地域づくりコンソーシアム構築に関するモデル研究

地域づくりコンソーシアム構築に関するモデル研究
○古川 隆
1
キーワード
コミュニティ、地域再生、地域組織の再編・強化、中間組織、地域づくりコンソーシアム
概
要
今、我が国は 100 年に一度といわれる世界同時不況の波にさらされ、人々の生活不安が拡大している。セーフティ
ーネットの機能を果たしていた地域コミュニティの衰退も著しく、経済不況が追い討ちをかけている。地方分権や道
州制、合併、協働など社会変革の必要性が議論されて久しいが、
「官から民へ」という単純なロジックで地域組織を再
編・強化することは困難な社会状況となり、地域戦略の問い直しが必要となっている。コンソーシアムは産業活性化
の分野での異業種交流や共同事業による商品開発、付加価値創造のための体制、仕組みとして普及してきたが、本研
究では、新たな公や地域戦略パートナーシップの有効性に着目し、経営資源を多様な主体で相互補完し、地域の組織
の再編・強化につなげる先導的な体制モデルとして、地域づくりコンソーシアムを提起した。
1. はじめに
2. 地域を取り巻く社会動向
本格的な人口減少時代の到来は、基礎的条件が
不利な地域においてはコミュニティ機能維持の限
界や集落の消滅、都市においては市街地のスプロ
ール化や新興住宅地のオールドタウン化など、深
刻な社会問題を引き起こすことが懸念される。ま
た、地域に目を向けると一人暮らし世帯の増加や
防災・防犯、生活交通、医療福祉、教育環境、環
境・景観の荒廃、格差拡大、相互扶助機能の低下
など、多様で複雑な課題が横たわり、社会的な不
安が広がる状況もある。こうした地域を取り巻く
負のダイナミズムともいえる状況に対して、地域
社会の基盤となる地域コミュニティは、担い手の
減少に加え、行財政規模の縮小による公共サービ
スの低下等によって、地域づくり、まちづくりが
行き詰まり、再生・自立のプロセスを描けないと
いう状況もみられる。
一方、欧米では、地域の課題解決において、地
域戦略パートナーシップを形成し、実践能力を備
えた人材育成や組織の近代化、支援ネットワーク
の構築等に取り組み、強いコミュニティの再生に
成功している事例も少なくない。
本研究は、こうした背景を踏まえパートナー
シップの成熟と恒常的で安定的な支援体制の確
立に寄与する観点から、その基盤となる地域づく
りコンソーシアムモデルの構築と実現プロセス、
課題を明らかにするものである。
地域は時代の変化にどう適応していくかが問
われている。しかし、暮らしへの不安から目をそ
むけ、従来の手法や体制、仕組を新しい時代に適
合するように仕組みを転換できず、地域の資源、
価値、強みといったものを冷静に見つめ直すこと
ができない地域もある。今、まさに地域の疲弊状
況や課題を直視し、それぞれに地域力維持向上方
策を模索すべきではないだろうか。
1,
東北本社都市・交通部
2.1.
変化への適応問題
①地方地域の衰退が止まらない
基礎的条件が厳しい中山間地域や漁村では、集
落消滅の危機感が高まっているが、コミュニティ
政策・戦略が十分に練られていない。
②協働が地域の重荷になっている
参加型行政が進展するなか、様々な仕事・役職
が町内会・自治会をはじめとる固定メンバーに集
中し、負担が強まっている。
③専門性が求められている
地域福祉や産業振興、交流課題などの総合的な
取組みや、活動を事業(起業)に発展させていく
ための専門性が求められている。
④広域での資源の補い合い
地域づくりに必要な人材、資金、情報、ノウハ
ウ等を広域で補い合い、知恵を結集して取組む支
援ネットワークが求められる。
2.2.
