“地域コミュニティの核となる担い手”を育成する初の試み

商店街活性化_事業レポート
“地域コミュニティの核となる担い手”を育成する初の試み
商店街名:
大阪府高槻市中心市街地商店街地域(大阪府高槻市)
支援機関名:
有限会社 協働研究所
計画を進める市の都市産業部では、「基本計画を
1.高槻市街地の商店街と市民をつなぎ、活
基にまちづくりが動き出し、イベントなどのソフト事業も
性化の推進力となる「現地マネージャー」を!
あちこちで芽生えていますが、それを支援する人材の
厳しい経営環境や後継者問題など、さまざまな難
確保が急務だと思っていました。まちづくりへのいろ
問を抱えながら活性化のために努力を続ける商店街。
いろなアイデアに対して、考え方をきちんと説明でき、
せっかく事業プランやイベント、販促のアイデアを考え
情報を吸い上げ、うまく連携させてことができる、まと
出しても、それを具体化し実践していく推進力がなけ
め役が必要です。フットワークとネットワークを兼ね備
れば、絵に描いた餅に終わってしまいます。
えた現地マネージャーが、高槻にぜひほしい!」と期
商店街や地域住民の願いをカタチにしてまとめあ
げ、真に求められる商店街モデルを描きながら、継続
的にまちづくりを推進していく力ある人材が全国各地
待感も十分。
こうした熱い要望を受け、マネージャー候補として
選ばれたのが、廣口靖さん(29)でした。
で求められています。「現地マネージャー育成事業」
は、地域ごとのニーズに対応し課題を解決できる、実
践ノウハウを身に付けたマネージャー人材、しかも、
地域コミュニティの担い手として現地に根付く人材の
育成を目的としています。
今回、「現地マネージャーをぜひわが街で育てた
い!」と名乗りを上げた大阪府高槻市は、大阪と京都
の二大都市の中間に位置する北摂のベッドタウン。大
型商業施設が 5 店舗も出店するなど都市化が進む中、
6 つの商店街・市場が共存し、にぎわいを見せていま
す。現在、同市ではJR高槻駅と阪急高槻市駅を中心
とする地域をまちの中心核として位置づけ、「高槻市
中心市街地活性化基本計画」を策定。平成 21 年 12
月には国の認定も受けています。
基本計画は、今後 5 年間で「高槻ならでは」の独自
の魅力を創出し、中心市街地内の回遊性を高めるこ
とで歩行者数をアップさせ、商業の質を向上させてい
▲現地マネージャー 廣口靖さん
こうというもの。行政はもとより、地元商店街や市民が
一体となって取り組むことが不可欠です。
-1㈱全国商店街支援センター
平成 22 年度現地マネージャー育成事業
がら、自分の中に飲食店経営への興味がわいていた
ので、現地マネージャーとして大勢の商店主のみなさ
んと知り合いになって、商店街で商売をするということ
や商店主目線でのまちづくりについて勉強させてもら
いたいという思いも決め手になりました」と廣口さん。
さっそく育成研修が始まりました。指導に当たるの
は、まちづくりや商店街の活性化、起業家育成に実
績がある、「有限会社協働研究所」(大阪市淀川区)。
廣口さんを担当した同社の東朋治さんは、「高槻の市
民力というのはスゴイ。ボランティア参加率が高いんで
▲JR 高槻駅と阪急高槻
市駅をつなぐ
高槻センター街
す。何かやりたいという人が多い。特にシニア層です
▲北口再開発の
ね。しかし、より軽快なフットワークで地域の調整をし
ランドマークと
ていくためには、やはり若い力が必要になってくる。そ
なっているビル
れぞれのイベントは面白く魅力的なのですが、より連
動性を高めた方がよいと思われます。そこにつなぎ役
として現地マネージャーが存在して、動きを集約して
システム化できれば、今の一つ一つの努力や成果を
もっとまちづくりに生かせるはず」と指摘します。
育成研修では、他エリアのマネージャー候補生た
ちとの合同研修での意見交換や先進事例の視察、実
際の手法の個別実習が半年間にわたって繰り返し行
われました。高槻では、ちょうど 10 月に「食の文化祭」
をひかえていたことから、廣口さんは事務局員として
営業や資金回収、パンフレット作成の手伝いなどにあ
▲駅の北側にある松坂屋
たり、無事収益も上げることができました。
2.人生初体験! 配った名刺は 400 枚を超え
た!
