DC-DC コンバータの高パワー密度化に向けた

DC-DC コンバータの高パワー密度化に向けた
リアクトルの電流リプル設計法
レ
ホアイ
ナム*
折川
幸司
伊東
淳一(長岡技術科学大学)
Design of Boost Inductor Current Ripple to achieve High Power Density for DC-DC converter
Hoai Nam Le*, Koji Orikawa, Jun-ichi Itoh (Nagaoka University of Technology)
This paper proposes the design of the boost inductor current ripple for DC-DC converter to achieve high power density. In the
proposed method, the current ripple is varied to obtain the pareto-front curve of the efficiency and the power density. By the
proposed design method, the highest power density is 10.3 kW/dm3 at efficiency of 98.1%. Besides, the input filter reduces the 1st
harmonic component of the current from 15.7 dB to -32.5 dB with the error of 3.3% compared to the designed value.
キーワード:パワー密度,電流リプル,パレートフロント,フィルタ設計
(Power Density, Current Ripple, Pareto-Front, Filter Design)
1.
はじめに
ョンにより昇圧リアクトルの電流リプルの設計法を明らか
にする。本論文の構成を以下に示す。まず,電流リプルに
電気自動車や太陽光発電システムなどでは,高パワー密
対するフィルタを含めた DC-DC コンバータの損失と体積を
度と高効率を有する昇圧形 DC-DC コンバータが要求され
検討するフローチャートを提案する。次に,昇圧リアクト
る。昇圧コンバータの昇圧リアクトルを小型化するにはス
ルの電流リプルを大きく設計する際のジャンクション温度
イッチング周波数を高くする方法と許容リプル電流を大き
変化を検討する。また,昇圧リアクトルの電流リプルに応
くする方法がある (1)。しかし,入力電源としてバッテリが
じたフィルタの体積を評価し,フィルタコンデンサの許容
DC-DC コンバータに接続する場合,バッテリのリプル電流
電流リプルを考慮したフィルタの設計法を明らかにする。
は寿命低下の一因となるため,ある一定値以下に抑えなく
最後に,効率とパワー密度のトレードオフ関係を示すパレ
(2)
てはならない 。この結果,昇圧リアクトルの電流リプルを
ートフロントを用いて,高パワー密度のフィルタ付き昇圧
増加させることができない。
形 DC-DC コンバータを実現する昇圧リアクトルの電流リプ
そこで,入力電流リプルを低減するために, LC フィル
タを入力電源と昇圧リアクトルの間に接続する方法がある
ルの設計法を明確化する。
昇圧リアクトルの電流リプル設計
(3)
2.
く恐れがある。つまり,昇圧リアクトルの電流リプルに対
図 1 に昇圧チョッパにフィルタを接続した昇圧形 DC-DC
して昇圧リアクトル体積とフィルタ体積はトレードオフの
コンバータの回路図を示す。この回路では,フィルタコン
関係となる。したがって,LC フィルタ付き昇圧形 DC-DC
デンサに昇圧リアクトル電流の高調波成分が流れることに
コンバータの高効率と高パワー密度を両立させるために,
より,入力電流リプルを抑制できる。したがって,昇圧リ
昇圧リアクトルの電流リプルとパワー密度の関係を明確に
アクトルの電流リプルを大きく設計できるため,昇圧リア
する必要がある。また,昇圧リアクトルの電流リプルを大
クトルを小型化できる。なお,フィルタは多段化すること
きく設計する場合,半導体素子の電流最大値が大きくなる
によりフィルタ体積を低減できるか検討する。本章では,
ため,半導体素子のジャンクション温度が増加する恐れが
昇圧形 DC-DC コンバータの高効率と高パワー密度の両立を
ある。したがって,昇圧リアクトルの電流リプルと半導体
実現するために,フィルタ付き昇圧形 DC-DC コンバータの
素子のジャンクション温度の関係を明らかにする必要があ
損失と体積の関係についての検討を行う。
。しかし,フィルタの追加によりシステム体積の増加を招
る。しかし,それらの関係を明確にした報告は,著者らの
知る限りない。
本論文では,高パワー密度の昇圧形 DC-DC コンバータを
図 2 に昇圧リアクトルの電流リプルを設計するためのフ
ローチャートを示す。まず,スイッチング周波数 fsw と電流
リプル ΔIL の検討する範囲を設定する。
実現するために,昇圧チョッパにフィルタを接続するフィ
図 3 に昇圧リアクトルの電流リプル ΔIL と出力電圧リプル
ルタ付き DC-DC コンバータを検討し,解析とシミュレーシ
ΔVp-p の定義を示す。ここでは,リプル率はリプル振幅と平
均値の比で定義する。よって,リプル率 100%のとき,電流
連続モードと不連続モードの境界,すなわち,臨界モード
の動作となる。本論文では,電流リプルとパワー密度の関
IC
Filter
Iin
係を明らかにするため,
スイッチング周波数 fsw は 50kHz に
Vin
固定し,電流リプルΔIL の範囲は 10%~200%に設定する。
Lf
Lf
Cf
ICf
Cf
SW1
L
IL
Load
C
Vout
SW2
まず,スイッチング周波数と電流リプルの初期値の組み
合わせでインダクタンス L,キャパシタンス C 等のパラメ
Fig. 1. Conventional boost converter with input filter.
