41610 日本建築学会大会学術講演梗概集 (東海) 2012 年 9 月 シミュレーションツール シミュレーションツール BEST によるオフィスの熱負荷・熱環境解析 第 16 報 週休 2 日運転の空調設計用蓄熱負荷の感度解析 正会員 正会員 正会員 最大熱負荷 1.序 序 本報では、前報で定義した空調設計用の予冷熱終了時蓄 熱負荷について、主要な要因の影響度を確認するための感 度解析を行い、また、蓄熱負荷と相関の強い建物特性値に 蓄熱負荷[W/㎡] 蓄熱負荷[W/㎡] 平均気温[℃] 40 30 20 平均気温 日照時間 10 40 連日運転(E) 250 200 150 100 50 0 連日運転(S-W-Nインテリア) 20 0 80 週休2日運転(E) 週休2日運転(S-W-Nインテリア) 60 40 20 0 旭 札 青 盛 秋 仙 福 新 宇 水 東 名 大 京 高 広 福 鹿 那 川 幌 森 岡 田 台 島 潟 都 戸 京 古 阪 都 松 島 岡 児 覇 宮 屋 島 都市 図 1 主要都市と冷房蓄熱負荷 20 蓄熱負荷[W/㎡] 蓄熱負荷[W/㎡] 平均気温[℃] ついて検討した結果を報告する。この解析は、 最終目的である実用的な空調設計用蓄熱負荷計 算法の開発のための基礎となるものである。休 日運転停止の影響を把握するために、連日運転 と週休 2 日運転の蓄熱負荷を対比させて考察を 行った。 2.都市 都市と 都市と蓄熱負荷 主要な都市の冷房蓄熱負荷を、図1に示す。 連日運転の蓄熱負荷は、冷房設計用気象条件の 地域差が小さいなどの理由から、寒冷地域と温 暖地域でほとんど差が見られないが、週休2日 運転の蓄熱負荷は、最大 10W/㎡程度の地域差が ある。蓄熱負荷休日成分に影響する気象は、設 計用気象条件ほど厳しいものではなく冷房期の 平均的な気象にやや近いといえる。図 1 には、 参考まで、冷房期の平均気温と平均日照時間も 示した。蓄熱負荷の方位差は、連日運転、週休 2日運転ともに 10W/㎡程度の差がある。このこ とは蓄熱負荷休日成分には方位差があまりない ことを示している。 主要な都市の暖房蓄熱負荷を、図2に示す。 日射量を含む設計用気象条件を使用している が、連日運転の蓄熱負荷は方位による差が小さ い。週休2日運転の蓄熱負荷は、休日の日中の 日射の影響を受けるため、方位によって大きな 差が生じている。東京の週休 2 日運転蓄熱負荷 で比べると、北室に対して南室は約 6 割程度し かない。関東以北の日本海側の都市で暖房蓄熱 負荷の南、北室の差が小さいが、これは日本海 側の都市の日照時間が短いことが影響してい る。 3.建物・空調の各種 建物・空調の各種要因の蓄熱負荷への影響 建物・空調の各種 要因の蓄熱負荷への影響 室奥行き、窓面積、窓ガラス種類、予冷熱時 間、夜間機器発熱を変更して、蓄熱負荷の感度 解析を行った結果を図3に示す。暖房、冷房と も室奥行きが狭く、窓面積が大きく、ガラス性 能が低く、予冷熱時間が短くなるにつれ蓄熱負荷は増加す る。また、週休 2 日運転蓄熱負荷は、連日運転蓄熱負荷の 1.6~1.9 倍あり、蓄熱負荷が小さいケースほど、その比率 は大きい。蓄熱負荷を単位床面積当たりの値で表示してい 日照時間[時間/月] BEST 10 0 平均気温 日照時間 -10 60 250 200 150 100 50 0 日照時間[時間/月] 蓄熱負荷 ○齋藤翔太* 郡公子** 石野久彌*** 連日運転(N) 連日運転(S) 40 20 0 100 週休2日運転(N) 週休2日運転(S) 80 60 40 20 0 旭 札 青 盛 秋 仙 福 新 宇 水 東 名 大 京 高 広 福 鹿 川 幌 森 岡 田 台 島 潟 都 戸 京 古 阪 都 松 島 岡 児 宮 屋 島 都市 図 2 主要都市と暖房蓄熱負荷 【図 1、2 注記】平均気温および日照時間は、1991~2000 年における 6~9 月 (冷房)、12~3 月(暖房)の平均を表す。 Numerical Analysis of Thermal Load and Environment in Office Spaces by Using a Simulation Tool, the BEST Part 16 Effect Analysis of Thermal Load Due to Intermittent Operation for HVAC Design in the Case of 2-Days Off a Week Shota SAITO, Kimiko KOHRI and Hisaya ISHINO ― 1227 ― ることから、室奥行きの違いにより値がかなり変わるが、 室奥行き 15m 以上になると変化は小さい。