5.【海外資料紹介】2015年 世界の探鉱動向

2015年 世界の探鉱動向
―PDAC(Prospectors & Developers Association of
Canada)国際会議での SNL Metals & Mining による特別
報告―
世界の探鉱動向
2014年の市場は極めて厳しく、不況のまま
新年の幕開けへ
2014年の第4四半期は、石油および採掘鉱物で最も
重要な4鉱種のうち3鉱種(石炭、鉄鉱石、銅)の価格
が急落するという状況で採取産業にとって厳しい一年
を締め括った。一方で、金は同期間にほとんど変動は
なく、2015年を好調にスタートした。
バークレイズは、コモディティにとって2014年は
2008年以降最悪の年であったと報告している。実際、
US$ 高によって価格の下落に拍車がかかり、ブルーム
バーグ商品指数は過去約6年間で最低となった。22種
のコモディティを扱う同商品指数は、2014年に17%
低下した。
金の価格は他の金属とは異なる要因に反応し、頻
繁に他の金属と逆の動きを見せる。一方、貴金属とは
異なり、非鉄金属価格と経済協力開発機構(OECD)
加盟国による経済生産の変化率との間には、強い相関
関係がある。OECD 加盟国数は、1960年発足当時の
20ヶ国から現在では34ヶ国に増加したが、中国、イ
ンド、ロシアなどの国々は今なお未加盟である。
同様に、アルミニウム、銅、亜鉛の消費量におけ
る年間変化率は、歴史的に見て、世界の国内総生産
(GDP)の年間変化率と密接に関わってきた。残念な
がら2014年の世界 GDP 成長率は当初の予想を下回っ
て、2013年の2.5% から2014年の2.6% と、わずかな伸
びにとどまり、過去数年にわたって続いてきたパター
ンと同様、期待外れの結果となった。
コモディティ価格
1月、1バレル当たりの石油価格が過去5年間で初め
て50US$ を下回った。これは、国際的な経済活動の
低迷や近年の米国におけるシェールオイル生産の拡
大、そしてサウジアラビアが石油の減産によって市場
注:SNL Metals & Mining の CES 調査で使用されたデータは、調査対象各社の多大な協力によって得られたものである。同調査で取り上げられた個別
の非鉄金属探鉱予算には、金、ベースメタル、白金族金属、ダイヤモンド、ウラン、銀、レアアース、カリ/リン酸塩、およびその他多くの硬岩
金属が含まれる。しかし、鉄鉱石、石炭、アルミニウム、石油・ガス、および多種の工業鉱物に関する探鉱予算は意図的に除外されている(報告さ
れている金額は全て US$。本報告書全体を通じて、過去の探鉱に関連する数値はすべて当時の金額をそのまま使用しており、インフレを考慮した
調整は行っていない)。
2015.7 金属資源レポート
169
(252)
2015年 世界の探鉱動向
本資料は、SNL Metals & Mining 社が、2015年3月
にカナダのトロント市において開催された PDAC に
おいて発表した「World Exploration Trend 2015 - A
Special Report from SNL Metals & Mining for the
PDAC International Convention-」を、同社の許可を
得て JOGMEC バンクーバー事務所において翻訳した
ものです。著作権は全て SNL Metals & Mining 社に
属します。
経済情勢は依然として問題を抱えている。2015年1
月中旬に、世界銀行は当年度の世界の成長予測を下方
修正し、世界経済は米国の回復という「単一のエンジ
ン」に過度に依存したままであると警告した。
世界銀行は、低石油価格により世界的な活動の活
発化が期待される一方で、その恩恵は他のどこかで吹
く「逆風」によって相殺されるだろうと警告した。年
に2回発表されている世界経済見通しの最新報告書の
中で、世界銀行は、世界経済が今年は3.0%、2016年
には3.3% 成長すると予測している。2014年6月時点
で、世界銀行のエコノミストは世界経済の成長率を
2015年は3.4%、2016年は3.5% と予測していた。
世界銀行は、労働市場の回復と極めて緩和的な金
融政策により米国および英国での活動は弾みがついて
いるが、ユーロ圏や日本での回復は失速しつつあり、
一方で中国は減速を慎重に管理している。2014年に
おける他の途上国の期待外れの成長率は、弱い外需と
ともに国内の引き締め政策、政情不安、供給面での制
約も反映している。
国際通貨基金(IMF)は幾分楽観的で、世界の成長
率を、今年は前回予測3.8% を下回る3.5%、2016年は
前回予測4.1% を下回る3.7% と予測している。
今は、IMF と世界銀行の双方が、ユーロ圏、日本、
ロシア、および産油国における悲観的な経済見通しに
よって石油の低価格化がもたらす利益は相殺されると
見ているが、それでもなお、チャンスは残されてい
る。世界銀行のカウシィク・バス(Kaushik Basu)
チーフエコノミストは、
「2015年を通して継続すると
見られている石油価格の低迷は、世界中でインフレを
抑制し、富裕国における利率引き上げを遅らせるだろ
う…これは中国やインドのような石油輸入国に好機を
もたらす」とコメントしている。
海外資料紹介
SNL Metals & Mining
左軸:
右軸:
石炭* (US$/t)
銅 (US$/t)
鉄鉱石 (62% Fe, Fines, CFR Tianjin; US$/t)
海外資料紹介
