(2) 道路除雪のあり方に関する一考察

(2) 道路除雪のあり方に関する一考察
開発技建株式会社
調査計画部
- 15 -
飯田 雅之
氏
道路除雪のあり方に関する一考察
飯田雅之・佐藤吉一・佐藤勝昭1
1開発技建株式会社(〒950-0914 新潟県新潟市中央区紫竹山7-13-16)
我が国の道路除雪は、昭和31年の「積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措
置法(雪寒法)」の制定、昭和38年豪雪を契機とした道路除雪の本格化から目覚ましい進歩を
遂げてきた。しかし、時代の移り変わりと共に利用者ニーズや社会経済情勢の変化から道路除
雪に対する説明責任が求められる様になった。また、近年、少雪地域での異常降雪による立ち
往生の発生など気象状況の変化に対応した除雪体制の構築等の課題も浮き彫りとなった。
本報告では、これらの課題に対して、道路除雪の説明責任を果たすべく除雪効果の定量化、
大雪時の道路除雪のあり方の検討に取り組んだ2事例について報告する。
Key Words : 除雪効果の定量的評価、路面積雪量と旅行速度の相関分析、大雪時の除雪
体制、登坂不能車、冬期交通障害、除雪優先、大雪時対応のマニュアル化
1.はじめに
昭和31年に「積雪寒冷特別地域における道路交通
確保に関する特別措置法(雪寒法)」が制定され、
ようやく雪国における道路の交通確保に目が向けら
れるようになった。そして、昭和38年豪雪を契機と
して、道路除雪は本格化した。雪は災害との観点で
道路除雪は進められてきたが、現在においては一定
の交通確保水準に達したと言える。更に、昨今の社
会・経済情勢から、道路除雪においてもその効果に
対する説明責任が求められる時代となっている。
一方、平成26年2月には、関東地方を襲った異常
な降雪により、長時間にわたる通行止めが発生し、
交通に混乱をきたした。更に、平成26年12月から平
成27年1月にかけても、愛媛県内の国道192号と国
道56号、広島県内の国道54号、三重県内の国道25号
名阪国道、滋賀県内の国道1号など、少雪地域での
大雪立ち往生が頻発しており、異常な降雪時にどう
対処すべきかが大きな課題となってきている。
このような中で、「新雪除雪の除雪効果に関する
検討」、「大雪時の道路除雪のあり方に関する検
討」について取り組んだ事例を報告する。
図-1
平成26年2月の関東地方大雪の状況
図-2
平成26年12月愛媛・徳島県の状況
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
(1) 新雪除雪実施の現状について
新雪除雪の実施に関する既存文献での記述として
は、以下のものがある。
○「除雪機械技術ハンドブック(第4版)」(日
本建設機械化協会編)
路面上に雪が積もると車両の走行に支障が生
じ始め、積雪が15~20cmになると小型の車両は
走行が不能になる。除雪した道路でも、路面上
に雪があったり凹凸ができたり、路側の雪堤に
より幅員が狭められると、車両の走行速度はそ
の程度によって著しく低下する。
通行車両の走行速度の低下、道路の交通容量
の低下をどの程度に留めた除雪を実施するかは、
道路のサービス水準にかかわる問題であり、当
該道路の重要性、機能、性格等によって決めら
れるべきものである。
上記の記述やこれまでの経験から除雪の実施を判
断しているのが現状である。つまり、走行性能や経
験則などから除雪の実施を判断しており、除雪を実
- 16 -
施した場合の費用や効果を定量的に評価したものと
はなっていない状況である。
(2) 新雪除雪の除雪効果を評価するための課題
新雪除雪の除雪効果の定量的評価にあたり、これ
まで検討された事例などがなく、上記(1)を踏まえ
ると旅行速度と路面積雪量による評価が必要と考え
られるが、その評価手法が確立されていないことが
課題となった。あわせて、昨今の社会経済情勢など
を考慮すると、道路利用者・道路管理者の双方から
評価されることも重要と考えられる。
目 的
必要なデータ
路面積雪量と旅行
速度の相関分析
【評価手法】
路面積雪による旅行速度の低下を交通量と併せて
評価できるコストロスとして評価。これに、除雪コ
ストも併せて評価することにより、定量的かつ道路
利用者・道路管理者双方から評価される評価手法と
して考えた。(図-3参照)
除雪の実施と旅行速度の相関分析
60
路面積雪による
速度の低下
40
トラカンデータの収集
