秋山記念生命科学振興財団ネットワーク形成事業助成“いのちをつなぐプロジェクト 「ハッカの香るまちづくり~地域の伝統的農産物を後世に伝えよう~」2年目 平成27年度校内実績発表大会 区分:文化・生活 最優秀賞 平成27年度東北海道学校農業クラブ連盟実績発表大会 区分:文化・生活 最優秀賞 平成27年度農業クラブ北海道連盟全道実績発表大会 区分:文化・生活 優秀3席 ハッカの香るまちづくり ~地域の宝「和種ハッカ」を地域に、そして次世代へ~ 地域資源研究班 地域資源応用科3年 地域資源応用科2年 石川栞奈 大内友加里 小野久留美 鈴木花菜 長谷川まりあ 砂野孟生 合田恒太 飯田瑞穂 宍戸江梨那 西山沢光 御田真歩 山内拓哉 朝野菫 丸山亜里沙 1.はじめに(活動の背景) 私たちの地元、北海道はオホーツク。この資 源に恵まれた地域を語る上で忘れてはならない 農産物。それが「和種ハッカ」です。シソ科の 多年草で日本原産の和種ハッカは、殺菌・鎮痛 効果など効能も幅広く、古くからさまざまな場 面で活用されています。 オホーツクでは明治時代、開拓民によって栽 培が始まり、栽培がピークの昭和 14 年には世 界のハッカ原料の 70%を占める地域となりま した。しかし、第二次世界大戦後、安価な合成 ハッカや外国産和種ハッカにおされ、生産量は 激減しました。 2.課題設定・目標 この現状を知り、私達は5年前より和種ハッ カの保全・普及活動を行っています。今年度の 活動計画を定める上で地域における和種ハッカ の現状を調査すると、 ① 栽培の様子がほとんど見られない。 ② 効能の研究結果がなく、いくつか商品はあるものの、あまり利用されていない。 ③ 栽培量が世界一だった時代を知る人が尐なく、特に子供たちはほぼ知らない。 という課題点が明確になりました。これらを解決し、オホーツクの歴史文化を築いた重要 な農産物である和種ハッカを地域で守り、次世代につなげる必要があると考えました。 そこで今年度の活動目標を ① 和種ハッカの魅力を引き出す~和種ハッカ栽培と効能についての研究をする。 ② 和種ハッカの魅力を広める~和種ハッカ商品販売とPR活動を行う。 ③ 和種ハッカの魅力を伝える~和種ハッカの文化歴史を守りつたえる取組みの実施。 と設定し、年間計画を立てました。初 めに計画を策定し、5 月より栽培と成分 分析の実施。6 月より商品開発と普及活 動。そして文化を伝える活動を年間通し て取り組むこととしました。 3.実践内容 ①和種ハッカの魅力を引き出す ~和種ハッカ栽培と効能についての研究~ まず、和種ハッカを普及する上でその魅力を 科学的に説明する根拠がないとならないと考え ました。そのための栽培、研究を実施しました。 まず地域の代表的品種を地域の方より指導い ただき栽培しました。5年目の栽培ということ もあり、ハッカ栽培において重要な有機質肥料 中心の肥培管理、アカザなど雑草との交雑防止 も定期的な除草・防除の実施により徹底でき、 昨年以上の収量を上げることができ、取卸油に ついても昨年以上となりました。また希尐品種 「北進」については東京農業大学と共同研究も 行い成分の科学的解明ができました。9月には 和歌山大学で行われた学会でも発表されました。 この研究と併せて他の品種の成分分析も行うこ とができ、和種ハッカのさらなる利用につなが るデータを得ることができました。 ②和種ハッカの魅力を広める ~和種ハッカ商品販売とPR活動~ 次に、栽培したハッカ、成分分析のデータを もとにより魅力の伝わる活用をすることで、 「和 種ハッカ商品がなく、素晴らしさが伝わらない」 という課題を解決しようと考えました。今年は 昨年専門機関と共同開発したサルサソースのさ らなる活用・効能面でのPR強化を目指しまし た。 昨年度開発したタコライスをより手軽で地域 素材にこだわったものにしようと考え、ホット ドッグを開発。地元企業と開発したホタテソー セージ。