第70回 日本大腸肛門病学会学術集会 Japan Society for Coloproctology 日程 2015年11月13日(金)‒14日(土) 会場 名古屋観光ホテル・ヒルトン名古屋 JSCP 2015 【ランチョンセミナー 18】 (共催:日本化薬株式会社) 炎症性腸疾患治療における抗 TNF-α抗体療法の今後の位置づけ 座長:久松理一氏 <杏林大学医学部第三内科教室消化器内科> 演者:仲瀬裕志氏 <京都大学医学部附属病院内視鏡部> 2015 年 11 月 13 日・14 日に名古屋観光ホテル・ヒルトン名古屋(名古屋市)で開催された第 70 回日本大腸肛門病 学会学術集会のランチョンセミナー 18 において、京都大学医学部附属病院の仲瀬裕志氏は、炎症性腸疾患(IBD)の 治療の変遷、現在 IBD 治療の中心となっている TNF 阻害薬の効果と作用機序についての概要を述べた後、粘膜治癒の 重要性、早期介入の意義などについても言及した。さらに、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)に関して様々 なサイトカインの病態への関与が解明されつつあり、治療への応用が期待されていることを紹介した。次いで、最近注目 されているバイオシミラー(バイオ後続品)とその臨床成績について以下のように解説した。 バイオシミラー(バイオ後続品)について 仲瀬氏は、はじめに「バイオシミラー(バイオ後続品)とは、国内で新薬として承認され、特許期間が満了した先行バイオ医薬品 (以下、先行品)の後続品であり、先行品と同等/同質の品質、安全性および有効性を有する。バイオシミラーと先行品のアミノ 酸配列は同一であり、糖鎖は多少異なるが、作用部位(活性部位)は同じである。」と、バイオシミラーの基本事項を述べた。 IBD におけるバイオシミラー 本邦においては、インフリキシマブのバイオシミラー(以下、インフリキシマブ BS)であるインフリキシマブ BS 点滴静注用 100mg「NK」 (以下、インフリキシマブ BS「NK」)が、2014 年 7 月に関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎の適応を取得し、 2015 年 7 月に乾癬が適応追加された。 海外における使用成績 仲瀬氏は、 「本邦においては、IBD 領域でのバイオシミラーの使用経験は未だ少ないが、海外では、多くの症例に投与した臨床 成績が報告されている。」と前置きし、海外におけるインフリキシマブ BS の使用報告を紹介した。 CD 95 例、UC 78 例(計 173 例)を対象にインフリキシマブ BS を投与した韓国の報告では、投与開始から 30 週の時点に おける改善率は CD で 79.5%、UC で 72.2%、寛解率は CD で 59.0%、UC で 37.0%であった 1)。また、他の報告(韓国)では CD 59 例、UC 51 例(計 110 例)に投与し、投与開始から 30 週時点の改善率は CD で 95.5%、UC で 91.3%、寛解率は CD で 77.3%、UC で 47.8%であった 2)。この試験では、先行品からバイオシミラーへの切替えが行われており、CD の切替え例では 92.6%、UC の切替え例では 66.7% において効果が維持されたと報告されている。有害事象は、UC 患者の 11.8%で発現した。 このほか、ハンガリー、ノルウェー、ポーランドなど欧州諸国からも、インフリキシマブ BS の使用成績が報告されている。 京都大学医学部附属病院における使用例 次に仲瀬氏は、CD 2 例、UC 3 例(計 5 例)の自験例について紹介した。CD の 2 例は難治例で、ミコフェノール酸モフェチル との併用で治療を継続している。UC の 1 例は、全結腸炎型のステロイド依存性 UC(68 歳、男性)で、チオプリン治療中に再燃 し、アフェレーシスに対して反応性が乏しかったが、インフリキシマブ BS「NK」を投与したところ著効が認められ、内視鏡所見 も改善した。現在も効果が維持されている。 講演の最後に、再燃性 UC では既存の治療法を適切に実施してから TNF 阻害薬の導入を考慮するべきであること、CD では TNF 阻害薬の治療が必要な患者を見極めるための予測因子の研究が必要であることなど、今後の課題を指摘した。 1) Interim clinical study report: Post-marketing Surveillance of REMSIMA 100mg(infliximab) to Evaluate Its Safety and Efficacy in Korea. 2) Jung YS et al. J Gastroenterol Hepatol. 2015 May 14. doi: 10.1111/jgh.12997. [Epub ahead of print] (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25974251) 本記事は、共催の日本化薬株式会社了承のもと、BS online journal事務局で作成しました。 掲載内容はBS online journalの見解を述べるものではございません。 作成:2015年11月 Supported by Copyright 2015 BS online journal事務局. All rights reserved.
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