芦北町保健事業実施計画 (データヘルス計画)

芦北町保健事業実施計画
(データヘルス計画)
平成27年度∼平成29年度
平成27年4月
芦
北
町
目
次
−
1.保健事業実施計画(データヘルス計画)基本的事項・・・・P1
2.地域の健康課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1
3.保健事業の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P2
4.その他の保健事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13
5.事業実施計画(データヘルス計画)の評価方法の設定・・P17
6.実施計画(データヘルス計画)の見直し・・・・・・・・P18
7.計画の公表・周知・・・・・・・・・・・・・・・・・・P18
8.事業運営上の留意事項・・・・・・・・・・・・・・・・P18
9.個人情報の保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P18
10.その他計画策定に当たっての留意事項・・・・・・・・・P18
第1節
総論
1.保健事業実施計画(データヘルス計画)基本的事項
1)背景
近年、特定健康診査の実施や診療報酬明細書等(以下「レセプト等」という。)の電子化の
発展、国保データベース(KDB)システム(以下「KDB」という。)等の整備により、保険
者が健康や医療に関する情報を活用して被保険者の健康課題の分析、保健事業の評価等を行
うための基盤の整備が進んでいます。
こうした中、「日本再興戦略」
(平成 25 年 6 月 14 日閣議決定)においても、「すべての
健康保険組合に対し、レセプト等のデータ分析、それに基づく加入者の健康保持増進のため
の事業計画として「データヘルス計画」の作成・公表、事業実施、評価等の取組を求めると
ともに、市町村国保が同様の取組を行うことを推進する」とされ、保険者はレセプト等を活
用した保健事業を推進することとされました。
これまでも、保険者においては、レセプト等や統計資料等を活用することにより、「特定
健康診査実施計画」の策定や見直し、その他の保健事業を実施してきたところであるが、今
後は、さらなる被保険者の健康保持増進に努めるため、保有しているデータを活用しながら、
被保険者をリスク別に分けてターゲットを絞った保健事業の展開や、ポピュレーションアプ
ローチから重症化予防まで網羅的に保健事業を進めていくことなどが求められています。
厚生労働省においては、こうした背景を踏まえ、国民健康保険法(昭和 33 年法律 192
号)第 82 条第 4 項の規定に基づく厚生労働大臣が定める国民健康法に基づく保健事業の
実施等に関する指針(平成 16 年厚生労働省告示第 307 号。以下「保健事業実施指針」と
いう。)の一部を改正し、保険者は健康・医療情報を活用して PDCA サイクルに沿った効果
的かつ効率的な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画(データヘルス計画)を策
定した上で、保健事業の実施及び評価を行うものとしています。
芦北町においては、保健事業実施指針に基づき、
「保健事業実施計画(データヘルス計画)」
を定め、生活習慣病対策をはじめとする被保険者の健康増進、糖尿病の発症や重症化予防等
の保健事業の実施及び評価を行うものとします。
2)保健事業実施計画(データヘルス計画)の位置づけ
保健事業実施計画(データヘルス計画)とは、保健・医療情報を活用して PDCA サイク
ルに沿った効果的かつ効率的な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画です。計画
の策定に当たっては、特定健康診査の結果、レセプト等のデータを活用し分析を行うことや、
保健事業実施計画(データヘルス計画)に基づく事業の評価においても健康・医療情報を活
用して行います。
(図1、図 2)
保健事業実施計画(データヘルス計画)は、
「21 世紀における国民健康づくり運動(健康
日本 21(第 2 次)」に示された基本方針を踏まえるとともに、
「熊本県健康増進計画」及び
「芦北町健康増進計画」で用いた評価指標を用いるなど、それぞれの計画との整合性を図り
ます。
なお、「特定健康診査実施計画」は保健事業の中核をなす特定健診及び特定保健指導の具
1
体的な実施方法を定めるものであることから、保健事業実施計画(データヘルス計画)と一
体的に策定します。
3)計画期間
計画期間については、関係する計画との整合性を図るため、保健事業実施指針第 4 の 5
において、「特定健康診査実施計画及び健康増進計画との整合性を踏まえ、複数年とするこ
と」としていることを踏まえ、具体的には、平成 26 年度中に保健事業実施計画(データヘ
ルス計画)を策定し、計画期間は、医療費適正化計画の第 2 期の最終年度である平成 29 年
度までとします。
図1
特定健診・特定保健指導と健康日本21(第 2 次)
2
図2
3
2.地域の健康課題
1)地域の特性
表 2-1 芦北町の特徴を把握する
平成25年度累計
※KDBデータ
様式6-1 国・県・同規模平均と比べてみた芦北町の位置
芦北町
項目
実数
19,275
総人口
①
人口構成
1
②
③
④
産業構成
平均寿命
健康寿命
①
2
②
②
462,261
25.8
29,020,766
23.2
KDB_NO.5
253,517
14.1
13,989,864
11.2
KDB_NO.3
65∼74歳
2,940
15.3
208,744
11.6
15,030,902
12.0
40∼64歳
6,626
34.4
602,031
33.5
42,411,922
34.0
健診・医療・介護
データからみる地域
の健康課題
39歳以下
5,720
730,185
40.7
53,420,287
42.8
28.4
29.7
12.4
10.5
4.2
第2次産業
24.9
27.7
21.2
25.2
健診・医療・介護
データからみる地域
第3次産業
58.5
59.9
68.4
70.6
の健康課題
男性
80.3
79.3
80.3
79.6
女性
86.7
86.3
87.0
86.4
男性
65.4
65.1
65.3
65.2
女性
66.9
66.8
66.7
66.8
男性
102.2
102.8
95.4
100
女性
93.1
99.7
92.8
KDB_NO.3
KDB_NO.1
地域全体像の把握
100
がん
65
35.1
7,957
45.4
5,471
46.6
360,744
48.3
心臓病
66
35.7
4,910
28.0
3,268
27.8
198,622
26.6
KDB_NO.1
死 脳疾患
因 糖尿病
41
22.2
3,160
18.0
1,904
16.2
121,486
16.3
地域全体像の把握
3
1.6
332
1.9
209
1.8
14,474
1.9
腎不全
3
1.6
638
3.6
458
3.9
25,089
3.4
自殺
7
3.8
524
3.0
428
3.6
26,250
3.5
厚労省HP
人口動態調査
1,514
21.5
129,005
19.8
102,972
21.9
4,533,079
19.7
21
0.3
1,991
0.3
1,568
0.3
73,066
0.3
2号認定者
29
0.5
3,371
0.5
2,611
0.4
139,326
0.4
糖尿病