「新たな公」とつなぎ機能
「国土審議会計画部会中間とりまとめ」では、
行政だけでなく多様な民間主体を地域づくりの担
い手ととらえ、これら多様な民間主体と行政の協
働によって、従来の公の領域に加え、公と私との
中間的な領域にその活動を広げることできめ細か
なサービスを提供する、という多様な主体を基軸
とした地域経営や地域課題解決のための「新たな
公」を提起している。
住民
企業
NPO
団体
行政
図-1 「新たな公」のイメージ
一方、地域づくりの現場をみると、地域住民の
参加意識が低いという見方から、あきらめ感が蔓
延し、埋れた住民の知恵や潜在能力を地域づくり
に活かしきれない地域もあり、住民への声がけや
きっかけ作りが必要である。また、そのために大
学・地域の連携や中間組織等の多様な主体の「つ
なぎの機能」を強化し、地域社会全体の価値を高
めていく体制と仕組みが必要である。
地域コ ミュ ニテ ィ
・
・・
行政依存
→地域力
の減退
[課題]
・縦割り
・人的な限界
・財政的制約
協働の
地域づく り
・
・
・
[課題]
・リーダーへの
負担集中
・助け合い精神
の薄れ
・世代間の分断
・きっかけ作り
行政
「つなぎの機能」
◇人材の掘り起こしと育成
◇大学と地域の連携
◇地域づくり協働体の構築
◇中間支援組織の形成
市民活動団体
協働への
理解不足
→後退
大学・研究機関等
企業
図-2 多様な主体の「つなぎ機能」のイメージ
3. 地域コミュニティの課題
地域コミュニティの定義や論調は多岐にわた
っているが、ここでは次のように捉える。
①目的:地域共通の問題に関する意思表示及び
解決、②範囲:地域住民が一体感をもてる共同の
範囲(学校区単位等)
、③機能:課題に応じた主体
的な地域づくり推進、④構成員:町内会・自治会
を含む多様な主体による包括組織、⑤課題:既存
組織の底上げや活動推進、行政との協働の枠組み
構築、等とする。また、コミュニティにおいては、
多様な主体による重層化が進む傾向があり、住民
の主体的な課題の受け止めが可能で、自立的経営
が行えるような体制整備が必要である。
3.1. 地域づくりがうまくいかない訳
市町村合併を契機に地域内分権を推進し、地域
計画策定と一括交付金等による資金的な支援制度
を組み合わせて、協働の地域づくりに取り組む自
治体が増えている。しかし、性急な取り組みは、
結果としてパートナーシップの重荷を住民に強い
る恐れもあることから、自治体は住民参加のシナ
リオを丁寧につくっていく必要がある。協働によ
る地域経営計画づくりは、協働の相互理解や意思
決定プロセスの検証機会となるものと考えられ、
積極的な策定の取り組みが期待される。また、地
域づくりのマンネリ化や行き詰まりは、戦略性の
乏しさと振り返り評価の機会をもたないことなど
が主な要因と考えられ、各段階で進捗状況や計画
の達成度合い等を評価・改善し、次の計画に反映
していくことも重要である。
表-1 地域づくりの行き詰まり要因
取組の10歩
地域づくりの行き詰まり要因
1歩 「気づき」
意欲的な人材の不足
2歩 「思い」
地域づくりに対する温度差や利害関係の衝突
3歩 「足元」
地域の「売り」となる地域資源の潜在化
4歩 「目標像」
地域づくりの目標が漠然
5歩 「活動計画」
見えない、伝わらない活動
6歩 「行動」
地域、活動団体内の役割分担が不明確
7歩 「評価」
自己満足の段階で低迷
8歩「情報発信」
情報発信が不足、あいまいなターゲット
9歩「仕組み」
組織のマンネリ化
10歩新たな「夢」
ネガティブな意識
3.2. 地域力維持向上の視点
地域力維持向上とは、地域コミュニティを対象
とし、地域資源の価値向上と地域課題の解決のた
めに、地域内の人・組織のつながりの強化と地域
外の支援ネットワーク形成の好循環の体制と仕組
みを構築し、地域づくりの行き詰まり感を克服す
ることにより、新しい地域経営の展望を開いてい
く取組みと捉えている。
(1)地域資源の価値向上の視点
地域資源の保全・活用や価値向上の面では、地
域資源への理解を深める学習や交流の場を創出し
ていくことが重要である。また、資源を活用し、
新たな起業化や産地化を目指し、地域経済の活性
化につなげるには、市場の動きや顧客のニーズを
しっかり把握し、地域づくりの戦略を描いていく
ことが重要である。
