ニューオリンズアップデート(By ローボック美貴)

ニューオリンズアップデート(By ローボック美貴)
<ハリケーンの襲来から約 1 年半。ニューオリンズのその後>
ハリケーン・カトリーナがアメリカ南部を襲ってから約 1 年半が経った。当時ニューオリンズでは堤防の決壊により、町の 8 割
が数週間にわたって水没。以後人口は半減したままで、被災した住宅地は今なおゴーストタウンのところが多い。“Lower 9th
Ward”はカトリーナとリタの 2 回にわたり浸水した地域で、労働者階級のアフリカン・アメリカン が多い住宅地で、ソウルフード、
セカンドラインなどニューオリンズらしい文化を生み出してきたエリアだった。巨大な艀(はしけ)が堤防を突き破り、鉄砲水が
同地区を襲い、多くの人が逃げ遅れて命を落とした。またほとんどの家が破壊的に被災しており、今なおほとんどの住民が戻
れずに、各地で避難生活を余儀なくされている。
<最も破壊的な被害を受けた Lower 9th 地区の子供たち>
この“Lower 9th ”地区内で R&B の巨匠“ファッツ・ドミノ”邸のすぐそばに公立学校“Dr. Martin Luther King School”(幼稚園と
小学校)が位置していた。 同校破堤し流れてきた濁流に飲まれ、壊滅的な被害を受けた。現在ボランティアなどによって修復
作業が進められているが、損傷が激しく改装工事が大幅に遅れている。しかし、同地区の復興のシンボルとして同校舎の再
オープンが大きく期待されており、新学期の始まる 2007 年 8 月頃までに修復を完了する予定だそうだ(被災から 2 年後とな
る)。
<仮の校舎で学ぶ子供たち>
カトリーナの襲来から 1 年が過ぎた 2006 年 9 月 18 日、同校は Charter School *として別の幼稚園の校舎を借りて生徒の受
け入れを再開した。当初、約 750 名の生徒が通っていたが、現在は約 200 名の生徒が仮校舎に通っている。生徒も先生のほ
とんどがハリケーンで家を失っている。現在の校長先生で Lower 9th の住民でもあった Doris Hicks さんは「ニューオリンズで
もとくに Lower 9th の子供たちは、自宅だけでなく、家族や親戚、友人を失っている子が多い。この困難な時期こそ、学校で学
び、お友達と過ごし、一日も早く以前のような日常を取り戻してほしい」と話す。
*チャータースクールとは、教師、保護者、地域社会のメンバーによって開設される新しい代替学校制度で、その特徴は、州
の学校規制のほとんどが免除され、その地域のニーズに合った、自由教育ができる。また学区外からの生徒も通学できる。
<Lower 9th のシンボル・ブラスバンド>
同校のブラスバンドはハリケーンの前から同地区の音楽文化を歴代受け継いでおり、幼稚園生も多く参加しており、その質
の高さは市内でも評価が高かった。同ブラスバンドの顧問アロンゾ・ボーウェン氏(Alonzo Bowens)は、ニューオリンズを代表
するミュージシャンの一人で、彼も自宅が大きな被害に遭い、全ての家財、楽器などを失った一人。同校が仮の校舎で再校
するまで約 1 年教職の仕事も失った。しかし避難先や各地で演奏活動を続け、現在はニューオリンズに戻り、ブラスバンドの
顧問を続けながらニューオリンズ音楽の演奏を続けている。現在ブラスバンドの生徒は 45 人で初心者が多い。楽譜の読み方、
書き方、演奏方法などを学んでおり、来年のマルディグラへの出演を目指している。ハリケーンの被害から精神的なショック
から立ち直っていない生徒も多く、このブラスバンドの再建は生徒たちにとっても大きな希望となっている。
<不足している楽器と資金>
ブラスバンドの再建にあたり、複数の団体から支援を受けたが、トランペット、クラリネット、チューバ、ミュージックスタンド、ユ
ニフォーム、楽譜などまだまだ不足しているものが多い。同校は洪水で楽器も教材も全て失っており、現在ある数少ない楽器
で練習をつづけている。※写真はカトリーナ前のブランスバの写真
学校名:Dr. Martin Luther King, Jr. Charter School for Science & Technology
現住所:2503 Willow Street, New Orleans, LA 70113
電話番号: (504) 891-6924
校長先生:Mrs. Doris Hicks
バンド顧問:
ニューオリンズ(オーリンズ郡)現状比較 (カトリーナ前後)
データは添付のニューオリンズ市観光局発行の New Orleans UP date Recovery から抜粋
カトリーナ前(2006)
カトリーナ後(2007 年 1 月現在)
人口
484,674
255,000
但し郵政省調べでは 200,000
総合病院
17
現在 11 病院がオープン
警察官の数
1,680
1,421
学校
200 校
19 校
(私立公立含む幼稚園から高校まで)
※2007 年内にあと 50 校の公立学校の
再オープンを教育委員会では予定して
いる
レストラン
3,414
1,562
ホテル(メトロエリア)
265(38,338 部屋)
180(28,500 部屋)
大型ホテルの新装オープンも控えてお
り 2007 年中には 30,000 部屋となる予定
フライト
162 便 42 都市(20,676 席)
109 便 32 都市(12,842 席)