模擬地震波作成及び動的解析資料

地震関連の公開データ利用に関する技術資料
1..強震観測データ等の利用
阪神・淡路大震災を契機に、全国を網羅した各種地震観測網が整備されました。
強震観測網(K-NET、KiK-net)は、全国 1,028 箇所に約 20km の間隔で設置された K-NET と、全国約
700 箇所の地表と地中に設置された KiK-net からなり、現在、山口県内には K-NET が 19 箇所、KiK-net
が 17 箇所に設置されています。また、地下 100m 以深に設置した高感度地震計による微小地震観測網
(Hi-net)が 17 箇所、広帯域地震計と(速度型)強震計からなる F-net が 2 箇所設置されています。これら
の蓄積される強震記録はデータベース化され、公開されているため、それらのデータを利用することによ
り、私たちに身近な地域の地盤の地震応答特性等を把握することが可能になってきています。
全国
山口県付近
強震観測網(K-NET,KiK-net)観測点位置図
(防災科学技術研究所 HP より)
対象の観測地点の過去の強震観測データをもとに応答スペクトルを整理し、過去の最大の応答加速
度、固有周期、あるいは基盤と地表の応答加速度の違い等も把握できます。
K-NET(YMG014)データを元に作成した加速度応答スペクトル
地震関連の公開データ利用に関する技術資料
2.地震情報や断層モデルデ-タ等の地震情報の利用
最近の地震データに関しては、前述の強震観測網のデータを用いて把握できますが、過去の被害地
震のデータについては、理科年表や気象要覧、地震・火山月報(防災編)等で被害地震の規模、発生位
置等が公表されています。また、活断層のデータとしては、[新編]日本の活断層の書籍をはじめ各種文
献、あるいは独立行政法人防災科学技術研究所による地震ハザードステーション J-SHIS のように主要
な活断層帯をインターネット公開しているものなどがあります。
したがって、それらの公開資料を整理することで、対象地に大きな影響を及ぼす可能性のある地震あ
るいは断層を把握することができます。以下では、当社位置で影響が大きいと想定される代表的な地震
を把握した事例を示します。整理にあたっては、上記情報をデータベース化した SeleS for Windows
Ver6.1(㈱構造計画研究所)を使用しました。なお、SeleS for Windows Ver6.1 は、被害地震や断層を検
索し、各地震によりもたらされる最大加速度の計算を行うこともできます。図表より、当社位置で過去に
発生した地震被害としては、伊予・安芸灘地震による頻度が高いが、岩国断層帯を震源とした地震が発
生した場合に影響が最も大きくなることが予想されます。このように、対象地において地震の検討を行う
際に考慮すべき対象地震を絞りこむことができます。
岩国断層
広島湾-岩国沖断層帯
周防灘断層群主部
凡例
当社位置
当社への影響が大きい被害地震及び断層モデル(100km 範囲)
加速度最大値計算結果の被害地震(上位 2 地震)一覧表
No. 発生年月日
地震名
1
1905/6/2
2
1857/10/12 伊予・安芸
芸予地震:安芸灘
緯度
(°)
経度
(°)
地震規模
M
震央距離
(km)
34.10328
132.4975
7.25
61.85
34.00326
132.4975
7.25
61.1
震源距離
(km)
震源深さ
(km)
加速度
(cm/s2)
73.66
40
97.03
68.07
30
93.05
加速度最大値計算結果の断層モデル(上位 2 断層)一覧表
No.
