づくり体験ができます。学外での交流では、学生が高校生を案内(中心街のタモン地区)
することも可能です。
イ
体験施設見学
昼食がバーベキューということで、ローカルスーパーで買い物をしましたが、多数の生徒の
場合では、生徒が購入する食材がほぼ同じものであることが予想されることから複数の大型ス
ーパーを利用することになると思います。昼食場所として私たちが利用したオーシャンジェッ
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トクラブは英藍高校の規模であっても生徒全員が一度にバーベキューをすることが可能です。
また、オーシャンジェットクラブは各種のマリンスポーツ、ダンス体験、ヤシの葉の細工体
験などができます。
生徒全員の体験、あるいは選択コースの一つとして設定することが考えられます。
ウ
ホテル見学
日本の高校の利用実績の多いホテル(パシフィックアイランドクラブグアム、オンワードビ
ーチリゾート)を見学しましたが、どちらも日本の観光地にある大型ホテルとほぼ同様の施設
や設備を備えています。それなりの制限はあ
るものの、全体指導ができる会場、班長会議
ができる会場(スペース)、出発や帰着確認
ができる会場(スペース)があります。また、
ホワイトボードもあります。
そのほか、どちらのホテルも海岸(ビーチ)
に面していること、プールがあること、バー
ベキュー施設があること、部屋にエキストラ
ベッドを用意できること、日本人スタッフが
常駐していることなど、生徒を宿泊・滞在させ
ホテルの客室(ツインルーム)
ることについては、国内のホテル宿泊とほぼ同
じレベルであると思います。
エ
商業施設見学
毎週水曜日夕刻、チャモロビレッジナイト
マーケットが開催されています。日本の屋台
村やお祭りの縁日に似ており、多くの人で賑
わっていました。夕方からの営業なので、夕
食をとることになりますが、そう高くはない
金額で先住民であるチャモロ人の伝統料理を
食べることができます。土産物の出店もあり
ます。
この施設を見学(体験)箇所とする場合には、
マーケットがハガニア地区にあることから、ホ
チャモロビレッジ内のホール
テルがタモン地区である場合は、生徒の安全面に配慮してホテルからマーケット間は貸切バス
を用意したほうがよいと考えられます。
(4)
8月6日(4日目)-ホテル視察・自主研修
ア
ホテル視察(パシフィックスターリゾート&スパ)
今回の調査では、前半2日間をレオパレスリゾートに、後半2日間をパシフィックスターリ
ゾート&スパに宿泊しました。パシフィックスターはタモン地区にあり、海岸部に立地してい
ます。コンビニやスパーマーケット、商店街も徒歩圏内にあるので、生徒の自主研修やショッ
ピングに便利な立地となっています。また、施設面では大宴会場(着席時400名)、屋外宴
会場(着席200名)、プールがあります。
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ホテルの部屋からの景色
ホテルの朝食会場
イ
自主研修
生徒が最も利用する可能性が高いタモン地区
の商店街を徒歩とバスで見学しました。
地元の人が普段利用する大型スーパーマーケ
ットがKマートです。広い店内には、日常生活
用品(日用品、雑貨、衣料品、電化製品)
はもとより、観光客用のお土産品が売られてい
ます。
出入口の近くには、観光客がよく訪れる名所
や商店街を結ぶシャトルバスの停留所があり、
20分間隔ほどのダイヤで運行されており、移
Kマート
動に大変便利です。加えて、乗降客の多い場所
には案内人が常駐しているので、わからないことがあれば確認することができます。
タモン地区は西海岸にあるタモン湾に面した地域で、リゾートホテルやショッピングモール、
レストラン、コンビニエンスストアなどが集中しています。いくつかの商店街に入りましたが、
日本人をはじめとして多くの観光客がショッピングや食事をしていました。店舗のスタッフの
中には日本語が通じる人もいるので、片言の英語と日本語で意思が通じます。
帰路はメインストリートであるパレ・サン・ヴィトレスロードを徒歩でホテルまで戻りまし
たが、途中にはコンビニエンスストアやファストフード店、カトリック教会などがあり、グア
ムの街の雰囲気を感じとることができます。
パレ・サン・ヴィトレスロード
シャトルバス停留所
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なお、自動車は右側通行なので、道路を渡るときは後ろから来る車については歩行者から見
て左側の車に気を付けなければなりません。また、横断歩道の信号はすべてが押しボタン式な
ので、ボタンを押し忘れていると、いつまで経っても信号の色が変わらないことになります。
自主研修については、国内で実施する見学旅行では、沖縄などの場合ですと午後から班ごと
の自主研修(国際通りとその周辺)とし、夕食をとってホテルに戻るといった設定にしたりし
ます。グアムの場合もタモン地区で半日程度の自主研修を設定することが可能と思われます。
(5)
8月7日(5日目)-移動日
新千歳空港行きの航空機の出発時間が7時ですので、空港には5時までに到着することになり
ます。したがって、ホテルでの起床時間は4時ころに設定する必要があります。
直行便の航空機のダイヤの都合上やむを得ま
せんが、生徒の健康管理という観点から、教育
活動の一環として実施する見学旅行の日程とし
てはかなり無理があるといわざるをえません。
早朝にもかかわらず、空港ではお土産店など
が営業しているので、買い忘れた物を購入する
ことはできます。また、英藍高校のような規模
