活動の様子

2015 年 JICA 関西訪問記
IIN の 16 人が JICA 関西訪問
苦労話や仕事ぶりに感銘
IIN の会員 16 人が 7 月 6 日、毎年、恒例になっている JICA 関西(神戸
市中央区脇浜海岸通)=写真右=を訪問、開発途上国などの平和と発展に
地道に努力を続ける JICA の仕事内容と職員たちの体験を聞き、改めて感
心しました。このあと、館内を見て、民族衣装などがある「JICA プラザ」
を見学、食堂でアフリカのルワンダ料理を楽しみました。
JICA とは:Japan International Cooperation Agency の略。外務省傘下の独立行政法人「国際協力機構」
の通称です。日本は政府開発援助(ODA)として、開発途上国に、世界最大規模の資金的、技術的協力を実施し
ており、JICA は、ODA のうち、資金拠出を除く二国間の援助機関。JICA 関西は近畿 2 府 4 県と開発途上国を
結ぶ懸け橋として、地域内の自治体、NGO、大学、民間企業などと協力し、地域の特性を生かした国際協力推進
に尽力。IIN では毎年、JICA 関西を訪れ、研修員とも交流するなどで国際親善に勤めています。
初対面の明るい挨拶から
まず、JICA 関西の開発教育支援担当、赤嶺結衣さんから、
「国際協力って?
JICA って?」と題して映像も交えた説明
がありました。スピーチに先立ち赤嶺さんは、いきなり、笑顔
で「アフォン ガンジア?」と、IIN の全員と順番に握手した
あと、「今の意味わかりましたか?」。
「アフォン
ガンジア」とは赤嶺さんが 2 年間働いた西アフ
リカ、ベナンの言葉で「お元気ですか」という意味。返事は「ガ
ンジ」
(元気です)ということで、会員たちも元気に「ガンジ」
「ガンジ」と返しました。海外でも、初対面の時から、こうし
た挨拶を大切にし、すぐに明るく打ち解ける雰囲気をつくるの
が赤嶺さん流のようです。
「世界は相互依存の関係にあり
ます」と話す赤嶺さん
世界の人たちの 8 割が開発途上の貧しい国民
と語る赤嶺さん
赤嶺さんによると、世界には 5 千の言語がある。細かく分けると 8 千にも。195 か国があり、人
口は約 70 億人。このうち、開発途上国と言われるのは 152 か国の 57 億人で、人口では全体の 8 割
余りを占める。読み書きができない人が 8.5 億人、小学校に行けない子供が 1.3 億人。
日本は先進国だが、食料自給率は約 40%(カロリーベース)。エネルギー自給率も先進国のなか
で最低の数%しかなく海外に頼っている。一方、日本製品は外国で多くの人に買われている、東日
本大震災では 1640 億円の援助が 119 か国から寄せられた。地球環境問題も含め、
「世界は相互依存
の関係にあります」と強調しました。東北大震災の直後、赤嶺さんの安否を気遣う電話がべナンか
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ら何本もかかってきた。みんな貧しいから高い電話代は大きな負担。それだけに、赤嶺さんの無事
を確認したとたんに切れてしまうケースがほとんどだったという。
広い分野で途上国の発展を支援
JICA には約 2000 人の職員がいて、発展途上国の要請に添っ
て、日本の持つ各種資源・資産を提供しています。農林水産、
保健衛生、土木建設、教育分野など幅広く、各国に技術協力の
専門家を派遣、海外からは毎年、1 万人の技術研修員を受け入
れ、養成している。うち JICA 関西の受け入れは 140 か国から
250 コース、1600 人。また、青年海外協力隊(20-39 歳)
、シ
ニア海外ボランティア(40-69 歳)の派遣のほか、阪神淡路大
震災などの経験と教訓を活かして、開発途上国の防災分野の人
材育成も進めています。
JICA では、民間との連携にも力を入れており、IIN が実施す
る JICA 関西の研修員らとの交流会に対しては「短い滞在期間
サモアでの体験を語る鈴木さん
に研修員がいい経験ができ、たいへん、喜ばれています」と話
しています。
サモアは南太平洋の地上の楽園
続いて、元 JICA シニア海外ボランティアの鈴木俊章さんが、南太平洋のサモア国での体験談を
