2015年7月35号 - 大阪府済生会中津病院

社会福祉法人 恩賜
財団 済生会 大阪府済生会中津病院
35 号
2015 年 7 月
連携センターだより
発行日:平成 27 年 7 月吉日 発行:大阪府済生会中津病院地域医療連携センター 住所:大阪市北区芝田 2 丁目 10 番 39 号
電話:06-6372-1036(直通) FAX:06-6372-6871 URL:http://www.nakatsu.saiseikai.or.jp/
Topics
平成 27 年 4 月より、田中賢一新部長が就任し、外科・消化器外科が新体制となりました。
∼外科・消化器外科∼
藤川 正隆 ・ 岡本 大輝 ・ 溝尻 岳 ・ 権 英寿 ・ 野木 雄也 ・ 保原 祐樹 ・ 林 正裕 ・ 有馬 純 新関 亮 ・ 中江 史朗 ・ 田中 賢一(部長) ・ 土師 誠二(部長)
年間総手術件数約 1100 件、全身麻酔手術件数約 900 件治療対象
疾患は食道・胃・大腸ならびに肝・胆・膵疾患と消化器全域にわた
り、ヘルニア、痔疾なども扱っています。
各領域の専門医が多数在籍し専門性の高い治療を行っています。
腹腔鏡手術から開腹手術までを手掛け、放射線科、消化器内科と連
携して早期癌から高度進行癌まで・広く対応可能です。
救急症例も基本的に常時受け入れており、緊急手術を含めて迅速
な対応を心がけています。
★ご予約のお申込みは地域医療連携センターへご連絡ください。
新任 Dr. のご紹介(平成 27 年 2 月∼5 月)
田中 博之
大阪府立整肢学院院長
整形外科
綾仁 悠介
耳鼻咽喉科
野村 文恵
耳鼻咽喉科
形成外科診療について
十余年過ごした香川大学から当院へ移動して、早 1 年が経過しました。病院の特徴やシステムを把握するのに時間を要しましたが、
他のスタッフの頑張りもあって診療も軌道に乗り、最近ようやく自分のカラーを出していこうと思えるようになってきました。着任後、
私が考え実践する形成外科診療について皆様に披露する機会がありませんでしたので、この場をお借りして、ご紹介したいと思います。
形成外科 部長 宗内 巌
(1) 形成外科とは? 先天的あるいは後天的(外傷 / 腫瘍)に失われた皮膚体表の形態的・機能的障
害に対して、形成外科的 aesthetic mind のもと、形成外科的手技を駆使して、QOL の向上を目的と
した手術を行う専門外科:かなり堅苦しい表現ですが、言葉で表すとこのように定義されます。当
然のことですが、目的があり、対象があり、手技があり、理念があります。以下に説明を加えます。
図1
形成外科の大別
形態異常・組織欠損 の有無
(2) 形成外科診療の目的 手術目的は、QOL の向上。この言葉が、形成外科手術のキーワードです。
(3) どんな疾患を取り扱う? 形成外科疾患は、形態異常・組織欠損の「ある・なし」により、再建
外科 reconstructive surgery と整容外科 aesthetic surgery に大別されます(図 1)。この両者は、基
本となる手技や理念に大きな違いはなく、切り離すことのできない一体のもので、形成外科 plastic
surgery の対輪をなしています。対象となる疾患群は、「外傷・腫瘍・先天異常・美容外科」の 4 つ
に大別されます(図 1)。左の項目ほど再建外科的要素が強く、右の項目ほど整容外科的要素が強い
と言えます。具体的な疾患として、日本形成外科学会が標榜する 10 項目を示します(図 2)。私は
これまで、小児先天異常(口唇口蓋裂、小耳症、多合指症、母斑・血管腫、等)の患者様の診療に
多く関わってきました。当院の 2014 年の手術件数は約 1050 件で、以下に多い項目から順に列挙し
ます。腫瘍:約 670 件(良性 580・悪性 90)、外傷:約 150 件(顔面 100・四肢 40・熱傷 10)、先
天異常:約 30 件、美容外科:約 30 件、難治性潰瘍:約 30 件、その他(分類困難なもの:主には
炎症性疾患):100 件となっています。
(4) 形成外科診療の特徴 形成外科診療の特徴の一つとして、他科との共同診療が多いことが挙げら