ータを計算する。次に,半導体素子の導通損失 Pcond とスイ
ッチング損失 Psw よりヒートシンクの体積 VolH を計算する。
Input Parameters Vin, Vout, Pn
また,第 3 章にて半導体素子の熱回路によりジャンクショ
Select Min. Switching Frequency
ンの温度変化を検討する。続いて,出力側のコンデンサの
In this paper,
switching frequency
is kept constant
at 50kHz.
Select Min. Current Ripple
電流 IC と容量 C よりキャパシタの体積 VolC を計算する。
さらに,昇圧リアクトルのインダクタンス L と電流ピー
1) Calculate Device Losses
2) Calculate Heatsink Volume
ク Imax より,リアクトルに蓄えるエネルギーを計算し,最も
小さい体積を有するコアを選択する。続いて,コアが飽和
Section 3
Junction Temperature Evaluation
しない条件を満足するギャップの最小値を計算する。ギャ
ップを最小値から増やしながら,鉄損 Pcore と銅損 Pwind を計
N
T<Tmax
Y
1) Calculate Capacitance C
2) Calculate Capacitor Volume
算し,昇圧リアクトルの総合損失が最小となるギャップを
決定する。次に,第 4 章にてフィルタ体積が最も小さくな
るようにフィルタのパラメータを設計する。最後に,電流
リプルを増加させ,より高い効率とパワー密度の組み合わ
を増加させて繰り返す。これにより,効率,パワー密度共
1) Calculate Inductance L
2) Calculate Inductor Volume
3) Select Core Size
に高い DC-DC コンバータを設計できる。本論文では提案す
Calculate Min. Gap lgmin
せを検討する。以上の手順を,本来はスイッチング周波数
るフローチャートの基本原理を検証するため,スイッチン
Calculate Winding Turns N
グ周波数を一定とする。なお,ヒートシンク,出力側コン
デンサ,昇圧リアクトルの設計については著者らの文献(4)
法と半導体素子の温度変化について詳細に述べる。
3.
N
N>Nmax
Y
Section 3
Filter Design
にて既に報告している。よって,本論文ではフィルタ設計
ジャンクション温度変化の検討
Calculate
Inductor Loss
Increase Gap
Increase Current Ripple
図 4 にジャンクション温度変化を検討するフローチャー
N
トを示す。本論文では,電流リプルを増加させることによ
りスイッチング 1 周期中の半導体素子に発生する損失の変
Optimization
of Inductor
Loss
ΔI>ΔImax
Y
Increase Switching Frequency
化幅が増加し,電流ピークで半導体素子の瞬時的な過熱を
N
招く恐れがある。そのため,電流リプルに対するジャンク
fsw>fsw_max
Y
Output
Efficiency h , Power Density r
ションの過渡的な温度変化T を検討する。まず,ジャンク
ションから周囲温度までの熱回路のパラメータを求める。
次に,電流リプルに対する過渡的な半導体素子の損失をシ
ミュレーションより求めて,熱回路の入力熱流源として扱
Fig. 2. Flowchart to design power density when both switching
う。最後に,電流リプルに対するジャンクション温度変化
frequency and current ripple are varied.
