無菌室から無菌病棟へ - 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター

★ご自由にお持ちください
地方独立行政法人
東京都健康長寿医療センター
〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2
(代表電話) 03-3964-1141
(予約専用電話)03-3964-4890
ホームページ http://www.tmghig.jp/
第123号 (平成27年9月号)
無菌室から無菌病棟へ
―東京都健康長寿医療センター血液内科の試み―
血液内科部長 宮腰 重三郎
無菌室とは ?
抗がん剤や造血幹細胞移植を受けた患者さまは感染症にかかりやすく、その経路として、内
因性感染 ( 患者さま自身の持つ病原体によるもの ) と外因性感染に分けることができます。さ
らに外因性感染は接触感染 ( 医療スタッフ、面会者や他の患者さまからの人的なものおよび医
療機器等の接触によるもの ) と環境感染 ( 大気中に飛散した病原体や床・壁などに付着した病
原体によるもの ) に分類できます。内因性感染および接触感染は抗菌薬投与,医療スタッフや
患者さまの徹底した管理である程度予防が可能です。しかし、無菌室がない時代は病室内の空
気環境にある病原体により、主に呼吸器感染症を引き起こすことがよく経験されました。この
環境感染経路を克服するために開発されたのが無菌病室です。
無菌病室の開発の経緯
第二次世界大戦前から、航空機に使用される精密機器 ( 小さなベアリングや歯車など ) は、
粉塵の多い環境で製作されると、故障が多く重大な事故につながることが知られていました。
米国では第二次大戦中に、このような部品の製作や組み立てを空気中の浮遊粉塵の少ない施設
で行い始め、
微粒子を管理したより清浄な施設で製造することで故障率を減少させました。
また、
1940 年、原子力爆弾の開発計画である米国マンハッタン計画の放射性微粒子除去用として誕
生した HEPA(high efficiency particulate air) フィルター の開発によりクリーンルーム技術
が進歩・発展しました。その後、1962 年に Laminar air 技術が確立され、それにより層流シ
ステムの無菌病室が開発されました。これにより空気中に飛散した微生物を瞬時に室外に押し
出し,効果的な感染予防効果をもたらしました。さらに宇宙開発に対するアポロ計画の進展と
ともに、大気圏外への細菌の持ち出しや宇宙からの地球への持ち込みを防止する目的で、1967
年に NASA によりバイオクリーンルームの規格が作られました。バイオクリーンルーム技術は、
薬品、食品などの製造工程、実験動物施設、遺伝子研究施設などの研究施設、病院・手術室で
の感染防止等、医学分野でも利用されるようになってきました。
−1−
無菌室から無菌病棟へ―東京都健康長寿医療センター血液内科の試み―
工業用無菌室から無菌病室へ
1940 年 原子力爆弾の開発(マンハッタン計画)
HEPA フィルターの開発
1962 年 laminar air-flow 技術の開発
1967 年 M.D.Anderson 記念病院が初めて実用化に成功
左上:第 2 次世界大戦時の戦闘機
左下:無菌室で制作された精密機器
右上:工業用無菌室
右下:手術室
無菌病室の適応とは
白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、重症複合型免疫不全症等の患者さまに対して、
主に白血球減少期間、造血幹細胞/臓器移植後や免疫不全症では細胞性免疫低下した患者さま
を対象に、無菌室で治療をしています。
無菌病室・無菌病棟の設置に関して
東京都健康長寿医療センター血液内科の試み
<無菌病室から無菌病棟へ>
病室単位で考えられている無菌病室は、極めて狭い空間で造血幹細胞移植や化学療法が行わ
れ、特に白血球減少期は、簡単に無菌病室以外へは出られないのが一般的です。限られた空間
での闘病生活では、患者さまの体力が損なわれることが容易に想像できます。一方、無菌病室
ではなく、無菌病棟という概念で、廊下や面会の出来る場所を含めて無菌管理を行っている施
−2−
無菌室から無菌病棟へ―東京都健康長寿医療センター血液内科の試み―
設が少しずつ増えてきました。利点としては、白血球減少期の一時的な期間であっても、容易
に廊下に出られ、リハビリテーションも可能となることで、精神的なストレスも減少し、体力
の低下も最低限に抑えられます。当センター血液内科病棟は、全室無菌室で、個室 14 室 ( 内 2
室は陰圧室対応 )、4 人床 4 室と 3 人床 2 室とし、病棟全体を無菌管理出来るようにし、トレー
ニングルームも併設してあります。
東京都健康長寿医療センター血液内科の特徴
以上の無菌病棟をもつ東京都健康長寿医療センター血液内科では、高齢者血液疾患に対して
積極的に治療を行っております。
特に他施設血液専門医におかかりの方で、これ以上の治療はないと言われている骨髄異型成
症候群や急性骨髄性白血病の患者さまに対して、同種造血幹細胞移植やがんワクチンの臨床治
験を積極的に行っております。
血液内科病棟からの眺望
HEPA フィルターを経由したきれいな空
気が出てきます。当センターでは最も清
浄度が高い病棟です。
−3−
認知症専門相談室をご存じですか?
