イブニングセミナー ES-1 かわかみ たみひろ 川上 民裕 聖マリアンナ医科大学皮膚科 学歴および職歴 1989 年 千葉大学医学部医学科 卒業、千葉大学医学部附属病院 研修医 1992 年 東邦大学医学部皮膚科学第2講座 医員 1993 年 東京警察病院皮膚科 医員 1995 年 アメリカ合衆国マイアミ大学解剖分子生物学講座 留学 1996 年 アメリカ合衆国サウスカロライナ医科大学リウマチ免疫学講座 留学 1997 年 東邦大学医学部皮膚科学第2講座 助手 2000 年 聖マリアンナ医科大学皮膚科 助手 2002 年 同 講師 2006 年 同 助教授 2007 年 同 准教授 (名称変更) 2011 年 久留米大学医学部皮膚科学教室 非常勤講師兼任 学会活動等 平成 26 年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 難治性血管炎に関する調査研究 代表 有村義宏先生(杏林大学内科) 臨床病理分科会(代表 石津明洋先生)、 横断協力分科会(代表 髙崎芳成先生)、中・小型血管炎分科会(代表 針谷正祥先生)研究協力者 ANCA 関連血管炎の診療ガイドライン改定ワーキンググループ 班員 DCVAS(欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会主導による原発性全身性血管炎の分類・診断基準作成のための研究 (多施設国際共同研究))の一員 日本皮膚科学会 専門医、医療安全対策委員、東京支部代議員、「血管炎・血管障害」、「創傷・熱傷治療」、 「尋常性白斑診療」各ガイドライン作成委員会委員 日本血管病理研究会 世話人 日本色素細胞学会 理事 日本アレルギー学会 専門医、指導医、代議員、専門医制度試験問題作成委員皮膚科代表委員 日本研究皮膚科学会 評議員 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医 日本がん治療認定医 暫定教育医 横浜地方裁判所 医療訴訟専門委員 The Journal of Dermatology Section Editor 受 賞 2010 年 第 11 回 日本研究皮膚科学会賞(JSID 賞) 2011 年 聖マリアンナ医科大学前田賞 1 月 23 日(金) 18:05~19:05 共催:帝人ファーマ株式会社 座長:山口由衣 血管炎の診断と治療 2015 かわかみ たみひろ 川上 民裕 聖マリアンナ医科大学 本講演では、最近の血管炎を取り巻く国内外の動向を、以下の3つで簡潔に提示したいと思いま す。 1) Chapel Hill 分類 2012 血管炎の分類として、1994 年に発表され国際的に広く定着している Chapel Hill Consensus Conference により採択された血管炎の病名とその定義(Chapel Hil 分類 1994;通称“CHCC1994” ) が、2012 年大幅に改訂され Chapel Hill 分類 2012(通称“CHCC2012” )として発表された。CHCC2012 は、まず CHCC1994 を踏襲し、血管炎を大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎で分類した。この 3 つのカテゴリーに加え、以下の 4 つのカテゴリーが新たに設定され、計 7 つのカテゴリーで構成さ れた。さまざまな血管を侵す血管炎、単一臓器を侵す血管炎、全身性疾患に伴う続発性血管炎、誘 因の明らかな続発性血管炎が 4 つの新カテゴリーである。これに伴い、記載された血管炎の対象疾 患数は、CHCC1994 の 10 疾患から、CHCC2012 では 26 疾患に大幅、増加した。 皮膚科に影響を及ぼしそうな改正項目を、以下に挙げる。 ① 大型血管炎は、高安動脈炎と巨細胞性動脈炎の2つとされ、側頭動脈炎の名称が巨細胞性動 脈炎に吸収され、なくなった。 ② 小型血管炎は、CHCC1994 では明記されなかった抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連小型血管炎と 免疫複合体性小型血管炎の 2 サブカテゴリー分類を明確にした。そして、多発血管炎性肉芽腫症 (Wegener’s)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (Churg Strauss)、IgA 血管炎 (Henoch-Schönlein) と名称変更がなされた。免疫複合体性小型血管炎に低補体血症性蕁麻疹様血管炎 (抗 C1q 血管炎) が新規採用された。 ③ さまざまな血管を侵す血管炎に Behçet 病が採用された。 ④ 単一臓器を侵す血管炎に、皮膚白血球破砕性血管炎が小型血管炎から移動した。皮膚動脈炎 が新規採用された。単一臓器を侵す血管炎は、経過中に全身性血管炎へと進展した場合には他のカ テゴリーに再分類される、と明記された。 2) 厚生労働省血管炎班 平成 26 年度 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業での難治性血管炎に関する調 査研究(代表 有村義宏先生)に、臨床病理分科会(研究分担者として) 、横断協力分科会(研究分 担者として) 、中・小型血管炎分科会(研究協力者として) 、ANCA 関連血管炎の診療ガイドライン改 定ワーキンググループ(班員)として参加しており、その現着状況を提示する。 3) 新規治療(免疫グロブリン大量静注療法とリツキシマブ) 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (Churg Strauss)の治療抵抗性神経障害に対し、免疫グロブリン 大量静注療法(IVIG)が、2010 年 1 月保険適応となった。400mg/kg/日を 5 日間投与する。 