降雪量データ
テレメータデータの収集
コストロスの算定
路面状況
CCTV画像による路面調査
除雪車通過状況
除雪車稼働日報調査
携帯GPSによる調査
交通量データ
無雪期の渋滞損失
データ
渋滞損失データの収集
除雪量
除雪実施前後の路面積雪量
解析の精度を向上させるために実施した補助調査。
図-4
新雪除雪の効果を分析するためのデータ取得体系
(4) 除雪効果の定量的評価の流れ
a) 除雪の実施と旅行速度の相関分析
除雪の実施による道路状況の直接的な改善は、路
面状況である。そのため、除雪の実施は、「路面積
雪量」で評価するものとし、これと除雪の実施によ
る利用者への直接的な効果である旅行速度の相関分
析を行うものとした。
なお、降雪の時間経過に伴う路面積雪量は、時間
降雪量を累積して設定するものとし、除雪車が通過
した時点で累積降雪量をリセット(0cm設定)する
ものとした。(図-5参照)
解析対象地点(トラカン地点)
20
0
15
除雪ステーション
図-5
時
8時
3時
2時
1時
0
0時
0
23時
20
22時
40
5
時間降雪量
刻
路面積雪量
旅行速度
除雪効果と旅行速度の分析データの概念
b) 旅行速度のコストロス換算
上記a)の相関分析結果から、路面上の降雪量(=
路面積雪量、除雪実施状況考慮)に伴う旅行速度と
無雪路面に対する所要時間の増分を算定し、これを
時間価値原単位(費用便益分析に用いる値を採用)
で貨幣化してコストロス換算するものとした。
c) 除雪効果のコストロスによる評価
除雪に要する費用(除雪コスト)と旅行速度低下
コストロスを合算して評価することで、「旅行速
度」と「除雪コスト」を兼ね備えた評価とした。
除雪効果のコストロスによる評価
コストロス
(百万円/年)
コストロスが最も低い点
1,200
1,000
800
600
除雪コスト
400
200
旅行速度低下コストロス
0
(多←)除雪頻度(→少)
図-3
10
21時
旅行速度低下による
所要時間の増加を
経済損失として評価
時
間
価
値
原
単
位
20時
利
用
交
通
量
降雪量(cm)
旅行速度低下のコストロス換算
60
旅行速度(km/h)
除雪車が通過したら
累積降雪量をリセット
15
7時
10
6時
5
路面積雪量(cm)
5時
0
4時
旅行速度(km/h)
80
旅行速度
除雪STでの降雪調査
除雪コストの算定
(3) 新雪除雪の除雪効果の評価手法
新雪除雪の除雪効果の定量的評価は、「新雪除雪
の除雪効果を評価するための課題」を踏まえ、以下
の手法により検討することを考えた。
データを取得するための調査
除雪効果の定量的評価手法(案)の概念
なお、評価にあたり路面積雪量を如何に精度よく
設定するかがポイントであった。このため、既往
データを補完する補助調査を実施し、精度向上を
図った(以下、「(5)評価の精度を向上させる取り
組み・工夫」参照)。評価するためのデータ取得体
系を図-4に示す。
(5) 評価の精度を向上させる取り組み・工夫
本検討は、3カ年にわたり検討を行ったが、「除
雪の実施と旅行速度の相関分析」での分析精度を向
上させることが、説明力向上の観点から重要と考え
た。説明力を向上させるため、表-1の取り組みを実
- 17 -
(6)現時点での評価について
本評価手法による検討は、3カ年にわたり、既存
データによる評価手法としての可能性検討から精度
向上に向けた取り組みを行い、最終的には新雪除雪
の除雪効果を定量的に評価する手法として一定の成
果が得られたものと考えている。
50
40
6 ~
5 ~
4 ~
3 ~
2 ~
1 ~
0 ~
30
20
10
0
3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
なし
登坂不能車発生件数
60
その他
取組③
暴風雪警報
取組②
CCTV から、路面積雪開始時刻を直接特定
し、路面積雪算定精度を向上。
5分間トラカンデータにより、除雪車通過
前後の速度を詳細に把握し、分析に反映。
除雪車にGPSを搭載し、解析ポイントの
通過時刻を直接観測する。
大雪警報
取組①
分析精度向上のために取り組んだ内容
取り組み内容
風雪注意報
表-1
域でも注意報・警報の発令状況が参考値になるもの
と分析している。
ただし、常に上記の条件で交通障害が発生してい
る訳ではなく、並行する高速道路が通行止めとなっ
た場合に発生する可能性が非常に高い。つまり、比
較的軽装備で雪道の運転テクニックに不慣れな車両
