経営情報システム研究所(PDF : 318.24 KB)

経 営 情 報 シ ス テ ム 研 究 所
< 研 究 所 概 要 >
1.研究所名 経営情報システム研究所
(Research Institute for Management Information System)
2.設立の趣旨
経営情報システム分野では、学問研究の動きはとりわけ急で日進月歩であり、また、社会との
かかわりあいも多い。当該分野で、研究者たちが集い、相互研鑽を図り、成果を世に問い、社
会貢献につなげることは非常に重要であると考えられる。研究会を開催し、国際学会等でも積
極的に発表し、レフェリードジャーナルを中心に論文を出し、書籍等もまとめてゆく。そして、
企業との共同研究もできるだけ広げてゆきたく考えている。
3.設立認可日
H.25.7.22
4.研究員メンバー
●学内研究員 4 名
●学外研究員 7 名 (摂南大学、大阪国際大学、中部大学、立命館大学 等)
(なお、メンバーについては今後も増強ありうる。)
5.活動項目
研究会開催
運営委員会開催
学会発表(国内・国際)
学術論文 論文誌掲載 (国内)
書籍発刊(含 英文学術専門書) 産学官連携フェア出展
等
< 活 動 内 容 >
1.研究会の開催
第一回目の研究会が、下記の日程で盛会裡に開催された。
日時:H.25年11月18日(月)13時40分∼16時30分
場所:常葉大学 富士キャンパス(会場:2号館3階:2306教室(C教室))
<研究会の概要>
今回は第1回の研究会で、静岡県東部地区中小企業を対象に実証分析がなされたものと、SNS のア
ンケート調査結果に基づく実証分析がなされたもの 2 件の発表がなされた。概要は下記の通り。各々
活発な質疑応答があった。
(1)13:40‒15:00「静岡県東部地区中小企業の特徴と経営理念
―東京商工リサーチTSRと各社HPによる実証分析」
常葉大学 経営学部 教授 安達 明久
静岡県東部(静岡市、富士市等 計10市11町)に
本社を置く中小企業約1600社について、東京商工
リサーチの企業データベースTSRを基に22の観点
からユニークな活動を行っている「元気な中小企業」
を抽出した結果を紹介された。
さらに、社歴50年以上の長寿企業(約100社)に
ついて、その経営理念を各社HPより抽出整理し、経営理念の明確化・内容の在り方と、企業
業績の間の相関関係について実証的な分析を行った結果を報告された。結論としては、長寿企
業のうち高業績を確保している企業においては、経営理念、特に将来ビジョンを明確に開示し
ている企業が多く存在し、経営理念(将来ビジョン)と企業業績の間に統計的に正の相関関係
があることが確認できた。
(2)15:10-16:30「SNS の実証分析」
学校法人常翔学園広報室 油井 毅 Facebook、Twitter などの SNS(Social Networking
Service)は日常生活で必要不可欠なツールになってい
る。さらに、スマートフォンなどのタブレット端末の
普及により、それに付帯した無料通話・メールのアプ
リケーションである LINE 等も若者を中心に急速に利用
者を伸ばしてきており、インターネット上で行われる
コミュニケーションやビジネスなどの形態も大きく変
化してきている。そこで発表者が 2012 年に SNS 利用者・非利用者を対象にしたアンケート調
査結果から、SNS の利用目的、利用を始めたきっかけ、さらには要望事項や課題などを分析。
また、ビックデータ活用で注目を集めている、ベイジアンネットワークを利用した分析も紹介
された。
2.英文学術専門書「MARKETING ANALYSISⅡ」の発刊
所長の竹安数博教授は、本学・経営情報システム研究所のメンバーと共著
で下記英文学術専門書を発刊した。
Kazuhiro Takeyasu, Yasuo Ishii, Yuki Higuchi, Chie Ishio, Tsuyoshi Aburai,
「MARKETING ANALYSISⅡ」
本書は、ジュエリー購買・自動車購買時におけるブランド選択、SNSな
ど様々な分野を対象にしてアンケート調査を行い、因子分析、多重コレス
ポンデンス分析、数量化理論第Ⅱ類、Key Graph 分析、Bayesian Network
分析等を駆使して分析を行っている。興味深い結果が得られている。
3.研究会の開催
第二回目の研究会が、下記の日程で開催された。
日時:H26年9月5日(金)13時20分∼16時30分
場所:摂南大学 寝屋川キャンパス (会場:1153教室)
〒572-8508 大阪府寝屋川市池田中町17番8号
<研究会の概要>
今回は第2回の研究会で、ブランド選択と行列構造について新たに理論構築がなされ、自動車業界
事例でアンケート調査・分析がなされたものと、J-REITの投資口価格の予測精度向上について研究
がなされ、データで分析・考察がなされたもの2件の発表がなされた。概要は下記の通り。各々活
発な質疑応答があった。
(1)13:40‒15:00 「ブランド選択と行列構造−自動車業界での応用−」 摂南大学 経営学部 准教授 樋口 友紀
ブランド品を購入する際、初めは手頃な価格の商品
を購入するものの、情報を得たりするうちに、その
次に購入するものはより良い、名前の通った高価な
ものであるということが予想される。そこで、上位
ブランドをベクトルの上位から並べ、前回購入を入
力、今回購入を出力としたとき、ブランド遷移行列
は上三角行列となることが想定される。また、同じブランドグループに属する製品をブ