主として CD20 陽性 B 細胞性非ホジキンリンパ腫の治療として用いられるリツキシマブ(抗 CD20 抗体製剤)が、多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)および顕微鏡的多発血管炎に、2013 年 1 月公知 申請された。 CHCC2012 は、リウマチ内科や腎臓内科が中心となって作成されたのでやや偏りがある。皮膚科で の血管炎が全く本分類で包括可能ではなく、今後の議論が待たれる。 イブニングセミナー ES-2 くわな まさたか 桑名 正隆 日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野 日本医科大学付属病院リウマチ膠原病内科 学歴・職歴 昭和 63 年 3 月 平成 4 年 3 月 平成 5 年 5 月 平成 12 年 10 月 平成 18 年 1 月 平成 19 年 4 月 平成 26 年 7 月 慶應義塾大学医学部卒業 慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了(本間光夫先生) ピッツバーグ大学リウマチ内科ポストドクトラルフェロー(Thomas A Medsger Jr 先生) 慶應義塾大学医学部先端医科学研究所専任講師 慶應義塾大学医学部内科(血液感染リウマチ)助教授 慶應義塾大学医学部内科(リウマチ)准教授 日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野大学院教授、 付属 病院リウマチ膠原病内科部長、 現在に至る。 所属学会 American College of Rheumatology(アメリカリウマチ学会) American Association of Immunologists(アメリカ免疫学会) 日本内科学会、日本リウマチ学会(評議員)、日本免疫学会、日本臨床免疫学会(評議員) 日本臨床血液学会、日本炎症・再生医学会(評議員)、日本肺循環学会(理事)、 日本肺高血圧学会(理事)、日本循環器学会、日本臨床内科医会 資 格 日本内科学会認定内科医・認定内科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医 受賞歴 平成 7 年 10 月 平成 16 年 6 月 平成 19 年 4 月 平成 21 年 3 月 American College of Rheumatology Senior Rheumatology Scholarship Award 日本結合組織学会大高賞 アボットジャパン・リウマチ性疾患臨床医学賞 慶應義塾大学知的資産センター賞 公的活動 厚生労働省特定疾患対策事業調査研究班分担研究者 強皮症、ベーチェット病、血液凝固異常症 Editorial board Arthritis and Rheumatiology, PLoS ONE, Journal of Infectious Diseases, Journal of Rheumatology, Modern Rheumatology, Case Reports in Rheumatology, Drugs 研究分野 自己免疫、血管生物学 1 月 23 日(金)18:05~19:05 共催:帝人ファーマ株式会社 座長:山口由衣 免疫性血小板減少症に関する最近の知見 く わ な まさ た か 桑名 正隆 日本医科大学アレルギー膠原病内科 免疫性血小板減少症(ITP)は血小板に対する自己抗体により血小板減少をきたす自己免疫疾患であ る。わが国では行政上の理由から特発性血小板減少性紫斑病の病名が使われているが、世界的には immune thrombocytopenia(免疫性血小板減少症)の原発性病態(primary ITP)で呼称が統一されている。 従来は抗血小板抗体の結合によりオプソニン化された血小板が脾臓など網内系で破壊される末梢での消 費亢進が主たる機序と考えられてきた。しかし、最近は抗血小板抗体が骨髄巨核球に対して抑制的に働 くことで血小板の産生を障害する機序が注目されている。また、近年 Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染と の関連が注目されている。ピロリ菌を保菌する ITP 患者の半数以上で除菌後に血小板が増加し、多くの例 で長期寛解を得ることができ、治癒の実現が可能な数少ない自己免疫疾患の一つである。昨年改訂され た ITP 診療ガイドでは、ITP と診断されれば直ちにピロリ菌を検索し、感染が確認されれば血小板数や出 血症状に関係なく全例で除菌療法を第一選択とするアルゴリズムが示された。治療目標は血小板数の正 常化ではなく、出血リスクの軽減である点は従来と変わりないが、ステロイド効果不十分例には従来の脾 摘に加えてリツキシマブ、トロンボポエチン受容体作動薬が治療選択肢に加えられた。診断はいまだに他 疾患の除外に主眼が置かれているが、私たちは抗血小板抗体産生 B 細胞、網血小板比率などの臨床検 査を組み合わせた診断基準を提案した。現在、これら臨床検査を保険診療で実施できるような取り組みが 進行中である。一方、基礎研究成果から、私たちは網内系マクロファージ、自己反応性 T 細胞、B 細胞に よる“病的”サイクルを抗血小板自己抗体の産生メカニズムとして提唱した。さらに、ITP 患者では CD4+CD25+FoxP3+制御性 T 細胞の減少や機能障害が報告されており、免疫調節機構の破綻が発症のトリ ガーとなる可能性が明らかにされた。また、ピロリ菌除菌後に血小板が増える機序として、抑制性 Fcγ受 容体からの負のシグナルが重要な役割を果たしていることを見出した。これら基礎研究から新たな治療標 的が同定されており、治療への応用が期待される。
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