そのためには、地域資源の活用に対する多様な
アイデア、ノウハウを提供してくれる多様な主体
と協働し、資源の付加価値を高めて、商品やサー
ビスを外へ情報発信し、域外の認知度をあげなが
ら、モノの流れ・人の流れ・資金の流れ・情報の
流れを起こしていくことが重要である。NPO法
人「NPO雪のふるさと安塚」は、雪を活用した
地域づくりにおいて、市場の動きや顧客のニーズ
を把握して事業を発想し、新たな人・モノ・金・
情報の流れを生み、活動基盤の強化を図っている
成功例といえる
○○広域生活圏
中心市街地
(小学校区など)
中核集落
集落C
集落E
集落A
集落B
集落D
小学校区等の中核集落形成と再編
中核集落
○○広域生活圏
基礎的自治体または広域生活圏での再編
(3)地域力を高める体制強化の視点
体制面では、多くの住民や団体の協力を得られ
るよう、普段から近所づきあいを良くし、相談し
合える雰囲気(インフォーマルな関係)を維持し
ていくことが重要である。旧倉石村の自治会や飯
舘村の行政区では、顔の見える範囲で緊密な連携
を図り、小さな住民自治の仕組みを機能させてい
る例として参考になる。また、自治会や行政区で
対処できない課題や活動のステップアップ、地域
の一体化醸成において、既存の組織の再編や統合
を推進していくことが考えられる。これは、
「くら
いし地域振興協議会」や「やるきつながり推進協
議会」
、
「山形町地域まちづくり委員会」等の包括
的な組織による地域づくりにみられるように、住
民と行政の中間的な調整機能を構築している例か
らヒントを得ることができる。
英国では 1990 年代以降、多者協議型のパート
ナーシップが急速に制度化されるなか、業務の重
複やスタッフの仕事量の増加といった問題が顕在
化する。そしてこれらの問題に対処する仕組みと
して地域戦略パートナーシップ(Local
Strategic Partnership:LSP)を立ち上げ、テ
ーマ別の取組みを合理化し、地域の諸政策を戦略
的に進める方向性が打ち出された。
我が国では、これまで行政と市民活動の 2 者間
の協働に関心が寄せられたが、地域コミュニティ
を含む多様な主体による課題ベースのパートナー
シップが重層的且つ有機的につながり、政策形成
の質を高めていく仕組みが必要といえる。
複数集落で再編
(2)地域づくりのプロセスの視点
プロセス面では、参加意識の啓発や調査分析、
計画策定、実施、評価等の流れが考えられるが、
各段階で外部の専門家、企業・団体、NPO、ボ
ランティア等の多様な主体との協働で、違った視
点や刺激を地域に取り入れていくことが有効であ
る。例えば、飯舘村の行政区は他地区と切磋琢磨
することで活動が磨き上げられ、男鹿市異業種交
流は新たなコラボレーションを育み、山形町の教
育旅行は参加者の評価で住民のやる気の増幅につ
ながる、などの効果を発揮している。
また、旧倉石村や飯舘村のように地域計画策定
において、地域担当職員・コミュニティ担当職員
と連携するなど、行政との協働を積極的に進める
なかで、地域の課題掘り起しや政策形成につなげ
ていくプロセスも重要と考える。
4. 地域戦略パートナーシップ
図-3 重層的な圏域設定と地域戦略パートナーシップ
4.1. 市民協働への動機付け
多くの農山漁村地域では、町内会・自治会等の
地縁型コミュニティを中心に、清掃・美化や防災・
防犯、広報誌の配布、地域行事の継承、集会所等
の管理などを担っているが、一方で、こうした自
治活動が一部の人にしか関心をもたれない状況や
活動が縦割りで横展開が難しい状況もある。
このため、行政内部の横断的な展開はもちろん、
地域戦略パートナーシップ構築に向けた動機づけ
を行い、多様な主体が労力や資源を提供し合い、
意識の転換や内発的な活動が進むよう促し、支援
していくことが期待される。
4.2. コミュニティ戦略の明確化
近年、地方分権・地域内分権の動きをとらえて、
協働推進の専門部署の設置や生涯学習と地域づく
りの連携に取り組む市町村が増えている。また、
条例や指針等の協働のルールを作り、住民参加や
協働推進における各主体の役割を明確化し、コミ
ュニティ戦略を行政施策として展開している。
地域活性化では、基礎自治体が地域のニーズを
踏まえた、コミュニティ支援戦略を明らかにし、