断層名
地震規模
M
地震規模
Mw
震央距離
(km)
震源距離
(km)
震源深さ
(km)
加速度
(cm/s2)
1
岩国断層帯
7.59
7
22.71
9.56
11
436.83
2
周防灘断層群主部
7.59
7
34.72
16.1
11
345.13
注:断層および断層モデルの検索範囲は当社位置の半径 100km 以内の条件としています。
〒745-0802 山口県周南市大字栗屋 1035-6
TEL:0834-25-0031 FAX:0834-25-0049
http://www.soil-brain.co.jp
設計用地震動の作成技術資料
近年、高層建築物等の耐震設計では、動的解析によりその耐震安全性を検討する設計手法が用いら
れています。地盤の動的解析を実施する際に、従来は既往大地震による観測記録が用いられることが
ほとんどでした。しかし、1995 年の兵庫県南部地震以降、震源の特性やその地点の地盤の特性など、複
雑な現象の組合せで極めて強い地震動が発生し、大きな被害を与えることが指摘されてきました。その
ため、調査対象地点がどのように揺れるのかを予測して、入力地震動を評価することが重要になってき
ています。
以下では、時刻歴解析を行う際に必要な地震波の種類である告示波(H12 建告第 1461 号に基づく設
計用模擬地震波)とサイト波の作成事例について簡単に説明します。
(1)告示波
ここでは、旧建設省建築研究所等による「設計用入力地震動作成手法技術指針(案)) :(財)日本建
築センター,1992」に基づき、当社位置において設計用入力模擬地震波を作成した事例を紹介します。作
成にあたっては、(株)構造計画研究所による模擬地震波作成プログラム ARTEQ を使用しています。また、
告示波として、K-NET・YMG014 による強震動記録(芸予地震 2001.3)の実地震動位相を含む以下の水
平地震動 2 波を作成しています。
①告示波(プレート型代表実地震動;十勝沖地震 1968.5 八戸港 NS 位相)
②告示波(当社近傍の K-NET による強震動記録;芸予地震 2001.3 NS 位相)
600
600
max=297 9gal min=-216 3gal
400
加200
速
度 0
-200
gal
-400
max=287.6gal,min=-237.2gal
400
十勝沖地震八戸港NS位相…
加200
速
0
度
-200
ga
-400
芸予地震(YMG014)NS位…
-600
-600
0
20
40
60
80
時間 秒
100
120
0
20
40
60
80
時間 秒
100
120
告示の設計スペクトルに従った模擬地震波(水平動・レベル 2:Z=0.8)
なお、示した地震波は、極めて稀に発生する地震動の場合の解放工学的基盤における模擬波形に該
当しますが、同じ地点で同じ基準スペクトルを用いても対象とする地震によって地震波形が異なっている
ことがわかります。
(2)サイト波
サイト波は、将来発生する確率の高い地震源(地震基盤)の破壊を想定し、いくつかの高度な理論を
用いて解放工学的基盤における地震波形を求めるものです。ここでは、CTC 伊藤忠テクノソリューション
ズ(株)による D-WAVE を用いて亀田・杉戸の方法と入倉・釜江の方法の 2 つの方法により、岩国断層帯
による当社位置でのサイト波を作成した事例を紹介します。
なお、入倉・釜江の方法を行う場合には、想定地震近傍で発生した小地震の観測記録が必要となりま
すが、岩国断層帯に関わる観測記録は得られていないため、入倉・釜江の方法で用いる小地震を経験
的に求めることが可能な Boore の方法を用いて要素となる小地震動を作成しています。
各手法による予測結果のうち、最大加速度を示すケースの加速度時刻歴波形を下図に示しました。
設計用地震動の作成技術資料
a)亀田・杉戸の方法によるサイト波
b)入倉・釜江の方法によるサイト波
各手法によるサイト波の結果比較
図より、各手法とも最大加速度は 440~450gal の値となっています。また、加速度の立ち上がり時間の
違いを除けば、同等の結果が得られていると考えられます。
なお、求めた模擬地震波は全て工学的基盤上で定義されているので、任意の建物基礎深度での設計
用入力地震動が必要な場合は、水平成層にモデル化した表層地盤(1次元モデル)を作成し、工学的基
