山口大学における共用試験医学系CBTへの取り組み PDF

第19回学術情報処理研究集会
発表論文集 pp.19 - 22
山口大学における共用試験医学系 CBT への取り組み
Efforts for the Infrastructure Development on the Computer-Based
Nationwide Common Achievement Test in Yamaguchi University
為末 隆弘†,西村 世志人†,久長 穣†,小河原 加久治†
Takahiro Tamesue†, Yoshito Nishimura†, Yutaka Hisanaga†, Kakuji Ogawara
[email protected], [email protected], [email protected], [email protected]
†山口大学 大学情報機構 メディア基盤センター
†Media and Information Technology Center, Organization for Academic Information,
Yamaguchi University
概要
医師資格を持たない学生が臨床実習に参加するにあたって,学生の能力と適正を評価するための共用試験
が行われており,知識の総合的理解力は,医療系大学間共用試験実施評価機構が提供する共用試験システム
を利用した CBT により評価されている。山口大学では,平成 25 年度の電子計算機システムの更新において,
一般学生用の教育用端末で上記 CBT を実施するための環境整備を実施し,これまで運用を継続している。本
報告では,山口大学における共用試験医学系 CBT への取り組みについて紹介する。
キーワード
共用試験医学系 CBT,電子計算機システム,教育用端末
1. はじめに
平成 18 年度より,山口大学メディア基盤センターは,
山口大学大学情報機構に所属しており,同機構に所属す
る図書館,埋蔵文化資料館,及び情報環境部と協力して
各種情報サービスの充実を図っている。メディア基盤セ
ンターの主なミッションのひとつに,情報基盤インフラ
の整備や維持管理があり,これを通じて教育研究活動を
支援している。その中で,教育用電子計算機システムの
構成,維持管理や活用といった業務及び関連する研究開
発を行っており,吉田・常盤・小串地区の 3 キャンパス
に設置した教育用端末を,学生が授業や自習等で利用し
- 19 -
ている。
平成 25 年 4 月の教育用電子計算機システムの機
器更新において,主に常盤・小串地区キャンパスに設置
されている教育用端末の更新がなされた。更新にあたっ
ては,次のような 3 種類の教育用端末を導入することに
なった。
1.
教 育用端 末 A : CAD ソ フトウェ アや CBT
(Computer Based Testing)に十分に対応できる性能
及び安定性が必要であるもの
2.
教育用端末 B: 授業及び自習用として.既存の端
末を活用するもの
3.
教育用端末 C: Web ブラウジングや Office ソフト
ウェアの利用を目的としたシンクライアント環境
教育用端末 A に関しては,一般学生向けの演習用環境
に加えて,共用試験医学系 CBT [1] のための環境を整備
して運用を継続している。共用試験医学系 CBT は,医師
資格を持たない学生が臨床実習に参加する前に,学生の
能力と適正を評価するものであり,医療系大学間共用試
験実施評価機構が提供する共用試験システムを利用して
実施されている。本報告では,一般学生用の教育用端末
で上記 CBT を実施するための環境整備や運用状況等,
山
口大学における共用試験医学系 CBT への取り組みにつ
いて紹介する。
機種
OS
NEC Express5800/GT110e-S
N8100-1887Y
Microsoft Windows Server 2008 R2
Standard 64bit
CPU
Intel Xeon Processor E3-1220 v2
HDD
300 GB (RAID1 構成)
画面解像度
SXGA
メモリ
Network
8 GB
1 Gbps
表 2:教育用端末の主要諸元
2. 共用試験医学系 CBT
3. CBT システム
ネットワーク機器
\
教育用端末(140台)
図 1:CBT システム
- 20 -
NEC Mate MK34H/E-E
CPU
Intel Core i7-3770 3.4 GHz
HDD
500GB×2
画面解像度
SXGA
機種
平成 14 年より,
医学教育の向上を目的とした臨床実習
開始前の共用試験が実施されており,医師資格を持たな
い学生が臨床実習に参加するにあたって,学生の能力や
適正を評価する全国規模の試験が行われている[1]。この
試験のひとつとして,知識の総合的理解力を評価するた
めの共用試験医学系 CBT が用意されており,
医療系大学
間共用試験実施評価機構が共用試験システム(試験実施
サーバ・クライアントソフトウェア)を提供している。
CBT では,PC 画面上に表示される試験問題に対して,
マウスやキーボードによって解答を入力する。受験者ご
とに異なる試験問題の提示や前の問題に戻ることができ
ない連問の提示などが可能である。共用試験医学系 CBT
では,6 時間で 320 問の試験問題を取り組むことになっ
ている。
試験実施サーバ
表 1:サーバの主要諸元
メモリ
Network
4GB
1 Gbps
平成25年4月の教育用電子計算機システムの更新にお
いて,一般学生用の教育用端末 A 上で共用試験医学系
CBT を実施できるようシステム構築を行った。本学の
CBT システムは,1 台の試験実施サーバと 140 台の教育
用端末(クライアント)から構成されている。CBT シス
テムの概要図を図 1 に示す。サーバは,クライアントと
同一セグメントのネットワークに 1Gbps で接続した。試
験時には,サブネットに対して学外とのネットワークの
遮断を行っている。
山口大学では,
共用試験医学系 CBT のために専用の物
理サーバを準備した。サーバの主要諸元を表 1 に示す。
医療系大学間共用試験実施評価機構が提供する試験実施
サーバソフトウェアをインストールした。このソフトウ
ェアは,問題プールから受験生ごとに異なる問題をラン
ダムに抽出して出題し,解答データを収集する機能を有
している[2]。
教育用端末
(クライアント)
の主要諸元を表 2 に示す。
共用試験医学系 CBT のみでなく,
一般学生が授業や演習
で利用する CAD ソフトウェア等に対応できる性能とな
るように選定した。
大学等の教育機関には,授業や演習利用を目的とした
多数の演習端末が設置されている場合が多く,これまで
にも CBT 環境の構築に関する事例がいくつか報告され
ている[3][4][5][6]。山口大学では,共用試験医学系 CBT
の環境構築が容易に行えること,共用試験医学系 CBT
環境と一般学生向け演習用の既設環境との切り替えに係
る負担が少ないこと等を要件として,次のような方法を
導入した。