T を熱回路により検討する。ジャンクション温度変化T が
許容温度変化Tmax より大きい場合は,図 2 に示すようにス
イッチング周波数を増加させる。
表 1 にジャンクション温度変化を検討する回路のパラ
メータを示す。
図 5 にジャンクションから周囲温度までの熱回路を示す。
データシートにある過渡熱抵抗特性からジャンクションの
熱回路のパラメータをフィッティングすることにより,ジ
ャンクションとケース間の熱抵抗と熱容量を求める(5)。
ILmax
Definition of
Input Current Ripple
ΔIL
ILavg
iL
ILmin
IL 
IL max  ILavg
ILavg
x100
Vmax
Definition of
Ouput Voltage Ripple
vo
Vavg
Vmin
V p  p 
ΔVp-p
Vmax  Vmin
x100
Vavg
Fig. 3. Input current ripple and output voltage ripple.
図 6 に電流リプルを 100%に設計した時の半導体素子の損
Start
失とジャンクション温度の変化を示す。熱抵抗のモデルに
より,ジャンクション温度変化を計算し,半導体素子とヒ
ートシンクの熱設計を行うことができる。また,図 6 に示
すように,スイッチング周波数を高周波化することで,半
Transient Thermal
Impedance ZJC
Calculate RJC_n, CJ_n
VolH, rHeatsink, cHeatsink
Calculate CH
pconduction, pswitching
Simulate pdevice
導体素子の瞬時損失が変化する周波数が増加するので,ジ
ャンクション温度のリプルを低減できる。一方,ヒートシ
Simulate Junction Temperature
Tjunction
ンクの熱応答時定数がスイッチング周期に対して十分長い
ため,ヒートシンクの温度はほぼ一定である。
図 7 に電流リプルとスイッチング周波数を変化に対する
N
T<Tmax
Y
ジャンクションの温度変化を示す。図 7 より,スイッチン
グ周波数が 10kHz 以上の場合,ジャンクション温度変化幅
Implementable
Unimplementable
o
は 3 C 以下に抑制されることがわかる。このように,ジャ
End
ンクション温度変化検討のフローチャートより,ジャンク
ションの温度変化を許容値以内に抑制する電流リプルとス
Fig. 4. Flowchart of junction temperature evaluation.
イッチング周波数を設計できる。
4.
Table 1. Thermal circuit and design parameters.
フィルタの設計
図 8 にフィルタ設計のフローチャートを示す。本論文で
は,入力電流の高調波成分を低減することを目的にして,
以下の手順でフィルタのパラメータを設計する。
〈4・1〉 フィルタのカットオフ周波数
本節では,昇圧リアクトルの電流と入力電流の高調波解
析によりフィルタの減衰率を計算し,カットオフ周波数を
設計する。
図 9 に昇圧リアクトルの電流 iL の波形を示す。昇圧リア
Input Voltage Vin
48 V
Rated Power Pn
1 kW
Output Voltage Vout 300 V
Rated Current In 20.3 A
Device: GS66516T
Type of Device
GaN Tran. Manufacturer
GaN System
Voltage Rating VDS 650 V
Current Rating IDS 60 A
Junction Thermal Capacitance and Resistance
RJC_1
2.7 mK/W CJ_1
0.2 mJ/K
5.4 mK/W CJ_2
0.9 mJ/K
RJC_2
11 mK/W CJ_3
1.2 mJ/K
RJC_3
54 mK/W CJ_4
3.0 mJ/K
RJC_4
RJC_5
71 mK/W CJ_5
5.4 mJ/K
360 mK/W CJ_6
34.5 mJ/K
RJC_6
クトルのインダクタンスによって昇圧リアクトルの電流は
連続か不連続となる。まず,昇圧リアクトルの電流の n 次
高調波成分 ILn はフーリエ級数展開により(1)式で表される。
pdevice
Junction & Case
RJC_n
Tjunction RJC_1 RJC_2
...