の生徒数でも集合できるスペースは確保できる
ので、連絡や諸注意をすることに支障はありま
せん。
搭乗するに当たっては1日目と同様に持ち込
帰路の航空機の窓からの景色
み制限があるので、事前に指導しておくことが必要です。また、機内では入国に関する書類など
への記入作業があります。
3
調査の成果と検討すべき課題
次に、今回の調査を通じて得ることができた成果と、検討することが必要であると考えられる課
題を整理しておきます。
(1)
成果
ア
実質は1日目と5日目が移動日となるので、2~4日目という3日間を確保することができ
る4泊5日が望ましいと思います。
イ
ホテルには日本人スタッフが常駐していること、医療機関の中には日本人スタッフがいるこ
と、商業施設にも日本語が通じる人が多いことなど、海外を初めて体験する割合が高い高校生
にとっては好適地だと思います。
ウ
日中は危険な雰囲気や気配を感じられず、安全面からみて自主研修等を実施することは可能
であると考えられます。
エ
直行便の場合、4時間程度の飛行時間であるとともに、時差が1時間なので生徒の健康面に
も大きな影響を与えないと考えられます。
オ
研修テーマとして、次の①~⑤のようなテーマが考えられます。
生徒全員が同じテーマで行動することも考えられますし、いくつかのコースを設定してその
中から生徒に選択させることも可能であると思います。
①大学生とのコミュニケーション体験・交流
今回の調査では、特に、グアム大学のプログラムが興味深いと思いました。事前準備が大
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きな負担にならないこと、用意されているプログラムから生徒が興味・関心に応じて選択
して体験できること、日程(時間)的に無理がないことという理由からです。
今日の外国語(英語)の学習では、「聞く」「話す」「読む」「書く」という四技能の中で
も特に「聞く」「話す」が重要視されています。限られた時間ですが、大学生との交流は生
徒にとって有意義な経験になると思います。加えて、生徒の海外留学や進学のきっかけにな
る可能性もあります。
②歴史学習
チャモロ文化、スペインによる統治時代、アメリカ合衆国による統治、日本による統治、
戦後のグアムという観点から見学地を設定できると思います。
世界史と日本史を結びつけて歴史を大きくとらえる視点での学習をすることができると思
います。なお、平和学習に特化して史跡や公園、施設を見学することも考えられます。
チャモロ人の踊り
旧日本軍の防空壕
③地理・環境学習
グアム大学の海洋研究施設、自然環境(タロフォフォの滝など)動植物(水族館、熱帯植
物の庭園など)、社会環境(歴史村など)を見学地として想定できると思います。
④生涯スポーツ
マリンスポーツ、ゴルフ場、リバークルーズ、ハイキングなどが考えられます。単に一過
性的な体験としてではなく、生涯にわたってスポーツに親しむことや、心と体の健康を増進
・維持するという観点からメニューを設定することが考えられます。
⑤キャリア学習
政府観光局やホテルの日本人スタッフによる、グアムでの仕事内容やエピソード、グアム
の産業構造や観光についての講話、ホテル内の見学や商業施設等の見学などが考えられます。
今回の調査中、現地の日本人女性スタッフから、働いているホテルの説明と案内をしてい
ただきましたが 、海外での仕事に就いたきっかけやエピソード、グアムでの生活、観光産
業などについて生徒に紹介していただく機会をメニューの一つに加えることができればと思
いました。
生徒の勤労観・職業観を培う上でも有意義なものであると考えられますし、生徒の職業の
一つとして海外で働くということのきっかけにもなると思います。
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(2)
検討すべき課題
ア
参加人数の多い学校、現在の直行便の乗客定員から考えると4学級以上の学校については、
生徒を2班以上に分けて実施することを考える必要があります。
イ
見学旅行の実施時期については、学校行事等を勘案しながらも、できれば雨期(6~10月)
を避けることが望ましいと思います。
ウ
旅行代金はもちろんですが、マリンスポーツ体験やそのほかのアクティビティに参加する場
合には料金が必要となります。したがって、生徒はもちろんのこと保護者に対しても早い時期
から丁寧な説明をするなどして、理解を得ておくことが必要だと思います。
エ
現地の高校との交流に関しては、現在、グアムの高校が受け入れることができる学校数と人
数が限界に近い状況にあるようですので、高校との交流の実施の優先順位が高い場合は見学旅
行の実施時期を検討したり、早い時期から現地の高校と直接相談をするなどの工夫が必要です。
オ
自主研修を実施する場合は、国内で実施するときと同様に緊急連絡の手段と方法を決めてお
くことが必要です。たとえば、研修範囲をタモン地区に限定するのであれば、ホテルに本部を
置くとともに、引率教員が手分けをして、計画的に巡回したりすることが考えられます。加え
て、海外で使用可能な携帯電話を複数台用意しておくことも考えられます。
また、自動車が右側通行なので、交通ルールと留意点を事前指導しておくことが必要だと思
います。
(3)
その他
道立高校が海外見学旅行を計画・実施する場合には早い時期から教育委員会(教育局)と協議
することが必要ですので、学校として方向性が定まった時点で教育局に情報提供し、実施に向け
ての相談をするとよいと思います。
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