演習端末(クライアント)に,一般学生の授業・演
習用の OS と共用試験医学系CBT 用の OS を予めイ
ンストールしておく(共用試験医学系 CBT 用の OS
は一般学生用の通常起動メニューには列挙しない)
。
図 2:教育用端末の HDD 構成
演習端末(クライアント)の管理用サーバから,遠
隔操作により,指定した演習端末(クライアント)
に対して,目的とする OS を起動する。
7月 8日
また,共用試験医学系 CBT 環境の構築,維持,管理へ
の負担軽減を目的として,演習端末(クライアント)の
管理用サーバから指定した演習端末(クライアント)に
対して,遠隔操作により実行可能な次のような機能を準
備している。



9 月 19 日
9 月 22 日
24 日
10 月 23 日
共用試験医学系 CBT 用 OS の設定イメージの配信
やアップデートが可能である。
11 月 10 日
ウィルス対策ソフトのアップデート,スキャン機能
のオン/オフが可能である。
11 月 11 日
共用試験医学系 CBT ソフトウェアのインストール
及びアンインストールを行うことができる。
共用試験医学系 CBT 用サーバ・クライア
ントソフトウェア及び手順書の受領
共用試験医学系 CBT 用サーバ・クライア
ントソフトウェアのインストール
その他の設定作業
共用試験医学系 CBT 環境への切り替え
共用試験医学系 CBT 環境への切り替え
体験テスト
一般学生向けの演習用環境の復元
フォントを変更できる。
1月 8日

ディスプレイ解像度を変更できる
1月 9日
- 21 -
共用試験医学系CBT 用OSの雛形イメー
ジの一斉配信
12 月 17 日

一般学生向けの演習用 OS では,ローカルのディス
クへの書き込みを出来ないようにしているが,共用
試験医学系 CBT 用 OS では,解答データ保存の
共用試験医学系CBT 用OSの雛形イメー
ジのアップデート及びセキュリティパッ
チの適用
11 月 12 日
ローカルユーザー及びフォルダーを作成できる。

共用試験医学系 CBT 事前調査
集中動作テスト(手動)

教育用端末(クライアント)の HDD の構成を図 2 に
示す。2 本の HDD に,一般学生向けの演習用 OS と共用
試験医学系CBT 用のOS をそれぞれインストールしてい
る。教育用端末(クライアント)の BIOS 設定において,
起動ドライブを変更することにより,共用試験医学系
CBT 環境への切り替え,または一般学生向けの演習用環
境への復元を行う。この操作は,演習端末(クライアン
ト)の管理用サーバから遠隔操作により,一括して行う
ことができる。
さらに,次のような設定を行っている。
表 3:準備及び実施スケジュール
2月 5日
2月 6日
集中動作テスト(自動)
一般学生向けの演習用環境の復元
共用試験医学系 CBT 環境への切り替え
本試験前日の動作確認テスト(自動)
本試験
一般学生向けの演習用環境の復元
共用試験医学系 CBT 環境への切り替え
追・再試験前日の動作確認テスト(自動)
追・再試験
一般学生向けの演習用環境の復元
ため,ディスクへの書き込みを可能としている。

