理 工 学 域 ①数物科学類 数物科学類は、旧理学部数学科・物理学科・計算科学科を統合した組織である。これまで、非常に多くの数学 教員(主として数学コース(旧数学科) ) 、理科教員(主として物理学コース(旧物理学科) ) 、情報科教員(計算 科学コース(旧計算科学科) )を教育界に送り出してきた。教壇に立つ際、教科に関する十分な知識や先端研究の 経験は極めて重要であり、カリキュラムの改革にあたっても、専門分野に関する高い水準を維持している。更に、 数学・物理学・計算科学の共通基盤を用意し、学生の個性に応じてこれらを広範囲に選択できる教育課程にした。 「数学離れ」や「理科離れ」が言われる今日、中等教育(中学校・高等学校)の教員にとって、 「深い専門知識」 と生徒の興味を引き出す「関連教科の理解・広い視野」が不可欠である。数物科学類は、日常生活の事物・現象 の科学的見方や、高度な科学・技術の原理を分かりやすく伝えられる学生の養成をめざしており、数学(中一種、 高一種) 、理科(中一種、高一種) 、情報(高一種)の教員養成課程を設置する。免許コース毎の特長を簡単に記 す。 (1) 数学コース:主要な講義は週2コマの構成とし、問題演習の時間を確保して、講義内容を十分理解させるよ うにした。また、少人数ゼミ(数学基礎セミナー・課題研究)を通じ、コミュニケーション能力を育成する。 (2) 理科コース:化学・生物学・地学についての広範な基礎知識を身に付けるとともに、主として物理学の体系 的な学習を行う。主要な講義と組になった演習科目や実験により、問題解決能力・実験技法・プレゼンテー ション能力を育成する。 (3) 情報コース:数学や物理学の基盤の上に、自然科学を模倣するための計算機シミュレーション(計算科学) を中心に学ぶ。規範意識や単なる情報管理を教育することができるだけではなく、情報化技術を積極的に活 用できる情報科教育者を養成する。 また、次に述べる教育委員会や地域との連携を通じ、学生の資質向上や大学の教育内容の改善にも取り組んで いる。 教育委員会との連携:石川県教育委員会と提携して、高等学校数学・理科(物理)の教員との「教科内容充実・ 指導力向上」を目指したゼミナールを実施している。夏休みに、高校生対象の体験セミナー「理学の広場」を開 催している。これらは、教員志望の学生を指導していく上にも役立っている。 地域との連携:金沢子ども科学財団と協力して、小・中学校の児童・生徒に対して、理科や算数・数学の啓蒙活 動を行っている。この中で理学部の学生は、自ら教材・テキスト作成を行い、教師の立場を経験する機会を得て おり、社会的責任・役割を実感できる大変貴重な場となっている。更に、大学公開事業として「ふれてサイエン ス」を実施し、学生が主体となって企画・広報・演示活動を行っており、教職を目指す学生が多く参加している。 加えて、高校生向けに「コンピュータで科学しよう!」講座を毎年開催し、情報科教育の実践的活動を実施して いる。 ②物質化学類 科学技術立国を目指す我が国の基盤である理科教育の新たな発展には、より高い資質能力を持つ教員の養成が 必須であり、高度な教科に関する専門知識・技能を修得し、さらに教職に対する愛着と使命感を持った教員を養 成して中等理科教育現場に輩出することは、最先端の科学技術を社会に還元する理工系大学に課せられた使命で ある。このような理念に基づき、物質化学類の母体となった旧理学部化学科ではこれまで180名を超える中学 1 校・高等学校理科教諭を教育界に送り出してきた。物質化学類では、使命感や責任感さらに情熱を持って生徒を 指導できる教員としての基本的な資質能力と、科学技術のすばらしさ・自然科学の基本原理の美しさ・科学的思 考の楽しさを生徒に理解させる授業力・実践的指導力を備えた中学校理科教諭の養成、さらに、高度な教材開発 能力および実験・実習等の指導力をも併せ持ち、実質的な高校と大学の連携・接続を図ることのできる高等学校 理科教諭の養成を目的として2つの理科教職課程を設置した。この趣旨を具体化するために本学類では、基礎化 学と応用化学を融合した新しい教育システムによる高度な化学専門科目群に加え、演示実験など体験的学習指導 法の修得が可能な実験・実習科目、個人指導による人間性・社会性の向上を図るゼミナール科目など、教員養成 を念頭に置いた科目を効果的に配置したカリキュラムを用意する。