女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み

第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会
女性市場の近未来を洞察する
~第4期研究会の狙いと枠組み~
2015.6.3
青木 幸弘
(学習院大学経済学部)
2
女性ライフコース・
マーケティング研究会とは
© 学習院大学 青木研究室
1
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
女性ライフコース・マーケティング研究会
今後の日本経済の牽引役として、シニアと
並び注目されているのが、「女性消費」です。
本研究会では、多様化する女性の消費を読
み解くために、「ライフコース」(life course)と
いう新たな分析視点に着目し、mifの定量デ
ータに加えて、MROCといった新たな道具建
てを活用して、分析・検討を続けてきました。
3
4
「ライフコース」(life course)
という視点で考える。
© 学習院大学 青木研究室
2
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
“人生の道筋”としてのライフコース
就学
就業
結婚
出産
(学歴の選択)
(職業の選択)
(配偶者の選択)
(家族の選択)
これらのライフイベントでの選択の結果(職業的・家族的な役割の
取得の仕方)によって、様々なライフコース(人生行路)が描かれる
ことになる
※「ライフステージ」はライフコースの一段階、「ライフスタイル」はライフコースとライフ
ステージの交点における一断面、消費者属性はある時点での社会的・家族的役割
のセットである。
5
現代女性のライフコースの木
離職
年齢
継続就業
復職
・独りでいるのは寂しい
結婚
中年期
40
ポスト子育て期の危機
中断再就職型
・空の巣症候群
離職
・世の中に取り残されそう
職業・母親
アイデンティ
ティの葛藤
・子供のいない人生で
本当に良かったのか
出産
トータルなライフスタイルを
めぐる危機
出産延期型
結婚延期型
・スーパーウーマン幻想
DEWKS型 DINKS型
(出産しても仕事) (子供もたない
出産をめぐる方向選択の危機
で仕事)
・トータルな生き方では
両立型にはかなわない
出産
成人初期
30
専業主婦型
(仕事は結婚・出産まで)
6
・前にも進めず後ろへも
退けない宙づり感覚
両立型
非婚就業型
(結婚しても仕事)
(結婚しないで仕事)
結婚をめぐる方向性選択の危機
非婚への
方向づけ
結婚への方向づけ・選択
青年期
20
就職
学校卒業
出典:『新女性のためのライフサイクル心理学』13頁を一部修正。
アイデンティティ形成期
© 学習院大学 青木研究室
3
DEWKS: Double Employed With Kids
DINKS: Double Income No Kids
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
7
「ライフコース」という分析視点の重要性
就業スタイル
(キャリア・デザイン)
相互に結び付きながら「ライフコース」を規定
家族スタイル
消費スタイル
(家族役割:夫婦・親子)
(消費生活の様式と内容)
8
女性の働き方・生き方への関心は
内外共に高まっている
© 学習院大学 青木研究室
4
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
9
近年、女性の働き方・生き方に関する出版が続いている・・・・
日本経済新聞出版社
(2013年)
アルファポリス
(2014年)
文藝春秋
(2014年)
10
「静かな革命」とその帰結
© 学習院大学 青木研究室
5
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
「静かな革命」(subtle revolution)
11
経済のサービス化は女性を労働市場に
引き込んだだけでなく、結婚や夫婦のあ
り方や出産パターンにいたるまで大きな
変化を巻き起こす。アメリカでこの変化が
最初におき、それが社会を大きく変革し、
社会制度の変化を余儀なくされたことか
ら、この変化は「静かな革命」(Subtle
Revolution)と呼ばれている。
大沢・原田 『21世紀の女性と仕事』より
The Urban Institute(1979)
30年を経て、「静かな革命」の帰結が顕在化
ダイヤモンド社(2009)
Harper Business(2009)
© 学習院大学 青木研究室
6
12
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
13
本研究会の基本スキーム
分析の「視点」、「場」、「課題」について
分析の視点
分析の場
ライフコース・パースペクティブ
(女性のライフコース変化に注目)
最新手法MROCの活用
(Market Research Online Community)
(更に、mif3万人調査のデータも活用)
分析の課題
女性消費の動向分析と
マーケティング対応の検討
14
© 学習院大学 青木研究室
7
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
本研究会における分析枠組みの特長
15
●ハイブリッド
定量(mif)+定性(MROC)
シナリオ分析+ペルソナ
●シームレス
mifデータ→シナリオ分析→MROCでの検証
シナリオ分析→MROC→ペルソナ
シナリオ分析→mifデータでの検証
16
第1~3期研究会では・・・
© 学習院大学 青木研究室
8
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
第1期研究会(2012年4月~9月)
17
食・住・美と健康という3つの生活領域について、ライフコー
ス別に消費の特徴を分析(結婚・出産といったライフイベントに関わ
る消費、女性のネットワークに関わる消費についても検討)
第2期研究会(2013年5月~9月)
主要ライフコース別にスーパーペルソナを作成、製品・サー
