平成27年11月 第 篠藤 敦子 回 耐用年数─中古資産の耐用年数 公認会計士・税理士 企業が取得する る固定資産は、いつも新品であるとは限りません。中古資産を取得したとき、税務上の償却限度額の計算に適用する耐用 年数(以下、単に に「耐用年数」といいます)は、どのような取扱いになるのでしょうか。 中古の乗用車を購入し、営業用車両として使用を開始しました。この車両は、他社が新車購入後1年8か月使用したもの 中古 です。この車両に適用する耐用年数は、法定耐用年数になるのでしょうか。 です。 。 法定 定耐用年数である6年を適用することもできますが、営業用車両の使用可能期間を見積もり、その年数によることも認 定 められ れます。また、使用可能期間の見積りが困難である場合には、一定の方法で算定した年数を耐用年数とすることができ れ ます。 。 解説 中古資産に適用する耐用年数には、 中古資産に適用 ❶法定耐用年数 ❷見積法による年数 ❸簡便法による年数 の3つがあります。 1 法定耐用年数と中古資産 法定耐用年数は、新品の減価償却資産を前提に定められています。通常、中古資産の使用可能年数は、新品の場合よりも短いと考えら れますので、中古資産に法定耐用年数をそのまま適用することは実態に合いません。 そこで、中古資産の耐用年数については、新品の減価償却資産を取得した場合とは別の規定が設けられています。 中古資産の耐用年数 中古資産の耐用年数 中古資産には法定耐用年数を適用することもでき 法定耐用年数を適用するか ますが、法定耐用年数を適用しない場合には、見積 適用する 法又は簡便法のいずれかによる年数を耐用年数とし 適用しない ❶法定耐用年数 ます。 使用可能期間を見積もることができるか 見積り可能 見積り困難 ❷見積法による年数 ❸簡便法による年数 見積法と簡便法 見積法と簡便法の概要は、次表のとおりです。なお、中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出*が一定額を超える場合 には、見積法と簡便法を適用できないことがあります。 * 資本的支出とは、その減価償却資産の価値を高める支出等、固定資産の取得価額として計上すべき金額をいいます。 見積法と簡便法の概要 見積法 簡便法 対象となる資産 耐用年数の見積り(計算) 試掘権以外の鉱業権及び 坑道を除く減価償却資産 事業の用に供した時以後の使用可能期間として見 積もられる年数 資本的支出 ➡ 無形減価償却資産及び 生物を除く減価償却資産 ① 法定耐用年数の全部を経過した資産 法定耐用年数×20% ② 法定耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20% * 適用できない場合 算出した年数に1年未満の端数があるときは切り捨てる。 算出した年数が2年未満の場合は2年とする。 ×50% > の場合 再取得価額* ❶法定耐用年数 資本的支出 を適用する ×50% > * 中古資産と同じものを新 品で取得する場合の価額 の場合 中古資産の取得価額 ➡ ❶法定耐用年数 又は ❷見積法による年数 を適用する 簡便法の計算例 本事例について、営業用車両に適用する耐用年数を簡便法により算定します。 6年 − 1年8か月 法定耐用年数 + 1年8か月 × 20% = 4年8か月 ➡ 4年(1年未満の端数切捨) 経過年数 なお、経過年数が明らかでないときは、その資産の構造、形式、表示されている製作の時期等を勘案して、経過年数を適正に見積もる こととされています。 見積法や簡便法による耐用年数の算定は、中古資産を事業の用に供した事業年度において行います。いったん法定耐 用年数を適用し、その後の事業年度において見積法や簡便法による年数に変更することはできません。 中古資産の使用可能期間の見積りは困難である場合が多いため、実務的には簡便法を用いるケースが多いと考えられ ます。簡便法によることができるのは、使用可能期間の見積りが困難な場合に限られていること、また、資本的支出が 一定額を超えるときには、簡便法を適用できない場合があることに注意が必要です。 しの とう あつ こ 篠藤 敦子(公認会計士・税理士) 著者紹介 名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成 北区堂島)開業。平成20年 年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成 年に篠藤公認会計士事務所(大阪市 月より甲南大学大学院社会科学研究科会計専門職専攻教授。企業の監査役を兼務している。
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