さらに、本学類の教員および石川県の中高理 科教員の有志により二十数年に渡り継続的に開催されている「石川地区中学高校生徒化学研究発表会」などへの 運営参加を通して、学生に地域の実践的な理科教育に触れさせる機会を設けるなど、理論と実践の融合を目指し た教員養成を行う。また本学類では、理科教育の改善を目的とした高等学校理科教諭との連携ゼミナールなどを 通じて教員自身が教育現場の状況を把握し、実践的指導力の養成にフィードバックする教職指導体制を確立して いる。 物質化学類・応用化学コースでは、上記に加え「 “自然との調和”をはかりながら“社会の一員”として活躍で きる技術者の卵を育成する」という工業教員の担うべき最も重要な役割を意識し、幅広い専門知識に加えて柔軟 な応用化学的思考力を有する高等学校工業教諭の養成を目指した教職課程を併設する。このような工業教員を養 成するために、教員として必要な基礎知識と技術、ならびに職業指導方法を修得させることはもちろんのこと、 技術者倫理の育成や、今後益々必要とされるコミュニケーション能力やデザイン能力を向上させるための実習・ ゼミナール科目を必須科目として配置する。これらの科目ではグループ活動と少人数教育の実践による教育効果 の向上を目指し、学生の指導には基本的に教員総出で対応する。加えて継続的なファカルティーデベロップメン ト活動を通して教職課程の質の向上に努める。 ③機械工学類 近年の工業技術は情報化社会の進展と相まって絶え間なく進歩しており、その最新動向や産業イノベーション の進展に常に注目し、変化し続ける社会要請に適応できる工業教員が強く望まれている。機械工学類ではこのよ うな社会的要求に応えるため工業教員養成課程の設置を申請した。本学類では機械工学に関する基礎的事項はも とより、常に進歩・発展し続けている工業技術の最新動向をも視野に入れた教育内容を創造することができ、一 生学び続ける意欲と情熱を持った工業教員の育成を目指している。具体的には、豊かな創造性と問題解決能力育 成のために機械工学ゼミナール、創造デザイン実習、機能機械探求等の「課題探求型・創成型科目」を多く配置 するとともに、機械工学実験、機械工作実習等の専門教科の実習や企業開放講義、学外技術体験実習等による就 業体験・デユアルシステムの実体験活動を通じて、すべての職に必要な職業観やコミュニケーション能力を育成 し、実践的な技術・技能の修得に効果的な教育システムを構築している。 ④電子情報学類 電子情報学類では、エネルギー・制御・半導体・集積回路技術、情報産業の基盤であるコンピュータ・通信技 術、生命情報にかかわる研究と教育を通して、社会的要請の高い“電気工学、電子工学、通信工学、情報工学、 生命情報工学を教授できる工業教員”の養成を目指している。職業高校でも当該分野の卒業生に対する求人需要 は格段に高く、本学類の教育理念に沿った卒業生を工業教員として世に送り出すことは本学類の責務であり、将 2 来の社会的要請を十分に汲み取った時代に即した技術者教育に携わることが期待される。これまでも、教職課程 の質の向上をはかるため、絶えずカリキュラムの見直しや改善を行ったり、大学教員の教育方法を向上させるた めに FD 活動を積極的に実施したりしてきたし、学生に対する責任ある教職指導のために、相談教員制度により初 年時より少人数できめ細やかな指導を行ってきた。 ⑤環境デザイン学類 現代の成熟した時代にあっては、地域における歴史、文化、自然と調和した社会基盤整備の重要性と責任を自 覚し、創意工夫しながら土木建設工学を応用できる人材を育成することのできる教員が求められている。このよ うな背景の下、環境デザイン学類では専門知識を学ぶのみではなく、創成型科目における問題発見能力や解決能 力、コミュニケーション能力などの修得や、技術者倫理科目による社会性、責任感の育成などを重視している。 金沢という伝統・歴史が育んできた土地柄から、地域における歴史、文化、自然と調和した社会基盤整備の重要 性と責任を自覚した工業教員が地域から強く求められていることより、本学類への工業コースの設置が必要であ る。