ロックマトリックスを用いてグループ化することで、膨大なデータもより簡単に分析する
ことが可能となる。
上記仮説をもとに、本研究では数値例にてこれらの関係が鮮明に出ると考えられる自動車
業界等の事例についてアンケート調査・分析によるデータを用いてブランド選択が上方シ
フトする場合の行列構造のあり方を検証しており、ほぼ仮説通りの結果を得ることに成功
している。
上記行列構造の解析と法則化により、新ブランド品の市場投入のタイミングや、ブラ
ンド品のポジショニングを明確にすることが可能となる。また、それを購買予測等に
用いることもできる。本手法はマーケティングや販売戦略において有効な手段となり
得るであろう。
(2)15:10-16:30 「J-REITの投資口価格の予測に関する研究」
大阪国際大学 ビジネス学部 教授 石井 康夫
「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投
資を喚起する成長戦略」という3本の矢で我が国の経
済再生を目指す『アベノミクス』効果により、J-REIT
市場は、2007年5月に付けたリーマンショック前の
時価総額6兆8千億円を超え、現在では8兆1千億円を
突破し、過去最高の値を示している。また、代表的
な指標である東証REIT指数は2014年5月16日には年初来高値をつけるなど堅調に推移して
いる。この背景には、地価の上昇に加え、都心の平均オフィス空室率の低下や平均賃料上
昇など、不動産市況取り巻く環境の改善があげられる。さらに、GPIF(年金積立金管理運
用独立行政法人)のJ-REITへの投資や、年初からのNISA(少額投資非課税制度)が開始さ
れたことなどがJ-REIT市況を下支えしている。更に、今後は東京オリンピックによる不動
産部門の投資が加速化されることもあり、J-REIT市況を取り巻く環境は今後とも堅調に推
移するものと考えられる。
以上のような経済社会環境状況を踏まえ、講演者らはJ-REITの今後の投資口価格の予測を
精度よく行うための研究を実施してきた。すなわち、通常用いられる時系列モデルを改良
し、精度よく投資口価格を予測するための手法を開発し、多くの事例でその有効性を検証
している。
講演では、これらの取り組みが分かり易く説明され、モデルの適用可能性と精度向上に関
して、実際のデータを用いて実証的に考察がなされた。
講演者は、実際J-REITの運用会社で監査役として事業全体を見てきた経験を踏まえ、運用
会社のPO(Public Offering:公募)や投資法人債発行等の重要な経営意思決定に資するた
め、このような予測モデルの必要性を痛感されていたという。本講演で、企業における各
種の予測分野において有用な情報の提供がなされた。なお、J-REITとは下記のような経緯
で制定された金融商品であり、地方銀行等の企業や個人投資家等からも多くの支持を集め
ている。
J-REITとは日本版不動産投資信託(Japan Real Estate Investment Trust)の略称で、2000年
改正施行の「投資信託および投資法人に関する法律(投信法)」により、不動産投資信託
の組成が可能となったものである。これは、従来流動性に欠けていた不動産市場に機関投
資家や個人投資家の資金を呼び込む目的で制度化されたものである。J-REITの仕組みは、
投資家から集めた資金を基に複数の賃貸不動産を購入し、賃料収入から法人税が課税され
る前の利益のほぼ全額(9割以上)を分配金として配当するものである。このため、通常
の株式投資と比較して相対的に高い利回り(2014年6月2日時点で平均分配金約3.6%)を
確保できる金融商品として注目を集めている。
4.「ソーシャル・ネットワークが社会を変える/仕事を変える」本の発刊
所長の竹安数博教授は、本学・経営情報システム研究所のメンバーと
共著で下記著書を発刊した。
竹安数博、石井康夫、樋口友紀、油井 毅 著
「ソーシャル・ネットワークが社会を変える/仕事を変える」
本書は、近年急速に普及が進んでいるSNS(ソーシャル・ネットワー
キング・サービス)の各種利用形態を分析している。また、SNSに関
するアンケート調査を実施した内容を、因子分析、多重コレスポンデ
ンス分析、統計的仮説検定、Bayesian Network分析及びその感度分析
等を駆使して分析を行っている。興味深い結果が得られている。
5.研究会の開催
第3回目の研究会が、下記の日程で開催された。
• 電気通信大学 9月2日(水曜日)13時00分−14時40分 • 研究会のテーマ:予測及び最適化
今回は今までと多少趣向を変えて実施している。
知能情報ファジー学会という学会があり、今回はここで開催したオーガナイズドセッションを、研
究所の第3回研究会を兼ねた形にしている。下記の5件の発表を行った。
講演者氏名
講演タイトル
所属
石井康夫
An Analysis on the Current Usage Condit ion of Game Machines
竹安数博
Opt imizat ion in Allo cat ing Goo ds to Shop Shelves Ut ilizing Genet ic
Algorithm Under the Extended Shelf Posit ion Case
常葉大学
樋口友紀
The Metho d to improve Forecast ing Accuracy by Using Neural