が直轄国道に流入することにより、交通障害を引き
起こしているケースが多い。
大雪注意報
施し、精度の向上を図った。これにより相関係数が
0.65から0.80と向上した。
(2) 登坂不能車の発生状況の分析
a) 気象条件と登坂不能車の発生状況分析
北陸地方整備局管内の登坂不能車の発生状況を、
気象庁発表の注意報・警報の発令状況と合わせて分
析をした結果を図-6に整理する。
これをみると、大半が注意報・警報発令時に発生
していることがわかる。大雪注意報・警報の発令基
準は、地域性を捉えた設定がなされており、これを
交通障害発生条件の目安とできる可能性が高い。
雪寒法の「積雪地域」及び「寒冷地域の山間部」
の直轄国道における交通障害の発生状況によると、
3時間で15cm程度(大雪注意報レベル)の連続降雪
があると登坂不能車が発生し、6時間で25~35cm程
度(大雪警報レベル)を超える大雪となると連鎖的
に登坂不能車が発生して大きな交通障害に発展する
可能性が高いものと分析している。これは、少雪地
登坂不能車発生件数
H26.2関東地方における大雪立ち往生を始めとし
警報・注意報
て、近年大雪による立ち往生が頻発している。特に、
図-6 気象条件と登坂不能車の発生状況(H22~24)
除雪体制が十分に整っていない少雪地域での事案が
多く発生している。
b) 道路構造と登坂不能車の発生状況分析
これまでに携わった冬期交通障害発生時の事後検
北陸地方整備局管内の登坂不能車の発生状況を、
証やこれを受けた道路除雪のあり方の検討を通して、 道路構造条件(縦断勾配、信号交差点密度)と合わ
大雪時の道路除雪のあり方について検討を行った結
せて分析をした結果を図-7に整理する。
果を報告する。
この結果によると縦断勾配4%を超える急勾配区間
での多発が顕著である。また、信号交差点による停
(1) 検討の視点
止が影響する縦断勾配3%程度の箇所でも登坂不能車
検討にあたっては、立ち往生の発生状況などから
の多発傾向が見られる。実際に交通障害発生の事後
特に①登坂不能車が発生する条件を把握すること、
検証を行うと、信号交差点での停止の影響による登
②大雪に備えた除雪体制を構築することの2点が重
坂不能車の多発ポイントが数多く確認されている。
【主な発生箇所】
要と考えた。
【主な発生箇所】
R17:川口町坂塚、牛ヶ島
R17:湯沢町奈良山
R18:中郷区二本木
登坂不能車の発生状況を分析すれば、多発ポイン
R17:魚沼市四日町、下倉
R8:小矢部市安楽寺
トや危険箇所を事前に絞り込むことが可能となるほ
か、それを踏まえた除雪体制を構築することが可能
80
になると考えた。
70
60
50
40
30
20
10
0
6 ~
5 ~
4 ~
3 ~
2 ~
1 ~
0 ~
0
1
2
3
4
5
信号交差点密度(箇所/km)
図-7
道路構造と登坂不能車の発生状況(H22~24)
(3) 交通障害の事後検証からみた道路除雪のあり方
H26.2関東地方における大雪立ち往生に係る事後
検証が実施され公表されている。また、当社が係
わった冬期交通障害の事後検証結果を参考に、大雪
時における道路除雪のあり方について検討した。
a) 除雪優先路線の選定
大雪時において、全ての路線・区間を平等に対応
- 18 -
していくことには限界がある。特に、除雪体制が
整っていない少雪地域においては、どのように優先
順位を付けて対応していくかは切実な問題となる。
これにあたり、大雪交通障害の影響がどのような
形で生活・社会活動維持に及んだのか整理した結果
を表-2に示す。これらの影響を踏まえた評価を実施
し、大雪時の優先確保路線を事前に選定して、各関
係機関が連携・協力した除雪体制を構築しておくこ
とが重要である。
表-2
項目
つまり「どのような初動体制を何時整え」「誰
が」「どの時点で」「どのデータに基づいた判断基
準で」「誰に何を指示して」「実行する」のかを事
前に明確化(マニュアル化)しておくことが必要で
あると考える。
マニュアルとして整理すべき事項(例)を表-3に
整理した。
表-3
マニュアルとして整理すべき事項(例)
大項目
通行規制区間
大雪交通障害による生活・社会活動への影響
具体的影響
①通行止めによる孤立集落の発生。
ライフラインへの
②緊急輸送道路としての機能が確保されず、生活物資の輸送
影響
面で問題が発生。
①鉄道も運休していたことから、市民の足となるバス路線の
交通障害の長期間継続が住民生活に大きな影響を及ぼした。
