ηJU 大阪市立大学生活科学部紀要・第4 0巻 ( 1 99 2 ) 空間認知と大脳損傷側との関連についての検討 板垣晶子 I)・坂本吉正・萱村俊哉 2)・王昭文 On t h e Relation Between Spatinal Congnition and L a t e r a l i t yo f Cerebral Lesion AKIKO ITAGAKI,YOSHIMASA SAKAMOTO,TOSHIYA KAYAMURA a ndW ANG CHAO-W E N 中枢性視空間認識障害の報告は少なくなし 1。 しかし, のテストを行った。すなわち, a) 立方体コピーテスト その多くは成人における症例を元にしたものであり,小 b) 手掛かり付き立方体コピーテスト 児に置ける論文は非常に少ない。小児に置ける論文が少 体テスト,である。以下,具体的な方法を述へる。 ない理由のーっとして,視空間認識に関する検査方法に ( 1) Bl o c kc o n s t r u c t l o nt e s t c) kohs立 方 K式発達検査 1)の積み木を 1 0個用いて行う。制作する 問題があると考えられる。 このため,本研究は小児を対象に臨床的に利用可能な o .1 モデルは K式発達検査を参考に 5種類,以下の図 1N 検査方法を考案し,小児大脳半球損傷患者における視空 5である。提示方法は 3種類で,①透視図を提示する, 間認識について調査を行う事にした。今回は,そのうち, ②写真を提示する,③実物を提示する,を行う。提示は 小児の大脳半球障害者における,構成能力の障害, こと ①②③の順。評価は所要時間,誤った積み木の数を記録 o n s t r u c t i o napraXlaに焦点 を当ててみた に構成失行c した。回転に付いては部分的な物は減点の対象としたか, い。すなわち, この検査を健常児における施行結果と我々 lockの数か得 全体的なものは減点しなかった。誤った B か発見した 4例の小児に置ける興味ある知見に付いて述 点とされる。満点は O点。点数か少ないほど優れている。 べてみたい。 1 0名に予備テストを施行し, 大阪市内の保育園児, 1 4 才以上の小児に付いては本テストか発達上,無理なくで 1.対象 きるテストであることを確認した。 ( 1 ) 最初に,健常児を対象にこの検査を行った。対象者 は,いずれも大阪市住吉区内の K保育園, F保育園に通 1 0名であり,男女比はほぼ 1:1である。 園の健常児 1 ( 2 ) 大脳半球患者については, HT病院小児科脳波外来 患者2 4名である。年齢は 3歳から 2 7 歳(平均年齢 1 1歳 , 分散 7: 5 2 )である。大脳一側損傷患者のうち,構成失 N . o2 N . o1 行を示した大脳損傷患者 5名には後述のさらに詳しい検 査を行った。 2.検査方法 全員に B lockc o n s t r u c t i o nt e s tを行った。 その上で構成失行が見られた場合には次の a) c) 1)大阪市立大学生活科学部,児童保健,現,石川県立 N . o3 中央病院言語療法科 2)大阪市立大学生活科学部,児童保健,現,武庫川女 N . o4 N . o5 .1 B FIg lockc o n s t r u c t l o nt e s tmodel 子大学 (1) r -1 2 8- 人間福祉学 • • • • • • • Fi g . 2 Blockcopyt e s tmodel • g . 4 Blockcopyt e s twit hh i ntN o .2 Fi t 宮 ‘ ' 、 , 、 、 』 レ 柿 γ1 ? 了王子 e ; γ "一 , 、 s J, 、 、 F 、, ¥ , , d ・ , 件 h う〆'〆〆 , ,司 , . l~~L. ‘' l " ・ 3 . 1 " '" 1, も " ._ . I ,I e今 - , 'a''' ・ 3 • ‘ ‘ 令 , 《 4 y , ._ " " ' 〆 q'- ~~ 宇 , ' ミ 内不 I p I~ #J ~ ‘l 品 ' : ' l ・ ‘ li ノ・ _y <) ~ ‘ ' '/ . " • •• 、4P': Fi g .3 B lockcopyt e s twithh i n tN o .1 ( 2) 立方体コピーテスト 2) 検査者は図 2の立方体を提示し,同じ物を描くよう教 示する。