軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(GIコラム工法)

技 術 紹 介
技 術 紹 介
軟弱地盤における小型コンパクトな
深層混合処理工法
(GIコラム工法)
松尾建設株式会社
当GIコラム工
法は、小型でも
改良深度や改良
径で大型並みの
能力を有した工
法です。
2・2 従来工
法との比較と
特徴
一般的な大型
施工機による従
10.7m
安定度が高い
最大打設長
20m
20m
同等
φ1,600
φ1,600
同等
佐賀平野の軟弱地盤対策
(三点支持式杭打機等)
来工法とGIコ
24m
有明海に面した地域は、日本でも有
数の軟弱地盤地域であり、九州地区の
特殊土で海成粘土である
﹁有明粘土層﹂
が厚く堆積しています。佐賀平野も有
明海に面しており、その土層構成は、
海岸付近では、表層から有明粘土層が、
内陸部では非海成粘土である
﹁蓮池層﹂
の下位に﹁有明粘土層﹂が堆積した構
成となっています。
佐賀平野︵佐賀県︶におけるクリー
クや樋管等のほ場整備工事や現在工事中の有明海
沿岸道路でも、道路盛土本体の滑り防止、沈下低
深層混合処理工法
粉体系
減や水路、道路ボックスカルバートの基礎として、
軟弱地盤処理が重要な課題となっています。
本報では、軟弱地盤対策技術として、コンパク
トな機械攪拌式スラリー系深層混合処理工法
︵GIコラム工法︶について紹介します。
GIコラム工法:小型地盤改良機による施工
ラム工法の比較
施工費の縮減
リーダー長
径
単軸施工
を表1に、また、
安い
写真 1
GIコラム工法の概要
2・1 GIコラム工法の位置付け
G
深層混合処理工法としての、 Iコラム工法の
位置付けを図1に示します。
GIコラム工法は、深層混合処理工法の内、機
械攪拌式スラリー系深層混合処理処理工法に位置
し、その中でも、単軸施工の小型専用改良機に位
コスト小さ
高い
良
エアー・グラウト噴射系
写真1に施工機
コスト大
機械損料
改
機械撹拌式
置付けされます。小型の単軸施工機械は、戸建住
図 1 GIコラム工法の位置付け
−
C、
組立・解体費の縮減
組立・解体
施工機全景GI-80C 施工機全景GI-130C
水・エアー・グラウト噴射系
高圧噴射式
(流体切削)
械︵GI
スラリー系
深層混合処理工法の分類
宅等の基礎として、数多くの工法が存在しますが、
● 土地改良 290号 2015.7
80
機体質量
運送費の縮減
施工足場養生費の縮減
狭隘な場所での施工が可能
複数台投入による工期短縮が可能
機体の安定度が高い
21.5ton 80ton級 ( G I :Ground Improvement )
二軸施工
多軸施工
80
メリット
GIコラム工法
小型施工機
従来工法
大型施工機
従 来 工 法:大型地盤改良機による施工
改良径φ1,000<
打設長 10m<
スラリー系
真崎 照吉
土木営業技術本部 技術部 統括
グラウト噴射系
表 1 従来工法とGIコラム工法の比較
0 ∼ 80min-1
2 ∼ 55min-1
スピンドルトルク
0 ∼ 71.2kN・m(7,265kgf・m)
0 ∼ 71.2kN・m
0 ∼ 45.2kN・m
19.6 ∼ 58.8kN・m
最大給圧力
83.3kN(8,500kgf)
132.5kN(13,500kgf)
83.3kN(8,500kgf)
103.0kN(10,500kgf)
フィードストローク
5,500㎜(最長改良長20m)
5,500㎜
5,000㎜
5,000㎜
0 ∼ 5m/min
0 ∼ 3.0(早送り:4.5)m/
min
0 ∼ 7m/min
0 ∼ 5m/min
エンジン出力
96.5kW/2,200min-1
96.5kW/2,200min-1
78.1kW/2,200min-1
78.1kW/2,200min-1
運搬時寸法
(L×W×H)
8,830×2,490×3,050㎜
8,830×2,490×3,050㎜
8,116×2,380×2,960㎜