271
17.5
25,237
20.4
21,548
20.3
910,943
20.9
高血圧症
961
62.0
63,645
51.7
59,840
56.1
2,143,733
49.4
脂質異常症
396
25.2
31,091
24.8
28,753
26.7
1,136,250
25.8
心臓病
1,148
74.6
73,003
59.3
68,106
64.0
2,457,985
56.8
脳疾患
442
29.1
34,331
28.0
27,733
26.4
1,129,256
26.4
がん
132
8.7
11,359
9.1
10,769
10.0
411,598
9.4
1,099
71.1
62,137
50.4
60,415
56.8
2,113,256
48.7
35.0
42,270
33.9
37,902
35.3
1,415,559
32.4
新規認定者
介護給付費
医療費等
541
65,014
40,105
42,023
39,857
40,567
施設サービス
276,147
282,046
293,417
286,522
認定あり
10,935
8,490
8,847
8,338
認定なし
3,579
3,840
3,839
3,712
5,743
666,029
521,545
29,431,797
65∼74歳
2,330
40.6
171,713
32.9
10,065,514
40∼64歳
2,291
39.9
196,915
37.8
10,577,849
35.9
39歳以下
1,122
19.5
152,917
29.3
8,788,434
29.9
170
0.3
214
0.4
8,078
0.3
診療所数
18
3.1
1,375
2.1
1,481
2.8
93,404
3.2
286
49.8
22,776
34.2
35,368
67.8
1,487,829
50.6
5.4
2,930
4.4
5,035
9.7
228,161
7.8
31
一人当たり医療費
受診率
946.5
最大医療資源傷病
名(調剤含む)
650.2
39.2
県内2位
37,517
677.9
地域全体像の把握
KDB_NO.5
被保険者の状況
638.7
21.4
24.6
18.0
24,525
25,470
22,616
985.692
671.623
702.447
656.772
外 費用の割合
来 件数の割合
53.8
57.1
55.3
59.5
96.0
96.8
96.5
97.3
の健康課題
入 費用の割合
院 件数の割合
46.2
42.9
44.7
40.5
KDB_NO.1
1件あたり在院日数
生活習慣病に
占める割合
KDB_NO.1
29.7
0.5
入院患者数
医療費分析
29.1
3
外来患者数
地域全体像の把握
34.2
病院数
医療の概況 病床数
(人口千対) 医師数
医療費の
状況
29.5
29.8
KDB_NO.1
61,370
63,223
67,929
居宅サービス
要介護認定別
医療費(40歳以上)
国保の状況
4
人口の状況
16.5
加入率
④
650,849
第1次産業
介護保険
有病状況
(CSV)
124,852,975
20.7
被保険者数
③
割合
35.9
精神
②
1,794,477
データ元
実数
6,929
1件当たり給付費(全体)
①
国
割合
3,989
筋・骨格
④
2,290,087
県
実数
早世予防から 合計
みた死亡
男性
(65歳未満)
女性
3
③
割合
75歳以上
1号認定者数(認定率)
①
実数
65歳以上(高齢化率)
標準化死亡比
(SMR)
死亡の状況
同規模平均
割合
4.0
3.2
3.5
2.7
21.4日
17.0日
18.2日
16.0日
がん
198,560,190 13.5
20.9
17.8
22.1
慢性腎不全(透析あり)
137,102,800 9.3
9.4
12.3
9.4
糖尿病
141,952,960 9.6
9.7
9.1
9.6
高血圧症
173,155,980 11.8
11.6
10.6
11.2
精神
360,742,790 24.5
18.6
22.2
16.9
筋・骨格
270,147,260 18.3
15.0
14.9
15.0
4
KDB_NO.3
健診・医療・介護
データからみる地域
地域全体像の把握
KDB_NO.3
健診・医療・介護
データからみる地域
保険者
項目
費用額
(1件あたり)
⑤
糖尿病
高血圧
脂質異常症
脳血管疾患
心疾患
腎不全
精神
悪性新生物
糖尿病
高血圧
脂質異常症
脳血管疾患
心疾患
腎不全
精神
悪性新生物
入
院
県内順位
順位総数47
入院の( )内
は在院日数
外
来
4
⑥
健診有無別
一人当たり
点数
37位
(19)
33位
(20)
31位
(19)
45位
(20)
40位
(16)
37位
(19)
33位
(28)
29位
(16)
15位
15位
7位
26位
29位
32位
37位
33位
割合
県
国
実数
割合
実数
KDB_NO.3
データからみる地域
3,678
4,257
3,615
8,914
9,724
10,197
9,728
生活習慣病対象者
一人当たり
健診受診者
8,160
11,629
9,736
10,696
27,138
健診未受診者
データからみる地域
28,294
27,461
26,562
KDB_NO.3
健診・医療・介護
775
53.9
97,761
56.6
63,885
55.4
3,621,848
56.5
医療機関受診率
723
50.3
86,946
50.3
58,588
50.8
3,272,067
51.1
医療機関非受診率
52
3.6
10,815
6.3
5,297
4.6
349,781
5.5
①
健診受診者
②
受診率
1,437
33.2
(CSV)
健診・医療・介護
2,680
健診・レセ
突合
データ元
割合
健診未受診者
33.5
38.1
地域全体像の把握
6,409,234
115,312
172,717
県内38位
KDB_NO.1
33.5
③
特定保健指導終了者(実施率)
49
26.2
6841
30.8
5,037
34.4
168,224
④
非肥満高血糖
115
8.0
9,756
5.6
8,240
7.1
318,173
5.0
該当者
214
14.9
28,600
16.6
17,841
15.5
1,048,147
16.4
男性
150
22.7
19,386
25.0
12,268
24.5
710,417
25.6
女性
64
8.3
9,214
9.7
5,573
8.5
337,730
9.3
予備群
162
11.3
19,499
11.3
13,384
11.6
702,530
11.0
男性
107
16.2
13,264
17.1
8,769
17.5
481,561
17.4
女性
55
7.1
6,235
6.5
4,615
7.1
220,969
6.1
総数
453
31.5
54,502
31.6
35,869
31.1
1,981,914
30.9
男性
314
47.4
36,756
47.5
23,925
47.8
1,344,662
48.5
の健康課題
女性
139
17.9
17,746
18.6
11,944
18.3
637,252
17.5
KDB_NO.1
総数
61
4.2
9,205
5.3
4,640
4.0
312,582
4.9
男性
10
1.5
1,504
1.9
768
1.5
52,222
1.9
女性
51
6.6
7,701