れます。形成外科単独で診療が成り立つ疾患の方が、むしろ少ないかもしれません。外科系はいう
に及ばず(各種再建等)、内科系に至るまで(褥瘡・難治性潰瘍等)、ほぼすべての診療科の先生方
と共に、QOL 向上のためのサポートを行っています。
(5) 形成外科の手技 皮膚縫合、組織移植(植皮・皮弁等)、マイクロサージャリ―(顕微鏡下手術)
医療機器(特に、レーザー)、医療材料(特に、創傷被覆材)、などが挙げられます。形成外科医は
皮膚をきれいに扱うスペシャリストだと自負しています。また、私はマイクロサージャリ―を用い
た再建手術を得意としています。
(6) 私の診療理念について 形成外科的 aesthetic mind という概念があり、「いかに美しく造り直す
か」の判断基準・価値観を指します。言わば、センスのようなものです。たとえば富士山を描こう
とした時に、多様な可能性があることに似ています。この aesthetic mind を持ちつつ、ドナーの犠
牲や術式の安全性も考慮に含め、低侵襲で効果の高い治療を志向することが、私の診療理念です。
(7) 形態だけでなく、機能的改善を! すべての形には、すべてそうであるべき意味があると思って
います。形成外科手術は、組織欠損に対して組織移植を行って形態的改善を図る場面が多々ありま
す。「形態的改善が機能的改善につながる」という信念で、形成外科手術を行っています。形態的
改善が機能的改善につながり QOL の向上に結び付く、わかりやすい例をお示しします。工業高校の
男子生徒が夏休みに、慣れない工場でのアルバイト中、指をプレス機にはさみミンチ状に切断して
しまいました。残念ながら、血行再建による再接着は望むべくなく、断端形成をせざるを得ません
でした(図 3)。指先がなく、形態的障害があるのは一目瞭然ですが、母指欠損は機能的ロスが見た
目以上に大きいことが想像に難くないと思います。この方に、足指移植による再建を行いました
(図 4)。見た目の改善はだれの目にも明らかですが、機能的にも大きな改善(QOL の向上)が得ら
れていることがお分かりいただけると思います。
有り
無し
再建外科
整容外科
Reconstructive Surgery
Aesthetic Surgery
Plastic Surgery の対輪
外傷
腫瘍
先天異常
美容外科
図2
形成外科の診療項目 (日本形成外科学会)
1. 熱傷
2. 顔面外傷(顔面骨骨折、顔面神経麻痺など)
3. 口唇裂・口蓋裂
4. 手足の先天異常(多合指趾症など)
5. その他の先天異常(小耳症など)
6. 母斑、血管腫、良性腫瘍
7. 悪性腫瘍およびそれに関する再建
8. 瘢痕、瘢痕拘縮、ケロイド
9. 褥瘡、難治性潰瘍
10. 美容外科
図3
16歳・男性 : 母指欠損
図4
足趾移植後
(8) 形成外科手術の付加効果 形成外科手術には、思わぬ効果も潜んでいます。患者様は皮膚体表・
見える部分を悩んで、病院に来られます。これを改善させることで、コンプレックスを和らげ、自
信を持たせ、日々の生活を心の底から晴れやかにする付加効果があります。
(9) 形成外科手術の図式 「形態・機能の改善+精神的好影響−ドナーの犠牲=QOL の向上」という
図式が成り立ちます。手術効果が最も高くなるには、総合的な判断が必要です。ドナーの点は、常
にその犠牲が最小限となるよう配慮し、なおかつ、低侵襲でより安全性が高い術式を、常に念頭に
置くようにしています。以上が、私の診療理念です。
(10) 形成外科診療のやり甲斐 形成外科は「患者さんが笑って帰ってくれる」数少ない診療科であ
るとも思っています。手術の出来栄えが誰の目にもすぐに見えるため、厳しい側面もありますが、
手ごたえを絶えず実感できることに、非常なやり甲斐を感じています。「患者さんが笑って帰っても
らえる」ことを目指して、日々診療を行っています。
形態的改善 → 機能的改善 → QOLの向上
以上で、形成外科診療の紹介を終わりとします。この文章を通じて、医師・患者さん・コメディカルの方々に、形成外科診療をより身近なものと感じて
もらえることを切に願っています。