組織改革や次世代リーダーの育成等に取組み、課
題解決型コミュニティへの転換を図っていくこと
が期待される。
の多様な主体間の仲立ちをし、保有する資源と能
力を活用して支援する組織である。
5.2. 中間組織の必要性
①課題解決を模索する地域の手助け
地域住民の主体的な地域づくりに立会い、問題
4.3. 熟度に応じた支援システム
や活動の行き詰まりを打開するための情報提供な
ど、コミュニティの手助けをする。
地域の課題が多様化・複雑化するなかで、基礎
的条件の厳しい地域とそうでない都市地域との間
②戦略・計画づくりの専門技術、ノウハウ提供
に、コミュニティ間格差が広がる状況もみられる。
活動を持続、発展させるための地域計画策定等
多くの条件不利地域では、
「地域のやる気が薄れ
において、人材育成のための研修や住民参加の運
ている」
「何をしていいか分からない」
「活動がマ
営、実行性ある計画立案等を支援する。
ンネリ化している」など、取り組みの段階(熟度) ③活動成果等の公表と社会的な関心の喚起
で課題も様々である。
先駆的な地域づくりの取り組み事例や課題解決
策等の成果について、広く社会に公表し、中間支
このため、地域が自ら考え、行動し、自助努
力で地域課題の解決していく取り組みを誘引し、 援組織への社会的な関心を喚起する。
多様な主体の相互理解を促す、中間織の育成等
5.3. 中間組織の形成と課題
を支援していくことが期待される。
近年、集会所、公民館、及びコミュニティセン
4.4. 地域と大学の連携推進
ター等の公共施設の運営において、指定管理者制
度を活用した運営委託を前提に、新たな中間支援
近年、地域の多様な主体の協働の観点を行政の
組織を立ち上げる(官製NPOとの指摘もある)
政策に反映させることが重要になり、専門知識の
事例が多くみられるようになった。また、中間支
供給源としての大学への期待が高まっている。ま
援組織は、特定非営利活動法人(NPO法人)の
た、東北には国・公・私立を含めて 62 校の大学が
認証を受けて、法人経営する事例が多いが、活動
あり、10 万人余の学生が学び、地方の人口ダムを
の場所や資金の手当てにも限界があることから、
形成していることから、東北圏の地域づくり、地
本来の専門性や地域づくりのノウハウを十分に発
域活性化では、こうした大学を核とした知的資源
揮した支援活動ができないという実態もある。
を活用し、多様な課題に対応していくことが期待
される。
このことから、中間支援組織形成では、その必
要性や有効性について社会的な関心を高めるとと
大学には研究者や研究成果といった知的資
もに、地域コミュニティと中間支援組織の連携に
源、多数の学生という人的資源、土地・建物と
よる効果的なモデルを具体的に仕立て上げていく
いう物的資源が存在し、これらの大学が保有す
ことが重要である。また、中間支援組織が継続的
る資源を活かした政策形成力の向上に取組む事
に活動を行えるような制度的な枠組みづくりの提
例も増えている。大学と地域の連携の目標や方
案に、産学官民の多様な主体が連携して取り組む
向性を明確にし、戦略性をもった連携に発展さ
ことも基盤強化につながる。
せることにより、課題克服のための新たな切り
口を見出すなどの効果が期待できる。
5.4. まちづくりセンターモデル
5. 中間組織の必要性と形成課題
市町村合併後の体制づくりの特徴として市
民活動を支援する中間組織のほかに、地域共同
施設を運営管理するコミュニティ経営型の中間
組織を形成する動きが活発となっている。
5.1. 中間組織の定義
中間組織とは、市町村・県・国等の範域にとら
われず、地域住民が主体的に取り組む地域づくり
を既存団体や大学・研究機関、金融機関、行政等
まちづくり支援センターは、住民自治組織やま
ちづくり委員会などの地域づくり協働体の取り組
みを支援する包括的・専門的な組織である。基礎
自治体内で身近に存在する農協や商工会、企業、
公益法人、NPO等の専門性や財政力、コーディ
ネート能力等を活かして、多様な主体の協働によ
る地域づくりを支援し、地域の総意をまとめあげ
る地域自治組織としての機能を発揮する。
また、まちづくりセンターは、公民館やコミュ
ニティセンターの指定管理者への委託を契機に設
置するケースや、既存組織の統合等による基盤強
化、新たなNPOの育成等を地域の実情に応じて