②通学路及び通学のためのバス路線の交通障害で
休校が長期間継続した。
生活活動維持への ③警察署や病院・消防署への交通障害が長期間継続し、緊急
影響
車両の通行や医薬品の搬送への支障の他、職員の通勤にも
支障が及んだため、勤務体制にも支障が出た。
④国道事務所・県市役場等の行政事務所への登庁の交通障害
が長期間継続し、勤務体制に支障がでたため、被害情報収
集に時間を要した。
事前準備
情報収集・情報提供
除雪体制
b) 除雪優先のための通行止めの実施
「止めない」から「立ち往生をさせない」が大雪
時における道路除雪管理の考え方となっている。特
に、除雪体制が整っていない少雪地域では、大雪へ
の対応にも限界があり、適切な時点で除雪優先のた
めの通行止めを実施して早期に交通機能の回復を図
ることは非常に有効な手段となる。H26.2関東地方
における大雪では国道19号飯田国道事務所管内にお
いて、除雪優先のための通行止めが実施され、早期
に交通確保がなされたことが新聞でも報道された。
事前に危険箇所を把握し、通行止めを実施した場
合の待機車への影響やUターン箇所の確保も踏まえ
た上で適切に通行止め区間を決定しておく必要があ
る。また、通行止めの実施のタイミングの明確化が
非常に重要と考えている。現場で気象状況や交通状
況を踏まえて臨機応変に対応するなどと不明確な場
合、大概で判断が遅れてしまうものである。
更に、通行止めによる待機車に対する配慮も忘れ
てはいけない。H26.2関東地方における大雪では国
道18号軽井沢で待機車が降雪のため埋もれ、自衛隊
による掘り起こしが必要となった。待機車に対して
Uターン規制を実施するタイミングや、その際の移
動先(待機場所)も沿線の自治体と連携の上、事前
に計画しておくことが望まれる。
c) 広域的な支援エリアでの除雪体制の構築
少雪地域で大雪に備えた除雪体制を単独で整える
ことは財政面から限界がある。現体制を有効に活用
していくことが現実的であり、そのためには、除雪
体制の規模及び気象特性(大雪発生時期の相違)、
除雪機械の移動の容易性を勘案しながら、広域的な
支援エリアで大雪時の除雪体制を具体的に考えてい
く必要があるものと考える。
d) 大雪時対応のマニュアル化
初動体制の確立や除雪優先のための通行止め実施
基準の明確化の重要性について述べたが、それ以外
で必要となる対応も予め具体的に定めておくことが
必要である。
ドライバー支援
項目
(1)通行規制の種類
(2)通行規制区間
(1)体制の確立【組織構成、役割分担】
(2)情報収集、情報連絡、情報提供に必要となる体
制・機器の整備
(3)除雪に対するバックアップ体制
(4)通行規制に伴い必要となる措置に対する事前準備
(5)改正災害対策基本法に基づく車両等の移動に移動
に対する事前準備
(1)情報収集【収集項目と収集手段】
(2)情報提供【各段階での内容・情報媒体】
(1)体制の確保【各段階での体制、各体制で実施する
こと、役割分担】
(2)除雪体制【平常時、体制強化時、通行止め時】
(3)通行規制実施基準
(4)通行規制に伴い必要となる措置
【チェーン規制、通行止め、改正災害対策基本法
による車両移動】
(5)スタック牽引車における民間活用
(6)情報連絡体制
(1)通行規制及び一時待機場所等の情報提供
(2)緊急避難所及び一時待機場所の確保及び誘導
(3)緊急物資の配給及び安否確認
外部機関への支援要請
改正災害対策基本法に基づく車両移動に関する運用上の留意点
4.おわりに
本報告では、道路除雪効果の定量的評価の取り組
みと大雪時における道路除雪のあり方について検討
した結果を報告させて頂いた。
除雪効果の定量化については、一定の成果が得ら
れたものと考えている。しかし、地域限定で、かつ
一般的な状況に対する評価手法の一つである。また、
大雪時の道路除雪のあり方については、各地域の特
徴を踏まえた対策立案が必要である。特に、積雪地
域においては並行する高速道路の通行止めが直轄国
道の交通障害の発生に影響を与えるケースが多く、
両者が連携した取り組みを模索していく必要があろ
うし、少雪地域にとっては、大雪時に如何にして除
雪体制を整えるか、また優先路線をどう評価して位
置づけ合意形成を図るか等課題は多い。更に、
H26.12から運用が可能となった改正災害対策基本法
による車両の移動措置についても既往の指定実績を
分析しながら効果的な運用に向け課題を解決してい
く必要がある。
今後は、更なる道路除雪の効率化・適正化に貢献
