研究用試薬 核酸抽出剤

210
表
研究用試薬
天
**2011年4月改訂
(社名の変更)
*2005年11月改訂 〔必要な試薬・器具〕
核酸抽出剤
¡滅菌マイクロチューブ(1 . 5∼2mL)
¡マイクロピペット ¡滅菌ピペットチップ(綿栓付)
¡高速遠心分離機(11 , 750×g以上のもの)
¡イソプロピルアルコール(特級) ¡エタノール(特級)
は、DNA/ RNAを迅速に効率よ
く抽出し、操作性・回収性において、すぐれた特徴を持つ核酸
抽出剤である。
〔操作法〕
抽出操作には、
相対的にDNAを多く抽出する
“抽出法―Ⅰ”
、
RNAを多く抽出する“抽出法―Ⅱ”がある。ともにRNAまたは
DNAが混在するので、
必要に応じてヌクレアーゼ処理を行う。
〔特徴〕
¡簡便性―遠心後、上層と下層の間に明瞭な凝集層(境界面)
が形成され、デカンテーションにより核酸を容易に
分取できる。
¡多目的―血液、組織、培養細胞、細菌、ウイルスなど生物試
料からの核酸抽出が可能である。
¡迅速性―核酸が短時間に抽出でき、PCR法などへの応用が
可能である。
¡回収性―高純度な核酸が回収できる。
*
〔キットの構成〕
297
構成試薬
内容
100回用
試薬Ⅰ
トリス−塩酸緩衝液
検体希釈液 (試料の安定化用緩衝剤)
11mL
試薬Ⅱ
前処理液
チオシアン酸グアニジン
(試料の破壊と核酸分解酵素失活用の
蛋白質変性剤)
11mL
試薬Ⅲ
抽出剤―①
吸着剤
クロロホルム 50%含有
(変性蛋白質等に結合性をもつ吸着剤
を含む有機溶媒液)
77mL
試薬Ⅳ
酢酸ナトリウム溶液
抽出剤―② (核酸の水層抽出剤)
試薬Ⅴ
酢酸緩衝液
沈殿補助剤 (核酸沈殿促進剤)
44mL
7mL
〔使用目的〕
生物試料からの核酸抽出。
〔抽出原理〕
非フェノール性試薬と蛋白質凝集剤を使用し、相分配に基づ
いて比重の違いにより中間に凝集層を形成させる凝集分配法
(Agglutination Partition method :AP法)による。
安定化用緩衝剤で生物試料を安定化させた後、蛋白質変性剤
で試料を溶解、さらに蛋白質を変性させる。次に吸着剤と抽出
剤を加えて混和、遠心すると、混和液は比重の違いにより三層
に分離され、下層に有機溶媒、上層の水層に核酸が抽出され、
蛋白質などの不純物は中間に形成される凝集層(境界面)に吸
着される。
この上層を集めて、沈殿促進剤とアルコールを加えて核酸を
析出させて回収する。
1
品
名 SEPAGENE(セパジーン)
本コード
仮コード
制作日
MC
H23.01.26
N
校
0472K0121302
初校
作業者印
坂
本
AC
色
スミ
トラップ
(
)
角度
調
APP.TB
210
裏
天
抽出法―Ⅰ
11.核酸を含む上層(水層)をデカンテーションまたはピペッ
トにより別のマイクロチューブに分取する。(注3)
抽出法―ⅠはDNA抽出を目的としているが、抽出される核酸
にはRNAが混在する。RNA分解を行う場合は3ページ[核酸の
ヌクレアーゼ処理]もしくは専門技術書などを参照すること。
12.水層と等量のイソプロピルアルコールを加え、軽く転倒混
和する。(注4)
1.生物試料の前処理をおこない適当な細胞数に調製した後、
滅菌済みのマイクロチューブに移し遠心する。
以下“抽出法―Ⅰ”の操作11.∼15.