点数化はしない。脳損傷患者のうち, 7才以上 Fi g . 5 Kohsc ubet e s tmodel の患者に行った。 評価は所要時間の測定と誤ったブ、ロックの数によって判 ( 3) 手掛かり付き立方体コピーテスト 立方体テストの基準 断した。所要時間については Kohs 図 3, 4にあるような図形を提示し,書き加えて見本 と同じにするように教示する。点数の数量化は行わない。 に従って判定を行った。 <症例 ( 4 ) I くo h s立方体テスト 3)4) 1 > 構成失行を示した右大脳半球損傷例を以下に示す。 1 6個の積み木を使った知能検査である。このテストは .T 男性 患者名:T 対象年齢が 6才以上なので,今回は簡易化のため, WIS 年 令 8才 6カ月 C-Rの積み木を用い,図 5の 6項目について行った。 1 9 8 3 .5 . 3 1生 主訴:左半身不全麻療と痘轡 (2) 、 、 ハud nノU 板垣ほか-空間認知大脳 0, 1 1に示す。 透視図提示物を,図 7, 8, 9, 1 F i g.7 Fl g .6 診断:①右脳半球脳内 出血 ②空間認識障害 病歴: 8カ月時に左半身不全麻療の訴えで兵庫県立 T 病院を受診。 痘号室発作は 2才 6カ月, 3才 6カ月, 7才 6カ月時の 3回生している。 7才 1 0カ月 FI g .8 i 容血性貧血治療のため牌臓摘出手術を行う。 CT所見:図 6に示すように, 8カ月時より右脳内出 血か見られた。 EEG (脳波) 所見: 8カ月時には左右とも Splndle (紡錘波)か見られず。 3才 6カ 月 時 右 に S plke ( 糠波)か見 られた。 その後 も,右半球に Spl keか見られつつ けていた。 7才 3カ月 時より,両側に S plkeか見られている。 8才 6カ月時のテスト結果を次に示す。 ① F ig.9 Blockc o n s truc t i ont e s t 所要時間 正誤 透視図 1 l '5 2 "2 8 誤答 2 2 9 "4 7 誤答 3 4 6 "4 5 誤答 4 1 9"4 7 誤答 5 1 3 "9 3 誤答 6 "7 5 正答 2 3 "2 5 正答 3 1 1 "2 8 正答 4 9 "8 8 正答 5 1 2 "9 4 正答 3 7 "5 7 正答 4 7 "8 9 正答 5 1 7"0 6 正答 写真 実物 Fi g . 1 0 Fi g . 1 1 (3) r ハ U Ei 噌 η﹃U 人間福祉学 Ta bI e .1 1 .Q.t e st 下位テスト 評価点 8 才6 か月平均 才6 か月平均 下位テスト 評価点 8 知識 6 1 2 絵画完成 1 2 1 0 類似 1 3 1 0 絵画配列 9 1 1 算数 5 1 2 積み木模様 6 1 0 単語 1 0 1 1 組み合わせ 3 1 0 理解 7 1 0 符号 7 1 1 l才 6カ月時は 9 10 (K式発達検査〉 F i g . 1 2 Cubecopyt e s t 2才 6カ月では 9 4で「形の弁別 にやや時聞がかかる。」 (K式発達検査)。知能レベルは悪くないが麻療によって 操作が困難なことがある。 8才 6カ月時の結果は以下の ( j J→ 通り。 V 1Q-9 0, P 1Q-79, 全 1Q82 ① J 心理判定員の印象で、は「下位テストにおける項 目 ごとの ばらつきが大きし、。積み木模様,組み合わせが困難。算 ~~. ① ゆ 数においてはおはじきなどの目で見る手掛かりを用いた ⑤← 場合のほうが暗算よりも難しい。学校の欠席か多いため • か,理解力の低下が見られる。 空間認識能力の低下が見られる。手と自の供応が完成 していないようである o サ • <症例 @ J 2 > 構成失行を示した左大脳半球損傷例 ③ 1 9 8 0 . 1 2 . 2 8生 検査時年令 1 0才 1 0 カ月 患者名:A.K Fi g. 1 3 Cubecopyw i t hh l n t 主訴:痘響発作 精神運動発作から全身性痘直性発作 に移行 この時,写真,実物に対する反応は正常。 ② 立方体コピ ーテスト結果を図 1 2に示す。 診断:先天性くも膜下嚢胞。 ③ 立方体コピ ー手掛 かり付き結果を図 1 3 に示す。 3 7 0g。正常分娩。発達歴にも 生 育 歴 :出生 時体重は 3 検査者印象では,手掛かりがあまり役に立つてないよ うである。描きながら,あまり見本を見ょうとしない。 Kohs立方体テスト結果。 ④ 特に異常は認められず。 IQは 6才 1 1カ月 時 に は 1 1 0(WISC-R) 1 0 才1 1カ月 1 0(WISC-R) なお学校の成績は良好 時は 1 病 歴 : 5才 8カ月時走っているときに突然、倒れる。 5 所要時間 正 誤 分間意識を喪失。 課題 4 l '0 4 "4 8 正答 5才 9カ月時 向上 の訴えで兵庫県立 T病院受診し投薬 5 2 '2 9 "6 2 正答 を受ける。その後痘聖堂性発作は見られない。言語障害は 6 3 '3 1 "0 0 正 なし。視覚的障害も特記すべきことはない。 答 EEG (脳波〉所見 : 所要時間はかなりかかる。しかし,上肢運動機能制限が 5才 9カ 月 時 左 半 球HVS 4C/Sの小糠徐波結合。 見られるため, この事実を構成失行のみによる結果とす 9才 1 1 カ月以来,発作波は消失。 CT所 見 :1 0才 1 0カ月時の CT • MRI所 見 で は , 左 ることはできない。 視覚的な問題に関しては特記すべきものは見当たらな し 、 。 側頭葉にくも膜下嚢胞か見られる。 今回の検査結果を図 1 4-1 6に示す。 IQは生後 8カ月時で9 50 (K式発達検査) (4) -1 3 1- 板垣ほか:空間認知大脳 幸 《 。 。 同司民 ‘ . v -E4v s t y m , 4 e G n z a F 司、 , 、 @ F i g. 1 4 ① a , tAV/' !?tjiv e e 。 e s twithh l n t F l g . 1 7 Copyt F l g. 1 5 e s tN O . 5 6 F ig .1 8 Kohscubet I およそ正しく書けている。しかし,書き順から見て,本 e s t F l g . 1 6 Cubecopyt 人は立体として正確な認識をおこなっていないと考えら れる。 ① ③ Blockconstructi ont e s t 結果 正 誤 目 透視図 1 4 4 "9 0 2 4 6 "5 9 3 2 6 "3 9 正 会 立 o 4 1 2 " 66 正 会 主 ιョ 5 4 7 "0 0 夕 立 o 笈 o 示す。 おおよそ正しく書けてはいるか,書き 1 ) 煩から分析してみ ると正常な認識か行われているとはいえない。 ④ Kohs立方体テスト検査結果 誤 所要時間 会 玄 o 課題 1 1 4 "3 9 正答 正 正 会 主 Eコ 課題 2 1 7 "7 2 正答 2 3 "5 7 正 笈 Eコ 課題 3 1 0 "1 2 正答 5 4 "6 7 正 会 主 o 課題 4 4 7 "3 3 正答 課題 5 4 0 "5 4 誤答 1, 2, 5提示時に制作不可能であった。患者 図1 8 参照 も「わからなし、。」という。これにより,構成失行と判 課題 6 定した。透視図 5に関しては,全く制作不可能であった。 ② 誤 題 課 3 4 "3 写真 透視図 所要時間 誤 誤 項 7に 立 体 図 形 の 手掛 かり付きコピーテスト結果を図 1 立方体コピ ーテスト結果を図 1 8に示す。 l '4 0 "4 4 . (5) 誤答 図1 8参照 F -1 3 2- 人間福祉学 課題 6では本人か 「できない」 と言って,止めてしまっ ・ - た。制限時間は, 4 5秒以内である。課題 4と 6で制限時 間超過となっている O これによっても空間認知障害があ る。提示のカートの赤い部分を「図J,白い部分を「地」 積み としているように考えられる。課題 5で見られた 「 木か一個,欠けている」状態も白い部分を地とした結果 ではなし 1かと考えられる。 <症例 3 > • 構成失行を示した左大脳半球損傷例 ( 2 ) F i g. 1 9 Cubecopyt e s tN O . 