200
11,150
30,000
175
9,750
25,000
150
8,350
20,000
125
6,950
15,000
100
5,550
10,000
75
4,150
5,000
2,750
0
50
2015年 世界の探鉱動向
*
2010
2011
2012
2013
2014
左軸:
右軸:
ニッケル (US$/t)
金 (US$/oz)
アルミニウム (US$/t)
亜鉛 (US$/t)
3,800
2,800
1,800
2010
2011
2012
2013
2014
800
図1.2010年から2014まで5年間の価格変動
豪州一般炭(12,000btu/lb、硫黄含有量1% 未満、灰分14%、豪州ニューカッスル港 / ポートケンブラ港 FOB 価格)
での地位を他国に譲ることを拒否したことに起因する
と言える。
石炭も同様の状況下にあり、熱量が6,000kcal/kg の
一般炭の FOB 価格(南アフリカリチャーズベイ)で
み る と、2014年 の 初 め に は85US$/t だった も の が、
同年の終わりまでに65US$/t 以下まで下落し、さらに
その後は60US$/t 未満で取引されている。
国際エネルギー機関(IEA)は明るい兆候もあると
考えており、排出規制を目的とした諸政策に反して、
価格の下落が世界需要の緩やかな増加をもたらすと予
測している。最新の IEA 報告書によれば、世界の石
炭需要は2019年まで年間平均2.1% の成長率で伸び、
2013年 の56.9億 t と 比 べ、2019年 に は64.6億 t に 達 す
ると見込まれている。アジア諸国、特に中国は、引き
続き原動力となるだろう。
2番目に重要な鉱種は鉄鉱石であるが、モルガン・
スタンレーはこの先2年間の価格予測を下方修正し、
2015年は9% 下げて72US$/t 未満、2016年は14% 下げ
て68US$/t とした。同社は、この下方修正の原因を、
高コスト鉱山の閉鎖による影響を打ち消している鉄鉱
石の供給量の急増にあるとしている。
2014年は銅もまた不調であり、年初には12ヶ月間
で最高値となった約7,400US$/t でスタートしたもの
の、年末には6,370US$/t を下回って年間の最低値を
更新した。SNL Metals & Mining(SNL)による銅市
場に関する最新の月次報告書は、近年の銅価格の落ち
込みは非常に急激であるが、これは2010年に銅価格
がピークに達して以降続いている一定した下降軌道の
一変化に過ぎないと指摘している。
SNL の銅に関する最新の金属市場報告書の中で、
編集者ポール・デュイソン(Paul Dewison)は、金属
に対する悲観的な見方の高まりは全く意外なことでは
ないとコメントしている。銅価格が高く企業利益も堅
調であった良き時代に始まったプロジェクトが現在操
業を開始しているため、銅の消費低迷が見込まれる中
で必要以上の供給が生じることになる。
170
(253)
2015.7 金属資源レポート
大半のアナリストは、2016年に向けて多くのポジ
ティブな兆候を認めているが、2015年の金属価格に
ついては慎重になっている。マッコーリー銀行は1月
初 旬 に 発 表 さ れ た 調 査 報 告 書 の 中 で、 こ の 先12〜
18ヶ月にわたってベースメタルのファンダメンタル
ズが好転していくと見込んでいる。同銀行は、亜鉛は
2014年に13% の価格の伸びを記録し、ニッケル(前年
比12% 増)を超えてロンドン金属取引所(LME)で最
も優良な金属であったと述べている。また、アルミニ
ウ ム(同1% 増)も 年 間 価 格 の 上 昇 を 示 し た が、 銅
(同6% 減)および鉛(同3% 減)は不振の年となった。
モリブデンは抜群の成績を挙げ、2014年に50% 上昇
した。
今年もまた、主要貴金属の中で年末に年初よりも
高値を付けたのはパラジウムだけであった。2014年
は、金は基本的に横ばい状態で、プラチナは供給問題
に関係なく11% 下落している。銀は2年連続で最もパ
フォーマンスの悪い貴金属となり、前年比で20%下
落した。
グレンコアの最高責任者イヴァン・グラセンベル
ク(Ivan Glasenberg)は、12月に投資家に対して、
要因は需要の減少ではなく過剰供給にあると述べ、更
なる生産能力に過剰投資している業界を非難した。
中国の動向
ほとんどの天然資源において世界最大の消費国(か
つ生産国)である中国は、深刻な経済の逆風に直面し
ている。公式データは経済が急成長を続けていること
を示しているものの、中国政府は少なくとも7% の
GDP 成長を維持するために、新規と見られるインフ
ラ事業を多数、性急に発表した。
Global Industrial Production Watch 12月号による
と、これらの措置は中国政府の指導者が経済のバラン
スを取り戻す努力を断念したことを示唆している。同
国政府は消費者の需要喚起を優先し、固定資産投資と
輸出への依存度を下げようと努力していた。
市場全般において、2014年は2007年以来、最も合
併買収が行われた年となった。売り出しと買収の殺到
で、投資銀行が得た手数料はおよそ840億 US$ まで増
加した。しかしながら、最近バークレイズが行った試
算によれば、コモディティ運用資産の価額は11月に
500億 US$ 減少して2,760億 US$ となり、2010年前半
以来の最低水準となった。
通 貨 の 動 き は 同 業 界 に とって 重 要 な 検 討 事 項 と