8,090×2,380×2,900㎜
運搬時質量
21,500㎏
24,450㎏
16,100㎏
17,600㎏
皿バネ
チャックピース
チャックボデー
ピストン
13.5
GI-130C
GI-130C
10.0
長
m
5.0
良
m
0.0
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
改 良 径 (mm)
)
( 砂質土 6≦N<11の場合
13.5
GI-130C
GI-130C
GI-80C
5.0
良
GI-130C
15.0
13.5
10.0
長
GI-80C
m
0.0
5.0
GI-80C
GI-80C
0.0
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
改 良 径 (mm)
( 粘性土 6≦N<8 の場合
改 良 径 (mm)
)
( 砂質土 11≦N<15の場合
20.0
改
良
13.5
GI-130C
GI-130C
10.0
m
5.0
)
20.0
改
15.0
長
)
20.0
改
15.0
10.0
m
GI-130C
改 良 径 (mm)
20.0
長
GI-130C
GI-80C
GI-80C
5.0
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
( 粘性土 2≦N<6の場合
良
13.5
10.0
長
GI-80C
GI-80C
0.0
改
15.0
GI-80CGI-80C
良
13.5
GI-130C
10.0
長
m
0.0
15.0
5.0
GI-80C
GI-80C
0.0
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
改 良 径 (mm)
(粘性土地盤)
φ800 φ1000 φ1200 φ1400 φ1600
改 良 径 (mm)
(砂質土地盤)
図 3 GIコラム工法の標準的施工能力
ha
GIコラム工法の施工例
良
)
20.0
GIコラム工法は、有明沿岸道路の沈下対策や
ボックスカルバート基礎として多方面に採用され
( 砂質土 2≦N<6の場合
改
15.0
ています。ここでは、水路部の樋門構造物基礎と
)
20.0
して採用された事例を紹介します。
( 粘性土 0≦N<2の場合
改
3・1 工事概要
工事場所は、図4に示す佐賀市北部の田園地帯
で耕作地、水路が入り組んだ場所です。
図 2 センターホール型オーガーヘッド
﹁ほ場整備事業﹂として、ほ場整
工事概要は、
備 工︵ 約 一 二 ︶
、 用 水 路 工、 畦 畔 工︵ 約
GI-130C-HT-K
三三〇〇m ︶
、パイプライン工︵約一七〇〇m︶
、
ロッド
−
0 ∼ 69min-1
つとして最終的な改良杭の施工データと施工記録
0 ∼ 69min-1
一つは、操縦者が打設する改良杭の設計仕様情報
175㎜
スピンドル回転数
フィードスピード
GI-80C-HT-KF
GI 130C︶の姿図を示します。
175㎜
を確認する施工管理システムを搭載しています。
175㎜
と施工中の施工データをリアルタイムに確認し安
GI-80C-HT-KⅡ
175㎜
定した品質を確保する施工支援システム、もう一
GI-130C-HT-KF
スピンドル内径
G
Iコラム工法は従来工法と比較し、軽量コン
パクトであるが、従来工法と同等の施工能力を有
GI-130C-HT-K
した工法で、その特徴を以下に記載します。
①施工機重量は従来工法の大型機に比べ、
約1/4
と軽量である。
②従来工法と改良径、改良長で同等の施工能力を
有している。
③小型の施工機であり、狭隘な場所での施工が可
能である。
④攪拌ロッドの継足し施工により上空制限がある
場所での施工も可能である。
⑤小型の施工機であり、従来工法に比べ、運搬費、
組立・解体コストが小さい。
⑥小型に加えロッド回転駆動部が下方にあり、施
工中の施工機の安定度が高い。