Network -An Applicat ion to the Foo d Pro duct ion Data
摂南大学
鈴木孔明
Opt imizat ion in Allo cat ing Goo ds to Shop Shelves
Ut ilizing Genet ic Algorithm ‒ An Applicat ion to Cup Noo dles/Soup
山下裕丈
An AnalImproving Forecast ing Accuracy By Intro ducing a Day of the
Week Index for the Daily Sanitary Materials Shipping Data
大阪国際大学
Club Sunshine
中部大学
(1)13:00‒13:20
「An Analysis on the Current Usage Condition of Game Machines」
大阪国際大学 グローバルビジネス学部 教授 石井 康夫
近年のゲーム機市場規模は、2007年にピークに到達
した後、2008年のリーマンショック以降低下しつつ
ある。その原因は、パソコンにおけるゲーム市場の
継続的な拡大と、2010年以降急速に普及したスマー
トフォン等によるゲーム利用だと考えられる。
本論では、昨今のゲーム機市場の現状と課題を実証
的に調査・分析し、各メーカーのブランド認知の状態や利用状況等に関して生活者にアン
ケート調査を実施し、今後のゲーム機市場の動向を予測すると共に、メーカーが採用すべ
き経営戦略の方向性を考察した。
(2)13:20‒13:40
「Optimization in Allocating Goods to Shop Shelves Utilizing Genetic
Algorithm Under the Extended Shelf Position Case」
常葉大学 経営学部 教授 竹安 数博
店舗における商品の陳列の仕方は売上に大きく影響
を及ぼす。どの棚位置にどの商品を置くと、販売確
率が高くなり、ひいては販売利益を最大にできるか
は組み合わせ最適化問題となる。この問題に対して
は、遺伝的アルゴリズムのアプローチなどが有効な
方法として考えられる。本論文では、棚位置を拡張
した場合を新規に取り入れ、商品の複数棚位置への重複配置を許容する問題を定式化し、
遺伝的アルゴリズムを活用して理論解を導いた。
(3)13:40‒14:00
「The Method to improve Forecasting Accuracy by Using Neural Network
-An Application to the Food Production Data」
摂南大学 経営学部 准教授 樋口 友紀
本論文では、階層型ニューラルネットワークを用いて冷凍食品出荷データを時系列予測す
る手法について検討している。階層型ニューラルネットワークでは、変化の大きい非定常
な時系列データを学習することが困難であるため、学習データを複数回繰り返して入力す
ることにより学習を強化し、予測精度を向上させる手法を提案する。また、本手法による
予測結果と、過去に著者らが提案した最小予測誤差分散平滑化定数を活用した複合型予測
手法による予測結果の比較を行っている。
(当日、樋口准教授は都合で出席できず、論文共著者の竹安教授が代って発表)
(4)14:00‒14:20
「Optimization in Allocating Goods to Shop Shelves Utilizing Genetic
Algorithm ‒ An Application to Cup Noodles/Soup」
Club Sunshine 代表 鈴木 孔明
本論文では、コンビニエンスストアにおけるカップ
ヌードル棚における商品の最適な棚配置問題につい
て取り組んでいる。棚の横方向に8商品、縦方向に
2棚に配置されたカップヌードル商品群を対象とし
た。この手法は、たくさん商品候補があり、棚が限
られているとき、どの商品をどれだけ置けば、便益
が最大になるかを計算するもの。便益=販売確率x粗利 とし、この便益が最大となる商
品配置を検討する。遺伝的アルゴリズムを用いて最適解を求解した。実際の配置よりも便
益が高くなる結果が得られた。
(5)14:20‒14:40
「Improving Forecasting Accuracy By Introducing a Day of the Week Index
for the Daily Sanitary Materials Shipping Data」
中部大学 経営情報学部 教授 山下 裕丈
本研究では、需要予測における新しい予測精度向上
の手法を提案している。これまで筆者らは、指数平
滑法(ESM)とARMAモデルのハイブリッド手法に
よって予測誤差を最小分散にする手法を提案してき
た。ARMAモデルのパラメータ推定を行うことによ
り、予測誤差分散の平滑化定数を推定する方法を考
案し、これにトレンドを除去した方法も併せて、予測精度の向上を図ってきた。今回の研
究では、新たに「週日指数」を導入して日次の予測を行い、衛生材料メーカーのデータに
適用し、良好な結果を得られた。
<連絡先>
経営情報システム研究所 所長
竹安 数博
常葉大学 経営学部 教授 工学博士
富士情報システム室長
〒417-0801 静岡県富士市大淵325 番地
takeyasu(@ を挿入)fj.tokoha-u.ac.jp
TEL: 0545-37-2036 FAX: 0545-36-2651