本コースにおいて養成された工業教員は、社会の要請を十分に汲み取った技術者教育を遂行できる人材とな ることが期待できる。 ⑥自然システム学類 自然システム学類では、生物・人間・物質・地球で形成される系を自然システムとして捉え、その包括的な理 解と応用を取扱う新分野の創造を目指している。 (理科コース) 理学の基礎や科学技術に対して柔軟な広い視野で思考し、かつその魅力と成果を伝える能力を持つ教員の養成 を目指している。特に、生物、地学、地球環境に通暁した理科教員の育成を行い、単に教科の知識を教授するだ けではなく、身の回りのことから地球規模の生命や環境の問題までを対象として、仮説検証型のプロセスを経て 問題を解決する能力を有する教員の養成を目標にしている。そこで、理学の基礎や自然の本質を広く中学生に理 解させうる教員を養成するため中一種(理科)を置き、理学の基礎と科学技術、そして自然の本質の基礎、応用 の両面から高校生に理解させうる教員の養成するため高一種(理科)を置く。 これまで、理学部生物学科及び地球学科として多くの中学・高校教員を教育界に送り出し、理科の授業、なら びに総合学習での実践的な授業を担ってきた。理科教員としての高いレベルでの基礎能力の滋養に加え、少人数 制の、実験を濃密に教授する教職課程を設置し、かつ、教室内での授業能力だけではなく教室外での授業能力を 涵養するために教員と寝食を共にする野外実習を課程に取り入れている。これらの実験、実習により、仮説を立 て、実験を行い検証する豊富な実践の場を提供する。総合演習では、自主性、創造性、協調性の育成、プレゼン テーション能力の向上を目指す。 1年次より3年次まで担任制度を設け、4年次では責任指導教員を定め、学生に対して個別に指導が可能な体 制をとっている。附属高校で教育実習を行う場合、受入高校での実習を視察し、適切な助言を行うこととしてい る。総合演習をはじめ複数の授業で、複数の教員が指導し、組織的に対応する体制を構築している。 石川県のスーパーサイエンス校を中心に課題研究の指導、評価に出向いて、理数科教員と生徒の質向上に尽力 している。また、理科体験セミナーにより、直接高校生に対して指導を行っている。 3 金沢市子ども科学財団などでの多くの理科教育活動および実験活動を通じて、学生に豊富な教育指導体験を積 ませている。 (工業コース) 本学類の工業コースでは、幅広い知識と高い教養を身につけ、地球環境問題および資源エネルギー問題などを 解決する広い視野に立って行動できる教員の養成を目指している。さらに、専門分野の修得だけでなく、正しい 倫理観を身につけた人間性豊かな教員の養成にも努めるものである。 本教職コースを構成する学科の前身は、金沢工業高等学校化学機械科(後の化学工業科)であり、京都帝国大 学に先駆けて我が国で最初に設置された化学工学系学科という歴史を持つ。資源の乏しい我が国では、モノつく りの技術と工業を教育することの大切さを十分理解した教員が必要であるという精神そして使命感が、金沢工業 高等学校時代から引き継がれており、以来、多くの工業教員を教育界に送り出してきた。今後も化学工学の専門 を十分理解した人間性豊かな教員が益々重要であるとの認識のもと、本教職コースを設置するものである。 本教職コースでは、学生が卒業するまでに達成すべき学習目標を設定している。そして、学生がどの程度、目 標を達成しているか各自が点検できるシステムを構築し、その目標を達成した学生のみを卒業させるシステムを 組んでいる。そのような一定レベル以上の資質能力を満たすために、従来のカリキュラムを大幅に見直し、化学 工学の専門科目の全てを必修科目とするカリキュラムへ変更した。従って、一定のレベルに達した学生のみが本 教職課程を修了できるとともに、すべての教員が責任ある指導を行うシステムを構築している。また、そのシス テム自身の健全性を保つため、種々の問題を点検評価し改善する小委員会を学科内に設置し、責任ある教職指導 のための組織的な取り組みを行う。 4
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