なっており、2014年には、今世紀初めて、US$ が他
のすべての主要通貨に対して強くなった。2014年、
US$ はユーロ、円、ポンド、韓国ウォン、ブラジルレ
アル、およびその他11種の世界通貨に対する相場が
上昇した。主要な取引通貨に対して米国通貨に重きを
置く US$ 指標は、最近、過去9年間での最高水準に達
し、前年同期比で13% 上昇した。
欧州中央銀行や日本銀行など他国の中央銀行によ
る金融緩和策が続く中、2015年に米国連邦準備銀行
が史上最低水準の金利を引き上げるだろうという予想
が、ドルの強さの重要な要素となっている。2014年、
引き続き低下する探鉱予算
鉱山会社は、探鉱活動の大幅削減をもってこれら
の厳しい市場環境に対応し、その結果として、2014
年の世界の非鉄金属探鉱予算は前年と比べて26% 減
少した。
SNL Metals & Mining 発行の Corporate Exploration
Strategies(CES)報告書第25版では、2014年における
鉱業の非鉄金属探鉱総予算は114億 US$ と算出されて
いる。これは、2013年に計上された152億 US$ や最高
値を記録した2012年の215億 US$ と明暗を分けてい
る。
探鉱予算の急落は、ジュニア部門に対する投資家
の慎重な姿勢が原因でほとんどの企業が資金調達に苦
戦したことと、操業中の企業が利益増大のために設備
投資と探鉱支出を大幅に抑えたことがあいまって引き
起こされた。
SNL による2014年の探鉱予測は、世界3,500社以上
の鉱山会社および探鉱会社から収集したデータを基に
しており、このうち2,000社近くが CES 調査に探鉱予
算を報告した。これらの企業(各社、最低10万 US$
の予算編成)だけでも、合わせて107億4,000万 US$ を
非鉄金属の探鉱に割り当てており、SNL はこれが世
界の商業化を目指す非鉄探鉱支出の95% を占めるも
のと推定している。SNL が調査で入手できなかった
推定予算額を加算すると、2014年の全世界の探鉱予
算総額は113億6,000万 US$ に達した。
鉄鉱石探鉱は依然として CES の調査範囲外であり、
本報告書の分析でも触れていないが、SNL は2011年
に鉄鉱石探鉱についての情報収集を開始した(CES に
詳細に列挙された中核的対象鉱種に加えて、鉄関連の
総予算についても企業を調査している)。
本来ならば同調査の一環ではない多くの鉄鉱石専
業の生産者および探鉱者による割り当て分を含めるこ
とにより、SNL は2014年の鉄鉱石探鉱の総予算を14
億4,000万 US$ と算出した。これは2013年の17億4,000
2015.7 金属資源レポート
171
(254)
2015年 世界の探鉱動向
市場の状況
ユーロと円はどちらもドルに対して12% 下落した。
1月中旬、スイス中央銀行は3年間維持してきた為
替レートの上限を撤廃し、為替市場を大混乱に陥れ
た。スイスフランは数分間で30% 近く跳ね上がり、
投資家は従来からの安全逃避資産を求めて奔走した。
ドイツ国債は史上最低の利回り、日本円と金において
は 史 上 最 低 の 利 益 と なった。 ユーロ は 開 始 価 格
1.179US$ で取引され、過去9年間で初めて1.18US$ を
下回った。
昨年は、商品通貨もまた大きな痛手を受けたが、
石油価格の回復によって2015年2月初めにいくばくか
の 小 休 止 が も た ら さ れ た。 カ ナ ダ ド ル は、 対 US$
レートが、ここ6年間の最安値である1.28C$ から回復
した。その他の商品通貨も近年の安値から回復し、豪
ド ル も US$ に 対 す る こ こ6年 間 の 最 安 値 で あ る
0.77US$ から回復している。
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CHR Economics(CHR)が 発 行 し た ニュース レ
ターは、GDP は中国経済の実態評価のための信頼で
きる手段でなくなって久しく、新規プロジェクトが性
急に承認されている状況は、中国のビジネス環境が決
して順調とは言えないことを示唆していると警告して
いる。CHR は今年、中国の景気後退を予測しており、
ロイターによるエコノミストを対象とした調査では、
中国人民銀行は3月までに再び金利を引き下げるだろ
うと結論付けている。
中国経済のおよそ4分の1を占める不動産および関
連部門では、12月に大都市における新築住宅の価格
が前年比4.3% 低下するという不安な状況となった。
さらに、12月には過去2年以上にわたり前年比減が続
いていた工場渡し価格が中国で最大の下げ幅を記録
し、世界第2位の経済にデフレを招き寄せる恐れが加
わった。 卸 売 価 格 を 測 る 中 国 の 生 産 者 物 価 指 数 は
34ヶ月連続で下落し、12月の3.3% の下落は、2012年
9月以来最大の落ちこみとなった。
しかしながら、1月初旬のファイナンシャル・タイ
ムズによると、中国は経済の減速と同時に、もっと広
い基盤をも減速させているようである。人口の高齢化
に伴い、同国は大規模生産によるスケールメリットと
安価な人民元との組み合わせによって部分的に煽られ
ていた、これまでの低付加価値で輸出主導型の成長モ
デルを捨てるかもしれない。
ファイ ナ ン シャル・ タ イ ム ズ は、 成 長 の 減 速 は、
成長の質の低下を意味するわけではなく、むしろその