8.1
3,872
5.9
260,360
7.2
血糖のみ
13
0.9
1,233
0.7
837
0.7
41,791
0.7
血圧のみ
112
7.8
13,565
7.9
9,579
8.3
488,432
7.6
脂質のみ
37
2.6
4,701
2.7
2,968
2.6
172,306
2.7
特定健診の
状況
メタボ
⑥
県内順位
⑦
順位総数47
腹囲
⑧
メ
タ
ボ
該
当
・
予
備
群
レ
ベ
ル
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
BMI
21.2
血糖・血圧
43
3.0
4,965
2.9
3,432
3.0
165,273
2.6
血糖・脂質
16
1.1
1,585
0.9
973
0.8
56,444
0.9
⑱
血圧・脂質
96
6.7
13,942
8.1
8,614
7.5
527,565
8.2
⑲
血糖・血圧・脂質
59
4.1
8,108
4.7
4,822
4.2
298,863
4.7
484
33.8
58,197
33.7
37,037
32.1
2,122,863
33.1
86
6.0
12,212
7.1
7,296
6.3
432,554
6.8
211
14.7
35,225
20.4
21,192
18.4
1,389,371
21.7
50
3.5
4,971
3.0
3,056
2.8
197,884
3.2
114
8.0
8,976
5.5
5,766
5.2
342,282
5.6
⑯
⑰
高血圧
服
糖尿病
薬
脂質異常症
①
脳卒中(脳出血・脳梗塞等)
既 心臓病(狭心症・心筋梗塞等)
往
歴 腎不全
貧血
②
6
465,644
467,815
444,281
433,882
433,559
553,877
392,703
558,065
35,636
30,265
28,892
33,956
37,893
186,427
25,485
43,201
実数
健診受診者
⑤
5
割合
健診対象者
一人当たり
受診勧奨者
⑦
同規模平均
実数
2
0.1
894
0.6
433
0.4
35,808
0.6
165
11.6
13,154
8.2
11,560
10.5
590,449
9.9
14.1
③
喫煙
144
10.0
24,264
14.1
15,443
13.4
903,701
④
週3回以上朝食を抜く
94
7.7
9,873
6.5
8,424
8.4
412,703
7.8
⑤
週3回以上食後間食
166
13.6
18,282
12.0
11,558
11.3
627,396
11.8
生活習慣の
状況
週3回以上就寝前夕食
165
13.6
25,418
16.7
15,595
15.3
869,804
16.2
食べる速度が速い
273
22.4
40,588
26.7
25,969
25.5
1,390,409
26.1
⑧
20歳時体重から10kg以上増加
395
32.5
48,140
31.7
34,203
32.7
1,719,815
32.1
⑨
1回30分以上運動習慣なし
784
64.4
97,400
64.1
62,946
60.3
3,190,229
59.2
⑩
1日1時間以上運動なし
610
50.1
72,420
47.7
44,350
43.5
2,510,466
46.7
⑪
睡眠不足
367
30.2
36,628
24.2
23,312
22.9
1,317,553
24.8
⑫
毎日飲酒
379
26.7
41,036
25.3
26,170
24.3
1,509,463
25.6
⑬
時々飲酒
一 1合未満
日
1∼2合
飲
酒 2∼3合
299
21.1
31,965
19.7
25,768
24.0
1,258,151
21.3
934
78.1
64,343
61.9
60,869
70.8
2,549,504
64.3
205
17.1
26,149
25.1
15,360
17.9
949,178
23.9
43
3.6
10,516
10.1
6,575
7.6
361,205
9.1
量 3合以上
14
1.2
3,007
2.9
3,214
3.7
104,784
2.6
⑥
⑦
⑭
5
KDB_NO.3
健診・医療・介護
データからみる地域
地域全体像の把握
KDB_NO.1
地域全体像の把握
(1)医療の状況
本町の国民健康保険加入率は、29.8%で同規模、国と比較して若干高い状況です。65 歳
以上の高齢化率は、40.6%で、県、国よりかなり高い状況です。また、高齢者の割合が高く
なる時期に高齢期を迎える 40∼64 歳の壮年期の割合も高く、今後の医療費のさらなる増
大が見込まれることを考慮し、予防可能な生活習慣病の発症及び重症化予防に努める必要が
あります。
また、本町の1人当たりの1か月の医療費は、37,517 円で同規模平均より 1.5 倍ほど
高く、国より約 1.7 倍、県より約 1.5 倍高くなっています。また、入院はわずか 4.0%の件
数で、費用額全体の 46%を占めています。入院を減らすことは重症化予防にもつながり、
費用対効果の面からも効率がよいといえます。(表 2-2、図 2-3)
表 2-2
一人あたりの医療費
一人あたり医療費
★NO.3【医療】
図 2-3
平成25年5月診療分※KDB
保険者
同規模平均
県
国
37,517円
24,525円
25,470円
22,616円
入院と入院外の件数・費用額の割合の比較
0.0
外来
★NO.1【医療】
入院
★NO.1【医療】
20.0
平成25年度※KDB
40.0
60.0
100.0
96.0
件数
53.8
費用額
件数
80.0
4. 0
46.2
費用額
(2)介護保険の状況
本町の介護保険の認定率は、1 号被保険者は、県よりも低い状況ですが、40∼64 歳の 2
号被保険者は、国、県よりも高くなっています。介護保険認定者の有病状況をみると、本町
で1番多いのが「心臓病」の 74.6%、次に「筋・骨格」の 71.1%となっています。
(表 21・様式 6-1 の 3-①、②)
(3)死亡の状況
本町は、標準化死亡比(SMR:観察集団の年齢構成を基準となる集団の年齢構成を当て
はめて、実際の死亡数と基準母集団の死亡数の比)をみると、男性は県より高いですが、女
性は同規模と比較し低く、県より高い状況です。また、65歳未満死亡率は男女とも県より
低くなっています。
死亡原因をみると、がんは同規模、県と比較して低いですが、心臓病と脳血管疾患につい
ては同規模、県と比較して高くなっています。(表 2-1・様式 6-1 の 2-①、表 2-4)
6
表 2-4
平均寿命と早世の状況
年
平均寿命
65 歳未満の死亡割合
平成22年
平成24年
性別
男性
女性
男性
女性
熊本県
80.3 歳
87.0 歳
15.7%
7.4%
芦北町
80.3 歳
86.7 歳
14.1%
4.8%
県内 45 市町村中
24 位
35 位
24 位
34 位
※KDB
様式 6-1、国保連合会資料
2)健康・医療情報の分析、分析結果に基づく健康課題の把握(KDBのデータ)
保健事業指針では、生活習慣病対策をはじめとして、被保険者の自主的な健康増進及び疾
病予防の取り組みについて、保険者がその支援の中心になって、被保険者の特性をふまえた
効果的かつ効率的な保健事業を展開することを目指すものです。被保険者の健康増進により、
医療費の適正化及び保険者の財政規模強化が図られることは保険者自身にとっても重要で
あるといわれています。