に準ずる。
2.上清を除去した後、試薬Ⅰ100μLを加え均一に懸濁させる。
〔操作上の注意事項〕
3.室温で5∼10分間静置する。
(注1)試薬Ⅱを加えて細胞を溶解するときは、マイクロチュ
ーブの底を軽く指ではじくか、または先端の太いチップ
を使ってゆっくりと泡立てないように混和する。
(注2)機種により回転数を調整し、11 , 750×gに設定する。
(注3)スウィングローター式遠心機の場合、上層をそのまま
デカンテーションにて分取する。アングルローター式の
場合は、凝集層(境界面)の傾斜面の低い位置を下に向
けてデカンテーションにて分取する。
4.この懸濁液に試薬Ⅱ100μLを加え、ピペットでゆるやかに
混和する。(注1)
5.試薬Ⅲ 700μLと試薬Ⅳ400μLを加える。
6.マイクロチューブの蓋を閉め、乳濁化するまで約10秒間上
下に激しく振盪混和する。
(注2)
7.12 , 000 rpm,
15分間
(または15 , 000 rpm,
10分間)
遠心する。
8.核酸を含む上層(水層)をデカンテーションまたはピペッ
(注3)
トにより別のマイクロチューブに分取する。
アングルローター式の場合は、
必ず傾斜面の低い位置を下に向けて
デカンテーションする。
9.水層の1/10量に相当する試薬Ⅴ(約60μL)を加える。
10.水層と試薬Ⅴの合計量と等量のイソプロピルアルコールを
加え、軽く転倒混和する。(注4)
11.12 , 000 rpm,15分間(または15,000 rpm,10分間)遠心する。
297
12.デカンテーションまたはピペットにより上清を静かに除去
(注5)
し、70%エタノール1mLを加え、軽く転倒混和する。
13.12 , 000 rpm,15分間遠心する。
14.デカンテーションまたはピペットにより上清を静かに除去
し、核酸ペレットを軽く乾燥させる。(注6)
15.核酸ペレットに滅菌蒸留水または使用目的に応じた緩衝液
を加えて溶解する。
抽出法―Ⅱ
抽出法―Ⅱは相対的にRNAを多く抽出するが、抽出される核
酸にはDNAが混在する。DNA分解を行う場合は3ページ
[核酸
のヌクレアーゼ処理]もしくは専門技術書などを参照すること。
1.生物試料の前処理をおこない適当な細胞数に調製した後、
滅菌済みのマイクロチューブに移し遠心する。
2.上清を除去した後、試薬Ⅰ100μLを加え均一に懸濁させる。
3.室温で5∼10分間静置する。
4.この懸濁液に試薬Ⅱ100μLを加え、ピペットでゆるやかに
混和する。(注1)
また、停止時に自動的にブレーキが掛かるアングルロ
ータ式の遠心分離機の場合、形成された凝集層
(境界面)
が崩れるときがある。このような機種では所定の時間に
至ったとき、メインスイッチを切るかまたは電源を抜い
て自然に停止させる。凝集層が崩れたときは、再度同じ
条件で遠心して上層を分取する。
マイクロチューブに形成された凝集層を取り込まない
ように分取する。取り込んだ時は、12 , 000rpm,5分間遠
心して別のマイクロチューブにその上清を分取する。
(注4)試料が微量なときは−20℃で1時間から一晩、また
は−80℃で約5分間冷却する。また、グリコーゲン1μL
(20mg/mL:ベーリンガー社)を先に加えておくと、核
酸と共沈して目視でき上清の除去に便利である。
(注5)上清除去にピペットを用いるときは、マイクロチュー
ブの底にある目に見えない核酸ペレットを浮遊、吸引し
ないようにする。
(注6)過度に乾燥すると、核酸の溶解性が悪くなる。
(室温で約5分間の減圧乾燥、または15∼30分間程度の
風乾をめやすにする)
溶解性が悪いときは50∼55℃、30分間加温して溶解する。
−RNA調製時の一般的注意事項−
1.実験台は十分に水拭きしたのち消毒用アルコールなどで清
潔な状態にしておく。
2.操作時はプラスチック手袋、マスクを着用してRNaseの混
入を避ける。
3.RNA抽出にガラス器具類を用いるときは乾熱滅菌を行い、
0 . 1%のジエチルピロカルボネート(DEPC)水溶液に1時
間ほど浸した後、DEPC処理した滅菌蒸留水で洗浄する。
5.試薬Ⅴ50μLを加え、ピペットでゆるやかに混和する。
6.試薬Ⅲ 700μLと試薬Ⅳ 400μLを加える。
7.マイクロチューブの蓋を閉め、乳濁化するまで約10秒間上
下に激しく振盪混和する。
8.60∼65℃,15分間加温する。
(時々攪拌する)
9.氷中で10分間冷却する。
10.12 , 000rpm,15分間(または15 , 000rpm,10分間)遠心する。(注2)
2
品
名 SEPAGENE(セパジーン)
本コード
仮コード
制作日
MC
H23.01.26
N
校
0472K0121302
初校
作業者印
坂
本
AC
色
スミ
トラップ
(
)
角度
調
APP.TB
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天
核酸のヌクレアーゼ処理例
【動物組織】
1.