トリート」では、芸術イベントの難しさに直面しながらも
廣口さんは、大学在学中から高槻の名物イベント
アートを通じたまちづくりの可能性も実感することがで
「高槻JAZZ STREET」にボランティアスタッフとして
きました。また、12 月には「高槻芥川宿手作り市」「高
関わってきました。大学の学園祭の統括やイベントの
槻ブランドフォーラム」にも参加、年明け 1 月には「た
企画・マネージメントが好きで、コンピューターのSEと
かつきスクール JAZZ コンテスト」の企画運営も。
して働くようになってからも、ボランティア活動を続けて
きました。
次いで同じく事務局に参加した「アート de わくわくス
「とにかくいろんな人に会って、話を聞いて回りまし
た。配った名刺が 400 枚を超えたのも人生初体験で
そんな廣口さんが、2010 年 9 月に周囲からの推薦
す」と廣口さん。まちの人たちにも、その存在を認識し
で現地マネージャー候補に推されたのです。「もともと
てもらえるようになり、「こんなイベントをやりたいんだ
マネージメントには自信があったので、きちんと研修を
が、話をつなげてもらえないか」といった相談も寄せら
受けてノウハウを学び、まちづくりの役に立てればい
れるようになりました。「せっかくまちづくりに関わった
いなと思ったのが一番。それからSEの仕事をやりな
のだから、もう少しスキルを磨いて、どれとどれを結べ
-2㈱全国商店街支援センター
平成 22 年度現地マネージャー育成事業
ばうまく成功するのか、明確にアドバイスできるように
い。そして市民の側に立ったまちづくりを進めていっ
なりたい。いかにより多くの収益を生み出していくかが
てほしいと願っています。
今後の一番の課題」といいます。
3.現地マネージャーに対する期待の声を紹
介
◎東 朋治(有限会社 協働研究所)
まちの人たちが企画したものを後押しするのが現地
マネージャー。あくまでも黒子に徹しながら、地域に
飛び込んで、調整したり、根回しできる人でなければ
なりません。素晴らしい補助金の制度があっても使い
▲中川 修一さん
◎西田 竜一(芥川通り商店街 「マウンテン」店主)
こなす現地の人がいなければ意味がないでしょう。高
雑貨などの手作り作品を展示・販売する芥川宿手
槻には廣口さんのような地域全体の事務局の存在が
作り市を開催していますが、アート関連のイベント経
必要です。今まで 1 ボランティアだったのが、中心的
験のある廣口さんが、手伝いを申し出てくれたことで
存在へと成長してきていると感じています。
広がりが出た気がします。商店街の活性化には個店
が元気になることが大事です。そのためには情報を共
有したり、他店といい意味で競合していくことも必要な
はずなのに、そういう発想自体が商店街にないのが
現実で、第三者の立場で客観的に言ってもらえるひと
ことがいい刺激になります。手作り市のノウハウも要望
があればいくらでも提供しますので、廣口さんにはマ
ネージメントをしてもらい、ぜひ波動を起こしていって
ほしいですね。
(平成 23 年 2 月)
▲東 朋治さん
◎中川 修一(たかつき中通り本通り商店街振興会
会長)
高槻は大阪・京都に近いという利便性と自然や水辺
などの観光資源もあって、人々にある意味選ばれる街
だと思います。しかし、有益な情報やまちの魅力が浸
透していないのも事実。これまで廣口さんは、よく研究
してくれているなあと感心してみていましたが、まちの
歴史やバックグラウンドまでも理解していくと、本当の
まちづくりに生かせると思うんです。廣口さんには、い
ろんなイベントに関わりながら、地元の人たちが気づ
▲「マウンテン」の西田さんご夫妻といっしょに
かないような高槻の魅力を掘り起こしていってもらいた
-3㈱全国商店街支援センター
平成 22 年度現地マネージャー育成事業