書式 50 字×50 字 タイトルは(MS ゴシック),本文は(MS 明朝体),本文 10.5 ポイント,授業の展開内は 8 ポイント。 対 象 学 齢 中学生 授業のタイトル 心の防災教育「いじめを理解して,いじめを防ごう!」 授業のポイント ● いじめを単に「いけないこと」と指導するのではなく,いじめの構造を理解させ,加害者,被害者,傍観 者からの視点に立って「いじめ」を考えさせる。 ● 一人一人に,いじめ問題について,加害者,被害者,傍観者それぞれの視点から考えを表現させ,それを 集団で共有し,問題に対する解決案によって表現に蓋をし,さらに表現の場に壁を作ることによって,問題 が外に漏れ出させないという体験を,物理的な活動を通して体験させる。 アクティブラーニングの手法を用いる。 授業の展開 主 題 名 いじめの構造を理解して,いじめを防ごう! 道 徳 の 内 容 中学校 主として人との関わりに関すること [相互理解,寛容] 自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,それぞれの個性や立場を尊重し,いろいろな ものの見方や考え方があることを理解し,寛容の心をもって謙虚に他に学び,自らを高めていくこと。 授 業 の 目 標 いじめについて加害者,被害者,傍観者の立場から考え,自分の考えや意見を伝え合うことで,さまざまな 出来事や考え方,気持ちがあることを知る。 自分の周りにいじめが生じた際に,自分の立場や行動や考え,感情をふり返ることができるような強さや自 分の否定的な面を認められるような寛容な心を育み,その上で望ましい態度を身につけさせる。 授業の展開(概要) 過 時 程 間 導 入 学習内容・活動,発問等 ① 目的の提示 「色んな災害についてどういう危険が生じるか,事前に考え 「心の防災教育」 て, 訓練し心構えをつくることが大切です。 それと同じように, 今はいじめもなく心地の良い生活を送っているけれども, いつ 10 かそういう問題に出会うかもしれない。その時に,自分がどう 分 したらいいか,あらかじめ考えておくことは,とてもいいこと です。心の防災訓練をしましょう」 。 ② 活動の説明 「いじめ解決大作戦:BIG:Bullying Imagination Game(後述) ③ 多様ないじめ(5分) 「では, 最初にみなさんのしっているいじめを黄色い付箋に書 黄色い付箋に自分のしっているいじめに いてみてください」 。 ついて書かせ,ボードの「いろんないじめ」 「その後,グループで順番に『いろんないじめ』の枠内に読み のエリアに貼り付ける。 上げながら貼り付けましょう」 ④ それぞれのつぶやきや背景(8 分) 「今度は,いじめをする人,される人,観ている人それぞれに 展 開 教職員の発言,指導上の留意点等 加害者,観衆や傍観者,被害者,それぞれ ついて, それぞれの立場の人になったつもりで考えてもらいた 30 の立場から,自他に対する思考や感情,行動 いと思います」 。 分 や身体感覚などを想像させ赤い付箋に明記 「その言葉やつぶやきを言った人のエリアの中に貼り付けま させる。その後,場の中のそれぞれの立場の しょう」 。 領域に貼り付けさせる。 「 『この人達のむかし,今,これから』のエリアに,それぞれ さらに,それぞれの過去,現在,将来の状 の人達について,昔はこうだった,今はこう,将来こうなるだ 況について明記させる。 ろうということを想像して付箋に書いてみましょう」 ⑤ いじめの場が顕現される。 留意点:箱を回して視点を工夫する。 「ボードは赤や黄色のいじめの付箋で一杯になりましたね。 こ れをしばらく眺めてみましょう」 。 資料等 教材 書式 50 字×50 字 タイトルは(MS ゴシック),本文は(MS 明朝体),本文 10.5 ポイント,授業の展開内は 8 ポイント。 ⑥ いじめ解決(10 分) 「最初にボードの四方を折り曲げて箱を作ります。 これはいじ ボードの四方を折り曲げ,壁をたて,あた めが起こっても決して広がらないためのシールドです」 。 かもコンテナ容器のような場に変形させる。 「それぞれのエリアにいる人達が, いじめを防ぐためにできる ま と め 5 分 青い付箋に解決策を考えさせ付箋に明記 こと,大切なもの,必要な人を考え,思いついたことを青い付 させる。 箋に書きましょう。 箱の中の赤と黄色の付箋が青い付箋で見え なくなるくらい考えましょう。 それができたらみなさんの作戦 は大成功です」 。 ⑦ まとめ(5 分) 「これから,もしクラスや集団の中でいじめが起こった時,自 ワークシートへ記入 分がどこかのエリアに立っていると感じたらまず青を求めま しょう。また普段は,こんな風に箱を眺めている所に立ってい られるようにして欲しいと思います。 そのために今あなたがで きること,しようと思うことを最後に想像しましょう」 。 授業の解説 この授業案は, 「いじめは絶対にいけません」というメッセ ージを伝える内容ではありません。むしろ,児童生徒の内在 するいじめを生じさせるような心情をあえて表現させ,それ を収めさせることをねらった授業案です。 いじめは何処にでも生じる可能性がある出来事であること を前提に,それを未然に防ぐにはどうしたらいいか,また, 生じた場合に被害を最小限にするにはどうしたらいいか,を 教育的に阿考える取組は,防災教育とも通じます。授業で使 用 し た 教 材 は ,「 い じ め 解 決 大 作 戦 BIG : Bullying Imagination Game」と名付けたボード教材です(左図) 。 進め方は,数名のグループに,森田(1986)のいじめの構 造である,いじめる加害者や観衆,傍観者,いじめられる生 徒が共存しているボード(場)を与えます。最初に,自分の 知っているいじめ・暴力の問題を付箋に明記させ,ボードの 中の 「いろんないじめ」 と記された領域に貼り付けさせます。 児童生徒が問題を具体的にイメージする段階です。 次に,加害者,観衆や傍観者,被害者,それぞれの立場か ら,自他に対する思考や感情,行動や身体感覚などを想像さ せ付箋に明記させ,それぞれの立場の領域に貼り付けさせま BIG 教材 す。これは, 「子どもの暴力的な表現を引き出し,問題を生じさ せる側面もしっかりと扱う」ための作業であり,児童生徒がいじめ・暴力を主体的に捉える段階と考えています。 こうした段階を踏ませた後に解決策を考えさせ付箋に明記させますが,この時,より有効な解決策を考えさせ るのではなく,児童生徒には「質より量」と提示し,ブレーンストーミングのようにできるだけたくさんの解決 策を付箋に書かせるのがポイントです。いじめ・暴力の様相で覆われた場を解決の付箋で覆わせることを競うゲ ームのような感覚で取り組ませるのがねらいです。 また,ボードの四方を折り曲げ壁を立てあたかもコンテナ容器のような場に変形させます。これは,いじめ・ 暴力の問題が場に存在するが,問題は収まっており,自分たちの智恵で抑えこんでいる。またその状態が,決し て崩れることなく,漏れ出すこともない場の在り様を無意識的に体験することをねらった作業です。 グループで様々な視点からの味方や考えを表現し,他者の考えを聴くことは,道徳の内容と合致しています。 また,ただ単に「いじめは絶対にダメ」とステレオタイプ的な価値判断ではいじめは防止できず,また,もし自 分が問題の当事者になった時,自らの在り方に寛容で謙虚でなければ問題の解決に向かいません。これは,真に 道徳的価値判断ができるようになることをねらった授業なのです。 作成者 一瀬英史 所属:山梨県総合教育センター
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