保健事業の実施指針で取り扱う対象疾患は、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病性腎症及
び慢性閉塞性肺疾患(COPD)
、がんの 5 つで、特に心臓、脳、腎臓、肺の臓器を守るこ
とであり、そのためには、まず健康・医療情報を分析する必要があります。
本町の健康・医療情報を分析するために、KDBの以下の帳票から情報を把握します。
①
高額になる疾患(様式 1-1)
②
長期入院(様式 2-1)
③
人工透析患者(様式 2-2)
④
生活習慣病レセプト(様式 3-1∼3-7)
⑤
要介護認定状況
⑥
健診有所見者状況(様式 6-2∼6-7)
⑦
メタボ該当者・予備群の把握(様式 6-8)
(1)医療(レセプト)の分析
①ひと月 100 万円以上の高額になる疾患を分析すると、平成 25 年度に 152 件ありま
す。152 件のうち、1 位はがんで 24.3%を占めています。また、虚血性心疾患と脳血
管疾患で約 1 割を占め、費用額は 2,019 万円と全体の 8.6%を占めています。
(表 25・様式 1-1)
②6 か月以上の長期入院レセプトの分析では、1 位は精神疾患で件数は全体の 60.6%、
費用額は 52.9%を占め、
次に脳血管疾患が多く、件数は全体の 6.5%で、費用額は 5.3%
を占めています。
(様式 2-1)
③長期療養する疾患である人工透析を分析すると、患者 25 人のうち、糖尿病性腎症が 12
人で全体の 48.0%で、費用額は 47.7%を占めています。(表 2-5・様式 2-2)
④脳血管疾患と虚血性心疾患における基礎疾患の重なりをみると、7 割が高血圧、6 割が
7
脂質異常、4 割が糖尿病をもっています。特に3つの疾患が重なっている対象者を明確
にして取り組むことが必要となります。また、全体の半数以上が高血圧で治療していま
す。(表 2-5・様式3)
表 2-5
何の疾患で入院しているのか、治療を受けているのか
厚労省様式
対象レセプト(H25年度)
全体
脳血管疾患
虚血性心疾患
がん
その他
73人
114人
人数
152件
様式1-1
★NO.10(CSV)
高額になる疾患
(100万円以上レセ)
件数
年
代
別
厚労省様式
様式2-1
★NO.11(CSV)
様式2-2
★NO.12(CSV)
人工透析患者
(長期化する疾患)
11件
37件
100件
40代
0
0.0%
2
18.2%
2
50代
0
0.0%
0
0.0%
2
0
0.0%
65.8%
1
1.0%
5.4%
3
3.0%
5.4%
9
9.0%
60代
3
75.0%
4
36.4%
25
67.6%
48
48.0%
70-74歳
1
25.0%
4
36.4%
8
21.6%
39
39.0%
561万円
1458万 円
5685万 円
1億 5891万円
2.4%
6.2%
24.1%
67.3%
件数
1 ,3 2 9 件
5億4480万円
全体
脳血管疾患
80人
15人
6人
60.2%
11.3%
4.5%
805件
86件
57件
60.6%
6.5%
4.3%
2億8832万円
2884万円
1905万円
52.9%
5.3%
3.5%
糖尿病性腎症
脳血管疾患
虚血性心疾患
虚血性心疾患
6人
7人
48.0%
24.0%
28.0%
172件
70件
95件
49.0%
19.9%
27.1%
7268万円
3105万円
4214万円
47.7%
20.4%
27.7%
脳血管疾患
虚血性心疾患
糖尿病性腎症
377人
374人
59人
12.1%
12.0%
1.9%
284人
277人
44人
75.3%
74.1%
74.6%
165人
153人
59人
43.8%
40.9%
100.0%
212人
231人
41人
56.2%
61.8%
69.5%
高血圧症
糖尿病
脂質異常症
高尿酸血症
1 ,7 5 5 人
795人
1 , 2 33 人
194人
56.3%
25.5%
39.6%
6.2%
25人
件数
351件
1億5239万円
全体
対象レセプト(H25年5月診療分)
高血圧
の基
重礎
な疾
り患
糖尿病
脂質
異常症
8
精神疾患
12人
人数
H25年度
累計
生活習慣病の治療者数
構成割合
24.3%
0.0%
3 ,1 1 5 人
様式3
★NO.13∼18
(帳票)
7.2%
0
133人
費用額
厚労省様式
64.0%
4件
0.0%
人数
H25.5
診療分
28.1%
2.6%
対象レセプト
様式3-7
★NO.19(CSV)
32人
8.8%
全体
費用額
厚労省様式
10人
0
対象レセプト(H25年度)
長期入院
(6か月以上の入院)
4人
3.5%
40歳未満
2億 3595万 円
費用額
平成25年度※KDB
(2)介護のレセプトの分析
1 号被保険者のうち、65∼74 歳の認定率は 4.1%、75 歳以上になると 35.0%と一気
に高くなっています。同規模と比較すると 1 号被保険者は高く、2 号被保険者は変わらない
状況です。有病状況をみると、血管疾患のなかで脳卒中が 1 号及び 2 号被保険者ともに一
番多くなっています。また、虚血性心疾患が、65∼74 歳で 28.1%と 40∼64 歳の 4.8%
から高くなっています。(表 2-7・№.47)
基礎疾患は、高血圧8割、脂質異常症5割、糖尿病4割であり、これらの重症化を予防す
ることが介護保険の認定を減らすことにも有効であることがわかります。
(表 2-7・№.49)
介護給付費は、国、県と比較すると高くなっていますが、同規模市町村より低い状況です。
また介護を受けている人の医療費は、受けていない人より 7,356 円も高くなっています。
(図 2-8)
表 2-7
平成26年3月診療分※KDB
要介護
認定状況
★NO.47
受給者区分
2号
年齢
40∼64歳
65∼74歳
75歳以上
計
被保険者数
6 , 6 26 人
2,940人
3,989人
6,929人
13,555人
認定者数
30人
120人
1,396人
1,516人
1 , 5 46 人
0.45%
4.1%
35.0%
2 1 . 9%
11.4%
6人
19人
0人
19人
2 5人
認定率
新規認定者数(*1)
介護度
別人数
13
43.3%
57
47.5%
567
40.6%
624
41.2%
6 37
41.2%
要介護1・2
5
16.7%
28
23.3%
350
25.1%
378
24.9%
3 83
24.8%
要介護3∼5
12
40.0%
35
29.2%
479
34.3%
514
33.9%
5 26
34.0%
疾患
順位
件数
--
件数
疾病
割合
1
脳卒中
件数
疾病
21
割合
9
循環器
疾患
虚血性
心疾患
2
腎不全
3
1
4.8%
1
糖尿病
7
42
高血圧
(*2)
16
25
虚血性
心疾患
28.1%
9
腎不全
38
糖尿病
)
血管疾患
合計
合計
9
42.9%
17
2
70
47
脂質
異常症
52.8%
80
合計
筋骨格系
24
認知症
17
糖尿病
74
筋骨格系
89
0
脳卒中
0
-0
0
高血圧
0
合計
0
-0
虚血性
心疾患
腎不全
0
糖尿病
筋骨格系
0
高血圧
0
2,000
4,000
脂質
異常症
合計
25
26
虚血性
心疾患
28.1%
9
23.6%
10
腎不全
9.1%
38
45
糖尿病
40.9%
70
86
高血圧
78.2%
47
56
脂質
異常症
52.8%
80
50.9%
97
合計
89.9%
認知症
88.2%
24
26
認知症
27.0%
