Hirosaki University Repository for Academic Resources Title Author(s) 大学生におけるアーチェリーの試合が選手の筋疲労、 免疫機能に及ぼす影響 山本, 博 Citation Issue Date URL 2015-03-24 http://hdl.handle.net/10129/5604 Rights Text version author http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 医共様式1 学位請求論文の内容の要旨 論文提出者氏名 総合医療・健康科学領域 氏名 山本 博 スポーツ健康科学教育研究分野 大学生におけるアーチェリーの試合が選手の筋疲労、免疫機能に及ぼす影響 ( Influence of archery game on muscle fatigue and immune functions in the male college archers) (内容の要旨) 【背景及び目的】 ア ー チ ェ リ ー 選 手 を 対 象 と し た ス ポ ー ツ 医 科 学 領 域 の 先 行 研 究 を み る と 、そ の ほ と ん どは主 にシュ ーテ ィン グ動作 時に使 われ る上 肢( 手、肘、肩 )への 一過性 の外傷 や慢 性 的 障 害 に 関 す る 報 告 が 多 い 。ま た 、こ れ ら の 先 行 研 究 は ア ー チ ェ リ ー の 競 技 特 性 で あ る シ ュ ー テ ィ ン グ 動 作 の 未 熟 さ や 不 適 切 さ 、あ る い は こ の 繰 り 返 し が ア ー チ ェ リ ー 選 手 に お け る 外 傷 や 障 害 の 発 症 の 主 要 因 と な っ て い る こ と を 指 摘 し て い る 。一 方 、ア ー チ リ ー 選 手 で 発 症 す る こ れ ら の ス ポ ー ツ 傷 害 が シ ュ ー テ ィ ン グ 動 作 に 起 因 す る だ け で な く 、一 過 性 あ る い は 長 期 的 な ト レ ー ニ ン グ に よ り 発 現 、蓄 積 す る 生 理 学 的 機 能 の 低 下 や 身 体 的 疲 労 の 影 響 に よ り 発 症 す る 可 能 性 が 高 い に も 関 わ ら ず 、こ れ を 詳 細 に 検 討 し た 研 究 は み られない。 我 々 は 大 学 男 子 ア ー チ ェ リ ー 選 手 9 名 を 対 象 に 、い ま だ 明 ら か に さ れ て い な い ア ー チ ェ リ ー の 試 合 に よ り 生 じ る 身 体 コ ン デ ィ シ ョ ン の 変 化 及 び 身 体 疲 労 の 出 現 状 況 を 、筋 疲 労及び 免疫機 能の 観点 から検 討した 。また 、我々は これを 明ら かに するこ とが、アーチ ェ リ ー 選 手 で み ら れ る 外 傷 や 慢 性 的 ス ポ ー ツ 障 害 を 適 切 に 予 防 、改 善 し 、的 確 な 健 康 管 理 方 法 、コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 方 法 を 構 築 し て い く た め の 重 要 な 基 礎 デ ー タ と な る と 考 え た。 【方法】 調 査 当 日 の 午 前 に 第 1 ラ ウ ン ド 、午 後 に 第 2 ラ ウ ン ド か ら な る 1 試 合 を 設 定 し た 。試 合 時 間 は 1 ラ ウ ン ド 3 時 間 、計 6 時 間 で あ っ た 。ま た 、各 ラ ウ ン ド 間 に 1 時 間 の 昼 食 摂 取 を 含 む 休 息 を 設 け た 。 試 合 中 の シ ュ ー テ ィ ン グ 数 は 試 射 を 含 め 1 ラ ウ ン ド 78 射 、 計 156 射 で あ っ た 。 各 調 査 項 目 の 測 定 は 第 1 ラ ウ ン ド の 前 後 と 第 2 ラ ウ ン ド 後 の 計 3 回 実 施 し た 。