第5章 LCR回路の共振特性の測定 Measurement of Resonance Characteristic of LCR Circuit 5.1 目的 LCR の直列ならびに並列共振特性を調べ、共振現象ならびに尖鋭度(選択度) Q に ついて習得する。 5.2 理論 電気回路に加えた交流信号の周波数が回路の固有周波数(共振周波数)と一致した時、 回路のインピーダンスが極小値または極大値をとる。この電気回路を共振回路と呼ぶ。 一般に、コイルL、コンデンサC及び抵抗R を組み合わせたLCR回路が共振回路となる。 ここでは、直列共振と並列共振それぞれについて共振周波数を求めてみる。LCR 回路の 共振状態を得るには、L、C および電源周波数 f のうちいずれを変化させてもよいが、 ここでは L、C を一定にして、f を変化させる方法で行う。 5.2.1 直列共振回路 L E C R 図5.1:直列共振回路 図5.1 のLCR 直列共振回路のインピーダンス Z は 1 1 Z R j L Y C 1 Z R 2 L C (5.1) 2 (5.2) である。したがって Z の値は周波数によって変わるが、リアクタンス分が零、すなわち 1 1 0 のときにインピーダンスは最小値 Z 0 R になり、逆に電流は最大値 C I 0 E / R になる。これが直列共振状態であり、そのときの周波数 f 0 を共振周波数 L resonance frequency という。すなわち 1 0 L 0 , 0C である。 1 (5.3) 2 LC アドミッタンス Y (S) f0 Y0 Y0 2 f1 f0 f2 f (Hz) 図5.2:直列共振特性 図5.2 は周波数 f に対するアドミッタンス Y (または電流I ) の変化を表わす曲線で共 振曲線という。その尖鋭度を表わす選択度 Q は L (5.4) Q 0 R 1 (5.5) 0 CR f0 (5.6) f 2 f1 である。ここで、 f 1 、 f 2 は共振曲線において、最大値の 1 / 2 に対する周波数である。 この Q を用いれば、共振時の L および C の端子電圧 EL 0 、 EC 0 はそれぞれ E E 1 EC 0 QE (5.7) E L 0 0 L QE , R R 0C となる。すなわち共振時においてはL およびC の端子には、加えた電圧E の Q 倍の電 2 圧が現われる。また実際の共振回路では、抵抗 R はコイルとコンデンサとの等価直列抵 抗であるが、近似的にはコイルだけの等価直列抵抗とみなされ、Q の値が大きいほどR は小さく、コイルの損失が少ないことを意味する。 5.2.2 並列共振回路 R E C L 図5.3:並列共振回路 図5.3 のLCR並列共振回路のインピーダンス Y は L 1 1 1 R 2 j C 2 Y 2 2 2 2 R j L R L R L Z j 1 C 2 L R C 2 Y 2 2 2 2 2 R L R L (5.8) 2 (5.9) である。リアクタンス分が零のときは、アドミッタンスは最小値となり、電流も最小値 となる。これが並列共振状態であり、共振周波数 f 0 は次のようになる。 L 0C 2 0 2 2 0 , R 0 L もし R 1 f0 2 1 R2 LC L2 (5.10) L ならば C f0 1 2 LC となり、直列共振回路の共振周波数と一致する。 3 (5.11) インピーダンス Z(Ω) Z0 Z0 2 f1 f (Hz) f0 f2 図5.4:並列共振特性 図5.4 は周波数 f に対するインピーダンス Z (または電流 I の逆数) の変化を表わす 曲線で、その選択度Q は L Q 0 (5.12) R f0 (5.13) f 2 f1 である。厳密には、図5.4 において われる。しかし R L C Z の値が最大になる点は f 0 より多少大きい方に現 の場合には、近似的に両者は一致する。 5.3 方法 図5.5 と図5.6 のように、共振回路に直列抵抗 r を接続し、周波数 f を変化させ、こ れに対する電源電圧V、直列抵抗 r の端子電圧 Va 、およびLC直列接続または並列接続 端子電圧 Vb をマルチメータで測定する。 いま共振回路および直列抵抗 r を流れる電流を I とすれば、次のようになる。 Va ZI , Vb rI これから 4 (5.14) 1 Va r (5.15) Y Vb となり、共振回路のインピーダンス Z およびアドミッタンス Y は直列、並列共振回路 ともに式(5.15)から求められる。 Z 5.3.1 素子の測定 実験で使用する高周波無誘導抵抗 r,コンデンサ C,インダクタンス L の各量をLCR メータとデジタルマルチメータ(DMM)を用いて測定する。 5.3.2 直列共振回路 直列共振回路の結線を図5.5に示す。 r Vb B F Amp CH2 V L Va (R ) CH1 C 図5.5:直列共振回路の測定結線図 F: 周波数計 B: 低周波発振器 L: インダクタンス C: コンデンサ R: コイルの等価抵抗 r: 高周波無誘導抵抗 Amp: 増幅器 CH1: デジタルオシロスコープ 5 Va: デジタルマルチメータ Vb: デジタルマルチメータ V: デジタルマルチメータ CH2: デジタルオシロスコープ 5.3.3 直列共振回路の共振周波数の測定 直列共振回路の共振周波数 f 0 (図5.2 参照) を次の手順で測定する。 