ビス領域ごとのペルソナへの落とし込み、想定される消費の
オケージョンとそこでのソリューションについて検討。
© 学習院大学 青木研究室
9
18
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
第3期研究会(2014年5月~9月)
19
シナリオ分析の手法を用いて、2020年をターゲット年とした
4つのシナリオを作成、それぞれのシナリオにおけるライフコ
ース別構成比の推定、考えられる消費のオケージョンとそこ
でのソリューション案を検討。
20
ソリューション案はMROCで評価
© 学習院大学 青木研究室
10
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
消費のオケージョンからソリューション・アイデアを導出する
21
シナリオをベースに消費のオケージョンを考え、ソリューション・アイデアを導き出す
MROCによるソリューション評価
ソリューションをMROCで評価することも可能(場合によっては逆提案も)。
© 学習院大学 青木研究室
11
22
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
23
第4期研究会では・・・
第4期研究会の狙い
男女雇用機会均等法制定から30年、この間、女性の就業
パターン、結婚・出産パターンの多様化が進み、新たな事業
機会が生まれつつあります。
例えば、夫婦共働きが一般化するなかで、時間コスト意識
の高い女性が増加し、自動掃除ロボットや食洗機、家事代行
サービス等の時短消費市場が拡大しています。一方で、働く
独身女性を中心に、将来に対する不安から、堅実な消費行
動を行い、保険に加入する等のリスク対応を強めるようにな
っています。
第4期研究会では、引き続きライフコースという切り口・視点
を活用して、今後の女性の生活・消費に及ぼす変化要因を
多角的に検討し、企業のマーケティング戦略へのインプリケ
ーションを導出していきます。
© 学習院大学 青木研究室
12
24
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
25
均等法以降の女性の変化
『日経WOMAN』創刊20周年記念号(1988年創刊)
日経WOMAN(2008年5月号)
© 学習院大学 青木研究室
13
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
27
データでみる働く女性の30年
初婚年齢
初産年齢
進む晩婚化。結婚したくても
ぴったりの相手がいない!?
タイムリミットに対する意識は
年々後ろにずれていく
1985年
2005年
25.5歳
28.0歳
厚生労働省「人口動態統計」
2013年
25.5歳
1985年
2005年
26.7歳
29.1歳
厚生労働省「人口動態統計」
2013年
30.4歳
出生率
1.43とやや持ち直すが
人口減少社会に突入
1985年
2005年
1.76
1.26
厚生労働省「人口動態統計」
2013年
1.43
出所)『日経WOMAN』(2008年5月号)、100~101頁に加筆・修正。
28
データでみる働く女性の30年
大学進学率
雇用者数
女性の高学歴化が進むが
教育投資が還元されない
企業で働く女性は全体の4割
未婚女性の伸びが目立つ
1985年
2005年
13.7%
36.8%
文部科学省「学校基本調査」
2013年
45.6%
1985年
2005年
1548万人
2229万人
総務省統計局「労働力調査」
2013年
2406万人
出所)『日経WOMAN』(2008年5月号)、100~101頁に加筆・修正。
© 学習院大学 青木研究室
14
給与所得
上昇してはいるが、今も昔も
年齢に伴う伸びは緩やか
1985年
14万5800円
22万2500円
2005年
厚生労働省「人口動態統計」
2013年
23万1900円
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
29
データでみる働く女性の30年
賃金の男女格差
非正社員の比率
管理職の割合
昇進や勤続年数の違いから
賃金格差が生じている
今や働く女性の半数は
非正社員という時代
上級管理職の数はまだ少ないが、
着実に増加している
1985年
2006年
59.6
65.9
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
2013年
74.0
1985年
2005年
32.1%
52.5%
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
2013年
55.8%
(課長相当職)
1985年
2006年
1.4%
5.8%
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
2013年
8.5%
出所)『日経WOMAN』(2008年5月号)、100~101頁に加筆・修正。
30
何よりも、共働き世帯が増加
© 学習院大学 青木研究室
15
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
31
共働き世帯数の推移
1980
85
90
95
2000
05
10
13年
出所)『平成26年版男女共同参画社会白書』、57頁。
32
経営誌も注目しているが
© 学習院大学 青木研究室
16
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
33
既に、共働き世帯の消費について語られてはいるが・・・・
『週刊東洋経済』(2013年8月31日号)
しかし、「ワーキングマザー(ワーママ)」として一括りに
© 学習院大学 青木研究室
17
34
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
35
時間の問題は、古くして新しい
36
共働き世帯が増える中での女性の多忙化・疲弊化
朝日新聞社(1990年)
(原著の発行は1989年)
明石書店(2012年)
(原著の発行は1997年)
© 学習院大学 青木研究室
18
