【Value Eyes 21号掲載記事】ISO 26262 セミナーレポート

ISO 26262 セミナーレポート
SEMINAR REPORT 第 2 特集
LRQA ジャパン主催 開催日:2015 年 4 月 17 日 会場:東京 自動車部品会館
ISO 26262 セミナーレポート
プロフェッショナルが集結して
機能安全への視点を徹底解説
∼ ISO 26262 に準拠するためにまずすべきこと∼
自動ブレーキや自律走行システムなど、自動車機構における電気・電子シ
ステムの役割が拡大する中で、各アセットメーカーやパーツメーカーも ISO
26262(自動車向け機能安全マネジメントシステム)への関心を高めていま
す。このニーズに応え、LRQA ジャパンでは、機能安全のエキスパートが
ISO 26262 への準拠に求められる視点を解説する「自動車機能安全セミ
ナー 2015 春」を開催しました。
ISO 26262準拠へのスタンスを
専門的・実践的な視点から解説
から、ISO 26262「Part3:コンセプトフェーズ」
「Part4:製品
開発/システムレベル」に関連する「機能安全におけるMBD(モ
デルベース開発)アプローチ」の有効性について説明いただきま
2011年に制定されたISO 26262は、電
した。
気、電子およびソフトウェアコンポーネン
トで構成される安全関連システムの誤作
仮想パワースライドを用いた安全分析と自動FMEA(故障
動により生じるハザード(障害)に起因す
モード影響解析)環境の構築にMBDを用いた実例を示しなが
るリスクを回避するためのガイダンスを提
ら「機能安全とは適切な安全ゴールの主張可能な達成であり、
非破壊性・再現性・網羅性が求められる箇所でのエビデンス確
供する規格です。自動車のライフサイク
ル全般にわたる機能安全を確保するため
に、ハザードおよびリスクへのアセスメン
LRQA ジャパン
機能グループ・マネジャー
松土 達哉
ト、プロセス管理などに関する要求事項
保においてMBDアプローチは極めて有効」と解説されました。
Part 6 製品開発/ソフトウェアレベル
機能安全を実証する技術・設計スキル
が、Part1から10までの箇条に分類され
て構成されています。
次に登壇した株式会社東陽テクニカの
LRQA ジャパンでは、ISO 26262の
二上 貴夫氏は、ISO 26262セミナーにお
導入に取り組まれる自動車エンジニアの
けるレギュラー・メンバーです。3月11日
方々を支援するべく、各専門領域のプロ
に開催された「JARI自動車安全機能カン
フェッショナルを集めた協業体制を構築。
ISO 26262全体をカバーし、より実践的
な視野からISO 26262導入をサポートす
株式会社ヴィッツ
先進基盤技術部
大西 秀一氏
ファレンス2015」での解説を補足されるか
たちで、ISO 26262「Part 6:製品開発
/ソフトウェアレベル」への準拠において
株式会社東陽テクニカ
二上 貴夫氏
る「自動車機能安全セミナー 2015春」を2015年4月17日、
東京・
必要となるメカトロニクス開発の技術・設計スキルについて
自動車部品会館で開催しました。
解説されました。
セミナーの冒頭では、LRQA ジャパン 機能グループ・マネ
「機能安全を実証する組込みシステムを開発するためには、
ジャー 松土 達哉が開会の挨拶に続いて、ISO 26262「Part 2:
開発対象の機能・情報・状態を理解し、ドメインを分離して個々
機能安全管理」の要求事項に応えるために「トップが機能安全
に開発した上で、全体を統合してシステムテストを実行する必
の必要性を理解し、妥当な意思決定をするために、機能安全
要があります」
(二上氏)
準拠活動の意義や将来的なメリットなどの充分な判断材料を
提供することが必要である。また、組織に良い安全文化を根
付かせることも必要である。
」と力説。そのためにトップ向け
Part 8 支援プロセス
構成・変更管理に有効なツールの導入
セミナーを提供していると述べた。また、ISO 26262全体をカ
株式会社東陽テクニカ ソフトウェア・
バーできるスペシャリストを集めた協業チームによって、お客様
ソリューションの北條 哲氏からは、機能
のより専門的で、より高度なご要望に対応できる体制であるこ
安全ソフトウェア開発に必要な環境の構
とをご案内しました。
築・運用を支援するツールの導入につい
て詳細に解説いただきました。
Part 3 コンセプトフェーズ
Part 4 製品開発/システムレベル
機能安全におけるMBDアプローチ
リスク分析の結果を客観的な証拠によっ
続いて、株式会社ヴィッツ 先進基盤技術部の大西 秀一氏
て内外に示すことを求めており、そのた
ISO 26262「Part8:支援プロセス」では、
株式会社東陽テクニカ
ソフトウェア・ソリューション
北條 哲氏
VA L U E E Y E S Vo l . 21