反対だとの見解を示している。中国は投資重視の資源
(汚染)集約型モデルから、内需主導モデルへと慎重
に方向転換しつつある。最近になってはじめて、消費
に起因する成長が投資に伴う成長を上回った。
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万 US$ および2012年の28億9,000万 US$ と比較すると
減少している。鉄鉱石の予算と CES が扱うその他の
コモディティ予算を合算すると、2014年の探鉱総予
算総額は121億8,000万 US$ に達し、そのうち12% は
鉄鉱石関連である。
探鉱の動向
2015年 世界の探鉱動向
図2は、年間の加重平均金属価格指数と比較した、
1990年代初頭以降に SNL が推定してきた非鉄金属探
鉱への年間計上予算額を示している。このグラフは、
探鉱投資の周期性ならびに金属価格と探鉱支出の相関
関係を示している。
金属価格の上昇が2002年の底入れ以降の世界的な
探鉱活動の増加を巻き起こし、その上、中国の資源需
要の増大で長年にわたる強気市場となり、2008年に
は世界探鉱予算総額が史上最高の137億5,000万 US$
に達した。これは、6年前の最低水準時と比べると
677% 増となる。
世界が数十年中で最悪の不況に陥った2008年9月、
鉱業の好況期にも突然終止符が打たれた。結果とし
て、2009年 の 探 鉱 支 出 は2008年 の 最 高 額 か ら57億
7,000万 US$(42%)も 減 少 し、1989年 に SNL が CES
調査を開始して以来、ドル金額と割合のいずれも対前
年比で最大の減少となった。
非鉄金属探鉱(10億US$)
世界経済は2009年から2010年にかけて顕著に回復
し、2011年を通してほとんどの金属が長期平均価格
を大幅に上回る価格で取引された。この結果、鉱山会
社のほとんどが積極的に探鉱予算を増やし、2010年
に は 業 界 全 体 の 予 算 総 額 を44% 増 の115億1,000万
US$、 ま た2011年 に は さ ら に50% 増 の172億5,000万
US$ にまで引き上げた。
中 国 に お け る 需 要 が 徐々に 弱 く な る に つ れ て、
ヨーロッパおよび米国経済が再び不安定となり、2012
年を通してほとんどの金属価格が下落、または、せい
ぜい同水準を保つにとどまった。それでもなお、ほと
んどの金属価格は10年間の平均価格を大幅に上回っ
ており、2012年は探鉱予算が増加し続け(19% 増)、
史上最高値を更新する205億3,000万 US$ を記録した。
しかし、この増加に反して、2012年は業界にとって
変化を意味する年となった。
同年4月以降、投資家がジュニア企業への投資に対
して次第に慎重になったことで、多数の企業が実施中
の探査プログラムの資金調達に苦戦し、同年度予算を
下回るような実支出の削減を余儀なくされた。
2013年を通して、市場はジュニア企業への支援を
敬遠する傾向がますます強まり、生産企業は収益力強
化のために設備投資と探鉱支出を削減した。この結
果、2013年の探鉱予算総額は対前年比30% 減の144億
SNL Metals & Mining金属価格年次指数
24
金属価格年次指数( 年 1
=)
非鉄金属探鉱総額( 億 $)
10
20
5
16
4
12
3 1993
US
8
2
4
1
0
93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
図2.世界における非鉄金属探鉱予算推定総額の推移(1993〜2014年)
172
(255)
2015.7 金属資源レポート
0
地域別の探鉱
2014年の探鉱予算額は全地域で減少し、中南米と
アフリカの予算額が最も減少した。それでもなお、中
南米は引き続き最も人気の高い探鉱地域であり、2014
年の全世界の探鉱支出の27% を呼び込んだ。メキシ
コ、チリ、ペルー、ブラジル、コロンビア、アルゼン
チンの6ヵ国が、この地域の支出総額の大部分を占め
ている。
2009年以降、ベースメタル(主に銅)が初めて中南
米におけるトップの探鉱対象鉱種となり、2013年に
おける予算総額に占める割合は40% から42% に増加
した。2014年の金の予算額は41% で、2年連続の減少
となった。
ユーラシア諸国は予算総額第2位で、中国とロシア
を 筆 頭 に、2014年 は カ ザ フ ス タ ン、 ト ル コ、 ス
ウェーデンの各国もそれぞれ7,000万 US$ 以上の探鉱
予算を集めてこれを牽引した。同地域予算総額に占め
る中国の割合は29% で、過去5年間のうち4度目とな
る首位の座を獲得した。
中国、ロシア、カザフスタンに大規模な予算配分
が行われたことで、金に代わってベースメタルがこの
地域のトップ探鉱対象鉱種となった。
アフリカは2年連続で第3位の座を維持し、世界の
Russia 5%
Canada
14%
United States
Mexico
2%
4% Europe
7%
FSU
2%
7%
China 6%
West Africa
Other Latin America
5%
Peru 5%
Chile
Brazil
7%
5%
3%
3%
East Africa
Pacific Islands
5%
DRC
3%
3%
Southern Africa
Australia 12%
Other locations a cco u n t fo r 4%.