できるよう、一層の研鑽を行う所存である。
参考文献
1) 「除雪作業出動基準の検証」(平成24年度北陸地方整
備局事業研究発表会)
2)「道路除雪効果の定量的評価手法の一考察」(第28回
北陸雪氷シンポジウム論文集)
- 19 -
目
道路除雪のあり方に関する一考察
次
1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
開発技建株式会社
4.おわりに
(調査計画部:飯田雅之・佐藤吉一・佐藤勝昭)
- 20 1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
【道路除雪の始まり】
○昭和31年に「積雪寒冷地域における道路交通確保に関する特
別措置法」が制定。
○昭和38年豪雪を契機として、道路除雪は本格化。
1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
昭和38年豪雪時の除雪作業
自衛隊による除雪作業
土木機械による除雪作業
1
1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
○雪は災害との観点で道路除雪は進められてきた。
○現在においては、一定の交通確保水準に達したと言える。
○H26.2月には関東地方で大雪による大規模な立ち往生が発生。
○H26.12月には四国地方でも立ち往生が発生し、改正災対法に
よる車両移動が初めて適用された。
【平成26年2月の関東地方大雪の状況】
【平成26年12月愛媛・徳島県の状況】
資料:北陸地方整備局パンフレット
昨今の社会・経済情勢から、道路除雪においてもその
効果に対する説明責任が求められる時代に。
2
積雪地域のみならず、少雪地域でも大雪立ち往生が頻発
しており、異常な降雪時にどう対処すべきかが大きな課題。
3
- 21 1.はじめに(道路除雪の始まりと現在の課題)
【現在の道路除雪に対する課題】
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
課題①:道路除雪に対する効果評価のあり方
課題②:大雪時における道路交通確保のあり方
4
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
【新雪除雪実施の現状】
【新雪除雪の除雪効果の評価手法:基本的考え方】
○車両の走行性能やこれまでの経験から、除雪実施を判断。
○除雪効果を定量的に評価していない。
□「除雪機械技術ハンドブック(第4版)」
(日本建設機械化協会編)
○除雪効果と除雪コストを組み合わせて、一般の方にも分かり
易い定量的評価指標で評価できる手法を構築。
除雪回数を増やせば、除雪効果は向上。
一方で、除雪コストは増加。
□CCTV画像、パトロール、テレメータ
データ等から出動を判断
路面上に雪が積もると車両の走行に支障が
生じ始め、積雪が15~20cmになると小型の車
両は走行が不能になる。除雪した・・・(省
略)・・・・・・・車両の走行速度はその程
度によって著しく低下する。
除雪効果は、それに伴う除雪コストも
加味して評価することが必要。
除
雪
効
果
【除雪効果を定量的に評価するための課題】
○これまで除雪効果を定量的に評価した事例はあまりない。
○旅行速度と路面積雪量による評価が必要だが、評価手法が確
立されていない。
道路利用者・道路管理者双方から評価されることも重要
除雪コスト
5
6
- 22 2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
【コストロスによる手法の提案(評価の流れ)】
【旅行速度と路面積雪量の相関分析の精度確保の取り組み】
利用交通量
この相関分析の精度確保が重要
60
旅行速度低下による
所要時間の増加を
経済損失として評価
路面積雪による
速度の低下
40
20
0
0
5
10
路面積雪量(cm)
15
時間価値原単位
コストロス
(百万円/年)
除雪効果のコストロスによる評価
北陸の湿った雪、積雪が多いと・・
圧雪は凸凹(ガタガタ)、
ザクレは走行抵抗に
1,200
1,000
800
600
400
200
0
コストロスが最も低い点
除雪コスト
旅行速度低下コストロス
(多←)除雪頻度(→少)
7
機械観測データのみでの分析
80
80
60
60
40
40
20
20
00 0
0
5
10
路面積雪量(cm)
5
10