試験時には,教育用端末(クライアント)管路用の
エージェントや OS のアップデート機能,ウィルス
対策ソフトのパターン更新やスキャン機能をオフ
にしている。
4. 共用試験医学系 CBT の準備・実施
共用試験医学系 CBT の準備及び実施に費やしたスケ
ジュールを表 3 に示す。電子計算機システムの保守契約
として,システム全体のハードウェアや OS,及びソフ
トウェアのメンテナンスが 6 ヶ月に 1 回(年 2 回)実施
される際に,共用試験医学系 CBT 用 OS の雛形イメー
ジのアップデート及びセキュリティパッチの適用等を実
施した上で,演習端末(クライアント)に対して,共用
試験医学系 CBT 用 OS の雛形イメージの一斉配信を行
っている。その後,医療系大学間共用試験実施評価機構
より受領した共用試験医学系 CBT 用のサーバソフトウ
ェア,クライアントソフトウェアのインストール作業を
実施した。演習端末(クライアント)の管理用サーバか
ら,遠隔操作によって,140 台の演習端末(クライアン
ト)に対して,共用試験医学系 CBT 用 OS の起動やソフ
トウェアのインストール作業,及びその他の設定作業を
一斉に行うことが可能であり,以前よりも短い作業時間
で共用試験医学系 CBT 用環境を構築することができる
ようになった。また,共用試験医学系 CBT 用環境と一般
学生向けの演習用環境との切り替えについても,演習端
末(クライアント)の管理用サーバから遠隔操作によっ
て,BIOS 設定における起動ドライブの変更を一括して
実施できるようになったため,動作テストや試験の前後
でも一般学生向けの演習用環境へ手間なく短時間で復元
可能であり,
共用試験医学系 CBT のために演習室を閉鎖
する時間を短くすることができた。本システムの導入に
より,メディア基盤センター職員の作業負担が軽減され
ることが示唆された。
5. まとめ
平成 25 年度の電子計算機システムの更新において,
一
般学生用の教育用端末で共用試験医学系 CBT を実施す
るための環境整備を行った。
共用試験医学系 CBT の環境
構築が容易に行えること,
共用試験医学系 CBT 環境と一
般学生向け演習用の既設環境との切り替えに係る負担が
少ないこと等を要件として,演習端末(クライアント)
に,一般学生の演習用 OS と共用試験医学系 CBT 用 OS
を予め準備し,演習端末(クライアント)の管理用サー
バから,遠隔操作によって目的とする OS を起動できる
システムを導入し,その効果について検討した。本シス
テムの運用により,
共用試験医学系 CBT のための環境の
構築,維持,及び管理が以前に比べて短い作業時間で実
施できるようになった。また,一般学生向けの演習用環
境の復元についても,動作テストや試験の前後で,短時
- 22 -
間に復元することが可能となった。上記のように,メデ
ィア基盤センター職員の作業負担が軽減されるだけでな
く,
共用試験医学系 CBT 環境への切り替えまたは一般学
生向けの授業・演習用環境の復元のための演習室の閉鎖
時間を短縮できることを確認した。
謝辞
共用試験医学系 CBT の準備及び実施にご協力いただ
いた山口大学大学情報機構メディア基盤センターのスタ
ッフの皆さんに感謝の意を表します。
参考文献
[1] 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構,
http://www.cato.umin.jp/
[2] 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構,
共用試験実施機構と共用試験,
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10803000-IseikyokuIjika/0000048625.pdf
[3] 島岡 章,涌 ゆみ,医学系 CBT 試験端末の準備/
復旧作業の省力化,大学 ICT 推進協議会 2013 年度年次
大会論文集 (2013)
[4] 近藤裕司,石橋勇人,松浦敏雄,既設のパソコン教
室を借用して実施する大規模な CBT の実現方法」
、
情報
学 4(2),(2007)
[5] 久保田真一郎,升屋正人,青木謙二,CBT に対応し
た教育用端末システム,
情報科学技術フォーラム 講演論
文集 5(4),77-78,(2006)
[6] 千葉大作,大橋拓郎,丹英之,上原光晶,松本絹佳,
須崎有康,飯島賢吾,八木豊志樹,KNOPPIX によるセ
キュアな Computer Based Testing,情報科学技術フォーラ
ム講演論文集,3(4), 339-340,(2004)