窓ガラスを透 明単板から透明ペアに変えると、週休 2 日運転の暖房蓄熱 負荷は 75%に減少し、冷房蓄熱負荷の増大はなかった。 可能性がある。 5.結 結 予冷熱終了時の蓄熱負荷を感度解析し、蓄熱負荷の実用 計算法の開発上参考になる特性を把握できた。 窓ガラス種類 基準断熱 高断熱 窓面積率[%] 室奥行き[m] 窓ガラス種類 東京 隣室温度係数[-] 奥行き6m 内壁構造 奥行き15m 奥行き6m 内壁量[㎡] 奥行き15m 鹿児島 室奥行き[m] 3、6、10、15(基準)、25 3、6、10、15、25 3、6、10、15(基準)、20、25 3、6、10、15、25 23、45(基準)、68 透明単板ガラス(基準)、 透明ペアガラス、 Low-Eペアガラス 3、6、10、15(基準)、20、25 3、6、10、15、25 23、45(基準)、68 透明単板ガラス(基準)、 透明ペアガラス、 Low-Eペアガラス 0.1(基準)、1.0 軽構造、中構造、重構造 軽構造、重構造(基準) 40、80、240、 軽構造80+重構造80 80(基準)、240、 軽構造80+重構造80 3、6、10、15(基準)、25 【表 1 注記】記載のない条件は基準条件と同じとした。 *宇都宮大学大学院工学研究科 博士前期課程 **宇都宮大学大学院工学研究科 准教授・工博 ***首都大学東京大学院 名誉教授・工博 50 0 100 50 0 0 1 2 3 4 熱損失係数[W/㎡K] 蓄熱負荷休日成分 週休2日運転の蓄熱負荷 [W/㎡] [W/㎡] 札幌 基準断熱 高断熱 基準断熱 室奥行き[m] 高断熱 窓面積率[%] 室奥行き[m] 東京 鹿児島 0 100 図 4 熱損失係数と 暖房蓄熱負荷(北室) 50 0 100 連日運転の蓄熱負荷 [W/㎡] 旭川 鹿児島 0 100 連日運転の蓄熱負荷 [W/㎡] 表 1 冷暖房蓄熱負荷計算ケース 蓄熱負荷休日成分 週休2日運転の蓄熱負荷 [W/㎡] [W/㎡] 冷房蓄熱負荷[W/㎡] 暖房蓄熱負荷[W/㎡] 冷房においては Low-E ペアガラスを 150 採用すると蓄熱負荷を低減できる。予 北室 北室 北室 北室 北室 冷熱時間を長くすると連日運転蓄熱負 連日運転 荷を低減できるが、週休 2 日運転と連 100 週休2日運転 日運転の差である休日成分はほとんど 変化しない。夜間帯の機器発熱が 3W/ 50 ㎡あると、発熱がないときに対して、 冷房蓄熱負荷は、連日運転のとき 4W/ ㎡、週休 2 日運転のとき 8W/㎡増加 0 し、その影響は無視できない。 東室 東室 東室 東室 東室 4.蓄熱負荷と相関の強い建物性能値 蓄熱負荷と相関の強い建物性能値 100 連日運転 実用計算法を開発する上で、蓄熱負 週休2日運転 荷と強い相関をもつ特性値を見つける 50 ことは重要である。熱損失係数と暖房 蓄熱負荷の相関について図4に、熱損 失係数および窓床面積比(窓面積/床 0 0 3 6 0.5 1 2 3 23 45 68 0 5 10 15 20 25 30 透 透 Lペ 面積)と冷房蓄熱負荷の相関について 明 明 oア 単 ペ w 室奥行き[m] 夜間機器発熱 窓面積率[%] 予冷熱時間 図5に示す。これらは表1の計算結果 板 ア | [W/㎡] [時間] E をプロットしたものである。熱損失係 ガラス種類 数と暖房蓄熱負荷は、都市別に相関が 図 3 各種要因と蓄熱負荷 強く、暖房においては熱損失係数から 蓄熱負荷を簡易に推定できる可能性が 【図 3 注記】横軸の □ は、基準条件を示す。また、夜間機器発熱変更による暖房蓄熱負荷 ある。しかし、熱損失係数と冷房蓄熱 は、夜間機器発熱に季節係数 0.3 を乗じた値の蓄熱負荷とする。 負荷の相関に関しては、建物が高断熱 100 100 仕様かどうかで傾向が異なった。一 方、窓床面積比と冷房蓄熱負荷の都市 50 50 別相関は強く、冷房においては窓床面 旭川 旭川 札幌 札幌 積比から蓄熱負荷を簡易に推定できる 東京 50 0 0 1 2 3 40 熱損失係数[W/㎡K] 0.2 0.4 0.6 0.8 窓床面積比[-] 図 5 熱損失係数、窓床面積比と 冷房蓄熱負荷(東室) *Graduate student, Graduate School of Engineering, Utsunomiya Univ. **Associate Prof, Graduate School of Engineering, Utsunomiya Univ., Dr.Eng ***Emeritus Prof., Tokyo Metropolitan Univ.,Dr.Eng ― 1228 ―
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