CJ_1
CJ_2
CJ_n
Heatsink
Theatsink RHA
Tambience
CH
I Ln  an2  bn2 .............................................................. (1)
ここで,an と bn はフーリエ係数で,(2),(3)式で表せる。
Junction Temperature
105
T
100
95
Heatsink Temperature
90
I = 100%
fsw = 1 kHz
T = 2.7oC
T
95
Heatsink Temperature
90
I = 100%
fsw = 10 kHz
T = 0.8oC
85
100
80
Device Loss
pdevice [W]
Device Loss
pdevice [W]
85
100
80
60
40
20
0
-20
Junction Temperature
100
Temperature
Tjunction [oC]
Temperature
Tjunction [oC]
105
Fig. 5. Thermal circuit for device and heatsink.
60
40
20
0
0
0.5
1.0
1.5
Time [ms]
2.0
(a) Switching frequency of 1 kHz.
2.5
3.0
-20
0
0.5
1.0
1.5
Time [ms]
2.0
2.5
3.0
(b) Switching frequency of 10 kHz.
Fig. 6. Dependence between junction temperature and frequency of semiconductor power loss at 100% current ripple.
I L max  I L min cos(2nD2 ) cos(2nD2 )
{

2 n 2 2
D2
D1
1 cos[2n ( D1  D2 )]


}
D2
D1
bn 
I L max  I L min sin(2nD2 ) sin(2nD2 )
{

2 n 2 2
D2
D1
sin[2n ( D1  D2 )]

}
D1
7
............. (2)
............... (3)
Junction Temperature
Peak-To-Peak Variation
Tp-p [oC]
an 
fsw=1 kHz
5
4
3
fsw=10 kHz
2
fsw=100 kHz
1
0
ここで,ILmax と ILmin はそれぞれ昇圧リアクトルの電流の最
Input Voltage: 48 V
Output Voltage: 300 V
Rated Power: 1 kW
6
fsw=1 MHz
0
50
100
150
Current Ripple I [%]
大値と最小値,D1 と D2 はそれぞれスイッチ SW1 と SW2 のデ
200
250
ューティ比である。次に,フィルタの減衰率 Gfilter は入力側
Fig. 7. Junction temperature variation when both current ripple
に流す電流の 1 次高調波成分 Iin1 と昇圧リアクトルの電流の
and switching frequency.
1 次高調波成分 IL1 を用いて(4)式で表される(3)。
I 
G filter  20 log in 1  ...................................................... (4)
 I L1 
Start
Input
D1, D2, ILmax, ILmin, Tsw
最後に,フィルタのカットオフ周波数 fcut は減衰率 Gfilter
とスイッチング周波数 fsw を用いて(5)式で表される。
f sw
f cut 
G filter
10
 40n filter
............................................................. (5)
1) Calculate Required Filter
Attenuation Gfilter Ep. (4)
2) Calculate Cutoff Frequency
fcut Eq. (5)
3) Calculate Filter Capacitor
Current ICf Eq. (6)
Required Input
Current Harmonic
Component Iin1
ここで,nfilter はフィルタの段数である。(5)式で得られるフ
VCf, KDCbias
Calculate Min. Filter
Capacitance Cf_design
Eq. (7)-(8)
Iripple_data/Cdata
VC_data/Cdata
Calculate Filter Capicator
Volume VolCf Eq. (9)
KV, Ku, Bmax, J
1) Calculate Filter Inductance
Lf Eq. (10)
2) Calculate Filter Inductor
Volume VolLf Eq. (11)
ィルタのカットオフ周波数を用いて,フィルタの体積が最
小になるように 4・2 節でフィルタのキャパシタ Cf,4・3 節で
リアクトル Lf を設計する。また,昇圧リアクトルの電流制
御系が不安定にならないように,フィルタのカットオフ周
波数 fcut をスイッチング周波数 fsw の 1/3 以下に設計する。
〈4・2〉 フィルタコンデンサ Cf
Fomulate Hamornic Component
of Boost Inductor Current ILn
Eq. (1)-(3)
本論文では,高周波特性および許容電流の大きさから勘
案して,セラミックコンデンサを使用する。図 1 において
Vol =Min
Y
昇圧リアクトルに接続されるコンデンサ Cf には交流電流 ICf
End
が流れるため,交流電圧 VCf が発生する。この交流電圧 VCf
は電流制御系の外乱となるため,入力電圧の 5%以内に抑制
Maximum
Current ILmax
Inductor
current
iL
終段のフィルタコンデンサが昇圧リアクトルと接続され,
昇圧リアクトルの電流の高周波成分がほぼこのコンデンサ
に流れるため,このコンデンサの電圧だけ制限する。まず,
0
フィルタのコンデンサ Cf に流れる交流電流 ICf は,最終段の
Minimum
Current ILmin
D2Tsw
フィルタのリアクトルに流れる電流 ILf と昇圧リアクトルの
電流 IL を用いて(6)式で表される。
I Cf  I L  I Lf  I L (1  10
fs w
f cut
) ................................. (6)
次に,必要な容量 Cf_req はフィルタのコンデンサの電流 ICf
と電圧 VCf を用いて(7)式で表される。
C f _ req 
I Cf
VCf 2f sw
......................................................... (7)
図 10 に今回選定したセラミックコンデンサの直流電圧バ
イアス特性を示す。日本ケミコンのセラミックコンデンサ
に直流電圧を印加した時に実効的な静電容量が低下する(6)。
Increase
Cf
Fig. 8. Flowchart to design input filter.