1. 図5.5 の結線をする。 2. 理論上の直列共振回路の共振周波数 f 0 (式(5.3) 参照) を計算する。 3. 発振器の周波数を理論上の直列共振回路の共振周波数である式(5.3) の f 0 に設定する。 4. 図5.5 の電圧 VをAmpのゲインを調整して15(V) から16(V) の範囲で、いずれかの値 に設定する。以後、Amp のゲインつまみは操作しない。 5. デジタルオシロスコープに2つの波形を表示する。 6. 発振器の周波数を少しずつ変化させ、オシロスコープに表示されている2つの波形の なかで、いずれか1つの波形の振幅を最小にする。 7. デジタルオシロスコープの表示をリサージュ波形表示に切り替える。 8. 楕円形のリサージュ波形が表示される。 9. 発振器の周波数を少しずつ変化させ、リサージュ波形を直線にする。 10. リサージュ波形を直線に設定した状態で周波数計を読み取る。この周波数が実測した 直列共振回路の共振周波数 f 0 である。 5.3.4 直列共振回路のアドミッタンスの測定 図5.5 のように直列共振回路を接続する。周波数 f を変化させて、端子電圧 Va とVb を測定する。 変化する周波数の範囲は、実測した直列共振回路の共振周波数 f 0 の±1000(Hz) の範囲 である。このとき周波数の刻み幅は、次の値を目安にする。 f 0 -1000(Hz) から f 0 -200(Hz) までは100(Hz) f 0 -200(Hz) から f 0 +200(Hz)までは20(Hz) f 0 +200(Hz) から f 0 +1000(Hz) までは100(Hz) ただし、刻み幅の20(Hz) と100(Hz) の変化分は、おおよその目安である。 6 5.3.5 並列共振回路 並列共振回路の結線を図5.6 に示す。 Vb B F Amp r CH2 V Va C L (R) CH1 図5.6:並列共振特性の測定結線図 5.3.6 並列共振回路の共振周波数の測定 並列共振回路の共振周波数 f 0 (図5.4 参照) を第5.3.3 項「直列共振回路の共振周波数 の測定」の手順を参考にして測定する。 ただし、第5.3.3 項の番号2. での共振周波数は、理論上の並列共振回路の共振周波数 f 0 を求める 式(5.10) を用いて計算する。この時、等価抵抗 R は第5.4.1で測定した値を使 い、その他の値は表示値を使う。 7 5.4 結果 5.4.1 素子の測定 表示値 DMM測定値 LCRメー 120Hz タ測定値 1kHz インダクタンス 等価抵抗R L(mH) (Ω) 表示なし 測定不可 コンデンサ C(μF) 高周波無誘 導 抵抗r(Ω) 5.4.2 直列共振回路のアドミッタンス 周波数 f (Hz) DMM測定 V (V) Va (V) Vb (V) アドミッタン ス Y(S) 周波数 f を横軸にし、アドミッタンス Y を縦軸にしてアドミッタンス Y の変化を曲 線で示す。この曲線に f 1 、共振周波数 f 0 および f 2 (図5.2 参照) を記入する。 式(5.6) から選択度 Q を求める。このとき、代入する数値を明記する。 式(5.4) または式(5.5) からR を求める。前と同様に代入する数値を明記する。 5.4.3 並列共振回路のインピーダンス 周波数 f (Hz) DMM測定 V (V) Va (V) Vb (V) インピーダン ス Z(Ω) 周波数 f を横軸にし、インピーダンス Z を縦軸にしてインピーダンス Z の変化を曲 線で示す。この曲線に f 1 、共振周波数 f 0 および f 2 (図5.4 参照) を記入する。 式(5.13) から選択度 Q を求める。このとき、代入する数値を明記する。 式(5.12) からR を求める。前と同様に代入する数値を明記する。 8 5.5 注意 1. 浮遊容量の影響がないように配線に注意する。 2. STANDARD CAPACITOR の端子は、C1 とC2 を使用する。 3. デジタルマルチメータは交流で使用する。 5.6 考察のヒント 1. 式(5.3) で求めた理論上の直列共振回路の共振周波数 f 0 と第5.3.3 項で実測し た直列共振回路の共振周波数 f 0 の違いを検討する。 2. 式(5.9) で求めた理論上の並列共振回路の共振周波数 f 0 と第5.3.6 項で実測し た並列共振回路の共振周波数 f 0 の違いを検討する。 3. 第5.4.1項で求めたインダクタンスの等価抵抗 R (LCRメータによる測定値2つと DMMによる測定値の計3つある)と選択度 Q から算出(式5.4と5.12参照)される R (直列共振測定と並列共振測定の計2つある)を比較し、その差について検討する。 4. なぜ共振周波数のときにリサージュ波形が直線になるのかを検討する。 9
© Copyright 2024 ExpyDoc