(2) 腎臓がん細胞株における Galectin の発現および分泌機構の解析

(2) 腎臓がん細胞株における Galectin の発現および分泌機構の解析
本年度研究では、腎臓がん早期発見のための血中診断マーカーとして期待される種類のタンパク
質に着目し、腎臓がん細胞株を用いて評価を行うとともに、高発現していた Galectin-1 について、
分泌機構を解析することとした。
1) 培養細胞における各タンパク質の発現量比較
腎臓由来の非がん細胞である 293 細胞と 4 種類の腎臓がん細胞株を比較した場合、4 種類の
腎臓がん細胞株の全ての株において、Galectin-1 と Triosephosphate isomerase が高発現して
いた。Galectin-3 は、3 種類の腎臓がん細胞株において発現量が高かった。
2) Galectin 分泌量の解析
Galectin の細胞外分泌量の比較するために、細胞培養上清中に分泌されている Galectin-1 量
を測定した。その結果、腎細胞のがん化により Galectin-1 の細胞内発現量の増加と共に細胞外
分泌量も増加していることが示された。
3) Galectin-1 の細胞内分布
Galectin-1 の分泌メカニズムを調べるうえで、細胞内における Galectin-1 の局在を確かめること
は重要であり、腎臓がん細胞株 OS-RC-2、TUHR4TKB を用いて細胞内 Galectin-1 の局在を
確認した。その結果、2 種類の細胞ともに細胞全体が染色され、腎臓がん細胞株において
Galectin-1 は細胞内全体に存在することが確かめられた。
4) 糖鎖合成阻害による Galectin-1 の分泌量変化
(1)ガラクトース含有 N 型糖鎖合成阻害剤による細胞内糖鎖の変化
Galectin-1 の分泌はガラクトースとの結合が関与している可能性があり、N型糖鎖合成阻害剤
dMM を用いて、N 型糖鎖末端へのガラクトース付加を阻害した。
dMM を終濃度 1 mM となるよう培養上清中に添加し、DSA(ダツラストラモニウムアグルチニン)-FITC と
Con A-Alexa 594 の蛍光染色により 2 種類の細胞(OS-RC-2、TUHR4TKB)の細胞表面および
細胞内糖鎖の観察した結果、コントロールと比較して dMM を添加した細胞の DSA-FITC の蛍
光が減少した。
(2)dMM 添加による細胞内 Galectin-1 発現量への影響
2 種類の細胞(OS-RC-2、TUHR4TKB)において dMM は Galectin-1 発現量に影響を及ぼさ
ないことが明らかになった。
(3)N 型糖鎖合成阻害による Galectin-1 分泌量の変化
DSA はガラクトースが末端に存在する糖鎖を認識するため、Galectin-1 のターゲットが減少し
たと考えられる。そこで、dMM を終濃度 1 mM となるように培養上清中に添加し、24 時間当たり
の Galectin-1 分泌量を 2 種類の細胞(OS-RC-2、TUHR4TKB)を用いて測定した。その結果、
コントロールと比較して OS-RC-2 と TUHR4TKB のどちらの細胞の場合にも、Galectin-1 の
分泌量の低下が見られた。DSA に認識される N 型糖鎖が減少したことにより、Galectin-1 の
分泌量が減少した可能性が示唆された。
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