図3.非鉄金属探鉱先の上位地域(2014年)
2015.7 金属資源レポート
173
(256)
2015年 世界の探鉱動向
探鉱予算の約16% を集めたが、「その他の国々」カテ
ゴ リーと の 予 算 総 額 の 差 は、2013年 の たった400万
US$ か ら2014年 に は3億3,600万 US$ ま で 増 加 し た。
アフリカの主要探鉱地域には、DR コンゴ、南アフリ
カ、ブルキナファソ、ザンビア、タンザニアが含まれ
る。金への予算配分は激減し、アフリカ全体の予算総
額に占める金の割合は48% から41% に低下した。DR
コンゴへの予算配分が主導的な役割を果たし、ベース
メタルの予算は15% の減少にとどまり、予算全体に
占める割合は27% から31% に増加した。
カナダは全地域中で最下位から2番目に少ない落ち
込み(22%)となり、世界予算総額の14% を集めて引
き続き第4位となった。ON 州はカナダの探鉱予算の
28% を占めており、QC 州は17% でそれに続いた。金
の探鉱予算は3億1,900万 US$ 減となり、カナダの予
算 総 額 に 占 め る 割 合 が52% か ら46% に 減 少 し た。
ベースメタルへの支出予定額は22% 減少したが、カ
ナダの予算総額に占める割合は約19% を維持した。
2001年には第2位を誇っていた豪州は、2003年以降
第5位 を 保 持 し て お り、2014年 の 予 算 総 額 は12億
5,000万 US$ で、世界全体の12% を占めた。予算配分
は2013年から34% 近く減少(2番目に大きな減少)し、
第4位のカナダとの差は2,500万 US$ から2億3,300万
US$ に拡大した。2014年は世界全体の12%を占め第5
位を維持したものの、2003年以降その地位で不振が
続いている。しかしながら、鉄鉱石の予算を考慮する
と、豪州は引き続き国別で最大の探鉱対象国である。
2014年7月に施行された探鉱開発インセンティブ
(EDI)は、豪州におけるグリーンフィールドの探鉱
に必要とされている後押しとなるかもしれない。
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3,000万 US$ まで急減した。
2013年末時点での著しく低下した金属価格と持続
する世界経済の不安定性に加えて、2014年も鉱業が
投資家を呼び込めなかったことから、企業は予算をさ
らに26% 減となる107億4,000万 US$ まで削減せざる
を得なかった。
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2015年 世界の探鉱動向
WA 州は、再び同国内で最も人気の高い探鉱先とな
り、予算総額の51% を占めた。探鉱対象鉱種のトッ
プは依然として金であるが、予算総額に占める割合は
40% に減少し、支出総額に占める金の割合は2013年
の45% から41% へと減少した。
米国における金と銅の探鉱は地域としては第6位を
保持し、太平洋諸島を上回った。NV 州が同国の2014
年予算総額の最大割合(41%)を占め、NV 州、AK
州、AZ 州の3州合計では71% を占めた。金は探鉱対
象鉱種としてますます人気を集め、予算額は13% 減
少に留まり、2013年における米国の予算総額に占め
る割合は2006年以降最高となる50% から60% まで上
昇した。ベースメタルの予算額は対前年比43% 減と
なり、予算総額に占める割合を36% から28% に低下
させた。
太平洋諸島では、インドネシア、PNG、フィリピ
ンが同地域の探鉱予算(世界総額の8% に相当)の大
部分を占めた。地域としては依然として最下位のまま
であり、太平洋/東南アジアは2014年において全地
域の中で予算額の減少率が最大(38%)となったた
め、同地域と米国との差は2013年の7,800万 US$ から
1億6,200万 US$ にまで増大した。金は依然として同地
金資金調達
域の最重要対象鉱種であり、予算総額の56% を占め、
2006年以降最高となった。
ジュニア企業の苦闘
ジュニア企業が操業鉱山から収益を得ることはほ
とんどなく、大半は探鉱のための資金調達をエクイ
ティファイナンスに依存しているため、探鉱費支出能
力は、金属価格の現状やその見通しに強く影響される
市況および投資家の関心によるところが大きい。図4
はジュニア企業が貴金属とベースメタルの探鉱用に調
達した資金額を示している。
2008年後半の急激な景気低迷の後、市況は大多数
のアナリストの予測よりもはるかに速いペースで回復
した。安全資産への投資志向から金価格が上昇し、ま
た、 ベース メ タ ル の 価 格 も 回 復 し た た め、 市 況 は
2009年後半にかけて好転し始めた。投資家からの強
い支持を受け、ジュニア企業は2010年と2011年に探
鉱予算として年平均総額60億 US$ を調達することが
可能となった。
しかしながら、2012年初頭にかけて次第に鉱業へ
の投資が乏しくなり、多くのジュニア企業は同年後半
に探鉱プログラムの縮小を余儀なくされた。もはや上
ベースメタル/その他資金調達
SNL社金属価格月次指数
180
資金調達額( 万米ドル)
160
140
1,000
120
100
100
80
60
500
40
20