することとする(3)。また,フィルタを多段化する場合は,最
2 log10
N
D1Tsw
Tsw
D3Tsw
Fig. 9. Boost inductor current waveform.
そのため,セラミックコンデンサを使用する際は,データ
シートに記載されている直流電圧バイアス特性に基づいて
コンデンサの容量を設計する。入力電圧 Vin をコンデンサに
印加する際の実効的な容量 Cf_design は,DC バイアスによる
容量の変化率 KDCbias と要求の容量 Cf_req を用いて(8)式で表さ
れる。
C f _ design  C f _ req
100
...................................... (8)
100  K DCbias
図 11 に今回使用したセラミックコンデンサについて,デ
ータシートに記載されている容量と許容電流リプルの関係
10
ンサ Cf に流す際,電流リプルを規定値以下にするためには,
コンデンサを並列接続する必要があり,それに伴いフィル
タコンデンサの体積が増加する。まず,フィルタのキャパ
シタンス Cf_design と電流リプル ICf の両方を満足するコンデン
サは,図 11 に示すように(9)式より選択する。
I ripple _ data
Cdata

I Cf
C f _ design
..................................................... (9)
Capacitance Change Rate
KDCbias [%]
を示す。リアクトル電流の高調波成分をフィルタのコンデ
0
NTS Series (100V)
-10
-20
-30
-40 -40.5%
-50
-60
-70
0
20
48V
40
60
DC Bias Voltage [V]
80
100
ここで,Iripple_data と Cdata は各メーカや種類のコンデンサにお
Fig. 10. Relationship between capacitance change rate due to
ける許容電流リプルと容量である。図 11 より,コンデンサ
DC bias voltage from Nippon Chemi-Con Corporation (6).
Iripple_data/Cdata が大きく,(9)式を満足しやすくなることがわか
る。したがって,小さいコンデンサ容量を有するコンデン
サを並列接続することで許容電流が大きく,かつ大きなキ
ャパシタンスを実現できる。
図 12 に実装するセラミックコンデンサの容量と体積を示
す。図 11 において,フィルタのキャパシタンス Cf_design と電
流リプル ICf の両方を満足できるコンデンサから, さらに総
合フィルタコンデンサ体積が最も小さくなるグループを選
択する。図 12 より,コンデンサの体積と容量の比 VC_data/Cdata
Current-Ripple per-Capacitance Ratio
Iripple_data/Cdata [Arms/mF]
の容量が小さいほど許容電流リプルと容量の比
3.5
X:Cdata=0.1 mF, Iripple_data=0.3 A, VC_data=11.0 mm3
3
2.5
NTS Series
Y:Cdata=1.5 mF, Iripple_data=1.0 A, VC_data=49.4 mm3
2
Z:Cdata=6.8 mF, Iripple_data=3.0 A, VC_data=324.1 mm3
NTF Series
Formulated by Eq. (9)
NTJ Series NTD Series
Usable
Unusable
5
10
15
Capacitance Cdata [mF]
1.5
1
0.5
0
0
が大きくなるほど,フィルタの体積が大きくなることがわ
Fig. 11. Relationship between allowable current ripple and
かる。そのため,フィルタのコンデンサ体積が最小になる
capacitance from Nippon Chemi-Con Corporation (6).