筋骨格系
--
6,000
46.4%
78.7%
23.6%
74
91
筋骨格系
83.1%
介護を受けている人と受けていない人の医療費の比較
要介護認定者医療費
(40歳以上)
51
脳卒中
42.7%
--
83.1%
42
10.1%
-認知症
割合
110
47.2%
-脂質
異常症
件数
疾病
割合
--
27.0%
81.0%
疾病
--
89.9%
9.5%
筋・骨格疾患
腎不全
78.7%
81.0%
認知症
虚血性
心疾患
42.7%
高血圧
件数
--
10.1%
76.2%
脂質
異常症
脳卒中
47.2%
33.3%
基礎疾患
割合
0
脳卒中
4.8%
血
管
疾
患
件数
疾病
89
42.9%
認知症
図 2-8
合計
要支援1・2
(
有
病
状
況
要介護
突合状況
★NO.49
レ
セ
プ
ト
の
診
断
名
よ
り
重
複
し
て
計
上
1号
82.7%
※KDB
8,000
10,000
12,000
10 ,935
要介護認定なし医療費
(40歳以上)
3 ,579
9
(3)健診の分析
本町においては、メタボ該当者・予備群のすべての項目において、同規模平均より、低
いか変わらない状況ですが、非肥満高血糖の割合が同規模より高い状況です。(表 2-1・
様式 6-1 の 5-④、⑤、⑥)
血圧+脂質が重なっている者が多く、また、メタボの該当者で 3 項目すべての人は男性
に多い状況です。
(表 2-8)
健診データのうち有所見割合の高い項目を性別、年代別にみると男女とも空腹時血糖、
LDL−C、尿酸が全国、県より高い状況です。(表 2-9)
表 2-8 メタボリックシンドローム該当者・予備群の把握
男性
保
険
者
腹囲のみ
人数
人数
割合
予備群
割合
人数
高血糖
割合
人数
高血圧
割合
人数
該当者
脂質異常症
割合
人数
割合
人数
血糖+血圧 血糖+脂質 血圧+脂質 3項目全て
割合
人数
人数
割合
人数
割合
人数
割合
57
8.6%
107 16.2%
11
1.7%
69 10.4%
27
4.1%
150 22.7%
30
4.5%
12
1.8%
63
9.5%
45
6.8%
40-64
293 25.5
32 10.9%
55 18.8%
8
2.7%
27
9.2%
20
6.8%
60 20.5%
11
3.8%
6
2.0%
28
9.6%
15
5.1%
65-74
369 34.6
25
52 14.1%
3
0.8%
42 11.4%
7
1.9%
90 24.4%
19
5.1%
6
1.6%
35
9.5%
30
8.1%
6.8%
健診受診者
腹囲のみ
人数
人数
割合
予備群
割合
人数
高血糖
割合
人数
高血圧
割合
人数
該当者
脂質異常症
割合
人数
割合
人数
血糖+血圧 血糖+脂質 血圧+脂質 3項目全て
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
合計
775 36.7
20
2.6%
55
7.1%
2
0.3%
43
5.5%
10
1.3%
64
8.3%
13
1.7%
4
0.5%
33
4.3%
14
1.8%
40-64
315 34.2
15
4.8%
24
7.6%
0
0.0%
16
5.1%
8
2.5%
16
5.1%
3
1.0%
1
0.3%
6
1.9%
6
1.9%
65-74
460 38.6
5
1.1%
31
6.7%
2
0.4%
27
5.9%
2
0.4%
48 10.4%
10
2.2%
3
0.7%
27
5.9%
8
1.7%
男性
全国
平成 25 年度
※KDB
BMI
腹囲
中性脂肪
GPT
HDL-C
空腹時血糖
HbA1c
尿酸
収縮期血圧
拡張期血圧
LDL-C
25以上
85以上
150以上
31以上
40未満
100以上
5.6以上
7.0以上
130以上
85以上
120以上
人数
割合
29.7
割合
48.5
人数
割合
28.1
人数
割合
人数
20.1
割合
9.1
人数
割合
26.7
割合
50.6
人数
割合
12.1
人数
割合
49.5
人数
割合
24.1
人数
割合
1.3以上
人数
49.0
割合
1.4
29.0 23,925
47.8 12,720
25.4
9,947
19.9
3,959
42.2 28,646
57.2 10,065
20.1 24,168
48.3 13,456
26.9 24,097
48.2
1,005
29.0
314
47.4
166
25.1
125
18.9
73
11.0
311
47.0
361
54.5
140
21.1
281
42.4
153
23.1
327
49.4
8
1.2
40-64
90
30.7
147
50.2
88
30.0
64
21.8
30
10.2
123
42.0
143
48.8
73
24.9
107
36.5
76
25.9
150
51.2
1
0.3
65-74
102
27.6
167
45.3
78
21.1
61
16.5
43
11.7
188
50.9
218
59.1
67
18.2
174
47.2
77
20.9
177
48.0
7
1.9
BMI
腹囲
中性脂肪
GPT
HDL-C
空腹時血糖
HbA1c
尿酸
収縮期血圧
拡張期血圧
LDL-C
25以上
90以上
150以上
31以上
40未満
100以上
5.6以上
7.0以上
130以上
85以上
120以上
人数
全国
県
7.9 21,096
人数
192
女性
14,518
人数
クレアチニン
合計
県
保
険
者
割合
662 29.9
表 2-9 健診の有所見状況
保
険
者
※KDB
合計
女性
保
険
者
健診受診者
平成 25 年度
割合
20.8
13,122
人数
割合
17.5
人数
割合
16.6
人数
割合
8.7
人数
割合
2.1
人数
割合
15.9
人数
割合
50.4
人数
割合
1.5
人数
割合
43.1
人数
割合
14.5
人数
割合
59.1
2.0
クレアチニン
1.3以上
人数
割合
0.2
20.1 11,944
18.3
9,055
13.9
5,272
8.1
1,175
1.8 16,087
24.6 39,148
60.0
1,300
2.0 26,980
41.3
9,798
15.0 38,236
58.6
166
合計
166
21.4
139
17.9
99
12.8
55
7.1
21
2.7
244
31.5
465
60.0
18
2.3
317
40.9
116
15.0
472
60.9
3
0.3
0.4
40-64
69
21.9
55
17.5
43
13.7
25
7.9
6
1.9
87
27.6
168
53.3
8
2.5
99
31.4
52
16.5
197
62.5
0
0.0
65-74
97
21.1
84
18.3
56
12.2
30
6.5
15
3.3
157
34.1
297
64.6
10
2.2
218
47.4
64
13.9
275
59.8
3
0.7
(4)未受診者の状況
本町の特定健診受診率は、33.2%で県下 38 位、同規模町村では最下位となっています。
(表 2-1・様式 6-1 の 5-①、②)
図2-10 をみると、年齢が高いほど、特に女性の受診率が高くなっています。各年代の
男女とも年度毎に上昇傾向にありますが、40代の男女については逆に減少傾向にあり、
受診率は10%台となっています。
表 2-8、表 2-9 から 40-64 歳の健診結果にも異常がみられており、図 2-11 の「G