路面積雪量(cm)
15
15
旅行速度(km/h)
80
○当初は機械観測データで分析。評価の妥当性の説明が難しい
ため現地調査を補完→精度向上を実現し、妥当性を確保。
旅行速度(km/h)
旅行速度(km/h)
旅行速度(km/h)
○除雪コストと路面積雪による旅行速度低下(旅行速度低下コ
ストロス)を組合わせたコストロスによる手法を提案。
現地調査データを補完
80
60
40
20
0
0
5
10
路面積雪量(cm)
15
相関係数=0.65(7工区平均)
相関係数=0.80(7工区平均)
【分析データ】
機械観測データ(トラカン、除雪日報)
【分析の課題】
①路面積雪量の算定で、「推計」が多く含
まれる。→実際の路面積雪と乖離。
②トラカン旅行速度と路面積雪量のミス
マッチ(除雪車通過前後データ)
【分析データ】
左記を現地調査データで補完。
【実施した現地調査】
①CCTVで路面積雪開始時を特定
②除雪車にGPSを搭載。
③5分間トラカンで除雪車通過前後の
データ分析(上記②と合わせて)
8
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
2.新雪除雪の除雪効果に関する検討
【コストロスによる評価】
【除雪効果に関する検討の現時点での評価】
○地域別にコストロスを算定。いずれも従来の出動実施判断
(出動基準)と同様であり、その妥当性が検証できた。
市街地
平地部
(百万円/2月)
(百万円/2月)
5cm
6cm
7cm
8cm
9cm
10cm
11cm
12cm
13cm
14cm
15cm
(多←)除雪頻度(→少)
20
従来の除雪出動基準
15
10
山地部
(多←)除雪頻度(→少)
5cm
6cm
7cm
8cm
9cm
10cm
11cm
12cm
13cm
14cm
15cm
除雪コスト
40
従来の除雪出動基準
30
20
10
旅行速度低下コストロス
0
コストロス
コストロス
○これまで車両の走行性能や経験則に基づき決められ
ていた除雪実施の判断を、定量的に評価できた。
○定量的に評価した結果、従来の除雪実施の判断(出
動基準)の妥当性が確認された。
○新雪除雪の除雪効果を定量的に評価する手法として
一定の成果が得られたものと考えている。
4
3
2
1
0
従来の除雪出動基準
(多←)除雪頻度(→少)
5cm
6cm
7cm
8cm
9cm
0cm
1cm
2cm
3cm
4cm
5cm
コストロス
(百万円/2月)
9
10
- 23 3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
【近年の大雪による交通障害】
○H26.2関東地方における大雪立ち往生を始めとして、近年大
雪による立ち往生が頻発。
○特に、除雪体制が十分に整っていない少雪地域での事案が
多く発生している。
3.大雪時の道路除雪の
あり方に関する検討
【平成26年2月の関東地方大雪】
国道18号碓氷バイ
パスは、4日間の通
行止め
立ち往生による被害を抑
制することや軽減するこ
とが重要
【検討の視点】
①登坂不能車が発生する条件を把握
②大雪時に立ち往生を発生させない道路除雪のあり方
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3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
【登坂不能車の発生状況の分析】
○大雪注意報・警報の発令時に登坂不能車が多発。
○比較的緩い勾配の箇所でも登坂不能車は発生している。
【交通障害の事後検証からみた道路除雪のあり方】
①除雪優先路線の選定
全ての路線・区間を平等に対応することには限界
【気象条件と登坂不能車の発生状況】 【道路構造と登坂不能車の発生状況】
大雪警報・注意報発令時に多発
優先順位をつけた対応が必要(特に少雪地域)
大雪交通障害の影響を踏まえた除雪優先路線の設定が重要
3%程度の勾
配でも登坂不
能車は多発。
通行止め体制や除雪実施のタイミング
に反映
【大雪交通障害による生活・社会活動への影響】※H26.2関東地方大雪の事例より整理
項目
通行止め区間設定や施設対応(登坂車
線、ロードヒーティング等)に反映
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出典:北陸地方整備局資料をもとに作成(H22~H24)
具体的影響
①通行止めによる孤立集落の発生。