“抽出法−Ⅰ,Ⅱ”で回収された核酸ペレットにDNase(ま
たはRNase)溶液100μLを加える。
2.37℃,15分間加温する。
(RNaseの場合は37℃,30分間)
3.試薬Ⅱ100μLを加え均一に混ぜる。
以下、抽出法−Ⅰ,Ⅱの操作5∼15に準ずる。
組織100mgに冷却したリン酸緩衝液
(−)
(またはハンクス平衡
塩類溶液)を加え、氷冷しながらホモジナイザーで破砕する。
均一になった組織片を適当な遠心管に移し、2 , 000×g,4℃,5
分間遠心する。この洗浄操作を4∼5回繰り返した後、リン酸緩
衝液
(−)に懸濁させてマイクロチューブに移した後、遠心して
上清を除去する。
DNase溶液
40mmol/L トリス―塩酸緩衝液(pH7 . 9)
10mmol/L 塩化ナトリウム
6mmol/L 塩化マグネシウム
2mmol/L ジチオトレイトール
134単位/mL RNasin(プロメガ社)
5単位/mL RQ1デオキシリボヌクレアーゼ(プロメガ社)
〔抽出結果〕
試料
DNaseを含まないリボヌクレアーゼAをTE緩衝液[10mmol/L
トリス― 塩酸緩衝液(pH7 . 4)― 0 . 1mmol/L EDTA]に20μg/
mL濃度に溶解する。
回収量
純度
純度
(μg) A260/A280 A234/A260
サンプル量
2 . 6×109
6 . 7×109
3 . 7×106
1 . 1×106
100μL
100mg
E. Coli
P. aeruginosa
CHO
L−929
血液(ヒト)
組織(マウス)
RNase溶液
117
126
42
19
1.4
104
1 . 93
1 . 89
1 . 83
1 . 89
1 . 73
1 . 86
2.リボヌクレアーゼ処理時の回収量と純度
試料:E . Coli
各種生物試料の前処理例
【血液】 採血にはヘパリンを含まない抗凝固剤を用いる。
¡100μL以下の血液を使用する場合(PCR法に対応)
20∼100μLをマイクロチューブに採取し、12 , 000rpm,30秒
間遠心する。遠心後、沈殿物を取らないようにピペットで
上清を除去する。
297
抽出法―Ⅰ
1.各種生物試料の回収量と純度
未処理
抽出法―Ⅰ
RNase処理
サンプル量
回収量
A260/A280
回収量
A260/A280
1×109
1×108
1×107
62 . 3
7.0
0.3
1 . 93
1 . 95
2 . 41
32 . 5
2.3
N. D.
1 . 90
2 . 04
N. D.
回収量(μg)
¡100μL以上の血液を使用する場合
全血を用いる場合は血漿成分と赤血球を除いた白血球画分
を使用する。
100μL∼5mLの血液をプラスチック遠心管に採取し、
1,500
rpm
(500×g),5分間遠心した後、上層の血漿を除去する。
血球画分に5∼10倍容量の0 . 2%NaClを加えて遠心管を転
倒混和し、2 , 500rpm
(1,000×g),5分間遠心する。遠心後、
管底に沈殿している白血球を吸い取らないように注意して
上清を除去する。沈殿物が白くなるまでこの操作を繰り返
した後、マイクロチューブに移す。
0 . 79
0 . 61
0 . 70
0 . 61
1 . 30
0 . 62
N. D.:検出不可
試料:CHO
抽出法―Ⅰ
未処理
RNase処理
サンプル量
回収量
A260/A280
回収量
A260/A280
5 . 2×106
5 . 2×105
5 . 2×104
68 . 7
5.8
1.9
2 . 09
2 . 11
2 . 56
22 . 0
2.1
1.0
1 . 91
2 . 17
2 . 56
回収量(μg)
三光純薬株式会社 研究開発部
【細菌】
寒天平板培地のコロニーを釣菌し、滅菌生理食塩水に懸濁さ
せ12 , 000rpmで5分間遠心する。この操作を2∼3回繰り返した
後、
滅菌生理食塩水で107∼109cells/mLに調製(大腸菌の場合は
A550が1 . 0のとき約2×108cells/mLに相当)した後、マイクロチ
ューブに移す。
液体培養のときはそのままマイクロチューブに培養液を採取
し、遠心分離したのち同様に洗浄操作する。
核酸量の計算
核酸量は分光光度計より波長260 nmの吸光度より求める。
DNA量 はA260=1 . 0の と き50μg/mL、RNA量 は[A260×45]
μg/mLに相当する。
純 度 はA234、A260、A280の 値 を 測 定 し、A260/A280の 比 率 が
1 . 65以上であれば蛋白質の混在は少ないものと判断できる。
また、A234/A260の比率が0 . 9以下であれば多糖類の混在も少
ないものと判断できる。