健診・治療なし」の健康実態を知るためにも徹底した受診勧奨が必要です。また、
「H治療中
10
(健診未受診)」が健診対象者の約 5 割であり、通院していても健診を受けてもらうような
対策が必要となります。
今後 65∼74 歳の人が後期高齢者に移行していくと受診率が次第に低下していくことが
懸念されますが、特定健診の受診率が 40 代で低い現状にありますので、若いころからの健
康づくりの意識を高める必要があります。
図 2-10
※評価ツール
受診率
20年度からの特定健診受診率の推移
女性
男性
42.5%
41.4%
36.6%
38.1%
70∼74歳
70-74
31.0%
31.9%
28.1%
36.3%
33.2%
25.7%
32.5%
31.5%
28.2%
27.4%
26.5%
39.3%
36.9%
35.8%
35.5%
65-69
65∼69歳
30.2%
33.8%
33.8%
39.2%
34.4%
35.4%
60∼64歳
60-64
26.3%
27.1%
28.7%
26.7%
28.4%
25.8%
24.7%
24.7%
27.6%
29.9%
38.0%
35.7%
32.8%
34.6%
30.8%
55∼59歳
55-59
40.7%
24.2%
23.7%
24.8%
21.2%
21.3%
50∼54歳
50-54
19.9%
24.6%
23.3%
19.9%
23.7%
45∼49歳
45-49
30.2%
32.8%
32.1%
30.7%
H24
H23
H22
H21
H20
21.5%
17.9%
16.8%
16.9%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
21.1%
19.7%
19.5%
40-44
40∼44歳
24.2%
25.0%
70.0%
27.0%
27.4%
27.1%
27.5%
28.2%
23.7%
20.0%
10.0%
0.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
図 2-11 健診未受診者の把握
未受診者対策を考える(厚生労働省様式 6-10)
平成 25 年度
※KDB
B
健
診
対
象
者
健診受診者
29.4%
40∼64歳
健診受診者
J_治療なし
9.0%
608人
健診未受診者
70.6%
l_治療中
20.4%
H_治療中(健診未受診)
48.5%
0%
4 , 3 28 人
20%
40%
60%
J _治療なし
l _治療中
186人
422人
100%
G _健診・治療なし
1,004人
456人
健診未受診者
63.3%
健診受診者
36.7%
65∼74歳
健診受診者
829人
1 , 4 37 人
80%
H _治療中(健診未受診)
1,426人
E
健
診
受
診
者
G_健診・治療なし
22.1%
(29.4%)
(36.7%)
J_治療なし
4.5%
0%
l_治療中
32.2%
20%
H_治療中(健診未受診)
56.8%
40%
60%
G_健診・治療なし
6.5%
80%
100%
(33.2%)
J _治療なし
l _治療中
H _治療中(健診未受診)
G _健診・治療なし
101人
728人
1,284人
147人
2,012人
11
(5)重症化予防対象者の状況
本町の特定健診受診者のうち、脳血管疾患、虚血性心疾患、糖尿病性腎症の重症化予防
対象者は、各学会のガイドラインに基づき対象者を抽出すると 398 人で 27.1%です。こ
のうち、治療なしが 164 人で 19.2%を占め、さらに臓器障害があり、ただちに取り組む
べき予防対象者が 45 人です。また、健診受診者中、メタボが 219 人で 14.9%、このう
ちの 59 人は生活習慣病の治療なしなので、特定保健指導としてフォローしていく必要が
あります。重症化予防対象者と特定保健指導対象者が重なる率が 164 人中 84 人と半数
近くあり、特定保健指導の徹底も合わせて行うことが重症化予防にもつながることがわか
ります。
(図 2-12)
重症化予防対象者への取り組みは、医療との連携が不可欠であり、保健指導を行った後、
確実に医療機関を受診したのか、KDBシステムを活用し、医療受診の状況を確認したうえ
でその後も治療中断しないか等疾病管理を行う必要があります。
図 2-12
平成 25 年度
※集計ツール
資料B
脳・心・腎を守るために − 重症化予防の視点で科学的根拠に基づき、保健指導対象者を明らかにする健康日本21
(第2次)目標
目指すところ
脳血管疾患
科学的根拠に基づき
脳出血
脳梗塞
(7%)
(18%)
(75%)
心原性
脳塞栓症
ラクナ
梗塞
(27%※)
(31.9%)
健診結果から
対象者の抽出
高血圧治療
ガイドライン2009
(日本高血圧学会)
重症化予防対象
Ⅱ度高血圧以上
受診者数
糖尿病治療ガイド
CKD診療ガイド
2012-2013
(日本糖尿病学会)
2012
(日本腎臓病学会)
(2005年度合同研究班報告))
クモ膜下出血
高血圧症
による年間新規透析導入患者数の減少
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)
(循環器病の診断と治療に関するガイドライン
(脳卒中合同ガイドライン委員会)
労作性
狭心症
心筋梗塞
安静
狭心症
アテローム
血栓性
脳梗塞
(33.9%)
非心原性脳梗塞
※脳卒中
データバンク
2009より
優先すべき
課題の明確化
糖尿病性腎症
の年齢調整死亡率の減少
脳卒中治療ガイドライン2009
科学的根拠に基づき
レセプトデータ、
介護保険データ、
その他統計資料等
に基づいて
健康課題を分析
虚血性心疾患
の年齢調整死亡率の減少
心房細動
心房細動
脂質異常症
メタボリック
シンドローム
動脈硬化性疾患予防ガイドライン
2012年版
(日本動脈硬化学会)
メタボリックシンドロームの
診断基準
LDL-C
180㎎/dl以上
中性脂肪
300㎎/dl以上
メタボ該当者
(2項目以上)
糖尿病
慢性腎臓病(CKD)
糖尿病治療ガイド
CKD診療ガイド2012
(日本腎臓病学会)
2012-2013
(日本糖尿病学会)
HbA1c(NGSP)
6.5%以上
(治療中:7.0以上)
蛋白尿
(2+)以上
70歳以上40未満
eGFR50未満
重症化予防対象者
(実人数)
1,469
63
4.3%
16
1.1%
70
4.8%
38
2.6%
219
14.9%
58
3.9%
6
0.4%
32
2.2%
398
27.1%
治療なし
36
3.7%
4
0.5%
63
5.0%
34
2.7%
59
6.9%
30
2.2%
0
0.0%
12
1.4%
164
19.2%
(再掲)
特定保健指導
14
22.2%
0
0.0%
15
21.4%
16
42.1%
59
26.9%
6
10.3%
0
0.0%
2
6.3%
84
21.1%
治療中
27
5.5%
12
1.9%
7
3.3%
4
1.9%
160
25.9%
28
32.2%
6
1.0%
20
3.3%
234
37.9%
臓器障害
あり
3
8.3%
4
100.0%
16
25.4%
7
20.6%
12
20.3%
7
23.3%
0
--
12
100.0%
45
27.4%
対象者数
CKD(専門医対象者)
0
尿蛋白(2+)以上
0
1
0
0
12
13
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
0
1
0
1
0
0
12
12
4
14