0
0
2008
2009
2010
2011
2012
2013
SNL 社金属価格月次指数( 年5 月= )
1,500
2008
100
2014
図4.ジュニア企業による大規模探鉱関連資金調達(2008〜2014年)
注:探鉱関連資金調達額は、ジュニア企業がその全額または大半を探鉱に使用するとして調達した200万 US$ 以上の資金が
含まれている、主に買収、開発、あるいは債務返済に使用した資金は除く。資金調達データに含まれるのは貴金属とベー
スメタルのみで、これは CES 報告書でカバーしている探鉱支出の大部分を占めている。
174
(257)
2015.7 金属資源レポート
期待できる初期資源量の発表を行ったジュニア企
業でさえも、現行の探鉱プログラムへの資金調達結果
にはばらつきが見られ、魅力的な鉱床をもたない企業
は投資家の関心を思うように引き付けられなかった。
資金調達成功のタイミングと探鉱成果や初期資源
量の発表のタイミングを比較すると、ジュニア企業部
門の探鉱活動ではタイムラグが生じていることが明白
である。2008〜2009年の世界的不況は金属価格と鉱
業の収益性という面からすれば比較的短期間であった
が、ジュニア企業部門が不況以前の水準で再び供給パ
イプラインに新鉱床の資源を加えるようになるまでに
は、ほぼ3年を要した。
新規発見及び新鉱床ゾーンの発見の発表数は、資
金調達が最高額に達した2010年後半の約1年後になっ
て初めてピークに達し、初期資源量の発表数はそのま
た1年後にピークに達した。2013年の新規発見と初期
資源量の発表数が2009年初頭の水準を下回っている
ことから、新規発見と初期資源量の発表数が2015年
より前に回復するのは難しいとみられる。
有意義なベースメタル/その他の成果
探鉱向け資金調達総額
1,250
160
1,000
発表回数
120
750
80
500
40
250
資金調達額( 万米ドル)
200
100
0
0
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
図5.金およびベースメタル/その他の重要なボーリング結果発表(2008〜2014年)
注:SNL Metals & Mining の月刊 Industry Monitor レポートは、同社のオンライン・データベースで報告されているように、
2008年以降毎月重要な貴金属およびベースメタルのボーリング調査結果を追跡している。重要なボーリングには、新規発
見や新鉱床ゾーン、周辺鉱床のほか、既存鉱化帯の拡大など、特定のプロジェクトや鉱床の資源ポテンシャルを増大させる
すべてのボーリングが含まれる。この図、および Industry Monitor の出版物には、金探鉱独特の動向の全容を明らかにする
ために、ベースメタル(銅、ニッケル、鉛亜鉛、モリブデンおよびコバルト)と共に銀および PGM の成果が含まれている。
2015.7 金属資源レポート
175
(258)
2015年 世界の探鉱動向
有意義な金の成果
探鉱のための資金調達
海外資料紹介
昇する金の価格に支えらえることはなく、2013年に
はジュニア企業の資本へのアクセスは減少し続け、同
セクターが探鉱用に調達した資金額はこの10年間で
最低水準となった。
投資家の関心の不振は依然として大半のジュニア
企業の最大の懸念事項であり、同セクター内において
すでに大幅な戦略的変更を強いている。多くのジュニ
ア企業は、資金調達状況が改善した際に、良好な状態
でいられるように、今は最重要の資産のみに集中して
探鉱を進めている。
一部の企業は資産を統合するために合併を進めて
いるが、突出したプロジェクトがない企業は、プロ
ジェクトを打ち切って探鉱関連スタッフの大部分を解
雇したり、活動を中止したり、業界から完全に撤退し
たりした。このような対策によって、多くの企業は資
金調達難という苦境を乗り切ることができるようにな
るものの、マクロ経済の状況は引き続き鉱業の短期的
見通しに暗雲を投げかけており、企業のプログラム再
開への明確な道筋は見られない。
し始め、2011年10月、11月には過去4年間のピークに
達した。
2012年のほとんどを通して極めて堅調にボーリン
グ成果の発表が行われ、プログラム縮小の増加が見ら
れたのは同年末だけであった。ボーリング活動の低迷
は2013年により顕著になり、ジュニア企業および中
堅 企 業 に よって 発 表 さ れ た 重 要 な 成 果 は771件 で、
2012年と比べて30%減となった。一方で、ジュニア
企業の予算額と資金調達額は、それぞれ対前年比で
39%減および71%減であり、より高い減少率を示し
た。
2013年には適度な水準の成果が見られたものの、
ジュニア企業の探鉱に対する投資家の資金提供不足が
続いていることが原因で、2014年にはジュニア企業
が発表した有意義なボーリング成果が必然的に減少
し、これが鉱業界の中長期の供給パイプラインの大部
分において停滞の原因となると予想される。
低迷するボーリング
海外資料紹介
2015年 世界の探鉱動向
SNL による近年の調査では、図5に示す通り、探鉱
資金を集めることができた多くの企業が6ヶ月以内に
有意義な探鉱成果を報告した。これは、ジュニア企業
が資金を投入し、ボーリング調査プログラムの一部を
完了させ、分析結果を出すまでに必要な時間を示して