調 査 項 目 は 筋 逸 脱 酵 素 値 ( AST、 ALT、 LDH、 CK)、 白 血 球 ・ 好 中 球 ・ リ ン パ 球 数 、 好 中 球 機 能( 活 性 酸 素 種( reactive oxygen species: ROS )産 生 能 、貪 食 能( phagocytic activity: PA))、 リ ン パ 球 機 能 ( T 細 胞 数 、 キ ラ ー T 細 胞 数 、 ヘ ル パ ー T 細 胞 数 、 T h 1 細 胞 数 、 Th2 細 胞 数 、 B 細 胞 数 、 NK 細 胞 数 )、 血 清 SOD( superoxide dismutase) 活 性 で あ っ た。 【結果】 AST、CK は 第 1 ラ ウ ン ド 前 値 に 比 べ 第 1 ラ ウ ン ド 後 有 意 に 上 昇 し た( と も に p<0.01)。 ま た 、 CK の 上 昇 は 第 2 ラ ウ ン ド 後 も 持 続 し た ( 第 1 ラ ウ ン ド 前 値 と の 比 較 、 p<0.01)。 第 2 ラ ウ ン ド 後 の 好 中 球 数 は 第 1 ラ ウ ン ド 前 値 に 比 べ 有 意 に 上 昇 し た ( p<0.01)。 ま た 、第 2 ラ ウ ン ド 後 の IgA と C4 は 第 1 ラ ウ ン ド 前・後 よ り 有 意 に 低 下 し た( IgA, C4 及 び 第 1 ラ ウ ン ド 前 値 ・ 後 値 の 順 に p<0.01, p<0.05 及 び p<0.01, p<0.01)。 第 1 ラ ウ ン ド 後 及 び 第 2 ラ ウ ン ド 後 の PA は 第 1 ラ ウ ン ド 前 値 に 比 べ 有 意 に 低 下 し た ( と も に p<0.01)。 ま た 、 有 意 で は な い が 、 第 1、 第 2 ラ ウ ン ド 後 の ROS 産 性 能 が 第 1 ラウンド前値に比べ上昇する傾向が観察された。 ま た 、第 2 ラ ウ ン ド 後 の B 細 胞 数 が 第 1 ラ ウ ン ド 前・値 に 比 べ 有 意 に 上 昇 し た( と も に p<0.01)。 【考察】 本研究 の結果、アー チ ェリー の試合 は筋 組織 の変性 ・損傷と 免疫 機 能の一 部低下 をも た ら す 可 能 性 が 示 唆 さ れ 、そ の 傾 向 は 、第 一 ラ ウ ン ド よ り 第 二 ラ ウ ン ド で 顕 著 で あ っ た 。 一方、ア ーチ ェリー の 試合に よる筋 組織 の変 性 ・損傷 や免 疫機能 の 低下は、我々 がこ れ ま で 行 っ て き た ラ グ ビ ー や 柔 道 、相 撲 、サ ッ カ ー 選 手 の 試 合 や ト レ ー ニ ン グ 後 の 影 響 よ り 小 さ な も の で あ っ た 。こ の 理 由 は 、ア ー チ ェ リ ー 競 技 の 身 体 活 動 量 が 他 の ス ポ ー ツ 種目に比して低いことによるものであろう。しかし、その程度が低いながらも、今回、 アーチェリー選手で明らかな筋組織の変性・損傷や免疫機能の低下がみられたことは、 その後のスポーツ障害やコンディショニングの失敗につながる可能性を示唆していた。 とくに一流のアーチェリー選手は、1 日 2 ラウンドで連日競技を続けることを余儀なく される場合があり、日をまたいだ筋疲労、免疫低下の蓄積が危惧される。 以上よ り、ア ーチェ リ ー選手 の 競技 力維 持と 健康管 理( コ ンディ シ ョニン グ )の 点か ら も 、試 合 後 の 筋 疲 労 の 回 復 と 炎 症 の 軽 減・消 去 に 向 け た ケ ア( 休 養 、睡 眠 、栄 養 な ど ) が重要な要素となると考えられた。 ※1 ※2 乙 の 場 合 ,○ ○ 領 域 ○ ○ 教 育 研 究 分 野 に か え て ,所 属 の ○ ○ 講 座 を 記 入 す る こ と 。 論文題目が英文の場合は( )内に和訳を付記すること。
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