【培養細胞】
(またはハンクス平衡
培養液を除去した後、リン酸緩衝液(−)
塩類溶液)で洗浄しポリスマンで細胞をEがす(トリプシン溶
液はRNaseを含むのでRNA抽出には用いない)。細胞を適当な
遠心管に移し、2 , 000×g,4℃,5分間遠心する。遠心後は上
を加えて懸濁させて再び
清を除去し、
冷却したリン酸緩衝液
(−)
遠心する。この洗浄操作を4∼5回繰り返した後、リン酸緩衝液
(−)で105∼107cells/mLに調製してマイクロチューブに移す。
〔使用上の注意〕
1.本製品は研究用試薬のため、ヒトおよび動物の診断および
治療に使用しない。
2.製造番号の異なる試薬は使用しない。
3.試薬Ⅱは低温下(10℃ 以下)で析出物を生じる場合がある。
その場合は恒温槽(35∼40℃)で温めて溶解する。
4.試薬Ⅲは転倒混和し、均一にして使用する。
5.開封後は微生物汚染に注意する。また、使用後は試薬容器
を密栓して、試薬の揮発および乾燥に注意する。
6.開封後、試薬に揮発もしくは乾燥が認められるとき、ある
いは試薬に劣化の兆候が見られるときは使用しない。
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調
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天
〔取扱い上の注意〕
試薬Ⅱに含まれる細胞破壊用のチオシアン酸グアニジンは、
蛋白質変性作用があるので眼、皮膚、着衣に触れないようにする。
試薬Ⅲは有機溶剤クロロホルムを50%含み、蒸気を吸入する
と中毒を起こすおそれがあるので、
取扱いにあたっては下記の
注意事項を厳守すること。
④ Kunkel, L.M., et al.
: Proc.Natl. Acad . Sci. USA 74:
(1977)
1245−1249
⑤ Stauffer, G.V., et al.
:Gene 14: 63−72(1981)
(1985)
⑥ Helms, C., et al.
:DNA 4:39−49
(1991)
⑦ 新生化学実験講座2 核酸Ⅰ 分離精製:13−52
**、
*〔主要文献請求先〕
1.
取扱作業場所には局所排気装置を設ける。
エーディア株式会社 信頼性保証部
2.
容器から試薬がこぼれないようにする。
〒101−0032 東京都千代田区岩本町1−10−6
3.
眼、皮膚、着衣に触れないようにし、必要に応じて防毒マスク
1 03
(3851)1672 FAX 03
(3864)5644
または送気マスク、保護手袋、眼鏡を着用する。
4.
取扱後は手洗いを充分に行う。
5.
試料を含む廃液は…感染性廃棄物処理マニュアルæに従って
処理する。
6.試薬Ⅲを含む試薬のみの廃棄は、特別管理産業廃棄物(含ハ
ロゲン系溶剤廃液)として処理する。または専門業者に処理
を委託する。
**〔商品情報お問い合わせ先〕
エーディア株式会社 商品情報係
〒101−0032 東京都千代田区岩本町1−10−6
1 03
(3863)3271 FAX 03
(3864)5644
297
応急処置
眼に入った場合
直ちに多量の流水で15分間以上洗い流す。
(まぶたを親指と
人さし指で広げ、眼をあらゆる方向に動かす)
皮膚に触れた場合
直ちに汚染された衣服を取り除き、付着部または接触部を
石Î水で洗浄し、多量の水で洗い流す。
吸入した場合
多量に吸入した場合、直ちに患者を毛布にくるんで安静に
させ、空気の新鮮な場所に移す。呼吸が停止しているときは
人工呼吸を行う。呼吸困難なときは酸素吸入を行う。
飲み込んだ場合
口をすすぐ。吐かせない。
応急処置の後、医師の診察を受ける。
〔
引用 化学物質安全性データブック 第1版
(化学物質安全情報研究会編)
〕
〔貯法および有効期間〕
貯 法:常温(15∼25℃)。
有効期間:製造後2年。
外箱および容器に表示した使用期限を過ぎたものは
使用しない。
*〔包装単位〕
製品番号
SG0100
製品名
包装
セット
(100回用)
〔主要文献および参考文献〕
¡主要文献
① 舩渡忠男,他:医学と薬学 29:1401-1404(1993)
**
¡参考文献
① Chirgwin, J. M.,et al.: Biochemistry 18: 5294−5299
(1979)
(1985)
② Saiki, R.K., et al.
:Science 230:1350−1354
③ Beutler, E., et al. :BioTechniques 9:166
(1990)
050226-6
4
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