ものづくり人づくりセミナー開催概要 2015(平成 27)年 2 月 14 日、三重県津市勤労者福祉会館6階講堂において、 「現代の名⼯と技能五輪⼊賞者が語るものづくりの⼼髄」と題して「ものづくり人づくりセミナー」を 実施いたしました。約 100 名の⽅々にご参加頂き、盛況裡に終了いたしました。 第Ⅰ部 基調講演 「トップ技能者育成・我が社の技能五輪の取り組み」 株式会社きんでん 執⾏役員人材開発部⻑ 児玉澄人氏 第Ⅱ部 講演 「現代の名工(平成 26 年度)が語るものづくりの心髄」 株式会社谷本石材 有限会社進誠堂墨舗 代表取締役 代表取締役 谷本雅一氏 伊藤忠氏 (墨匠 伊藤⻲堂⽒) DMG 森精機株式会社 製造・開発本部旋盤製造部旋盤基本精度課課⻑ 石橋一明氏 第Ⅲ部 トークショー 「技能の実力を遺憾なく発揮した想い」 (コーディネーター 株式会社コステック代表取締役 三辻茂樹氏) 2014(平成 26)年度技能五輪全国大会入賞者 メカトロニクス職種 敢闘賞 株式会社豊田自動織機(愛知県刈谷市) 晝河豪氏 美容職種 ⾦賞 株式会社にしはら(京都市) 芝田優馬氏 配管職種 ⾦賞 株式会社千代田設備(新潟市)清⽔⿓⼆⽒ 2013(平成 25)年に⾏われた第 42 回技能五輪国際⼤会(ドイツ・ライプツィヒ⼤会)において ⾦賞及びアルバート・ビダル賞受賞 株式会社きんでん 宇都宮晋平氏 ものづくり人づくりセミナー 「現代の名⼯と技能五輪⼊賞者が語るものづくりの⼼髄」と題した「ものづくり人づくりセミナー」を 2015(平成 27)年 2 月 14 日、三重県津市にある勤労者福祉会館6階講堂において実施いたしました。 約 100 名の方々にご参加 頂き、盛況裡に終了しました。 ご後援を頂いた機関は以下のとおりです。 三重県、中央職業能⼒開発協会、三重 県教育委員会 三重県職業能⼒開発協会、三重県技能士会、三重県工業教育研究会、三重県農業教育研究 会。 開会 挨拶 澁谷ものづくり人材育成研究所 代表理事 奥嶋建城 三重県雇用経済部 部⻑ 廣田恵子氏 第Ⅰ部 基調講演 「トップ技能者育成・我が社の技能五輪の取り組み」 株式会社きんでん 執行役員人材開発部長 児玉澄人氏 最初に第 42 回技能五輪国際⼤会ドイツライプツィヒ⼤会の記録 DVD が上映された。 同大会にはきんでんの 2 名の選手、情報ネットワーク施工職種での宇都宮晋平さん、電工 職種での坂本瑞義さんが⾒事⾦メダルを受賞した。 この二人の選手が国内⼤会で優勝してから国際⼤会で⾦メダリストになるまでの過程を記録した DVD である。 次に⼤阪市北区に本社を置く総合設備工事会社としてのきんでんの会社説明ときんでん学園での人材育成の現 状が説明された。 きんでんは 1944 年(昭和 19 年)に関⻄電⼒グループの電気⼯事会社(近畿電気工事株式会社)として設⽴ され、現在の配電工事取り扱い高は日本最大となっている。関⻄電⼒からの受注割合は 2 割弱で、日本中に進出し、 さらには東南アジアを中心に海外諸国のインフラ敷設に貢献している。 同社の人材教育の拠点となっているのが、兵庫県⻄宮市にある「きんでん学園」。5500 坪の敷地内には、設⽴時か らの教育⽅針である「⼼・技・体」三位⼀体の全⼈教育を⾏うための宿舎、実習場がある。新⼊社員は全員、ここで 教育を受ける。同社の技術・技能教育の拠点であり、「態度堂々、動作きびきび、⾔語はきはき」は、同社のモットーで ある。 きんでんでは全社をあげての支援体制のもと、技能五輪全国⼤会(⾦ 19、銀 38、銅 34) でも技能五輪国際⼤会(⾦ 4、銀 8、銅 7)でも素晴らしい成績を収めている。そして、⾦メ ダリストは社内で「エキスパート」の称号が与えられ、人事考課でも加点されることになるという。 出席頂いた宇都宮晋平さんは、現在 2015(平成 27)年 8 月にブラジル・サンパウロで開催 される技能五輪国際⼤会に参加する選⼿たちを含めて後輩の指導にあたっている。 第Ⅱ部 講演 「現代の名工が語るものづくりの るものづくりの心髄」 平成 26 年度三重県の卓越した技能者(現代の名工)に選定された 三重県の卓越した技能者(現代の名工)に選定された 3 人に、ものづくりへの ものづくりへの思いを語って頂いた。 ① 株式会社谷本石材代表取締役 谷本雅一氏 ⾕本⽯材(三重県名張市)の社⻑である⾕本雅⼀さんは 38 歳。最年少の現代の名⼯ 最年少の現代の名⼯ である。前年の平成 25 年度に推薦者 推薦者 470 人の中から選定された 150 人の現代の名工 現代の名工た ちの中で話題となったのが、特殊技能の所有者か最年⻑者 特殊技能の所有者か最年⻑者か最年少者だけであったのを⾒ だけであったのを⾒ て、「石工に光をあてるためにも、最年少の『現代の名⼯』になろう」と頑張ったという。 最年少の『現代の名⼯』になろう」と頑張ったという。 高校卒業後に修業に出た愛知県の⽯材店で技能五輪 愛知県の⽯材店で技能五輪に出場することになり、2 度目の 目の挑戦 で⾦メダルを獲得するも国際⼤会の開催されない年であり世界に挑戦 することはできなかった。石工として本来持っていなければならない技能が なくなっている現状を鑑み、夢は「将来の石工を育て、技能五輪国際⼤ なくなっている現状を鑑み、夢は「将来の石工を育て、技能五輪国際⼤ 会で優勝するような選手を三重県から排出する 会で優勝するような選手を三重県から排出すること」だと語った。 このセミナーの 1 週間後の 2015(平成 27)年 2 月 20 日((⾦)か ら千葉市幕張メッセで開催された 28 回技能グランプリで谷本さんは ら千葉市幕張メッセで開催された第 ⾒事優勝し、念願の 念願の厚生労働大臣賞を獲得した。 2009(平成 平成 21)年 第 25 回から 3 回連続 2 位に終わっていただ けに喜びもひとしお ひとしおだろう。(技能グランプリは隔年開催) ② 有限会社 進誠堂墨舗代表取締役 伊藤忠氏(墨匠 伊藤亀堂) 伊藤忠さん( さん(50 歳)は墨の製造販売を⾏っている。 8 世紀に起 こったとされる鈴⿅墨を受け継ぐ墨匠である。鈴⿅は製墨に必要な 松や弱アルカリ性の⽔や気候⾵⼟に恵まれており、江⼾時代以降の 墨染めの需要増加とともに徳川御三家紀州藩の保護のもと、大きく 発展をしてきた。しかし、 発展をしてきた。しかし、近年の〝墨ばなれ″と中国からの安価商品におされ、 ″と中国からの安価商品におされ、現在では伊藤さ んと息子さんの晴信さんの二人だけによって伝統が守られ いる。 んと息子さんの晴信さんの二人だけによって伝統が守られている。 厳しい環境に対応するべく伊藤さんが⾏なってきた第⼀のことは に対応するべく伊藤さんが⾏なってきた第⼀のことは、 、鈴⿅墨の特⾊を⽣かす「墨 の一貫生産」であった。分業が一般的な墨製造において、ニカワの溶解から木型彫刻を含めた仕上げまで、全工程を ⼀⼈で⾏えるよう修業を積んだ。次に取り組んだのは ⼀⼈で⾏えるよう修業を積んだ。次に取り組んだのは、墨の可能性の追求である。伊藤さんが開発した 伊藤さんが開発した色彩墨「雪月 風花」は、墨業界ではじめて考案された鮮やかな色調の8色の墨である。 墨業界ではじめて考案された鮮やかな色調の8色の墨である。 こうした努⼒が実り、テレビでも取り上げられ、全国で鈴⿅墨が扱われるようになった。 ③ DMG 森精機株式会社 製造・ ・開発本部旋盤製造部旋盤基本精度課課長 石橋一明氏 DMG 森精機株式会社の国内生産拠点である伊賀事業所勤務の石橋一明さん 森精機株式会社 賀事業所勤務の石橋一明さん (51 歳)は は、⾦属加⼯機械の組⽴において、部品の接触⾯・摺動⾯を⼿で持った刃具で ⾦属加⼯機械の組⽴において、部品の接触⾯・摺動⾯を⼿で持った刃具で 削り、0.001mm 0.001mm 以下の精度で平⾯に仕上げる「きさげ作業」のプロである。 DMG 森精機株式会社は、名古屋に本社を置く日本を代 森精機株式会社は、名古屋に本社を置く日本を代 表する工作 表する工作機械メーカーである。特に NC 旋盤(数値制御付 数値制御付 き旋盤)やマシニングセンタでは世界のトップをひた走る。 やマシニングセンタでは世界のトップをひた走る。 石橋さんは「世界一のキサゲを目指して」と題し、摺り合わせ 石橋さんは「世界一のキサゲを目指して」と題し、摺り合わせ (キサゲ、Scraping)作業をいかに⾏なうか、そして技能・ (キサゲ、 そして技能・ 技術をどのように承継するかを発表した。 