1Fi g. 2 0 Cubecopyt e s tN O . 2 患者名:K .U 1 9 6 4 .1 .1 生 検 査 時2 7才 6カ月〉 (男性 主訴:右半身痘聖堂,右半身麻痩。 向上の訴えで l才 7カ月に兵庫県立 T病院を受診した。 生育歴:出生時には異常は認められなかった。生下時 体重は 2 9 6 0g。発達については,言語には遅れかあり, ー ー . . . 圃 圃 ‘ 3才頃より発語か見られた。 1才 4カ月の 1Qは7 8( 鈴 木ヒネ一式) 1 6才 1カ月 の 1QはV1Q67, P 1Q69, 全 1Q52であった。 一一.,. . . ・ • (WISC) 病歴:生後 1カ月と 5日で痘壁発作を初発。右半身麻 療を残す。 3才 2カ月 頚動脈写 (CAG),気脳写 (PEG),によ F l g. 1 2 Cubecopyt e s t り,先天性脳梁欠損か判明,再度 CAG, VAG行い, 孔脳症と診断される O 6才時 K医大付属病院を受診。痘箪に対し脳定位手術 2回 目 全 問 正 答 立方体コピ ーテスト結果を図 1 9,2 0に示す。何度描 を受る。左赤核前野の切断も行われた。その後,痘筆発 ② 作は 1日に 2 " ' ' 3回となった。 いてみても『難しい。』という。 2 6才 8カ月時 M RI 所見 ③ 立方体コピー手掛かり付きについては図 2 1の通り, Jと言っている。この絵か積木と 同じ立方体である,という事は理解しているらしし ' 0 脳梁の先天的部分欠損か認められている。最近では小 本人は『自信かない。 さい発作か続いてはいるが,比較的落ちついている。 脳波 (EEG) 所見: 1才 7カ月時 ④ 左大脳半球は低電圧,平坦で活動性が乏しい (low Kohs立方体テスト結果を図2 2に示す。 題 所要時間 提不 1 2 2 "4 3 正答 波 ( s p i k e ) か見られる。 2 1 4 "6 9 正答 その後の EEGにおいても,左側は活動か乏しいことが 3 3 5 "3 8 正答 p i k eが見られ続けた。発作と 多く,右側には不規則な s 4 l '0 0 "2 6 誤答 寛解を繰り返して現在に至る。 5 3 8 "9 5 正答 6 l '3 1 "0 6 誤答 課 v o l t a g ea c t iv l t y )。 3才 1 1カ月時,両側の前頭葉,側頭葉,頭頂葉にて,赫 ① Blockconstruchont e s t 結果 正 誤 1回目 課 題 所要時間 提示 6については『自信かない』と言う。 正 誤 透視図 1 1 3 "0 0 誤答 2 5 "8 0 正答 3 1 6 "2 0 正答 4 3 7 "0 8 正答 <症例 4 > 構成失行を示した右大脳半球損傷例 ( 2 ) を以下に示す。 患者名:S.K S1 9 6 8 .7 .1 1生 2 3才 4カ 月 男 性 主訴:髄膜炎 ( 6) ムンプス脳炎による痘筆,脳波の異常 、 -133- 板垣ほか :空間認知大脳 凶~I可 E望 A : J 川 , 1 . . 一 一 .. 生育歴 :妊娠経過,分娩経過ともに正常,生下時体重 Fh 2 .ー・ JE w - -' ・ .. 十 l-FJ .・ 円 y十 一い で ー A J t v FU ¥ 句 ‘ リ ' ・V P・ ヲ‘ ,一 jua -点、リいケ叫ん ・ 一 一 し 与 ・ 守︿一 一 jddht ん 一一 一 -わ ん と で 一ζー ' F i g . 2 2 Kohsc u b et e s t C 3 ー -eh. 今、 ⋮rJ Ku弘 治 コ ヲ ヨ ア 一 K 仏1 wM J九一ヤハ コ 一 々 い ち り いi 一一 f J - : r B FIg .2 3 P O l n t l n gt e s t 一 → 4 0 0 0g,黄痘もみられなかった。発達も正常, 3才時, ムンプスにより髄膜炎を併発,家族歴には異常なし。 0才 5カ月時 P1Q57 (WISC) 1 5才 知能検査では, 1 4カ月時は, V 1Q47, P 1Q57,全 1Q45 (WISC) である。 