沿革編 ※ 1 スカラップ:溶接交差部に入れる切欠き き項目が多く、溶接施工面では細部の課題があったため共業他 イプを柱・梁に使う構造であることから外観仕上がりに配慮し、 社と連携を密にして、実物大の発泡スチール製模型による施工 特に現場溶接継手となる柱と梁の取合部が 11 段もあったため 性の確認ののちスカラップ ※1 を回避した工法を提案、良好な 仕上がりを導いた。 九段のお堀端に建つ戦没者追悼平和祈念館も特徴ある工事で ある。1996(平成 8)年にゼネコンの共同企業体から鉄骨製作 約 1,100 t を受注したが、建物の外周が円錐形で柱・梁・ブレー スが複雑に組み合わされた構造となっており、部材の形状もさ まざまであったため溶接作業の可否や製品輸送方法などに細心 の注意を払った。 横浜ランドマークタワーなど 「みなとみらい 21」 で実績 横浜ランドマークタワー(建設中) (神奈川県横浜市西区みなとみらい) 横浜ランドマークタワー(竣工) パシフィコ横浜(竣工) (㈱横浜国際平和会議場:写真提供) 154 同時期に MM21 地区ではクイーンズスクエア横浜・日石横 浜ビルなどの高層オフィスビルについても鉄骨製作を請負って いる。 臨海副都心を中心に湾岸部での実績が続く 東京都の臨海副都心計画では新しい時代にふさわしい業務機 能や居住機能を備えた建築物が計画され、当社は橋梁のみなら ず建築鉄骨の工事もたびたび受注する機会を得た。 中でも有明(10 号埋立地)に広がる東京テレポートタウン の主要施設と位置付けられていたのが東京国際展示場(東京 ビッグサイト)で、当社は 1992(平成 4)年に東展示場とガレ 副都心・千葉市の幕張新都心とほぼ同時期に進められた計画に リア棟の製作および建方を受注した(当社分 4,202 t)。ガラス 横浜市の「みなとみらい 21」(以下、MM21 という)がある。 越しに陽光が降り注ぐガレリア(回廊)を挟んで展示ホールが 造船所や国鉄の貨物駅などがあった横浜港に面する一帯を再開 3 つずつ並ぶ格好となっており、3 つのホールの間仕切りを取 発して 21 世紀にふさわしい地域を整備しようというもので、 り払えば両側に2つの大空間を形成できるのが特徴で、コンボッ 三菱重工業横浜造船所の移転に伴って開発事業が本格化、沖合 クスと呼ばれる四角い支柱 8 本で屋根を支えた。この工事では の埋め立てが始まった。 屋根やサッシ・ガラス・ブラインド・天井内装工事がすべて完 この造船所跡地に計画されたのが、横浜ランドマークタワー 了してから、地上で組み上げたトラスを吊り上げコンボックス である。地上 70 階建て・塔屋 3 階建てで地上高さ 296m、東京 で受けて架設するリフトアップ工法を採用しており、当社も国 都庁を一気に 50m 追い抜いて当時国内一の超高層ビルとなり、 内最大の展示ホール完成に一役買った。 2013(平成 25)年まで首位の座を維持していた。下層階は鉄 1994(平成 6)年には東京ファッションタウンビルの建築鉄 筋コンクリート造で 9 階以上が鉄骨造となっており、鉄骨の総 骨も受注している。東京国際展示場の北西側に位置する建物で、 鋼重は約 6 万 2,000 t に及ぶ。当社は 1990(平成 2)年にゼネコ ゆりかもめの駅を挟んで工事現場が並ぶこととなった。 で、都心および臨海副都心への電力供給を担う施設として建設 震設計もさることながら、耐風設計にも重点を置いた構造設計 が進んだのが東京電力のテプコ豊洲地下施設であった。国内で がなされた。耐風性能を向上させるため水平剛性の高い骨組構 初めての 50 万ボルト対応の直径 144m・深さ 29m の地下施設で、 造が求められ、その結果、鉄骨の架構形式は建物外壁面に沿う 建物全体にかかる土の圧力を分散して受けられるよう円筒形の 外側チューブとサービスコア周りの内側チューブの二重チュー 地下構造物となった。鉄骨の工場製作と現場施工は別工事の扱 ブ構造となり、それらが集合する柱の仕口部分は極めて複雑な いで、まず工場製作は東京電力から当社を含め 3 社が 1 万 8,000 t 東京国際展示場(東京ビッグサイト) (竣工) (当社施工分約 6,000 t)を直接受注し、現場施工については全 横浜ランドマークタワーとともに MM21 地区の代表的な建 量をゼネコンの共同企業体から当社が一括して請負った。この 物が、1991(平成 3)年に受注した国立横浜国際会議場(パシフィ 工事の最大の特徴は部材の板厚が厚く、重量も重いという点で コ横浜)である。国際会議場や展示ホール・ホテルなどで構成 ある。特に柱の板厚は最大 90㎜の極厚材で、しかも小梁を除 されるコンベンション施設で、MM21 地区の国際交流機能を担 いて現場接合はすべて溶接であった。全体を通じて溶接量が多 う中核的な存在である。当社ではゼネコンによる共同企業体か いことから品質管理を強化する必要があり、当社では溶接技能 ら全体鋼重の 6 割に相当する 1,075 t の鉄骨製作を請負った。構 者に対する指導の徹底や溶接施工管理基準の策定・溶接記録に 造的には国際会議場の大架構(最大スパン 48.8m)の屋根トラ 基づく日常的な管理などに取り組んだほか、柱については京橋 スに特徴があり、鉄骨骨組の厳密な決定や納まり詳細、鉄骨自 清水ビルや日石横浜ビルで実績のあった全自動溶接ロボットを 重によるたわみを考慮した製作キャンバー等への対処などが必 導入して、無事に工事を完了した。この時の実績が次の時代、 要であった。それ以上に慎重を期して製作にあたったのがシー 地上部の建築にもつながっていくのである。 サイドロビーの鉄骨であった。デザイン上の仕上げ材となるパ 東京国際展示場(東京ビッグサイト) (建設中) (東京都江東区有明) 臨海副都心を構成する有明や台場でさまざまな工事が進む中 複雑な特殊構造ゆえに製作には苦労を伴った。この建物では耐 部材構成となった。 国立横浜国際会議場(パシフィコ横浜)(建設中) (神奈川県横浜市西区みなとみらい) 仕口部のねじれには特段の注意を払って製作した。 東京湾沿いのウォーターフロント開発として、東京都の臨海 ン 26 社による共同企業体より 2,330 t の鉄骨製作を受注したが、 ◉ 第 8 章 旺盛な需要を背に受けて 一方、幕張副都心でも新造ビル工事が続いたので関連して触 東京ファッションタウンビル(東京都江東区有明) テプコ豊洲地下施設(東京都江東区豊洲) 155
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