認知症専門相談室 精神保健福祉士 畠山 啓
はじめに
当センターは、平成 24 年に東京都区西北部医療圏(板橋区・豊島区・北区・練馬区)
を担当する認知症疾患医療センターの指定を受けました。その時に創設された認知症に関
する総合相談窓口が、認知症専門相談室です。当相談室は、認知症に関する全ての相談窓
口です。当センターに受診している方に限らず、担当エリアにお住まいの方であれば、ど
なたでもご相談頂けます。費用もかかりません。場所は、2 階 23 番ブロック外来認知症
センターの中にあります。
2 階 23 番ブロック外来認知症センターの中にあ
ります。
認知症に関する全ての相談窓口です。
認知症かな?と思ったら・・・
もの忘れが気になる方、認知症の始まりでは?と心配されているご本人、ご家族からの
ご相談に、専門スタッフ(精神保健福祉士・臨床心理士)が、電話や面談にて対応します。
早期に適切な支援者と繋がることで認知症を持ちながらも穏やかに住み慣れた地域で暮ら
せると言われていることから、当相談室では、受診の仕方や介護保険制度の説明、介護施
設や介護サービス事業所のご紹介、地域の相談窓口の情報提供、外来受診や入院について
のご相談にも応じています。緊急対応が必要な場合には、随時医師や認知症看護認定看護
師と連携して、対応しています。ご家族だけで悩まず、お気軽にご相談ください。
また、当センターのもの忘れ外来を受診される方は、必ず当相談室にて症状や経過等を
伺っています。事前に問診票の郵送や電話のやり取りがあり、ご面倒かとは思いますが、
ご協力の程よろしくお願いいたします。
−4−
認知症専門相談室をご存じですか?
専門のスタッフがご相談に応じています。
地域の相談窓口等の情報提供も行っています。
お気軽にお立ち寄りください。
サポートプログラム
ご本人とご家族のサポートプログラムとして以下のプログラムを用意しております。参
加をご希望の方は、当相談室にお問い合わせください。
・認知症はじめて講座(月 1 回)
認知症の診断を受けたご本人・ご家族を対象とした、認知症の基礎知識を得るため
のミニ講座です。医師が担当する「病気と知識編」、臨床心理士や精神保健福祉士等が
担当する「ケアとサービス編」の 2 つの講義を各 1 時間ずつ行っています。
・認知症センター家族交流会(月 1 回)
認知症の方を介護しているご家族の方を対象に交流会を行っています。毎回認知症
にまつわるミニ講座も行っています。
・私たちで話そう会(月 1 回)
ご本人がご本人のために、不安や悩みを語り合い、分かち合い、困りごとを減らす
プログラムです。当センターで軽度認知症または軽度認知障害と診断された方で、自
分で日常生活の困りごとについて話し合いたい方が対象です。
もの忘れ・認知症専門相談の申し込み・問い合わせ先
相 談 受 付 日 時 月~金 午前 9 時 30 分~午後 5 時 30 分(土日・祝日は休み)
電 話 相 談
代表電話(03-3964-1141)にお電話ください。
随時受け付けております。
来 所 相 談
面談ご希望の方には、事前に電話等にてご状況を伺い、必要な場合には
時間を設定してご相談に応じます。
費
用 いずれも無料です。
−5−
第4回杉浦地域医療振興賞を受賞しました
このたび当センターの「地域の特性に応じた認知症初期支援体制の構築の支援」の取組みが評
価され、第4回杉浦地域医療振興賞を受賞することとなり、センター長・許俊鋭と認知症疾患医
療センター長・粟田主一が、平成 27
年7月9日に帝国ホテルで開催され
た授与式に出席しました。
患者さまからの声
杉浦地域医療振興賞は、住み慣れ
た地域で安心してその人らしく住み
続けることを支援する活動を行った
団体等を表彰するため、公益財団法
人「杉浦記念財団」が平成 24 年度に
設置したものです。
これを励みとし、今後とも地域医
の振興のための取組みを進めてまい
ります。 後列左端:認知症疾患医療センター長 粟田主一
前列左端:センター長 許俊鋭
患者さまの声
3階待合場所に冷水器(自販機)を設置してほしい。
⇒冷水器の設置につきましては、給水設備が必
要なため、現状では3階への設置が難しい状況
です。なお、2階エレベータホール横の冷水器
及び1階外来13番ブロック横の自動販売機に
て冷水のサービスを行っておりますので、そち
らをご利用ください。
3階リハビリ室の前の庭園にも一般患者側から
入れるようにして欲しい。
⇒リハビリ室前の庭園につきましては、リハビ
リテーションが必要な患者さまが専用で、訓練
を行うためのものとして運用しております。何
卒ご理解くださいますようお願いいたします。
再来受付機のところに荷物を置く台を設置して
欲しい。大勢のボランティアを配置するなら、
ボランティアに受付時荷物を持つよう指導して
欲しい。
⇒ご意見を受けまして、再来受付機横に若干で
はありますが、荷物を置くスペースを用意いた
しました。なお、大きな荷物がある等により、
再来受付の手続きが困難な際は、案内係に診察
カードをお渡しください。受付けの手続きを行
わせていただきます。
診察申込用紙は座って記入できるようバイン
ダー等を用意してもらいたい。高齢者は足腰が
弱く、立ったままではきつい。
⇒ご不便をおかけして申し訳ございませんでし
た。ご意見を受け、
記載台の下の棚にバインダー
を設置させていただきました。貴重なご意見、
どうもありがとうございました。
心電図の際に上半身裸になるのに男性の技師
だった。女性にして欲しい。
⇒ご意見ありがとうございます。心電図検査に
対する配慮にかけておりました。今後、心電図
検査では女性技師希望の札を用意し、対応させ
ていただきます。
「糸でんわ」編集事務局 03-3964-1141(内線1239 広報普及係)
−6−