7
11
7
0
1
34
0
3
0
0
0
0
0
心電図所見あり
3
臓器障害
なし
33
尿蛋白(+)and
尿潜血(+)以上
eGFR50未満
(70歳未満は40未満)
91.7%
CH42
--
47
74.6%
27
79.4%
12
47
79.7%
23
76.7%
--
--
--
3)目的・目標の設定
(1)健康格差(疾病・障害・死亡)の縮小
今回の計画の目的は、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病性腎症の死亡を減らし、健康格
差を縮小することです。
本町においては、医療、介護及び健診の分析から、医療費が高額な虚血性心疾患、脳血管
疾患、慢性腎臓病による新規透析患者を減らすことを最優先事項として取り組みます。
(2)成果目標
①中長期的な目標の設定
これまでの健診・医療情報を分析した結果、医療費が高額となる疾患、6 か月以上の入
院における疾患、長期化することで高額になる疾患で介護認定者の有病状況の多い疾患で
もある「脳血管疾患、虚血性心疾患、慢性腎臓病を減らしていくこと」を目標とします。
今後、高齢化が益々進展すること、年齢が高くなるほど心臓、脳、腎臓の 3 つの血管も
痛んでくることを考えると「医療費の伸びを抑える」ことを長期的な目標とします。
②短期的な目標の設定
脳血管疾患、虚血性心疾患、慢性腎臓病の血管変化における共通リスクとなる、「高血
圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム等を減らしていくこと」を短期的な
目標とします。
具体的には、日本人の食事摂取基準(2015 年版)の基本的な考え方を基に、1 年 1
年、血圧、血糖、脂質、慢性腎臓病の検査結果を改善していくこととします。
そのためには、医療受診が必要な者への適切な受診への働きかけ及び治療を継続するた
めの働きかけを行うとともに、継続的な治療が必要であるにも関わらず、医療機関の受診
を中断している者についても適切な保健指導を行い、受診につなげる必要があります。ま
た、必要に応じて医療機関と十分な連携を図ることとします。
また、生活習慣病は自覚症状がないため、まずは、健診の受診を勧め、個々の状態に応
じた保健指導を実施することにより、生活習慣病の発症予防・重症化予防につなげていく
必要があります。そのためにも特定健診受診率、特定保健指導実施率の向上にも努め、そ
の目標値は、特定健診等実施計画に準ずることとします。
3.保健事業の実施
具体的な課題別の保健事業計画については、第2章の各論で定めることとし、その際
は「目的」「目標」「対象者」「保健事業内容」「実施方法」等を記載します。
4.その他の保健事業
(1)COPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防
WHO(世界保健機関)は COPD を「予防でき、治療できる病気」と位置づけ、啓発運
動を進めることを提言しています。日本では平成 24 年(2012 年)、COPD を「健康日
本 21(第 2 次)
」の中で、今後、取り組むべき深刻な病気とされ、新たに加えられまし
13
た。生活習慣病対策として発症予防と重症化予防の推進を図るため、「COPD(慢性閉塞性
肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
第 4 版」(日本呼吸器学会
2013 年 4 月発
行)に基づき保健事業の実施計画(データヘルス計画)を検討、作成します。
①COPD の定義と包括的疾患概念
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であ
る。呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示す。気流閉塞は抹消機能病変
と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり、通常は進行性で
ある。臨床的には徐々に生じる労作性の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これ
らの症状に乏しいこともある。
出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
第 4 版(日本呼吸器学会)
②COPD の経済的負担と社会負荷
国民医療の統計によると、呼吸器疾患の医療費は一般診療医療費の約 8%前後を推移。
呼吸器疾患医療費に占める「気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患」の医療費の割合は約 7∼
9%、総額では 1,900 憶円を上回っています。医療費の内訳では入院の割合が増加し、入
院治療にかかる医療費は 5 年前に比較し 100 憶円増加しています。
③COPD の全身的影響
COPD 自体が肺以外にも全身性の影響をもたらして並存症を引き起こしている可能性も
あることから、COPD を全身性疾患としてとらえる考え方もあります。
●全身性炎症:全身性サイトカインの上昇、CRP の上昇
量の減少
●骨格筋機能障害:筋量・筋力の低下
症、脳血管障害
●骨粗鬆症:脊椎圧迫骨折
●栄養障害:脂肪量、徐脂肪
●心・血管疾患:心筋梗塞、狭心
●抑うつ
●糖尿病
●睡眠障害
●貧
血
④COPD の有病者の状況
厚生労働省の患者調査では、平成 20 年に 17 万人と集計上は減少しています。一方で
COPD 疫学調査では 40 歳以上の 10.9%に気流閉塞が認められ、喘息による影響を除い
た場合でも 8.6%と推測されます。多くの潜在 COPD 患者が見過ごされ、正確な診断を受
けられていない現状にあると予想されます。
2011 年に行ったアンケートでは、COPD という病気について知っていると回答した人
は 7.1%と COPD の認知度が極めて低いこと、また COPD の症状である咳と痰は COPD
の早期から、呼吸困難はある程度進行してから持続的に、あるいは反復的に生じるが、こ
れらは非特異的な症状であるため、加齢や風邪によるものとして見過ごされていることも
多いことが理由としてあげられています。
COPD の診断が遅れ、治療が遅れることで肺機能が短期間のうちに著しく低下していく
人もおり、酸素療法が必要な段階まで悪化して外出が不自由となり、寝たきりに近い生活
に追い込まれることで、支える家族の負担も大きくなります。
14
COPD の患者数
年
単位:千人
総数
度
総数
男
平成 11 年度
212
平成 14 年度
65 歳以上
75 歳以上
女
総数
男
139
73
160
109
51
213
135
78
170
113
平成 17 年度
223
146
78
180
平成 20 年度
173
114
60
140
厚生労働大臣官房統計情報部
女
総数
男
女
87
57
29
56
103
66
37
120
60
119
77
42
98
42
91
62
29
患者調査
住民調査による大規模な COPD 疫学調査(NICE)の結果では、スパイロメトリーで
40 歳以上の 10.9%(男性 16.4%、女性 5.0%)に気流閉塞が認められた。喘息によ
る気流閉塞の影響を除いた場合でも日本人の COPD 有病率は 8.6%と推測される。
出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
第 4 版(日本呼吸器学会)
⑤COPD の診断基準
