来院前投与は、一利もないが、害もなし?!

加納 碧先生 :N Engl J Med. 2015 Feb 5;372(6):528-36. doi: 10.1056/NEJMoa1408827.
急性脳卒中にマグネシウム?来院前投与は、一利もないが、害もなし?!
Prehospital use of magnesium sulfate as neuroprotection in acute stroke.
【背景】2012 年の9月の抄読会で、硫酸マグネシウムが,くも膜下出血後の脳虚血を改善するか?
という(MASH-2)研究で、便秘薬から神経保護薬への脱却をはかり、あえなく惨敗したことを報告し
ました。今回、脳卒中のできるだけ早い段階で硫酸マグネシウムを投与した場合の,有効性と安全
性が検証されました。 【方法】脳卒中が疑われる患者を,硫酸マグネシウム静注(Mg)群とプラセボ群に無作為に割り付
け,発症後病院に到着前に,救命救急士が大量投与を開始し,病院到着後 24 時間の維持点滴を行い
ました。主要評価項目は 90 日の時点での障害;修正 Rankin スケールのスコアにより評価しました. 【結果】1700 例の登録患者を Mg 群に 857 例,プラセボ群 843 例に割り付けしました。イベントの最
終診断は,脳虚血 73.3%,頭蓋内出血 22.8%,脳卒中類似疾患 3.9%で、患者には中央値 45 分で投
与が開始されました。Mg 群の患者とプラセボ群の患者とのあいだで,修正 Rankin スケール全体にお
ける 90 日の時点での障害転帰の分布、およびスコアの平均に、両群で差を認めませんでした。死
亡率およびすべての重篤な有害事象についても,群間で差を認めませんでした. 【結論】このように、今回は、脳卒中における硫酸マグネシウム療法の病院到着前投与の有効性は
証明できず、 カマグ 君の格上げの試みは、またも失敗に終わりました。しかし、米国では、病
院到着前投与の安全性が証明されたことで、救急車でCTを撮影し、転送して読影後、医師の指示
で救命救急士が脳卒中治療薬を開始するような、新たなシステムが模索されているようです。転ん
でもただでは起きない、ER 野郎たちの根性に拍手!!!。。 (文責 阿比留)