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
37
アーリー・R・ホックシールド
米国の社会学者。女性社会学を推進し、
「感情社会学」という新分野を切り拓く。
1989年に刊行された『セカンド・シフト』で
は、アメリカの共働き夫婦が、会社での仕
事(第1のシフト)を終えて帰宅したのちに
家事労働(第2のシフト)をめぐって葛藤
する様子を生き生きと描き出した。
アーリー・ラッセル・ホックシールド
(Arlie Russell Hochschild)(1940~)
カリフォルニア大学バークレー校
社会学部名誉教授
また、『タイム・バインド』(1998年)では、
共働き家庭における親子関係に焦点を
当て、行き過ぎた家庭内での効率化に
対する子供たち抵抗を懐柔するという
「第3のシフト」と発生していると説く。
「感情労働」という概念を提示した『管理さ
れる心』(1983)も話題となった。
38
ポイントは、
女性が担う複数の役割
© 学習院大学 青木研究室
19
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
「時間の三重苦」と女性の複数役割
<時間の三重苦>
<女性の複数役割>
やることが多すぎる
母
職
優先順位をつける
のが難しい
私
妻
娘
自分の時間が持てない
ライフコースによって
軸足が大きく変化する。
39
40
ライフコースによって、
役割の構成が異なる・・・・
© 学習院大学 青木研究室
20
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
役割の違いに着目した分析視点が必要
就業
私(娘)
結婚
出産
復職
ワーキングシングル
私(娘)
私(娘)
職
職
妻
私
DINKS
職
妻
私
DEWKS
職
母
私
私
妻
専業主婦
妻
母
私
妻
母
職
リターナ
41
42
ライフコースによって、
利用できる資源も異なる・・・・
© 学習院大学 青木研究室
21
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
43
LCとLSによって異なる女性消費の規模と内容
ライフコース×ライフステージ
拡大
経済的資源
(所得・資産等)
×
消費の必要条件
環境要因
時間的資源
(生活時間)
社会的資源
×
(家族・ネットワーク)
消費の拡大条件
消費の十分条件
環境要因
環境要因
=
女性消費の
規模・内容
縮小
44
具体的な分析手順としては・・・・
© 学習院大学 青木研究室
22
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
45
女性の生活・消費に関するトレンド仮説の検討
ライフコースごとに、近未来(3年~5年先)の生活・消費に関連するドライビング・フォース
(マクロ・ミクロ)を整理。そこから「生活・消費トレンド」仮説を検討する。
<専業主婦>
<ワーキングシングル>
<DINKS (夫婦共働きで子供がいない世帯) >
<DEWKS(夫婦共働きで子供がいる世帯) >
マクロ
ミクロ
生産年齢
人口減少
女性の就業率
向上
ソリューション
(商品)
トレンド仮説
妻の時間の
ゆとり低下
スキマ時間を
有効活用
布団専用
掃除機
夫婦の役割
分担の変容
家事に積極的に
参加する夫増加
家事男子向け
家電
ドライビング・
フォース集
ドライビング・フォースを
グルーピング・構造化し、
生活・消費トレンド仮説を設定
マクロ→ミクロ→商品の
一連の流れは、
「女性ライフコース・マー
ケティング事例集」とし
て整理する予定
新聞・雑誌
ネット記事、
MROC発言
等
46
LC別にスーパーペルソナを設定しソリューションを検討
注目するライフコース×年代のターゲットセグメントを設定。当該セグメントの MROCの発
言をもとに、 3~5年先を見据えた「スーパーペルソナ」を作成し、近未来の消費のオケー
ジョン(いつ、どこで、誰と、何を欲しているか)を把握。更に、ターゲットに提供する価値、
それを具現化する商品・サービスを検討する。
スーパーペルソナを設定
消費のオケージョンの検討
人生の長期的な目標(ライフゴール)と経済的・時間
的な環境、家族の状況、友人関係、美容・健康状態、
知識・スキル等を設定。3~5年先を見据えたものに
どういう人が(Who → Target Consumer)
いつ、どこで(When、Where → Occasion)
誰と何を欲しているか(What → Wants)
ソリューションの検討
消費者は何故購入し(Why → Benefit)
それをどう具現化する(How → Attribute)
製品(Product)か
どういう人が(ターゲット消費者)
© 学習院大学 青木研究室
23
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
47
詳しくは、
この後の事務局からのご説明を
48
いつも申し上げていることですが
© 学習院大学 青木研究室
24
第4期女性ライフコース・マーケティング研究会 オープニングセミナー
女性市場の近未来を洞察する~第4期研究会の狙いと枠組み~
49
ライフコースの変化は市場構造変化の淵源
ライフコース
の変化
Ex.マントル対流、プレート移動
ライフスタイル
の変化
Ex.造山活動、地形変化
市場・消費
の変化
Ex.地震、噴火
喩えて言うならば、「ライフコース論」は、地球物理学における「プレート・テクトニク
ス理論」のようなもので、人びとは「地震」といった現象には関心があるが、その背
後にあるメカニズムを理解しようとはしない。
50
「ライフコース」という思考の補助線を引く
・・・・問題の総量は減らないにしても、
見え方が変わるということはある。ちょ
うど、幾何学の問題で、たった一本の
補助線を引いただけで、解答への道筋
が見えるように、「思考の補助線」を引
くことで、私たちは今までとは少し違っ
た態度で、世の中の謎に向き合うこと
ができる。・・・・・
「ライフコース」という思考の補助線
を引くことで、混沌とした市場の謎に
少し違った態度で臨むことができる
のでは・・・・・・
筑摩書房(2008)
© 学習院大学 青木研究室
25