白色ガウス雑音に起因する位相差の変動を持つ実信号の 位相限定相関

2015 年電子情報通信学会基礎・ 境界ソ サイ エ テ ィ 大会
A-4-2
白色ガウス雑音に起因する位相差の変動を持つ実信号の
位相限定相関関数の統計的解析
Statistical Analysis of Phase-Only Correlation Functions of Real Signals
with Phase Fluctuations due to White Gaussian Noise
福井一弘 1
Kazuhiro Fukui
八巻俊輔 2
Shunsuke Yamaki
阿部正英 1
Masahide Abe
東北大学大学院工学研究科 1
Graduate School of Engineering, Tohoku University
まえがき
位相限定相関 (Phase-Only Correlation: POC) 関数は
2 つの信号の類似性を評価する指標として幅広く用いら
れているが,その統計的性質がほとんど知られおらず,
定量的指標としての妥当性が示されてこなかった.本稿
では,2 つの実信号の差を白色ガウス雑音と仮定し,こ
の白色ガウス雑音の分散 (あるいは標準偏差) の増加を
類似性の低下と位置付け,類似性の低下に伴う POC 関
数の期待値と分散の変化を解析する.
1
位相限定相関関数
信号長 N の実信号 x(n) および y(n) の位相スペクト
ルをそれぞれ θk および φk とし,位相差を αk = φk − θk
とすると,x(n) と y(n) の POC 関数 r(m) は
2
£
¤
r(m) = IDFT ejαk
(m = 0, 1, ..., N − 1)
東北大学サイバーサイエンスセンター 2
Cyberscience Center, Tohoku University
位相限定相関関数の期待値と分散
£
¤
jαk
位相因子
の期待値 E ejαk と 2 次モーメント
£ j2α ¤ e
E e k をそれぞれ
4
Z
Ak =
Ãk =
(n = 0, 1, ..., N − 1)
(1)
2 PN/2−1
|X(k)| cos (2πkn/N + θk )
N k=1
2 PN/2−1
+
|V (k)| cos (2πkn/N + ξk )
N k=1
(2)
p(αk )ej2αk dαk
(6)
³
Ãk + 2Ak Ak ∗
´
(7)
¢
1 ¡
− 2 A0 2 + AN/2 2
N
(m = 0, 1, ..., N − 1)
(8)
計算例
信号 x(n) の振幅スペクトルを |X(k)| = 1, (k =
0, 1, ..., N − 1) とした場合について,信号 x(n) に加わ
る白色ガウス雑音 v(n) の標準偏差 σv を変化させたとき
の x(n) と y(n) の POC 関数 r(m) の期待値 E [r(m)] と
分散 Var [r(m)] を式 (4)∼(8) より求めた.結果として,
σv が増加するに伴い,POC 関数 r(m) のピークが減少
し,サイドローブが増加することが明らかとなった.こ
れより,2 つの信号の類似性を定量的に評価する指標と
して,POC 関数が妥当であることが示される.
5
(3)
参考文献
[1] W.B. Davenport Jr, W.L. Root,McGraw-Hill
Book Company Inc., 1958.
¶
µ
|X(k)|2 sin2 αk
|X(k)| cos αk
√
,
exp −
σv
σv2
2N
2πN
− π ≤ αk < π (k = 0, 1, ..., N − 1)
(5)
ここで,信号長 N は偶数としているが,信号長 N が奇
数の場合も同様に解析が可能である.
のように離散フーリエ逆変換の形式で表される場合を考
える.ここで,v(n) は平均 0 で分散 σv2 の白色ガウス雑音
である.また,|X(k)| と |V (k)| はそれぞれ信号 x(n) と白
色ガウス雑音 v(n) の振幅スペクトルであり,ξk は v(n)
の位相スペクトルである.このとき位相差 αk = φk − θk
の確率密度関数 p(αk ) は
p(αk ) =
−π
p(αk )ejαk dαk
k6=0,N/2
で表されるとき,すなわち
y(n) =
−π
Z π
E [r(m)] =IDFT [Ak ]
X
1
1
Var [r(m)] = − 2
N
N
位相差の確率密度関数
実信号 x(n) と y(n) について,信号 y(n) が,
y(n) = x(n) + v(n)
π
とおくと,POC 関数 r(m) の期待値 E [r(m)] と分散
Var [r(m)] はそれぞれ以下のように導出される (文献 [2]
における解析の拡張による).
と定義される.ここで k は周波数インデックスである.
また,周波数領域の信号 ejαk を位相因子と呼ぶ.
3
川又政征 1
Masayuki Kawamata
[2] 八巻俊輔,阿部正英,川又政征,第 25 回 回路とシ
ステムワークショップ,pp.94–99,Jul. 2012.
(4)
と表される (文献 [1]8 章 6 節の解析の拡張による).
61
2015/9/8 〜 11 仙台市
( 基礎・ 境界講演論文集)
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