サルサソースを使ったタコスミート。 オホーツク産小麦を使ったパンと原材料にこだ わりました。網走市で行われた七福神祭にて販 売。160食を用意し、効能なども科学的側面 からPR。購入した90%以上の方から美味し いとの評価をいただき、2時間で完売しました。 そしてこれまで地域企業と連携してできた商 品も大好評。これら商品開発・企業連携の取り 組みについてコープさっぽろ主催の「食べるた いせつフェスティバル」で発表も行い地域内に 和種ハッカ利用の可能性を PR しました。 普及活動では大学生や農協婦人部など約15 0名が訪れ、和種ハッカや蒸留の様子を見学し ました。また昨年度より活動助成をいただいて いる秋山記念生命科学振興財団の報告会に参加 しました。大学教授をはじめ多くの方々に地域文化の重要性、効能や素晴らしさを伝えら れました。札幌での北海道産業教育フェア、宮城県名取市で行われた全国産業教育フェア では600名を超える方々にPRできました。 そして神戸夙川大学主催「観光甲子園」に応募 し「ひょうごツーリズム協会長賞」を受賞。販 売や普及活動を通して地域内外の多くの方に和 種ハッカの素晴らしさを感じていただくことが できました。 ③和種ハッカの魅力を伝える ~和種ハッカ の文化歴史を守り普及する活動~ ここまでの活動で和種ハッカを身近に感じて もらい、魅力を広められたと感じています。最 後に最も大切な次世代に伝える活動です。 ハッカ記念館施設長から「最盛期に栽培して いた農家の方々は高齢になっている。当時の話 や文化、物語を語り継ぐことが難しくなってき た。 」と聞いたことがきっかけで情報を収集。つ いに歴史文化を知っている方に出会うことがで きました。 森田義雄さん、87 歳。元農家で最盛期の昭 和初期、和種ハッカを栽培していました。当時の生活や地域の歴史についてお話を聞き、 絵本作成を開始しました。試作品を幼稚園児や先生に聞いてもらいながらアドバイスを頂 き、遂に完成。物語は聞いたお話の中でもっとも心に残った和種ハッカで生まれる人々の きずなのお話で、イラストや言葉に工夫を加え制作しました。地域の幼稚園・小学校にこ れまでで60か所、80冊を配布しました。地域内だけではなく、オホーツク農業の文化 生活の真実を語り継ぐため、そして日本の重要 な産業として後世に残すために国立国会図書館 にも納本。和種ハッカのある文化や生活からオ ホーツク地域の理解を深め、子供たちが故郷の 農業を学ぶきっかけになればと願っています。 4.評価・反省 今年度の成果として ④ 和種ハッカの成分について大学との共同 研究で科学的に解明することができ、今後 より一層の普及活動に向けた根拠ができ ました。また希尐品種の保護に関わること もでき、収量向上から管理技術の定着も実 感することができました。 ⑤ そしてサルサソース、ホットドッグ開発や 販売、PR活動も昨年度以上に広範囲に展 開し、昨年度比 310 人多い約 960 人の 方々が私達の活動に参加していただきま した。これによって和種ハッカの魅力を今 まで以上に多くの人に伝えることができ ました。 ⑥ また絵本制作によって地域内の子供たち に和種ハッカ文化を語り継ぐことができ ました。絵本はこれまでで 60 か所 80 冊 を寄贈。全ての園児・児童が読んだとして約 8500 名にハッカの素晴らしさ、そして 地域文化の重要性を伝えられることになります。また国立国会図書館にも納本したこ とで重要な産業として和種ハッカの歴史を地域だけではなく、日本中の子供たちに伝 えられるきっかけになりました。 来年度は今年度までの活動を継続するのと同時に、より地域の人々に和種ハッカの魅力 を伝えられるような取り組みを行い、伝統的農産物「和種ハッカ」が地域で大切に守られ、 次世代へ受け継がれるよう活動していきます。
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