(57)【要約】 (修正有) * 濃硫酸中、30℃での固有粘度が0.1∼5dl/gで 【構成】 下記式(1)で示される構成単位からなり、* ある、ポリイミド樹脂。 (式中、Arは四価の芳香族基を示す。) 【効果】 本発明で得られるポリイミド樹脂は耐熱性に 優れ各種溶媒に可溶であるので、塗料用樹脂、各種成形 材料フィルム、シート等に有用である。 (2) 1 【特許請求の範囲】 【請求項1】 一般式(1) 特開平5−310932 2 * 【化1】 * (式中、Arは四価の芳香族基を示す。)で表される構 10※ 【請求項2】 一般式(2) 成単位からなり、濃硫酸中、30℃での固有粘度が0. 【化2】 1∼5dl/gであるポリイミド樹脂。 ※ (式中、Arは四価の芳香族基を示す。)で表される構 20★ 有し耐熱性に優れていて、しかも同時に有機溶媒に対す 成単位からなり、濃硫酸中、30℃での固有粘度が0. る良好な溶解性を有するものはほとんどなく、このよう 1∼5dl/gであるポリイミド樹脂。 な耐熱性と加工性とをともに具備する芳香族ポリイミド 【発明の詳細な説明】 樹脂がないことがこの樹脂の商業的利用の上で大きな問 【0001】 題点であった。 【産業上の利用分野】本発明はポリイミド樹脂、特に各 【0004】従って、本発明は、各種有機溶媒に可溶 種有機溶媒に可溶でなおかつ高いガラス転移温度を有す で、なおかつ高いガラス転移温度を有する新規なポリイ る新規ポリイミド樹脂に関する。 ミド樹脂およびその製造方法を提供することを目的とす 【0002】 る。 【従来の技術】従来、全芳香族ポリイミド樹脂は優れた 【0005】 耐熱性とともに優れた機械的特性を有し、広く工業材料 30 【課題を解決するための手段】本発明者らは各種有機溶 として使用されてきた。しかしこれら多くのポリイミド 媒や鉱酸に可溶で、なおかつ高いガラス転移点を有する 樹脂は各種有機溶媒および鉱酸のいずれにも不溶であ ポリイミド樹脂を製造するべく鋭意検討した結果、本発 り、また熱的に不融でもあるので、その成形を行なうこ 明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、一般式 とは極めて困難であった。 (1) 【0003】 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の芳 【化3】 香族ポリイミド樹脂においては、高いガラス転移温度を★ 【0007】で表される構成単位からなり、濃硫酸中、 30℃での固有粘度が0.1∼5dl/gであるポリイ ミド樹脂、または、一般式(2) 【0008】 【化4】 (3) 3 特開平5−310932 4 【0009】で表される構成単位からなり、濃硫酸中、 * 脂は、下記式(3)または(4)で示されるジアミン化 30℃での固有粘度が0.1∼5dl/gであるポリイ 合物と下記一般式(5)で示される芳香族テトラカルボ ミド樹脂である。(尚、式(1)、(2)においてAr 10 ン酸二無水物から製造される。 は四価の芳香族基を示す。) 【0010】 以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリイミド樹* 【化5】 【0011】(式(5)中、Arは四価の芳香族基を示 す。) 上記一般式(5)で表される芳香族テトラカルボン酸二 無水物としては、3,4,3′,4′−ジフェニルエー テルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′− ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2 −ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1, 40 1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等の テトラカルボン酸二無水物を例示することができる。 【0012】本発明のポリイミド樹脂の製造方法の一例 を示すと、有機溶媒中、前述のジアミン化合物とテトラ カルボン酸二無水物とを−20∼50℃で数分間から数 日間反応させることにより、ポリアミド酸を得、次いで 加熱もしくは脱水閉環剤による処理によりポリイミド樹 脂を得るものである。ポリアミド酸の合成反応に使用で きる有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミ ド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド 50 系溶媒、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、 ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、ピリジンのような芳 香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2− ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン のようなハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキ サン、ジグリムのようなエーテル系溶媒等を例示するこ とができる。特にN,N−ジメチルアセトアミドや、N −メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒を使用する と、高重合体のポリアミド酸を得ることができる。 【0013】ついで、得られたポリアミド酸を100∼ 350℃で加熱しポリイミド樹脂とする。また、無水酢 酸とピリジンの混合溶液等の脱水閉環剤でポリアミド酸 を処理することにより、ポリイミド樹脂を得ることもで きる。この方法において本発明のポリイミド樹脂の分子 量は、ジアミン化合物との仕込量によって制限され、等 モル量使用したときに高分子量のポリイミド樹脂を製造 することができる。 (4) 特開平5−310932 5 6 【0014】本発明のポリイミド樹脂は、濃硫酸中、3 * スコに窒素を通しながら2,2′−ジ(p−アミノフェ 0℃での固有粘度が0.1∼5dl/gである。固有粘 ノキシ)ビナフチル1.171g(2.5mmol)を 度が0.1dl/gより低いとフィルム等に成形した成 はかりとり、NMP6mlを加えて溶解させ、この反応 形品の機械的特性や耐熱性等の特性が十分ではなく、固 溶液に下表1のaに示すビフェニルエーテルテトラカル 有粘度が5dl/gを超えると有機溶媒等への溶解性が ボン酸二無水物0.776g(2.5mmol)を加 悪くなり、好ましくない。かくして製造された本発明の え、壁に付いた酸無水物をNMP2mlで洗い落とし ポリイミド樹脂は、硫酸等の鉱酸に可溶となる。また、 た。