IBC2013 速報 !! IBC2013 速報 !!

IBC2013 速報 !!
石田 武久 NAB、Inter BEE と共に世界の放送関連
観である。その象徴のよう
の 3 大コンベンションのひとつである IBC
なのが東京駅のモデルと言
が、既に晩秋の感があるアムステルダムで
われる優美なセントラルス
9 月 13 日から 17 日まで、盛況に開催さ
テーション(写真 01)で
れた。本号では IBC の概要を、次号にて各
あり、
レンブラントの「夜景」
種技術動向や各社の出展物の詳細を紹介し
など有名作品を貯蔵、公開
たい。
している巨大なお城のよう
IBC は 1960 年代半ばに、欧州放送機
な国立博物館や 4 月に新国
器展示会として始まった歴史あるコンベン
王の戴冠式が行われた荘厳
ションで、以前は英国ブライトンなどで開
な王宮など、数え切れない
催されていたが、その後、オランダのアム
ほど由緒のある建造物があ
ステルダムに定着している。ところでアム
る。
写真 01:アムステルダムのシンボルのセントラルステーションと運河、路面を走る
モダンなトラムカー
分、旧市街をはずれた近郊の RAI 地区に建
造された近代的で広大なコンベンションセ
ステルダムは、13 世紀頃、北海に繋がる
旧市街地の中はあまりきれいとは言えな
入り江に流れ込むアムステル川沿いの低地
い淀んだ細い運河が蜘蛛の巣のように張り
ンターで開催されている(タイトルバック)
。
に人造湖ダムを造り、その周辺に人々が住
巡らされ、観光客をいっぱい乗せたカナル
そのメインエントランスはトラムカーやバ
み始めたのが由来である。国名のネーデル
ツアーの平べったい船が巡っている。一方、
スも走る広い道路に面し、右手に RAI のシ
ランド(低い土地)が示すように、国土の
石畳の街路の上を青と白のツートーンカラ
ンボルタワーとテント風の展示場、正面に
4 分の 1 は海抜ゼロメートル以下だそうだ。
ーの洒落たデザインのトラムカー(4 両連
オフィスなどがある会場で唯一の高層ビル、
中世以降、オランダは世界の海運国、工業
結の路面電車)が走り、その脇を通勤、通
その下の方には市内のあちらこちらでも見
国として栄え、江戸時代末期には欧米諸国
学、買い物の自転車の波が走り抜けていく。
かける大きな“I amsterdam”のモニュメ
の中で日本と最も縁の深かった国である。
なんともアンバランスな光景だが、NAB が
ントが置かれており、来場者の写真スポッ
その首都であるアムステルダムは人口 74
開かれている超近代的高層ビルが並ぶラス
トにもなっている。左手や右手に一部が見
万(我らの感覚では意外に少ない)を抱え
ベガスの情景に比べると、とても癒される
えているが、ほとんどの展示場やコンファ
る大都市である。旧市街地には中世の面影
風情である。
レンス会場はこれらの奥手の方に広がり会
を残す赤レンガの3角屋根のビルが軒を連
本題の IBC は、セントラルステーション
ね、どこを見ても絵や写真の対象になる景
からトラムカーでのんびり走ること約 30
場全体を見渡すことができないくらい広大
である。
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FDI・2013・10
豪華ホテルのロビーのよ
うな雰囲気の広いエントラ
ンス(写真 02)右手にレ
ジストレーションコーナー
があり、左手の階段横や前
写真 02:華やいだ雰囲気のメインエントランス付近の情景
方通路右手から各ホールに
入るようになっている。天
井には大きな球面スクリー
ンが吊り下げられ、周囲か
ら何台かの強力パワーの
DLP(クリスティ製)によ
りカラフルな IBC シンボル
写真 03:ソニーの 4K ワイドディスプレイ
マークなどの映像が映し出
され、まさに放送界のお祭
りを盛り上げる雰囲気に溢
れていた。この写真は開場
前に撮影したので閑散とし
図 1:コンベンション会場レイアウト
ているようだが、本番が始まってからはレ
一時的にアベノミクス効果が期待されるが
ジストレーションをする来場者や各ホール
決して楽観できない不透明な状況下にある。
の視察の作戦を練る見学者達で大混雑の状
このような状況、環境下だったが、今回の
況だった。
IBC への出展企業・団体数は世界 160 ヶ
写真 04:会場を飾るキヤノンの大きな看板
コ ン ベ ン シ ョ ン セ ン タ ー は、NAB や
国から 1400 社を数え、来場者数は昨年を
狭いエリアの Future Zone に分散配置さ
Inter BEE の会場に比べ大きなホールに集
約 2000 人ほど上回り 52974 人(公式
れていた。
約されておらず、図 1 に示すように中小
発表)を数える盛況さだった。会場を廻っ
今大会の主たる技術的動向としては、世
14 のホールが(と言ってもかなり大きい
てみた印象では、昨年までに比べ日本から
界的にデジタル化、HDTV 化移行は概ね山
が)
、屋外の通路、渡り廊下や地下道を通じ
の出展企業の数は若干減り、ブースの規模
を越え、ポストデジタルを見据え、放送と
て複雑に繋がっている。限られた時間で目
もやや小ぶりになった感もあり、国内から