2・3 GIコラム工法の施工能力
G
Iコラム工法の標準的な機械仕様と施工能力
を表2に示します。
小型機であるがロッド駆動機構に図2に示すセ
ンターホール型オーガーヘッドを用いることによ
り、図3に示すように最大改良径φ 一六〇〇㎜ 、
最大改良長二〇mの施工が可能となり、軟弱層が
厚い場所での適用や経済性の面で効果が期待でき
ます。
2・4 施工支援・管理システム
施工機の操作室には、モニターを設置しており、
表 2 GIコラム工法の標準的機械仕様と標準能力
MODEL
土地改良 290号 2015.7 ●
81
この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理
工法を施工しています。
樋管工︵一基︶等である。
G
写真2に樋管部における Iコラム工法の施工
状況、写真3に掘削後の改良体頭部の状況、写真
小型の施工機に適した場所です。
-2.0
-2.5
-3.0
図 6 改良体の一軸圧縮強度qu28の結果
また、図6に施工後の改良体の品質管理結果と
して、材齢二十八日のチェックボーリングによる
k
c
σ
-0.5
8
2
u
q
0
一軸圧縮強度を示します。
られますが、
が
図 6 に お い て、 一 軸 圧 縮 強 度
︵
︶を下回っている箇所が一ポイント見
㎡
/
N
k
0
0
3
k
c
σ
の八五%を満足し、平均強度が
100022
−
−
VE︶に登録され、現在、十数社によるGIコラム
お い て︵ 活 用 促 進 技 術 Q S
指して開発された工法です。今年、NETISに
構造物の基礎処理工法として、コンパクト化を目
たコスト面を考慮し、軟弱地盤に建設する道路や
隘域での施工、大型機並みの能力、運搬等を含め
多様の工法が有ります。当GIコラム工法は、狭
深層混合処理工法は、改良材の状況︵スラリー、
粉体︶や打設深度、単軸・複数軸によって、多種
コンパクト化目指して開発
のと判断されます。
を満足しておるため、品質上の問題はないも
k
c
σ
表 3 樋管基礎部の改良仕様
4に改良体から採取したオールコア状況を示しま
す。
σck
3・2 樋管部の深層混合処理工法内容
樋管部の地盤は、N値三の軟弱な腐植土、砂質
土、砂混じり粘土が堆積しており、その内、樋管
図 5 樋管基礎部の深層混合処理改良体 配置図
改
良
体
-1.5
基礎下には緩い砂質土、砂混じり粘土が約三m弱
qu28
-1.0
残存することになり、樋管の支持力確保と沈下防
(土質柱状図)
2000
一軸圧縮強度 qu28 (kN/m2)
500
1000
1500
0
止を目的に深層混合処理工法が計画されています。
樋管基礎部の深層混合処理改良体の配置図を図
5に、改良体の仕様を表3に示します。
改良体
3・3 GIコラム工法の施工結果
樋管部施工域は旧田面で施工足場が軟
弱であり、支持力
的 な 問 題、 ま た、
打設長も比較的短
く、ロッド長が調
研究会として広い範囲での活動を目指しています。
さいごに、本資料をまとめるにあたり、ご協力
頂いた佐賀県中部農林事務所、GIコラム研究会
メンバーに感謝いたします。
︽参考資料︾
︵1︶GIコラム工法カタログ GIコラム研究会
︵2︶陸上工事における深層混合処理工法 設計・施工
マニュアル 改訂版 平成十六年三月 財団法人
土木研究センター
● 土地改良 290号 2015.7
82
300以上
100kg/㎥
36%
2.70m
20本
2.25m
φ1200㎜
写真 3 改良体頭部状況
写真 2 施工状況
配合量
一軸圧縮強度
(Uスタビラー 10) σck(kN/㎡)
改良部
改良率
空内部
本数
打設長
改良体径
(断面図)
地盤改良(スラリー攪拌工)
φ1200 N=20本
改良率 36%
現場一軸圧縮強度 σck=300kN/m2
(平面図)
整でき施工機の転
倒等に配慮できる
図 4 工事場所(グーグルより)
改良体天端からの深度(m)
技 術 紹 介
写真 4 チェックボーリングのオールコア状況