この溶液を0∼5℃で1時間攪拌し、さらに室温で その溶解性は、特に採用した製造方法と原料である一般 5時間攪拌した。 式(5)で表わされる芳香族テトラカルボン酸二無水物 【0016】この溶液の一部をガラス板上にキャスト の種類により変化するが、一部の樹脂においては、N− 10 し、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメ 1時間減圧下で加熱処理を行うことにより下記式(6) チルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の溶剤の全 で示される構成単位からなるポリイミドのフィルムを得 てに、またはこれらのうちの一部に可溶となる。また、 た。残りはメタノールに投入し、ポリアミド酸を析出さ 本発明のポリイミド樹脂は、200℃以上の高いガラス せた。析出させたポリアミド酸はろ過後、減圧下に乾燥 転移点を有し、熱的に安定で500℃付近まで加熱して させた。得られたポリアミド酸の固有粘度(DMAc も熱分解は認められない。 中、30℃、0.5g/dlの濃度で測定)は0.44 【0015】 dl/gであった。またポリイミドの固有粘度(濃硫酸 【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説 中、30℃、0.5g/dlの濃度で測定)は0.54 明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら dl/gであった。ポリイミドフィルムの赤外吸収スペ 実施例により何ら制限されるものではない。 20 クトルにより、1779,1717,1367,725 -1 実施例1 cm にイミド結合に基づく特性吸収がそれぞれ観測され 2,2′−ジ(p−アミノフェノキシ)ビナフチルとビ た。 フェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物からのポリ 【0017】 イミドの合成 【表1】 攪拌機及び窒素導入管を付けた100mlの三ツ口フラ* 【0018】 ※ ※ 【化6】 【0019】実施例2 40 実施例1におけるビフェニルエーテルテトラカルボン酸 二無水物の代わりに下表−1のb,cに示した芳香族テ トラカルボン酸二無水物を用いた以外は実施例1と同様 な操作を行ってポリアミド酸とポリイミドを得た。表2 にポリアミド酸とポリイミドの固有粘度(ηinh )、示 差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(T g)、窒素中での熱重量測定(TG)による分解開始温 度(Td)及び10%重量減少温度(T10 )を示した。 【0020】これらのポリイミドは、いずれもN−メチ ル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド (DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)に室温 で可溶であった。 【0021】 【表2】 (5) 特開平5−310932 7 【0022】 8 * * 【表3】 【0023】尚、表−2中の1)∼4)は、以下の通り である。 40 1)ポリアミド酸の固有粘度(ηinh )は、DMAc 中、30℃において、濃度0.5g/dlにて測定し た。 2)ポリイミドの固有粘度(ηinh )は、濃硫酸中、3 0℃において、濃度0.5g/dlにて測定した。 3)DSCによるガラス転移温度(Tg)の測定は、窒 素雰囲気下、20℃/分の条件で行なった。 4)TGによる分解開始温度(Td)及びTGによる1 0%重量減少温度(T10 )の測定は、窒素雰囲気下、1 0℃/分の条件で行なった。 50 【0024】実施例3 2,2′−ジ(p−アミノフェノキシ)ビフェニルとビ フェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物からのポリ イミドの合成 攪拌機及び窒素導入管を付けた100mlの三ツ口フラ スコに窒素を通しながら2,2′−ジ(p−アミノフェ ノキシ)ビフェニル0.921g(2.5mmol)を はかりとり、NMP5mlを加えて溶解させ、この反応 溶液に表1のaに示すビフェニルエーテルテトラカルボ ン酸二無水物0.776g(2.5mmol)を加え、 壁に付いた酸無水物をNMP5mlで洗い落とした。こ の溶液を室温で6時間攪拌した。この溶液の一部をガラ (6) 9 ス板上にキャストし、100℃で1時間、200℃で1 時間、300℃で1時間減圧下で加熱処理を行うことに より下式(7)で示される構成単位からなるポリイミド のフィルムを得た。残りはメタノールに投入し、ポリア ミド酸を析出させた。析出させたポリアミド酸はろ過 後、減圧下に乾燥させた。得られたポリアミド酸の固有 粘度(DMAc中、30℃、0.5g/dlの濃度で測 定)は0.40dl/gであった。またポリイミドの固* 【0026】 特開平5−310932 10 * 有粘度(濃硫酸中、30℃、0.5g/dlの濃度で測 定)は0.87dl/gであった。ポリイミドフィルム の赤外吸収スペクトルにより、1774,1720,1 -1 375,738cm にイミド結合に基づく特性吸収がそ れぞれ観測された。 【0025】 【表4】 ※ ※ 【化7】 【0027】実施例4 ★ g)と、空気中および窒素中での熱重量測定(TG)に 実施例3におけるビフェニルエーテルテトラカルボン酸 よる10%重量減少温度を示した。これらのポリイミド 二無水物の代わりに表−1のb,cに示した芳香族テト は、いずれもN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、 ラカルボン酸二無水物を用いた以外は実施例3と同様な ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムア 操作を行ってポリイミドを得た。 ミド(DMF)等の有機溶剤に室温で可溶であった。 【0028】表3にポリイミドの固有粘度を示した。ま 【0029】 た示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(T★ 【表5】 【0030】尚、表−3中の1)∼2)は、以下の通り である。 1)DSCによるガラス転移温度(Tg)の測定は、窒 素雰囲気中、昇温速度10℃/分の条件で行なった。 2)ηinh 及びT10 の測定条件は、実施例2と同じ。 【0031】 【発明の効果】本発明で得られるポリイミド樹脂は耐熱 性に優れ各種溶媒に可溶であるので、塗料用樹脂、各種 成形材料フィルム、シート等に有用である。 (7) フロントページの続き (72)発明者 丸山 正希 神奈川県横浜市磯子区森6−26−11 特開平5−310932
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