通信の連携・融合が一層進み、スマートフ
当てのブースを見学し、各種イベントやコ
の企業展示関係者、一般見学者やメディア
ォンやタブレット端末の急速な普及に伴い
ンファレンスに参加するには強靭な足腰と
関係の出張者数はかなり少なくなったよう
放送視聴者や通信利用者の環境、ニーズも
何よりも気力・忍耐が必要だった。
に感じられた。
多様化し、放送・映像メディアを取り巻く
今年の IBC は、世界的経済状況が昨年よ
IBC 全 体 の 各 企 業 展 示 ブ ー ス は、 別
状況や役割は大きく変わりつつある。とり
りやや改善の兆しはあるもののいまだ厳し
図 に あ る イ ベ ン ト 会 場 の Big Screen
わけ映像の世界はポスト HD を視野に超高
く、エジプトやシリアなどにおける不安定
Auditorium、コンファレンス会場、プレ
精細度の 4K、8K への展開が急速に進んで
材料もある状況での開催だった。世界の放
スセンターを中心に、テーマ・部門ごとに
いる。またそれらを支える高品質で効率的
送、通信、電子産業を支えてきた日本の経
Creation Zone 、Management Zone、
な符号化技術の進展も目覚しいものがある。
済は長年のデフレ状況の後遺症に悩まされ、
最も広いスペースの Delivery Zone、やや
今回 IBC ではこのような最近のメディア状
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は見る機会のない次世代の
最先端放送を見ようと大勢
の見学者を集めていた(写
真 06)
。またコンテンツ制
作系の老舗の Quantel(英)
写真 05:パナソニックブースの情景
が 4K/60p と 8K/24p の
写真 06:NHK の SHV システムを公開
リアルタイム処理を公開し
注目を集めていた。
今回の IBC で注目を集
めていたもうひとつの技
術動向は、一層盛んにな
る高品質で効率的な配信・
伝送に相応しく、4K/8K
超高精細映像配信にも
写真 07:NTT グループの展示ブース状況
写真 08:JBA( 日本民間放送連盟 ) が IBC Award 受賞セレモニーの様子
効果的な新しいコーデッ
ク HEVC(H.265) で、
況、技術動向を反映した出展物が多く、見
らに大きな看板(写真 04)を掲げ来場者
世界各国からの 多く企業のブースで出展
学者の関心を集めていた。
を圧倒し、広大なブースいっぱいにハイエ
されていた。NTT グループは超低遅延の
詳細なことは次号に譲るが、会場を廻っ
ンドの 4K カメラとハンドヘルドカメラ、
H.264 に加え、世界最高性能の H.265 エ
てみて、日本経済の先行き不安にも拘らず、
低照度用カメラ、4K リファレンスディス
ンコードエンジンを搭載したソフトウエア
日本企業の最先端技術への評価、注目度は
プレイ、主力の各種レンズ類などを展示し
コーデックエンジンなど多彩な符号化技術
大変高く、本稿では主にそれらについて概
ていた。
を公開していた(写真 07)
。
略を紹介してみたい。
パナソニックは、ハイエンドのショルダ
会期中の中日の夕刻、セレモニー会場
ソニーは第 12 ホール 2 階全フロアを
ー型 HD カメラ、AVCULTRA 対応のハン
の Big Screen で、IBC Awards の 表 彰
使った会場随一の巨大なブースの正面に”
ドヘルドカメラレコーダと microP2 メモリ
式が盛大に行われた。様々な部門での表
Beyond Definition”のテーマを掲げ、壁
ーカードレコーダ、Ultra Wide 映像システ
彰の中で、JBA(日本民間放送連盟)が、
面に巨大な 4K ワイドディスプレイを設置
ムなど HDTV 製品がメインで、4K 関連と
Content Delivery 部門で、NTT Com、富
し、その背面に 4K 大画面シアターを設け、
してはプロトモデルの Varicam カメラと新
士通、ジュニパーネットワークスと共に
迫力ある高精細映像を映し、見学者を魅了
製品の LCD モニターくらいだった。
(写真
Innovation 賞 を 受 け た( 写 真 08)
。IBC
していた。主な出展物の 4K ライブ制作ソ
05)
Award の受賞は昨年の NHK 技術研究所に
リューションとして 4K カメラや精細で色
Future Zone では、NHK が IBC 直前の
鮮やかな 4K 有機 EL モニターなどに加え、
IOC 総会において、2020 年の東京オリン
最先端ワークフローなどを公開していた。
ピック開催が決まりいよいよ本放送開始が現
(写真 03)
実のものとなった 8K スーパーハイビジョン
今や世界のリーディングカンパニーの感
(SHV)と 9 月から総合テレビで放送が始ま
のあるキヤノンは、展示会場のあちらこち
ったハイブリッドキャストを展示し、欧州で
続くもので、わが国の技術力が高く評価さ
れているということで喜ばしい限りである。
Ph.D. Takehisa Ishida
映像技術ジャーナリスト
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