選択し、設置することが考えられる。
地域づくりコンソーシアム(仮称)
大学・研究機関
国
・地域づくりの情報交換
・相談、助言の窓口
企業・金融機関
県
まちづくり
センター
行政
地域づくりファンド
農協
NPO等団体
市町村
提案
支援
○○地区
まちづくり委員会
事務局
相談
・人材育成の支援
・地域づくり計画策定の支援
・協働プロジェクトの推進
・利害関係者との調整
商工会
企業
まちづくり支援
センター
地域づくり協働体
基礎自治体
地域づくり協議会
公益法人
支援
相談
助言
NPO
○○ 住民自治組織
町内会
自治会
行政区
・人材育成の支援
・地域づくり計画策定の支援
・協働プロジェクトの推進
・利害関係者との調整
○○地区
まちづくり委員会
住民自治組織
住民自治組織
住民自治組織
・老人会、婦人会
・青年会
・PTA
・消防団
・市民活動 など
図-4 まちづくりセンターモデル
図-5 地域づくりコンソーシアムモデル
6.3. 機能と支援コンテンツ
6. 地域づくりコンソーシアム
-「東北圏地域づくりコンソーシアム」を例として-
6.1. コンセプトイメージ
東北圏地域づくりコンソーシアムは、大学・研
究機関・企業・経済団体・金融機関・NPO・行
政等、地域づくりに関わる多様な主体の知恵や能
力、ノウハウが協働するシステムを機能させなが
ら、地域の課題解決によるコミュニティの再生・
自立を支援するとともに、それが継続的に行える
よう支援ネットワークを構築し、地域づくりの変
革と推進に寄与するものである。
6.2. 体制モデル
地域づくりコンソーシアムは、高度な専門性を
もった大学や研究機関、資金力や経営ノウハウを
もった企業・金融機関、市民活動団体・NPO、
市町村・県・国等がそれぞれの強みを活かし、連
携・協働して地域の課題解決に貢献する仕組みで
ある。また、多様な主体の会費や寄付・協賛金等
の協力で、新たな「地域づくりファンド」を創設
することにより、地域づくりコンソーシアムの持
続的で安定的な地域づくりの支援活動を推進でき
るよう、段階的な取り組みに合わせて組織基盤の
強化を図る体制イメージとする。
この地域づくりコンソーシアムは、東北圏域と
いう広域性や参加組織の多様性、大学と地域の密
着性、及び民間主体による経営性等の複合的な要
素を包含している仕組みという面で、全国に先駆
けた新しい地域づくりの支援システムといえるも
のであり、東北圏モデルとして確立していくこと
が期待される。
東北圏地域づくりコンソーシアムは、コミュニ
ティの再生・自立に関わる政策、施策、事業の推
進支援と実践のコーディネート支援、評価・改善
のための分析支援等を行うための支援コンテンツ
を整備する。
①研究開発
コミュニティ支援に関する政策・戦略研究によ
り、地域の取組みへの理論的な裏づけや評価によ
る支援、行政への政策提案を積極的に行う。
②人材育成
コミュニティの再生・自立に取組む地域組織、
NPO、及び行政等の人材育成において、研修プ
ログラム企画や情報提供、講師派遣等を行う。
③計画策定
地域づくり計画(コミュニティプラン)策定に
取組む地域組織、NPO、及び行政等の体制と仕
組み構築、策定組織運営のコーディネート等の支
援を行う。
④組織化・再編
地域の主体的な地域づくりの担い手となる町
内会・自治会、農協、商工会、市民活動団体、ま
ちづくり組織等の協働による組織化活動の活性化
や再編、経営体制の強化等の支援を行う。
⑤交流ネットワーク
地域づくりの行き詰りの際に、多様な主体の知
恵や能力、ノウハウが相互に活かされ補い合える
交流ネットワークの形成を行う。
⑥情報発信
上記の①から⑤の推進支援の過程で得られた
知恵や能力、ノウハウを広く地域社会に還元し、
新たな会員拡大や体制強化につなげるための情報
発信(メディア戦略)を行う。
6.4. 実現プロセス
第1段階
事業
体制
◆プロジェクトチームによる実験
◆モデル地区を対象としたコミュニ
ティ支援のコンテンツの整理
◆対話集会等による組織基盤強化
◆会員の拡大、試行モデル整理
第2段階
第3段階
◆メディア戦略の構築
◆「東北こんそ」ファンドの創設
◆コミュニティ支援マニュアルの普及
◆地域戦略パートナーシップ形成
(クラスター構造化)
◆英国RCCとの協定