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SEMINAR REPORT 第 2 特集
ISO 26262 セミナーレポート
LRQA ジャパン主催 開催日:2015 年 4 月 17 日 会場:東京 自動車部品会館
めに「安全プロセスの実施とレビューの徹底によりシステマ
チックに故障を押さえ込み、かつそのプロセスとレビュー結果
プロフェッショナルを集めた協業体制
をデータとして一元管理する認証ツールが非常に有効」との紹
介に、来場者の高い関心が寄せられました。
ISO 26262
Part 5 製品開発/ハードウェアレベル
ハードウェア安全分析と故障検証
Automotive
ve ISO/TS
SPICE
16949
ISO 26262「Part5:製品開発/ハー
ドウェアレベル」で要求されている電子
部品の偶発故障に対する危険度(以下、
教育研修
ASIL)に応じた故障率や検知率の達
成に関しては、株式会社構造計画研
アドバイ
ザリー
二者監査
機能安全
監査
機能安全
審査
究所の宮本 秀徳氏から、同社で実施
したハードウェアの安全分析および故
株式会社構造計画研究所
宮本 秀徳氏
障率検証のプロセスをご紹介いただき
の影響は、場合によりPart1∼Part6に影響を与え、ISO/TS
ました。
16949と同様の対応が必要となります。
「ASIL目標を達成するためには、安全メカニズムの検知率
ISO/TS 16949が自動車生産全般にわたるQMS(品質マ
やドライバーの認知率をも考慮した詳細な故障解析を行う必
ネジメントシステム)を規定するものであるのに対し、ISO
要があり、そのための適切なツール選択も求められますが、
26262では、あくまで機能安全面を保証する要求事項を規定
この過程がより安全で高い競争力を伴う自動車部品・製品の
します。LRQA ジャパンでは、
「既存のQMSの中に機能安全
提供を実現します」
(宮本氏)
のシステムを組込んだQMSを構築する」という視点を確立して
います。
機能安全への明確な方針を伴うQMSの構築は、自動車生
Part 7 生産と運用
ISO/TS 16949との関連について
産におけるライフサイクル的なコスト・工数の削減を実現しま
セミナーの最後に、LRQA ジャパン
すので、この機会に既存のQMSにISO 26262に準拠したプ
機能安全スペシャリストの堂本 寿紀か
ロセスを組込んだQMSへの構築に取り組まれることをお勧め
ら、ISO 26262「Part7:生産と適用」と
しています。
ISO/TS 16949(自動車産業向け品質マ
各専門領域のプロフェッショナルが
機能安全性の向上を包括的に支援
ネジメントシステム)との関連について解
説させていただきました。
ISO 26262「Part7:生産と運用」の対応
LRQA ジャパン
機能安全スペシャリスト
堂本 寿紀
各専門領域のプロフェッショナルが機能安全確保のための
視点とノウハウを公開した今回のセミナーは、LRQA ジャ
ISO 26262 の構成
Part 2
Part 4
Part 3
コンセプト
フェーズ
パン がISO 26262だ け でなくISO/TS 16949やAutomotive
用語
機能安全管理
Part 1
Part 5
SPICEも含めた幅広い視野から自動車機能安全向上をサポー
トする体制を整えていることを証明する機会ともなりました。
製品開発システムレベル
Part 6
製品開発
製品開発
ハードウェアレベル ソフトウェアレベル
Part 8
Part 9
Part 10
LRQA ジャパンでは、各専門領域のプロフェッショナルと
Part 7
生産と
運用
支援プロセス
ASIL と安全性向上のための分析
ISO 26262 ガイドライン情報
ともに、各種教育研修、アドバイザリーサービス、二者監査、
機能安全監査・審査を提供しています。皆様の組織に最適
な機能安全確保に向けたご相談をお寄せください。
ISO/TS 16949とISO 26262との比較
ISO/TS 16949 と ISO 26262 の関係
項目
ISO/TS 16949
製品の QMS(OEM に納める部品の QMS)
内容
アイテムの定義からアイテムの機能安全の開発、
生産時の機能安全の実現、生産及び廃棄まで
製品の計画、設計開発、試作、量産、生産終了まで。
生産に重点
目的
アイテムの定義から生産、
廃棄までの機能安全を保証すること
OEM に不適合のない製品を
ムダを排除した生産方式で納めること。
関係
アイテムは、製品の一部であり、その機能安全は、
製品の一部であり、安全性を証明するもの。
機能安全を含むが、アイテムが機能安全を
達成していることの証明事態は実施しない。
規格の対象
8
ISO 26262
アイテムの機能安全
アイテムは、製品の一部
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