高校生用Ⅲ 講師用マニュアル(補足資料)

高校生用Ⅲ 講師用マニュアル(補足資料)
1.所得税(直接税)の特徴を見てみよう
1. 所得税(直接税)の特徴を見てみよう
2,000,000
所得税は所得(≒収入)の増加する割合以上に、税
1,500,000
1,000,000
金を負担する割合が大きくなる制度となっていま
所得税
500,000
す。これは累進課税制度と呼ばれるもので、所得の
0
給与年収
所得税
1,200万
円
348,500 1,539,600
300万円 600万円
77,000
※所得控除は基礎控除のみで計算
少ない納税者については低い税率を課すことで生
給与年収300
給与年収300万円
300万円と
万円と1,200万円
1,200万円を
万円を比較すると・・・
比較すると・・・
活に配慮する一方で、所得の多い納税者については
年収は4
年収は4倍
は4倍 だけど所得税
だけど所得税は
所得税は約20 倍!
累進的に高い税率を課すことで社会全体での所得
■所得税は
所得税は、所得が
所得が少ないと低
ないと低い税率で
税率で課税し
課税し、所得が
所得が多くなると
高い税率で
税率で課税して
課税して、
所得が多くなると負担
くなると負担する
して、所得が
負担する税金
する税金も
税金も多くなる
「累進課税制度」
累進課税制度」が特徴です
特徴です。
です。
格差を是正し、富を再分配する役割があります。し
1
かし累進が過ぎると高所得者が勤労意欲をなくし
海外へ移住するなどの問題点が指摘されています。
2. 消費税(間接税)の特徴を見てみよう
消費税は所得の大小に関わらず、すべての納税者が
財サービスの消費(≒支出)に対して、一律同じ税
率の税金を負担する制度になっています。しかし食
料品等の生活必需品の消費にも一律同じ税率を課
すことから、日常生活においてこれらの物品を消費
する割合が大きい、所得の少ない納税者にとって
は、相対的に税金を負担する割合が大きくなる問題
が指摘されています。この問題を「逆進性」といい
ます。
. 3.
「課税の公平性」とは?
税金は支払能力に応じた公平な負担とすべきとす
る大前提があります。これを応能負担の原則といい
ます。この前提から経済力のある人に、より大きな
税負担を求める考え方が生まれました。これが垂直
的公平という考え方で、ここから所得税において所
得に担税力を求め、所得に累進税率で課税する考え
方が生まれました。もうひとつは経済力が同等の人
に、等しい税負担を求める考え方が生まれました。
これが水平的公平という考え方で、ここから消費税
において財サービスの消費に担税力を求め、消費に
一律同じ税率で課税する考え方が生まれました。こ
のように担税力(課税の尺度)を何に求めるかの違
いで、約50種類もの税金が生まれたのです。
高校生用Ⅲ 講師用マニュアル(補足資料)
. 4.国の財政を見てみよう
わが国の歳出は少子高齢化にともなう社会保障関
連費の増加もあり、ほぼ右肩上がりで増加しました
が、税収はバブル崩壊以降の景気低迷により右肩下
がりの減少となっています。この歳入不足=税収不
足を補うために年々公債発行が増加してきました。
しかしこの公債は将来世代の負担となるものであ
り、今後どのようにして歯止めをかけるか議論され
ています。
5. 税収の推移を見てみよう
所得税や法人税などの直接税は所得(≒収入)に課
税されることから景気変動に左右されやすく、バブ
ル崩壊以降の景気低迷の影響を受けおおむね右肩
下がりの減少となっています。一方で消費税は消費
(≒支出)に課税されることから所得税や法人税ほ
ど景気変動に左右されにくく、税収はほぼ横ばいと
なっています。これにより直接税と間接税の比率
(直間比率)は接近しつつあり、近年の消費税率引
き上げに伴い、間接税の税収全体に占める割合が今
後、直接税を逆転することも考えられます。わが国
の税制はながらく所得税、法人税、消費税を基幹税
としてきましたが、景気低迷と少子高齢化の影響
で、消費税の役割が年々増していることがグラフか
ら見て取れます。
6. これからの社会と税を考えてみよう
少子高齢化による退職世代の増加にともない社会
保障関係費の支出は年々増大しています。その一方
で社会保険料を負担する現役世代は年々減少して
おり、社会保険料収入の不足を税金で補填している
ことが、わが国の財政を大きく圧迫しています。