平成27年1月22日 成年後見の実務 支援の過剰は制限することに 少なすぎるのは見捨てることに NPO法人成年後見支援センターフォレスト 齋藤順子 後見制度 1898年 禁治産制度(民法) 1999年 民法の一部を改正する法律 任意後見契約に関する法律 後見登記等に関する法律 2000年 「介護保険制度」の導入とともに施行 成年後見制度 成年後見法世界会議より 第1回 2010年 日本(横浜) 第2回 2012年 オーストラリア(メルボルン) 第3回 2014年 アメリカ(ワシントンDC) 支援付き意思決定・本人中心主義の実現 横浜宣言より 成年後見制度は自由の剥奪となり得ることもあり、人権 に関わるものであること、また、世界中どこでも後見人の 職務と義務は一般的に公的介入であることを認識したうえ で、各国は専門性の基準を明らかにし、適切な監督手段 を提供し、財源に裏付けされた納得できる枠組みを保障す べきである。 この点に関する問題意識を目覚めさせ、今 この場で私達が共通に認識し、賛同し、かつ宣言した条項 の実現に必要な支援の獲得に向けて、「横浜宣言」が公的 機関および各国政府に広く周知徹底されるべきものである ことをここに再度宣言する。 成年後見の類型 法定後見 (事理弁識能力の程度により3類型に) 禁治産・・・・・・・・・・・後見 準禁治産・・・・・・・・・保佐 補助 ※浪費者は準禁治産として残る。 任意後見 ※複数後見・法人後見が可能となる。 法定後見の開始手続き 申立て 調査・諮問 親族への意向調査 鑑定 審判 審判の通知 即時抗告 審判の確定 2週間 後見登記 成年後見の相談があった場合 親族間の意見の違いはないか。争いはないか。 申立人は誰か。申立ての理由を聴く。 本人との面談 まわりの支援者からも情報収集 管轄家裁に申立ての仕方や予約等の確認 医師の診断書によりどの類型か 申立て書類は申立人が作成 家庭裁判所に提出する申立て書をコピー 申立て人 本人 配偶者 4親等内の親族 未成年後見人・未成年後見監督人 保佐人・保佐監督人 補助人・補助監督人 検察官 任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人 市区町村長 管轄区域 宇都宮地方 家庭裁判所 真岡支部 大田原支部 宇都宮市,鹿沼市,日光市,那須烏山市 さくら市の内 旧塩谷郡氏家町, 下野市の内 旧河内郡南河内町, 河内郡(上三川町), 塩谷郡の内 高根沢町 真岡市,芳賀郡(益子町 茂木町 市貝町 芳賀町) 大田原市,矢板市,那須塩原市, さくら市の内 旧塩谷郡喜連川町, 那須郡(那須町 那珂川町), 塩谷郡の内 塩谷町 栃木支部 栃木市,下都賀郡の内 壬生町, 小山市,下野市の内 旧下都賀郡石橋町, 旧下都賀郡国分寺町,下都賀郡の内 野木町 足利支部 足利市,佐野市 申立てを行ったのは(H25年) 市町村長申立て(H25年) 親族が後見人となった割合 就任時にすべきこと 登記事項証明書を取得 本人・関係者に挨拶・情報収集 財産状況の調査と金融機関等への届出 預貯金調査 不動産の調査 債務の調査 本人に関するさまざまな機関への届出 健康保険・介護保険・障害福祉窓口 住民税・固定資産税等に関わる窓口 公的年金に関わる窓口 金融機関への届出 用意する物 登記事項証明書 運転免許証等の身分証明書 今後の取引に使用する印鑑 *銀行の本店か当該支店へ行く ゆうちょ銀行は、全国の窓口 後見人の仕事 財産管理 現金・預貯金・不動産・年金の受取 保険請求・負債の返済 身上監護 身のまわりのこと 医療に関すること ※法律行為のみで事実行為は含まれない。 家庭裁判所への相談・報告 選任後1ヵ月以内に事務報告(財産目録・収支予定表) 1年毎に事務報告(財産管理報告・本人の様子) 住所・施設等の異動 居住用不動産の処分 相続等で財産が大きく変化した場合等の報告 終了の報告(管理の計算)2ヵ月以内 支援していく上で 高齢者の場合 ・・・・・自己決定の尊重 知的・精神障がいの場合 ・・・・・支援付き意思決定 公正な第三者でいること。 本人や関係者とは適度な距離をもつこと。 関係法令・介護保険制度・障害者総合支援法も変化 常に勉強し、対応していく必要がある 後見人の不正事件 後見人等による横領等の不正事件 被害総額 親族後見人等が・・・ 1058件 9,440,000,000円 90%以上 最高裁統計2010年6月~2012年12月 解任につながった例 ・本人の財産の横領。 ・本人の財産を投資・投機的な資金として 運用してしまった。 ・家庭裁判所への報告をしなかった。 ・本人から贈与を受けてしまった。 ・親族とのトラブル。 後見制度支援信託 2012年2月 後見制度信託 導入 日常生活で使用する分を除いた金銭を 信託銀行に信託 法定後見(後見類型)と 未成年後見のみ 保佐・補助・任意後見は不可 ※家裁からの指示書により信託契約 家庭裁判所 報告 指示書 本人・・・・・・・後見人 (委託者・受益者) 信託契約 定期金の交付 (受託者) 信 託 銀 行 ※家裁からの指示書により信託契約・追加・変更・終了 成年後見人の報酬 「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力 その他の事情によって、被後見人の財産の中 から、相当な報酬を後見人にあたることができ る。」 (民法862条) 報酬付与の申立て 1年分の仕事について後払いで支払われる。 後見人に対する報酬 家庭裁判所に事務報告(年1回) 報酬付与の申立て 家庭裁判所が報酬額を決定 (本人の収入と財産等から報酬額を決定) 本人の財産から報酬を受領 成年後見制度の利用支援事業 【介護保険における利用支援事業】 2006年 市町村の地域支援事業として 市町村長申立てのみ 2008年 本人申立て親族申立てでも利用可 【障がい者福祉における利用支援事業】 2006年 地域生活支援事業の1つとして 任意事業 2013年 必須事業 成年後見人等による医療の同意 成年後見人は、医療の同意権はない。 しかし、本人にとって最善に利益を考える必要。 医療について後見人が行うことができること。 医療契約・入院契約の締結 診療報酬の支払い 容態・治療の説明 医療機関への情報提供 任意後見 (判断能力のある方が将来に備えて) 「自己決定権の尊重」の理念が基礎にある 後見制度に一番即した後見の形 本人 =契約= 公正証書 任意後見監督人 ①任意後見候補者 ②任意後見受任者 ③任意後見人 判断能力があやしくなったら (補助程度) 家裁に 任意後見監督人選任 の申立て 任意後見の類型 即効型 将来型 移行型 見守り契約 任意後見受任者と信頼関係を持続 財産管理委任契約 判断能力のある時からの事務依頼 任意後見契約 代理権目録 ライフプラン 死後の事務委任契約 本人の死後後の事務を依頼 Aさん 財産管理委任契約実施中 ・委任契約にある財産について預かり、預り書を発行 ・銀行に財産管理委任契約が始動したことを伝え、 利用代理人の手続きをする。 ・私信以外の郵便物の受け取りと処理 ・介護保険認定調査の手配 ・病院支払・その他の清算 自宅を誰かに貸したい。 ・郵便の転送手続き ・必要のない電気・水道・ガス・電話等を解約 ・庭木の手入れの手配 ・月に一度程度の自宅外回りの確認 ・近所への声かけ ・自宅の荷物整理 ・自宅より必要書類・物品を探し預かる ・不動産屋への相談 ・自宅の修理を依頼 任意後見と補助の関係 任意後見 補助(法定後見) ・後見人を自分で決定 ・補助人の候補者はあげられ るが、家裁が決定 ・開始時に本人同意 ・開始時に本人同意 ・監督は、任意後見開始後は 任意後見監督人 ・代理権のみ(本人が決定) 取消権はない ・監督は、家庭裁判所 ・任意後見人が死亡で終了 ・補助人は死亡したら、家裁への 申立てで次の補助人が選任 ・代理行為をつけることができる。 同意行為の設定で 取消権も 後見監督人として 1.これまでの経緯を調べるため、家裁に出向き、 資料を閲覧(どこに問題があったのか。) 2.ご本人と配偶者である成年後見人に挨拶に行く。 3.出納帳の作成指導と後見制度についての説明 4.2ヵ月毎に出納帳と通帳をチェック 5.1年毎に家裁に事務報告書を提出 こんな時後見人としてどうする? • 日常生活に不必要な骨董品を購入してしまっ た場合、取り消すべきか。 被保佐人(75歳)自宅生活 もともと骨董品好き 業者に勧められ40万円余りの壺を購入 取消権有・・・10万円以上の物品を購入の場合、同意が必要 本人預貯金 1200万円 年金でほぼ生活費は賄えている。 こんな時後見人としてどうする? • 被後見人が相続人となった場合、法定相続 分を確保しなければならないのか。 被後見人(35歳)施設入所 祖父の死亡による相続 相続財産はほとんどが不動産 他の相続人は遺言書があることから代償金で合意(200万円) 法定相続分は800万円以上 本人預貯金 200万円 年金でほぼ生活費は賄えている。 こんな時後見人としてどうする? • 交通費は、経費として認められるのか。 被後見人(85歳)施設入所 複数後見で 身上監護を担当している親族後見人より、 本人の代理で、亡くなった本人の配偶者の納骨に愛知県まで 行きたいが、家族3名分の旅費・宿泊費を本人の財産から出 すことが可能かとの問い合わせ。 本人の預貯金万円 年金でほぼ生活費は賄えている。 こんな時後見人としてどうする? • 本人のための買い物は絶対に後見人はすべ きではないのか。 任意後見 見守り契約中 (70代) 自宅 旅先(宮崎県)で骨折、救急搬送入院。 病院に行ったところ、オムツとタオル等が必要と言われた。 質の高い後見を目指すためには・・・ ・本人の気持ちに耳を傾ける。 ・財産を適正に管理する。 ・いざというときの判断。 ・本人と関わりをもつ周りの方とネットワークを作る。 後見人としての適性 人間が好きであること。 してあげるというのではなく、一緒に考えて 行動できること。 本人の心情を推し量れること。 アンテナを張り巡らすことができること。
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