披露してくれました。
サモアは、ハワイとニュージーランドの中間くらいに位置し、二つの大きな島からなる国で、淡
路島の 5 倍弱の面積。人口は 19 万人。ポリネシア系サモア人で、顔つきは日本人に似ている。キリ
スト教徒が 97%を占め、言語はサモア語と英語。
美しい自然に恵まれた常夏の国で、年間
メモを取りながら熱心に説明を聞く IIN のみなさん
を通じて 24 度~30 度と過ごしやすい。ス
コールが夜に降るので畑などの水やりは不
要。海産物が豊富で 10 人前分のマグロがわ
ずか 50 円くらい!野菜や果物も豊富。心い
やす爽やかな風が吹き、ドロボーがいない
から、どの家にもドアも壁もない。住民は
やさしく、おおらか。ただ、計画性には欠
ける面も。
驚くのは、
「一家族は親戚を含め 30 人く
らいの大所帯。母系の大家族制で、家族愛が強く、日本のように子育てに困る、老人介護の手が足
りない、なんてことは起きません」
。さらに続けて、
「ひきこもりの日本人がこの国で 3 年くらい過ごすと、治ってしまう。島が勝手に直してくれる
んです」。
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なんともうらやましいハナシ。
「地上の楽園」のような国なら JICA が支援する必要があるのか?
と疑問を感じたところ、やはり、いろいろ、問題が。
やり方の基本がわかれば、どんどん発展の可能性
一例をあげると、
サモア大学で、鈴木さん
は科学教育を担当してい
た。ある日、注射器をハン
カチで拭く看護士さんに
注意すると「大丈夫。この
ハンカチ、きのう、川で洗
ったから」と無邪気な応え
が返ってきた。微生物の怖
さに対する知識がないか
らだ。ちなみに、サモア大
学は日本が建てた国立の
大学。「みんな頭がよく、基本的な
広報展示室には各国の衣装や道具などがあり、民族衣装を試着する人も
知識ややり方・技術さえ教えてあげれば、どんどん可能性を広げる国
です」と鈴木さんは将来を楽しみにしている様子でした。
講演のあと、IIN の会員たちは、赤嶺さんの案内で館内を回り、研
修生らのための 100 のベッドがある部屋、彼らのストレスを和らげ
るための屋上庭園やテニスコート、さらに、一階にある広報展示室な
どを見学。ここでは民族衣装を着たり、玩具で遊ぶ好奇心いっぱいの
会員もいました。
展示と食堂などの「JICA プラザ関西」を見学
最後に食堂でアフリカ中央部、ルワンダ共和
国の料理を楽しみました=写真左。トウモロコシ
の粉で作った主食のウガリを、煮物につけて食
べるなどユニーク。ここの食堂は約 100 席あっ
て一般に開放されており、各国の研修生らとエ
スニックなランチを楽しめます。
JICA 関西では「敷居を低く」をポリシーの一
つにしており、展示室、資料室、食堂を「JICA
プラザ関西」として開放しています。
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「ポジティブな気持ちにさせられました」
最後に、初参加の INN 会員たちの感想を聞いてみるとー
「地球上には、いろんな国があり、多様な生活があることがわかって楽しかった。ただ、この日の
話は、JICA でのやりがい、楽しい面が中心。現実には苦労や困難が多いでしょうから、次回は、技
術指導や、やる気を引き出すむずかしさも聞かせていただきたい」
。
「鈴木さんは話が巧み。体験からくる言葉には説得力があり、大いに心を揺さぶられました。今
から私にも何かできることがあるかも…と、ポジティブな気持ちにさせられ、おかげでメンバーと
の会話も弾みました」
。
「私もいつか、何かをしたいと、のんびり考えていましたが、シニアボランティアの年齢制限に
ひっかかることを知ってショック。今となっては、いつか、“地上の楽園”サモアに観光旅行してみた
い!」。
「JICA 大阪時代(2012 年 3 月閉鎖)と比べ、オープンな感じ。気楽に食堂に入って研修員らと
交流できる雰囲気がとてもよかった」
。
JICA 関西を訪問した IIN のみなさん
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