〈4・3〉 フィルタリアクトル Lf
フィルタ用リアクトルは,電流の高調波成分に高いイン
ピーダンスを有するため,高周波領域で比透磁率の変化が
小さい磁性材料を選択する必要がある。フィルタのインダ
クタンス Lf は,フィルタのカットオフ周波数 fcut とフィルタ
のコンデンサ容量 Cf_req を用いて(10)式で計算される。
1
Lf 
................................................. (10)
4 2C f _ req f cut2
また,フィルタ用リアクトルの体積 VolLf は,Area Product
Filter Capacitor Volume VCf [cm3]
ように,許容電流リプルを満足するコンデンサを選択する。
1000
X:VC_data/Cdata= 110.2 mm3/mF
100
10
Y:VC_data/Cdata= 32.9 mm3/mF
1
Z:VC_data/Cdata= 47.7 mm3/mF
0.1
10
100
Capacitance [mF]
を用いて,(11)式にて計算する。
VolL f
 LI in 2
 KV 
K B J
 u max
3
4
 .............................................. (11)


1000
Fig. 12. Relationship between volume and capacitance.
Table 2. Simulation and design parameters.
ここで,KV はコアの形状から決定される定数,Ku は窓の線
Input Voltage Vin
48 V
Junction Temperature Tj
100oC
積率,Bmax はコアの最大磁束密度,J は巻き線の電流密度で
Output Voltage Vout
300 V
Ambient Temperature Ta
40oC
ある。
Rated Power Pn
1 kW
Cooling System Performance Index
5.
電流リプルの設計結果
Switching Frequency fsw 50 kHz
Device
GS66516T Saturated Flux Density Bmax 1.2 T
On-Resistance Ron
27 mW
Relative Permeability mr
3500
条件を示す。出力電圧のリプルは 5V(2%以内)直流電源
Voltage Rating VDS
650 V
Current Density J
4 A/mm2
のリプルは 0.35V(1%以内)としている。
Current Rating IDS
60 A
Space Factor Ku
0.3
表 2 に設計で使用するパラメータ及びシミュレーション
図 13 に昇圧リアクトルの電流リプルとフィルタの体積の
関係を示す。昇圧リアクトルの電流リプルが増加するとと
もに,フィルタのカットオフ周波数が低くなり,フィルタ
の体積が大きくなる。また,図 13 より,フィルタを 1 段か
5
Output Voltage Ripple Vp-p 5 V
ら 2 段に多段化することでフィルタの体積を低減できるこ
とがわかる。しかし,フィルタを 3 段にする場合,受動部
品が多くなるため 2 段のフィルタより体積が大きくなる。
図 14 に各電流リプルにおける昇圧形 DC-DC コンバータ
25
CCM
DCM
Region Region
とより,昇圧リアクトルを小型化できるが,ヒートシンク,
フィルタと出力側のコンデンサの体積が大きくなる。また,
図 14 より電流リプルを 10%から 40%まで増加させることよ
り,総合体積を 16.1%低減できることがわかる。
Input Filter Volume
Vfilter [cm3]
体積を示す。昇圧リアクトルの電流リプルを増加させるこ
20
15
1 Stage
10
図 15 に電流リプルを変化させた場合の効率とパワー密度
5
の関係を表すパレートフロントカーブを示す。リプル電流
0
3 Stages
2 Stages
0
50
の大きさに応じた,昇圧リアクトルの損失は文献(4)により
求 め た 。 銅 損は , 表 皮効 果を 加 味 し , 鉄損 は Improved
の電流リプルが 40%,2 段のフィルタが実現されるとき,最
3
大パワー密度が 10.3 kW/dm ,最大効率が 98.1%であることが
わかる。提案する電流リプル設計法により,高パワー密度
化と高効率化を両立できることを確認した。
Circuit Volume Vtotal [cm3]
小さいとして,加味していない。図 15 より昇圧リアクトル
図 16 に最大パワー密度で設計した昇圧リアクトルの電流
と入力電流の波形と高調波解析結果を示す。図 16(a)より、
り,提案する電流リプルの設計法の妥当性を確認した。
6.