盤上の地震波を入力して応答解析を行う必要があります。以下には、(株)構造計画研究所による成層地
盤地震応答解析プログラムk-SHAKE+を使用して等価線形解析と時刻歴非線形解析の2つの手法で解
析を行った事例を示しています。
0
応答加速度 gal
600
200
400
せん断歪 %
1
0
0
-5
深-10
度-15
-20
m
-25
-30
-35
深-10
度
-20
m
-30
-40
十勝沖地震八戸港(等…
十勝沖地震八戸港(等価…
b)深度方向のせん断歪分布
a)深度方向の応答加速度分布
400
400
十勝沖地震八戸港NS位相(線形)
300
十勝沖地震八戸港NS位相(非線形)
300
max=382.3gal,min=-299.7gal
200
加
速 100
0
度
max=248.9gal,min=-262.8gal
200
加
速 100
度
0
-100
gal
2
0
-100
-200
gal
-300
-400
0
20
40
60
80
時間 秒
100
120
-200
-300
-400
0
20
40
60
80
時間 秒
100
c) GL-1.0m 深度での地震動 左:等価線形解析、右:非線形解析
十勝沖地震八戸港 NS 位相による等価線形解析(SHAKE)と非線形解析結果の比較
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地震応答解析に関する技術資料
平成 7 年の兵庫県南部地震では、ポートアイランドをはじめとする多くの埋立地で岸壁や護岸が大きく
はらみだし、液状化した背後地盤に大きな変位が生じました。このような現象は液状化に伴う「地盤の流
動化現象」と呼ばれることになり、単に液状化するかどうかの判定だけでなく、地盤の変位を含めた地震
時の挙動を把握する必要も増えてきています。
また、このような仕様準拠型設計から性能規定型基準に基づく性能設計を具現化するためには、動的
解析が必要となりますが、解析法は大きくは、下図に示すように全応力解析法と有効応力解析法に分け
られ、それらの数値解析手法としては、層状性や不均一性などの地盤の複雑さを考慮しやすい有限要
素法が代表的です。
下図には弊社で所有する解析プログラム名を記していますが、解析目的に応じたプログラムを有効に
活用しています。
動的解析法
全応力解析法
等価線形解析法
SHAKE:1 次元
FLUSH:2 次元
SoilWorks:2 次元
GTS:3 次元
逐次非線形解析法
簡易地震時変形解析法
ALID/WIN:2 次元
有効応力解析法
富士通 LIQUEUR:1 次元(FLIP 対応)
SoilWorks for FLIP(メインプログラム FLIP):2 次元
SoilWorks for LIQCA(メインプログラム LIQCA):2 次元
動的解析法の分類と弊社所有プログラム
以下では、2 次元液状化流動解析プログラム ALID/Win の解析事例と液状化による構造物被害予測プ
ログラム FLIP による解析事例を示します。
①2 次元液状化流動解析プログラム ALID/Win
ALID/Win は、ALID 研究会の議論に基づいて開発されたプログラムで、液状化に伴う残留変形解析を
行う 2 次元の流動簡易評価法プログラムです。液状化に伴って発生する過剰間隙水圧の消散による沈
下(液状化層の圧縮)とあわせて、地盤の残留変形量を求めることができ、河川堤防への適用事例が多
いようです。
②液状化による構造物被害予測プログラム FLIP
FLIP は、有限要素法に基づく 2 次元動的有効応力解析プログラムです。液状化する地盤上に構築さ
れた構造物の地震による被害の予測機能を持ち、岸壁や盛土構造物等の港湾施設の耐震解析に広く
用いられています。弊社では、一般社団法人 FLIP コンソーシアムで公開・販売されている FLIPVer6.0.6
(Pre Post Processing は SoilWorks for FLIP Ver.310 を使用)を所有しています。
地震応答解析に関する技術資料
a) 液状化判定結果(FL 分布図)
b) 流動化による変形図
ALID/Win による河川堤防の 2 次元流動解析結果例
相対変位_合成変位
過剰間隙水圧比分布図
FLIP による矢板護岸の解析結果事例
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