◆コミュニティ支援ネットワークの拡大
◆「東北こんそ」ファンドの本格運用
◆「東北こんそ」の法人化
◆東アジア等、国際的な支援ネットワー
クの展開
東北圏地域づくり
コンソーシアム推進協議会
東北圏地域づくり
コンソーシアム推進協議会
東北圏の
大学・研究機関
地方の元気再生事業
「東北こんそ」の社会実験
東北圏地域づくり
コンソーシアム推進協議会
東北圏の
大学・研究機関
東北圏の
大学・研究機関
コンテンツ・支援システムの充実
東北圏のNPO等
英国の
RCCとの協定
「東北こんそ」
ファンド
東北圏のNPO等
英国の
RCCとの協定
コンテンツ・支援システムの充実
「東北こんそ」
ファンド
東北圏のNPO等
対話集会等による機能・役割の明確化
県・市町村との協働による
地域戦略パートナーシップ
形成の支援
国
コミュニティ再生の
試行モデル化
相談・要請
東北7県
モデル化
市町村
コミュニティ再生
・自立の支援
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
住民自治組織
国
県・市町村との協働による
地域戦略パートナーシップ
形成の支援
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
国
コミュニティ再生
・自立の支援
相談・要請
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
東北こんそ・○○エリア
パートナーシップ組織
住民自治組織
東北7県・市町村
住民自治組織
住民自治組織
東北7県・市町村
住民自治組織
住民自治組織
住民自治組織
住民自治組織
住民自治組織
図-6 地域づくりコンソーシアム形成の実現プロセス
7. おわりに
①支援スタッフの拡充
地域づくりコンソーシアムの形成に向けては、
東北圏地域づくりコンソーシアム推進協議会
この必要性や意義について地域づくりに関わる多
を母体としながら、知恵や能力、ノウハウを有す
様な主体の理解を深めるとともに、設置推進への
る大学・研究機関、企業、NPO、行政等の支援
官民の気運を高めていくことが必要である。
スタッフの拡充を図る。同時に、現場の多様なコ
ミュニティ支援の先行モデル(キーパーソン)と
そのためには、まちづくり支援NPOとコミュ
スクラムを組んで、支援ネットワークを構築する。
ニティ政策、地域づくりの専門性を有する大学・
研究機関等が核となって情報交換の機会を提供し、 ②多様な資金源の確保と法人化
新たな主体形成への議論を活性化させていくこと
協議会の持続的な組織運営のための資金源と
が期待される。また、そうした勉強会や情報交換
して、会費・出資・寄付・事業(受託・起業など)
・
等の企画運営を恒常的に行える事務局体制づくり
助成金・補助金等を確保する。そのためには、早
や人材育成にNPO等が先導役となって、具体的
い段階で社会的な信用を獲得する必要があり、特
に取り組んでいくことが望まれる。
定非営利活動法人または財団法人等、協議会の法
コンソーシアムに関する情報交換や人材育成、 人化を目指す。
事例研究等の成果を基に、次のステップとして社
③シンクタンク機能の発揮
会実験に取り組むことが考えられる。また、こう
コミュニティ政策、支援を先導する観点から、
した社会実験を企画・実施するためには、専門的
新たな社会的な課題への対応策や手法を研究開発
な人材の派遣、社会実験の実施などのソフト分野
するために、大学・研究機関・コンサルタント等
を中心に国の補助事業や民間団体の助成事業等を
の連携による政策・戦略の実証研究や提案等、シ
活用していくことが有効である。
ンクタンク機能を発揮する。
そのためにはプロジェクトの主体形成が必要
[参考文献・資料]
であるが、大学間の連携や大学と研究機関の連携、
1)国土施策創発調査「東北圏の地域力維持向上に関する調査」
大学と県・市町村の連携等の多様な選択のなかで、
/国土交通省東北地方整備局/2007 年度
支援コンテンツの整備や対話集会を積み重ね社会
2)英国における地域戦略パートナーシップへの挑戦
てきな認知を得ることが必要である。
/公人の友社/2008
特に、今後の試行的な取組みを本格的な展開に
発展させるためには、以下の①~③の推進課題に
対処していくことが重要であろう。