いる。
また、投資家の関心の変化は、過去6年間における
探鉱ボーリング調査プログラムの本質の変化も促し
た。2008年後期から2009年初期にかけての急激な景
気減退期間に、探鉱プログラムはよりステージの進ん
だ案件へと転じ、既知資源の拡大に集中するように
なった。その後、2010年後半までには初期探鉱への
回帰が見られ、著しい探鉱成果に占める新規発見や新
鉱床ゾーン、周辺鉱床の割合が高まった。
第3四半期には一般的な季節的要因による増加を含
め、2014年を通してボーリング成果の発表が活発に
なった。金属価格が高騰したことや、2010年第4四半
期に資金調達が容易となる非常に恵まれた時期を迎え
たことで、ボーリング活動は2011年5月に劇的に増加
急減する新規資源
探鉱ボーリング調査が低迷する中、初期資源量の
発表数も思わしくない。図6が示す通り、初期資源量
新たに発表された金資源の総価額
新たに発表されたベースメタル資源の総価額
初期資源量の発表数
50
125
100
40
発表数
資源の価額( 億 $)
10
45
35
30
75
US
25
20
50
15
10
25
5
12
月
9月
6月
月
2013
12
3月
9月
2012
6月
月
12
3月
9月
6月
月
2011
12
3月
9月
6月
月
2010
12
3月
9月
6月
月
2009
12
3月
9月
2008
6月
月
12
3月
9月
6月
3月
0
0
2014
図6.新規発見資源の価値(2008〜2014年)
注:SNL Metals & Mining の月刊 Industry Monitor レポートは、2008年以降毎月重要な貴金属およびベースメタルの初期資
源量を追っている。データベースには新規鉱床と新鉱床ゾーン両方の初期の推定が含まれる。この図6、および Industry
Monitor サービスには、金探鉱独特の動向の全容を明らかにするために、ベースメタル(銅、ニッケル、鉛亜鉛、モリブデ
ンおよびコバルト)と共に銀および PGM の成果が含まれている。
176
(259)
2015.7 金属資源レポート
海外資料紹介
2015年 世界の探鉱動向
Atlantic
Ocean
Pacific
Ocean
Indian
Ocean
主要コモディティ
銅
金
鉛および亜鉛
ニッケル
プラチナ
銀
その他
図7.重要なボーリング成果が得られた金およびベースメタル/その他のプロジェクトの位置(2014年)
の発表数及び価額は2008年と2012年にピークに達し、
2009〜2010年、2013〜2014年には不況に陥った。実
際のところ、2014年1月、2月にあった有望な資源量
の発表を除いて、探鉱は過去2年間でわずかな成果し
か挙げていない。
根強い不確実性、資金調達の問題、およびボーリ
ング調査プログラムの削減によって、2014年の初期
資 源 量 の 発 表 は50件 に と ど ま り、2013年 の68件、
2012年の168件から著しく減少した。
SNL の方法論によると、2014年に発表された初期
資源量の価値は1,306億 US$ で、たった871億 US$ で
あった2013年からは期待がもてる改善っであったが、
2012年の3,665億 US$ には依然としてかなり下回って
いる。
2015.7 金属資源レポート
177
(260)
パイプライン活動指標(PAI)
SNL社金属価格月次指数
総合時価総額( 億 $)
海外資料紹介
2,500
160
2,000
130
1,500
100
1,000
70
500
40
10
12
月
9月
6月
2013
月
12
3月
9月
6月
月
2012
12
3月
9月
6月
月
2011
12
3月
9月
2010
6月
月
12
3月
9月
6月
月
2009
12
3月
9月
2008
6月
月
12
3月
9月
6月
0
3月
2015年 世界の探鉱動向
US
10
SNL社パイプライン活動指標および金属価格月次指数
鉱業時価総額
2014
図8.パイプライン活動指標(PAI)および業界時価総額(2008〜2014年)
パイプラインの動向
重要な業界の転換点
国際的な鉱業における探鉱および開発活動状況の
評価基準として役立つのが、SNL のパイプライン活
動指標(PAI)である。PAI は、重要なボーリングの
成果を発表したプロジェクト、新規資源量報告、探鉱
資金調達、プロジェクトの画期的成果等の数をデータ
として取り入れている。
PAI は、2014年初期に急落し、同年4月には月次指
標が史上最低の40.2となった。2014年の中盤における
比較的穏やかな市況の中で、PAI は5月から9月にか
けて上昇したものの、同年最後の3か月においては各
月下降した(図8参照)
。
図8は、SNL 社金属価格月次指数および SNL 社デー
タベースに登録された企業の時価総額と対比させた
PAI を表している。12月末時点で要件を満たす企業
数は2,739社とわずかに増えたものの、2014年最後の5
か月間においては、毎月、業界総合時価総額が減少し
た。
2014年 末 ま で に は、 鉱 業 の 総 合 時 価 総 額 は1兆
3,000億 US$ 未 満 で、11月 末 の1憶3,430億 US$ 以 上、
2012年2月の2兆 US$ 以上と比べて、減少した。最新
の評価では、総合時価総額のうち86.7%は上位100社