ライフラインへの
②緊急輸送道路としての機能が確保されず、生活物資の輸送
影響
面で問題が発生。
①鉄道も運休していたことから、市民の足となるバス路線の
交通障害の長期間継続が住民生活に大きな影響を及ぼした。
②通学路及び通学のためのバス路線の交通障害で
休校が長期間継続した。
生活活動維持への ③警察署や病院・消防署への交通障害が長期間継続し、緊急
影響
車両の通行や医薬品の搬送への支障の他、職員の通勤にも
支障が及んだため、勤務体制にも支障が出た。
④国道事務所・県市役場等の行政事務所への登庁の交通障害
が長期間継続し、勤務体制に支障がでたため、被害情報収
集に時間を要した。
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- 24 3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
②除雪優先のための通行止めの実施
③大雪対応のマニュアル化
○「立ち往生を発生させない」が大雪時の道路管理の考え方。
○適切な時点での除雪優先のための通行止めが必要。
どの様な初動体制を何時整え
下り線:○○支所前交差点(○.○Kp)
上り線:○○交差点(○.○Kp)にて制御
至○○
国道○号
○○IC
小千谷IC
○○自動車道
国道○号
至○○
○
○○川→ ○
橋
○○橋
○○川→
○○TN
○
○
橋
○
○
橋
国道○号
○○(通行規制区間)
L=1.1km
T○
N○ T○
第 N○
第
一
二
国道0号
通行止め区間の設定
Uターン箇所の確保
通行止めのタイミング
待機車両への配慮
沿線自治体との連携
事前準備
どのデータに基づいた判断基
準で
情報収集・情報提供
除雪体制
誰に何を指示して
至○○
○○大橋
実行するのか
通行止めのための計画(案)
危険箇所の把握
どの時点で
国道○号
国道○号
○○IC
大項目
通行規制区間
誰が
通行止め区間の設定(例)
危険箇所の把握(例)
マニュアルとして整理すべき事項(例)
対応すべき事項が分かっていて
も、いざ動けない。
このため、マニュアル化が重要
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ドライバー支援
項目
(1)通行規制の種類
(2)通行規制区間
(1)体制の確立【組織構成、役割分担】
(2)情報収集、情報連絡、情報提供に必要となる体
制・機器の整備
(3)除雪に対するバックアップ体制
(4)通行規制に伴い必要となる措置に対する事前準備
(5)改正災害対策基本法に基づく車両等の移動に移動
に対する事前準備
(1)情報収集【収集項目と収集手段】
(2)情報提供【各段階での内容・情報媒体】
(1)体制の確保【各段階での体制、各体制で実施する
こと、役割分担】
(2)除雪体制【平常時、体制強化時、通行止め時】
(3)通行規制実施基準
(4)通行規制に伴い必要となる措置
【チェーン規制、通行止め、改正災害対策基本法
による車両移動】
(5)スタック牽引車における民間活用
(6)情報連絡体制
(1)通行規制及び一時待機場所等の情報提供
(2)緊急避難所及び一時待機場所の確保及び誘導
(3)緊急物資の配給及び安否確認
外部機関への支援要請
改正災害対策基本法に基づく車両移動に関する運用上の留意点
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3.大雪時の道路除雪のあり方に関する検討
【現時点での評価】
○登坂不能車の発生状況を分析することにより、除
雪体制構築や実施のタイミング、施設対応が必要
な箇所を検討することが出来た。
4.おわりに
○大雪の交通障害事例等から、通行止めや除雪体制
構築、マニュアル化のために、今後検討が必要な
項目を整理することができた。
○今後は、地域の特徴を踏まえた対策検討が必要で
ある。
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- 25 4.おわりに
今後の課題
○今後取り組むべき課題としては、
・凍結防止剤の散布効率化
・道路除雪のコスト縮減、
・大雪時の広域的な除雪支援、
・改正災害対策基本法による車両移動の運用方法
など多岐にわたる。
○これらの課題を踏まえ、道路除雪の効率化・適正化に向け
て、今後も一層の研鑽を行う所存である。
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