プライベート・トランスファーのダイアディック回帰分析

(1)氏名,所属,連絡先
樋渡雅人,北海道大学大学院経済学研究科,[email protected]
(2)論題
「相互扶助と社会ネットワーク―プライベート・トランスファーのダイアディック回帰分
析」
(3)報告内容の骨子
本発表では,相互扶助と社会ネットワークの関係性を,プライベート・トランスファーの決
定要因に関する実証分析を通して検証する。より具体的には,ウズベキスタンの一村落(マ
ハッラ)を対象にしたネットワーク/家計データを用いて,プライベート・トランスファー
の決定要因をダイアディック回帰分析により検証する。ここで,プライベート・トランスフ
ァーとは家計間で私的にやりとりされる現金や物資の移転授受を指す。また,ダイアディッ
ク回帰分析とは,家計 i ではなく,i から j への関係そのものを分析単位(被説明変数)とし
た回帰分析である。本発表では,567 世帯の村落を対象とするため,潜在的な関係の本数は
567☓566=320,922 本となるが,この関係の間に生じ得たプライベート・トランスファーの決
定要因を検証する。ダイアディック回帰分析の利点は,説明変数として,家計 i と家計 j の
間の経済・社会的距離(distance)(例えば,所得格差や,親族関係の有無)を組み込むことが
できる点にある。これを利用して,家計間の関係性,特に地域に特徴的な血縁や慣習に基づ
く社会的関係性が,プライベート・トランスファーにどのような影響を及ぼしているのかを
検証したい。予備的分析を通して,対象村落におけるプライベート・トランスファーの決定
要因としては,経済的要因(所得再分配,保険・信用)以上に,社会関係的要因(血縁等)
が支配的である傾向が認められた。