タバコ煙を主とする有害物質の長期にわたる吸入曝露を危険因子とし、慢性に咳、喀
痰、労作時呼吸困難などがみられる患者に対して COPD を疑う。
診断基準
1.気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで 1 秒率(FEX1/FVC)が 70%未満であ
ること。
2.他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること。
出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
第 4 版(日本呼吸器学会)
⑥COPD の危険因子
外因性因子
最重要因子
タバコ煙
重要因子
大気汚染
内因性因子
α1-アンチトリプシン欠損症
受動喫煙
職業上の粉塵や化学物質への曝露
バイオマス燃焼煙
可能性の指摘さ
呼吸器感染
遺伝子変異
れている因子
小児期の呼吸器感染
気道過敏性
妊娠時の母体喫煙
COPD や喘息の家族歴
肺結核の既往
自己免疫
社会経済的要因
老化
出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
第 4 版(日本呼吸器学会)
タバコ煙は COPD の最大の危険因子で、COPD 疾患の約 90%に喫煙歴があります。
COPD の発症予防にはタバコ煙の暴露からの回避が重要であり、現在の青年期・壮年期の
世代への生活習慣病の改善に向けた働きかけを重点的に行うことが大切です。
15
特に、子どもたちの受動喫煙や未成年者の喫煙は肺の正常な発達を著しく妨げ、さら
に、成人になってから喫煙することで COPD を発症しやすいことが知られています。
(参考
肺の成長・発達)
気管支・細気管支
肺胞
妊
早期の時期
肺になる組織(胚芽)ができ
出来上がる
娠
(26 日
る
過程で何ら
中
目)
かの原因で
4 か月頃
気管支となる部分やその先の
妨げられる
終末気管支までの基本的構造
と、気管支
が完成
や細気管支
5 か月
肺胞がつくられ、出産時
の数が不足
には約 6000 万個(成
した状態が
人の肺細胞は約5億個)
起こる
2 歳頃まで
80∼90%以上が完成
18 歳頃まで
完成
⑦健康・医療情報を活用した被保険者の健康課題の分析・評価
ア
生活習慣の状況より
特定健診受診者の喫煙率を同規模と比較
イ
※特定健診質問票より
平成24年度
平成25年度
芦北町
10.2%
10.1%
同規模
13.1%
13.9%
熊本県
13.1%
13.4%
国
13.9%
14.0%
医療機関への受診状況・医療費の状況
KDB システム
疾病別医療費分析
慢性閉塞性肺疾
(COPD)
被保険者千人当たりレセプト件数(入院)
肺気腫
間質性肺炎
気管支喘息
芦北町
0.043
0.071
0.000
0.468
同規模
0.027
0.043
0.061
0.102
熊本県
0.025
0.046
0.063
0.137
国
0.025
0.043
0.058
0.070
(細小(82)分類)
H25 年度(累計)
特定健診受診者の喫煙率は、10.0%で同規模、県、国と比較して低い状況です。
被保険者千人当たりのレセプト件数(入院)から呼吸器疾患の受診状況をみると、間質
性肺炎を除くCOPD、肺気腫、気管支喘息での入院件数が国、県、同規模と比較して高
い状況にあります。
16
⑧事業計画に基づく事業の実施
特定健康診査受診率及び特定保健指導の実施率は、平成25年度はそれぞれ 34.2%と
26.2%でした。それらの実施の中で、喫煙状況をはじめとする生活習慣や咳や痰、息切れ
といった健康状態に関する情報の把握を適切に行い、保健指導を行います。
⑨事業の評価
評価に用いることが可能な指標として、健康・医療情報を活用して喫煙の有無(生活習
慣の状況)を把握していきます。
(2)子どもの生活習慣病予防
※母子保健計画
第5章 「乳幼児期からの生活習慣の確立、生活習慣病予防対策」に掲
載。
(3)重複受診者への適切な受診指導
健診・医療情報を活用したその取り組みとしては、診療報酬明細書等情報を活用して、同
一疾患で複数の医療機関を重複して受診している被保険者に対し、医療機関、保険者等の関
係者が連携して、適切な受診の指導を行います。
(4)後発薬品の使用促進
診療報酬等情報に基づき、後発医薬品を使用した場合の具体的な自己負担の差額に関して
被保険者に通知を行います。
5.事業実施計画(データヘルス計画)の評価方法の設定
評価については、国保データベース(KDB)システムの情報を活用し、毎年行うことと
します。また、データについては経年変化、国、県、同規模保険者との比較を行い、評価
していきます。
【評価項目】次の項目について、経年で評価していく。
①全体の経年変化(町の地域特性)
②医療費の変化(総医療費、1 人当たりの医療費)
③疾病の発生状況の経年変化
・中長期的な目標疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性腎臓病、COPD)
・短期的な目標疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症)
④有所見割合の経年変化
⑤メタボリックシンドローム該当者、予備群の経年変化
⑥健診質問票の経年変化
⑦特定健診受診率、特定保健指導実施率の経年変化
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6.実施計画(データヘルス計画)の見直し
計画の見直しは、最終年度となる平成29年度に、計画に掲げた目的・目標の達成状況
の評価を行います。国保データベース(KDB)システムに毎月健診・医療・介護のデータ
が収載されるので、受診率・受療率、医療の動向等を確認していきます。
また、特定健診の国への実績報告後のデータを用いて、経年比較を行うとともに、個々
の健診結果の改善度を評価します。特に直ちに取り組むべき課題の解決としての重症化予
防事業の事業実施状況は、毎年とりまとめ、国保連合会に設置する保健事業支援・評価委
員会の指導・助言を受けるものとします。
7.計画の公表・周知
策定した計画は、町の広報紙やホームページに掲載します。
8.事業運営上の留意事項
芦北町は、平成 20 年度にスタートした特定健診・特定保健指導事業において、国保部
門と保健部門が連携し、保健事業を実施してきました。データヘルス計画策定作業を通じ
て、今後も連携を強化するとともに、介護部門等関係部署と共通認識をもって、課題解決
に取り組むものとします。
9.個人情報の保護
芦北町における個人情報の取り扱いは、芦北町個人情報保護条例(平成 17 年 3 月 31
日芦北町条例第 188 号)によるものとします。
10.その他計画策定に当たっての留意事項
データ分析に基づく保険者の特性を踏まえた計画を策定するため、国保連合会が行うデ
ータヘルス計画に関する研修に事業運営にかかわる担当者(国保、保健、介護部門等)が
積極的に参加するとともに、事業推進に向けて協議する場を設けるものとします。
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芦北町保健事業実施計画
(データヘルス計画)
平成27年度−平成29年度
発 行 日
平成27年4月1日
発
熊本県芦北町
行
〒869-5498 熊本県葦北郡芦北町大字芦北 2015 番地
TEL.
(0966)82−2511
FAX.
(0966)82−2893
編集・構成
住民生活課 健康づくり推進室