0回程 病歴: 3才 2カ月時,髄膜炎後遺症により 1日5 度 , F l g . 2 4 Kohsc u b et e s t 1回に つき 1 ' " ' 2秒の四肢の窪響か生じた。脳波の 0才 3カ月時に兵庫県立 T病院を受診した。 乱れが続き, 1 その後は,精神運動発作と考えられる発作が続いた。ま 透視図に対しては「できない Jという。 た,左半身不全麻輝か疑われた。 EEG (脳波)所見: 透視図は全く理解されていなし、。写真提示に対しては, 1 0才 3カ 月 時 練 除 波 結 合 ( S p i k eand wavecom 申 正答か得られた。 p l e x )3 . 5 ' ' "4c/s が右大脳半球前頭葉にあり。その後 3 ) 透視図 2を提示し,以下のように 3種の模型〈図 2 を用いて p O l n t l n g検査を行った。 も向上の状態が続いている。 CT, MRI所見:2 2才 0カ月時の CT所見では,右大 正答は ( B )である。 C )のどちらかは 「仇)は違う。」と答えた。しかし, ( 印 と( 脳半球の萎縮か認められている。また,右大脳半球後頭 葉に石灰の沈着か認められている。 ① 決められなかった。ここでも透視図は理解されていなし、。 今回のテスト結果を以下に示す。 ② 立方体コピ ーテスト Blockc o n s t r u c ti ont e s t ③ 立方体コピーテスト手掛かり付き 両テストとも拒否。一本の線も描けない。 目 所要時間 正誤 ④ 透視図 l 4 4 "4 9 誤答 課題 3で失敗した。課題 2の制作と同じものを作りかけ, 拒否 それに課題 3を組み合わせた。 項 2 一 写真 3 4 実物 2 一 3 山一山一同一九一川 3 拒否 Kohs立方体テスト結果を図2 4に示す。 考 察 正答 我々か使用した B l o c kc o n s t r u c h o nt e s tは,症例 1, 正答 2, 3, 4それぞれにおいて構成失行の検出か可能であっ 正答 正答 正答 た。このテストは,幼児にも施行可能であることから, 単なる「知能障害」とは異なった小児空間認知障害像を 反映する事ができたと言えよう。 拒否 責任半球による構成失行の性質の違いは長い間論争の (7) -1 3 4- 人間福祉学 焦点となっているが,明確な違いは明らかにされていな これに対し,左脳損傷患者における空間認識障害は情 1, 4は右半球か,症例 2, 3は左半球 decordlng) 障害といえる。情報転換障害の 報の転換 ( い。今回,症例 か責任病巣と考えられる O 右 半 球 障 害 の 3例 に 共 通 し て 見られたのは, 1例 で は 「図 と 地 の 分 化Jの異常が考えられた。 1 ) 練習効果かない。 2) 手 掛 か り を 認 識できない事てあった。また,症例 引用文献 1, 4は今回行った すべてのテストで空間認知障害か指摘されており,重度 1) K式 発 達 検 査 手 引 書 京都国際社会福祉センター の空間認知障害があると言えよう。一方,左半球損傷で 2) Hecaen. H.: A comparlson o fc o n s t r u c t l v e 2, 3に関しては 1)練習効果かある, 2) 病 d e h c l t s followlng r i g h t and 1 e f t hemlsphere ある症例 巣の大きさに拘らず,障害が軽症である, 1 e s i o n s.Neuropsyco1ogia 1 9 7 4 ; 8 : 2 8 9 3 0 3 といえる。こ れらは, Hecaenら,浅川らの意見を支持するものとなっ 3) Kohs立 方 体 組 み 合 わ せ テ ス ト 使 用 手 引 き . 三 京 書 f こ 。 房 B10ckc o n s t r u c t l o nt es t において,透視図を提示す 1 9 5 4 4) 浅川和夫:構成失行についての考察.精神神経学雑 ることによって,空間認知障害か顕著に現れた事は,大 誌. 1 9 7 4 : 7 6 : 4 8 5 4 9 6 変興味深い。