の大企業が占めている。
SNL はまた、プロジェクトの「マイルストーン(転
換点)
」をモニターしている。明るい進展として、開
坑、 期 待 で き る プ ロ ジェク ト 決 定、 フィージ ビ リ
ティ・スタディ(FS)の開始が含まれる。一方、悲観
的な転換点には FS の行き詰まりや拡張の中止、閉山
が含まれる。
2014年の前向きな転換点は96件で、2013年の144件
および2010年の389件と比べて減少した。昨年、これ
らの前向きな転換点で生まれた価値は1兆2,510億 US$
と な り、2013年 の1兆6,400億 US$ や2010年 の8兆
5,330億 US$ と比べて激減した。
一方で、2014年の悲観的な転換点は計20件、評価
額にして7,520億 US$ 相当で、2013年の49件、評価額
9,950億 US$ と比べて遜色がない。
2014年第4四半期は、それ以前の4四半期と比べ改
善したように見えるが、図9に示される通り、転換点
の数と価値は過去3年間で明らかに減少してきてい
る。
178
(261)
2015.7 金属資源レポート
生産減少
保留中の生産前プロジェクト
保留中のフィージビリティ・スタディ プロジェクト
新規のフィージビリティ・スタディ プロジェクト
新規の生産中鉱山
新規の生産前プロジェクト
175
150
125
75
50
25
12
月
9月
6月
月
2013
12
3月
9月
6月
3月
2012
12
月
9月
6月
月
2011
12
3月
9月
2010
6月
月
12
3月
9月
6月
月
2009
12
3月
9月
6月
3月
月
9月
6月
3月
2008
12
0
2014
図9.プロジェクトのマイルストーン発表(2008〜2014年)
今後の見通し
2014年は再び強い逆風の一年となり、引き続き低
需要と過剰生産が金属価格を引き下げるという状況の
中、2015年の鉱業の見通しは明るいとは言い難い。
米国ではより好調な経済が期待されるものの、中国や
ユーロ圏では景気の低迷が予測されている。さらに、
ウクライナでの紛争や過激派武装勢力による中東にお
ける領土占領に関する地政学的不安も見過ごせない。
過去2年程度とはいかずとも、2015年にはほとんど
の金属価格がさらに低下すると見込まれていることか
ら、SNL は業界の総合探鉱予算は短中期的に見て回
復の見込みはないと見ている。
企業はこの2年間、操業の大規模な再編を行い、控
えめな経済見通しに合わせて戦略を練り直してきた。
支出の低減と利益幅の増加に必死に取り込むなかで、
メジャー企業は探鉱部門を縮小し、より低リスクのブ
ラウンフィールド資産に重点を置くようなった。必然
的に本質的な成長は鈍化し、大規模で高コストのグ
リーンフィールド資産が最低数年間切り詰められた
り、完全に売却されたりされた。
2年間以上に及ぶ投資家の慎重な姿勢により、多く
のジュニア探鉱企業が好ましくない立場に追い込ま
れ、支出の削減、契約の再交渉または不利な条件の承
諾、もしくは業界からの完全撤退を強いられている。
有望なプロジェクトを持つ企業はある程度の資金を調
達できたことから、ジュニア企業による資金調達額は
2014年にはわずかに増加したものの、さらに進む同
セクター探鉱支出の削減傾向を覆すには不十分であ
る。
持続する不安定な経済に影響されない株式市場も
ある中、鉱業は投資家にとって依然として魅力がな
い。市場感情が少しでも上向きに変わるとしても、段
階的でむらのある変化になると考えられるため、ジュ
ニア探鉱企業が実益を生みだすまでに少し時間を要す
る可能性がある。SNL は2015年のジュニア企業の総
合予算総額はさらに緩やかな減少を示すと予測してい
る。
メジャー生産者は既に戦略の練り直しと支出削減
に成功しており、今後長期的戦略に基づく見通しに落
ち着くと見られる。SNL は、メジャー生産者は当面
の間現在もしくはそれに近い支出水準で、重的な探鉱
プログラムを継続すると予測している。
ロシア企業が地政学的不安や経済制裁に直面し、
中国の営利志向の採掘者がより緩やかな国内成長予測
に適応しようとしている中、SNL はこれらの国々に
拠点を置く企業は短期的に探鉱支出を控えるものと予
測している。
2015.7 金属資源レポート
179
(262)
2015年 世界の探鉱動向
100
海外資料紹介
US
SNL社金属価格月次指数
SNL社金属価格月次指数
ステータス変更の現地資源評価額( 億 $)
10
3,000
2,750
2,500
2,250
2,000
1,750
1,500
1,250
1,000
750
500
250
0
-250
-500
-750
-1,000
-1,250
-1,500
-1,750
海外資料紹介
2015年 世界の探鉱動向
Atlantic
Ocean
Pacific
Ocean
Indian
Ocean
主要コモディティ
銅
金
ニッケル
銀
亜鉛
図10.重要な新規資源が発見された金およびベースメタル/その他のプロジェクトの位置(2014年)
このような予測シナリオを前提として、探鉱活動
はより低コストの探鉱関連サービスによって恩恵を受
けつつも、SNL では2015年の探鉱予算総額は約10%
減少すると見込んでいる。
(2015.6.20)
180
(263)
2015.7 金属資源レポート