結論
Efficiency h [%]
タの共振現象を考慮していないためである(7)。上記の結果よ
160
Input Power: 1 kW at switching frequency: 50 kHz
140
120
16.1%
100
80
60
40
20
0
10%
40%
100%
Current Ripple I [%]
98.50
となることを確認した。また,図 16(b)より電流リプル低減
た。これは,フィルタのカットオフ周波数の計算にフィル
Switching Frequency: 50 kHz
Device: GS66516T
98.25
2-Stage
filter
Boost
inductor
Output
capacitor
Heatsink
200%
I = 40%
1 Stage
ΔI increases
98.00
CCM
97.75 Region
3 Stages
2 Stages
97.50
DCM
97.25 Region
97.00
96.75
6
Maximum r : 10.3 kW/dm3 with h: 98.1%
at I = 40% and 2-stage LC filter
7
本論文では昇圧形 DC-DC コンバータの高パワー密度化に
向けた昇圧リアクトルの電流リプルの設計法を明らかにし
200
Fig. 14. Relationship between current ripple and total volume.
入力電流の実効値の結果は,計算値に対して誤差が 1%以下
の結果は,設計値に対して誤差が 3.3%となることを確認し
100
150
Current Ripple I [%]
Fig. 13. Relationship between current ripple and filter volume.
Generalized Steinmetz Equation により,求めている(4)。また,
フィルタコンデンサによる損失は昇圧リアクトルより十分
Input Current1st Harmonic
Component: -33.6 dB
Capacitor AC Voltage: 0.25 Vrms
8
9
Power Density r [kW/dm3]
10
11
Fig. 15. h-r pareto-front curve with current ripple as variable.
た。昇圧リアクトルの電流リプルを低減するために,入力
今後は,提案した電流リプルの設計法を様々な DC-DC コ
ンバータのトポロジーにも適用することで,更なる高パワ
ー密度の実現が期待できる。
Boost
Converter
Current IL
ー密度が 10.3 kW/dm3,最大効率が 98.1%である結果を得た。
5A
Calculated RMS Current: 21.38 A
Simulated RMS Current: 21.38 A (Error: 0%)
5A
0
Input
Current Iin
側にフィルタを追加し,体積を設計した。また,最大パワ
Calculated RMS Current: 20.83 A
Simulated RMS Current: 20.84 A (Error: 0.05%)
0
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
J. Biela, et al., “Optimal design of a compact 99.3% efficient single-phase
PFC rectifier”, Applied Power Electronics Conference and Exposition
(APEC), pp. 1397-1404, 2010.
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ageing”, EVS27, pp. 1-9, 2013.
Heldwein, et al., “Differential Mode EMC Input Filter Design for
Three-Phase AC-DC-AC Sparse Matrix PWM Converters”, Proceedings of
the 35th IEEE Power Electronics Specialists Conference, 2004.
レホイナム, 折川幸司, 伊東淳一: 「DC-DC コンバータのリアクト
ルの電流リプルとパワー密度の明確化」, 半導体電力変換研究会,
SPC-15-137, 2015.
Kandarp I. Pandya, et al., “A Simplified Method of Generating Thermal
Models for Power MOSFETs”, Semiconductor Thermal Measurement and
Management, 2002.
Catalog of Multilayer Ceramic Capacitors, Nippon Chemi-con
Corporation, 2015-2016.
20 ms
(a) Current waveform.
献
Harmonic Component
Amplitude [dB]
文
20 ms
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
Input Current (Sim.)
Input Current (Cal.) Boost Inductor
15.7 dB Current (Sim.)
-32.5 dB
0
Frequency f [kHz]
Error: 3.3%
50
(b) Harmonic analysis.
Fig. 16.
(7)
Results of boost inductor current and input current.
Middlebrook, R. D, et al., “Design Techniques for Preventing Input-Filter
Oscillations in Switched-Mode Regulators”, Proceedings of the 5th
National Solid State Power Conversion Conference,pp.153-168, 1978.