特に,症例 3では透視図提示時のみに障害 5) Benton.A.L:Dlffarentia1behaviora1e f f e c t si n s 立方体テストを行った時と か現れた。これには, Koh frontal1obed ls e a s e . Neuropsychologia,1 9 6 8 ;6 : 同様な「図と地の分化Jの異常が反映されていると考え 5 3 6 0 . “図" e so fv l s u a lc o n s t r u 6) JamesL,Mack:Thebas を見付け出す事かできずに混乱してしまったように思わ c t i o n a 1 disabihty i np a t i e n t s with u n i l a t e r a l れる。また,右半球傷例に於いても透視図に戸惑う様子 cerebral1eslons.C o r t e x .1 9 81 :1 7 :5 1 5 5 3 2 られよう。線分のみによって描かれた透視図に, .,Hecaen,H . :S te reoscoplCv i s l o n 7) Benton,A.L か見られた。これは,線分方向性知覚障害による形態知 l n parents with u n l l a t e r a 1c e r e b r a ld i s e a s e . 覚異常か考えられよう。 Neurology,:1 9 7 0 ;2 0 :1 0 8 4 1 0 8 8 . まとめ .,Barton,M.1 . :Dlsturbance l n 8) Benson,D.F c o n s t r u c t l o n a la b l l i t y . Cortex,1 9 6 4 ;4 :1 9 4 6 大脳損傷患者において,小児て、 も成人と同様に空間認 9) Warrlngton,E.K.,James,M. andKinsborn, 知障害か見られた。ただし,小児独特の代償機能の発達 かみられ, 2次元に対する認知は良好である。 右脳損傷患者に置ける空間認識障害では, M.: Drawingdlsabihty i n t e l a t i o nt o laterahty I 線分方向 o fc e r e b r a 1 1 e s i o n .Brain,1 9 6 6 ;8 9 :5 3 8 2 (平成 4年 1 0月1 2日受理〉 性認識障害」か関与していると推察される O Summary r o j e c t l o n. Chlldrenwithbralni n ) U r l e SwereexamlnedbyBlockc o n s t r u c t i o nt e s t,deslgnatedbyourp The4c h l l d r e no f2 7p a t l e n t shavehadremarkables t e r e o a g n o s i a . Whilet h ep a t i e n t swlth1 e f tc e r e b r a l l e s i o nshowedmoderatep a t i a 1agnosia,ando f t e nshowedabnormald i f f e r e n t i a t i n g“t h ef i g u r efromt h e h edecodingdisturbanceo fc e r e b r a lp r o c e s s .t h ep a t l e n t swithr i g h tc e r e b r a ll e s l o n ground",suggestedt 1 s oo t h e rcogni t i o n a 1d i s t u r b a n c e s . r e v e a 1 e ds e v e r estereoagnosia,anda ThlSpaperdocumentedt h a tsimllardlsorderso fr e c o g n i t i o nl nc h i 1 d r e nasl na d u l t s . (8)
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