2011(平成 (平成 23)年に同社伊賀事業所内に設⽴された「 年に同社伊賀事業所内に設⽴された「摺り合わせ道場」は、技能修 得者の育成と体験を通して各社員の業務向上を趣旨とし、これまでに 得者の育成 、これまでに 11 回、延べ 69 名 が受講しているということであった。 しているということであった。 第Ⅲ部 トークショー した想い」 「技能の実力を遺憾なく発揮した 株式会社コステック代表取締役 三辻茂樹さんをコーディネーターとして、 平成 26 年度技能五輪全国大会(あいち大会) (あいち大会)入賞者 3 名と 2013 (平成 25)年に⾏われた第 42 回技能五輪国際大会(ドイツ・ライプツィ 回 ヒ大会)において、⾦メダルとともにアルバート・ビダル賞 アルバート・ビダル賞(注)を受賞した 株式会社きんでんの宇都宮晋平さんを加えた 5 人によるトークショーを⾏いました。 メカトロニクス職種 メカトロニクス職種で敢闘賞を受賞した晝河豪さんは、地元 地元、三重県⼆⾒町の出身で ある。三重県⽴ 三重県⽴伊勢工業高校を卒業して株式会社豊田自動織機(愛知県刈谷市) 株式会社豊田自動織機(愛知県刈谷市) に入社。 その後、1 1 年間、基礎技術・技能を豊⽥⾃動織機技能専修学園で学び、技能五輪グ ループに配属。平成 27 年度の技能五輪全国⼤会には、 、再挑戦したいと決意を表明し てくれた。 美容職種で⾦賞に輝いた芝⽥優⾺さんは、京都府⽴園部⾼校 に輝いた芝⽥優⾺さんは、京都府⽴園部⾼校から京都理容美容 京都理容美容 専修学校へと進み、卒業後、京都府⻑岡京市にある美容室にしはら(株式会社にし 都府⻑岡京市にある美容室にしはら(株式会社にし はら)に入社。同美容室では、柴田さんに次いで森 同美容室では、柴田さんに次いで森 海さんが銀賞を受賞。「2 店舗だ だ けの小さな美容室ですが多くの励ましを 多くの励ましを、お店の⽅々からもらいました。⾃分は年齢制限 お店の⽅々からもらいました。⾃分は年齢制限 から 2015(平成 27)年 8 月にブラジル・サンパウロで開催される技能五輪国際⼤会には出場できませんが、後輩 (森 海さん)を応援します」と頼もしく語っていた。 配管職種で⾦賞に輝いた清⽔⿓⼆さんは、東京学館新潟高校を卒業後、株式会社 千代田設備に入社。千代田設備は、創業者である佐藤袁也現相談役が先頭に⽴って 技能五輪出場を応援する人材育成に熱心な会社であり、平成 26 年度技能五輪全国 大会では、⾦・銀・銅を受賞した。 清水さんは 2015(平成 27)年 8 ⽉にブラジル・サンパウロで開催される技能五輪国際 大会に出場予定で特訓中である。 宇都宮晋平さんは、愛媛県⽴⼋幡浜⼯業⾼校を卒業し 2009(平成 21)年に株 式会社きんでん入社。2011(平成 23)年、2012(平成 24)年連続、技能五輪 全国大会で優勝を収め、2013(平成 25)年のドイツ・ライプツィヒ⼤会では、⾦メダルと ともに最高点獲得者に授与されるアルバート・ビダル賞も併せて受賞したという強者である。 現在は後輩の技能五輪選⼿育成にあたっている。将来は情報ネットワーク施工職種のみ ならず電工職種にも精通した技術者になりたいと高い目標を持っていた。 堂々として自信に満ちた 4 人の若⼈の発表はとても頼もしく、これまで積み重 ねられてきた研鑚ぶりを十分に感じさせるものであった。4 人に共通していたのは、 後押しをしてくれた会社と周囲の人々への謝辞を述べていたことであったが、この 4 人のように⼈を育てるためには、周囲の協⼒と⼗分な環境整備が重要である ことを痛感させられた。 また技能五輪国内・国際大会を通して技能・技術の 鍛錬に挑んでいる若者の姿を⾒るにつけ、彼らあっての日本のものづくりだと言う ことを、再認識したセミナーであった。 (注)アルバート・ビダル賞とは 各職種の平均点を 500 点に調整したうえで、全選手の中で最高得点を獲得した選手に与えられる賞 技能五輪全国⼤会は、毎年開催、技能五輪国際⼤会は、隔年開催 閉会挨拶 澁谷ものづくり人材育成研究所 理事 古賀史郎
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