大規模なメインフレームを オープンシステムに刷新、 コストメリットを最大

Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
OPEN EYE
19
オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー
vol.
2015 May
INDEX
トップインタビュー
ユーザー事例 Success Story
株式会社日本政策金融公庫 取締役 IT部門長
山口 博澄氏
ユーザー事例 Success Story
高止まりしていたITのコスト構造を
OSSによって将来的に変革。
IT活用をビジネスの革新に繋げる
ユーザー事例 Success Story
日本政策金融公庫
レッドハット製品の採用により特定ベンダー
に依存しない柔軟性を確保。
サーバー台数は
約6割削減、運用コストも約3分の2に
中国電力
三菱総研DCS
統合基幹業務システムに
Red Hat JBoss Middlewareを採用。
開発工数を削減し、OSSノウハウも獲得
○ レッドハット 最新レポート
レッドハット、福岡に西日本支社 九州・中国営業所を開設!地域のお客様に密接にサービスを提供、地元IT企業への技術移転を促進
ユーザー事例
Success Story
日本政策金融公庫
トップインタビュー
大規模なメインフレームを
オープンシステムに刷新、
コストメリットを最大化すべくOSSを採用
株式会社日本政策金融公庫 取締役 IT部門長
日本政策金融公庫は国民一般や中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援す
支店の統合や 3 事業による総
山口 博澄 氏
わたるものでした。こうした中
合力の発揮、BPR(Business
で、2010 年 10 月に
「公庫全体
る政府系金融機関である。現在152の支店を有し、資本金は3兆8550億円、2014年3
Process Re-engineering)手法
システム最適化計画」が策定さ
月現在の総融資残高は 20 兆円を超える。同社では 2010 年 10 月に全体システム最適
による事務の合理化/効率化
れたのです。
に取り組むとともに、
システム面
この計画の目的は、低コスト
での高度化と最適化に取り掛
で柔軟性かつ拡張性を確保し
かりました。
たシステムとすること、そして業
当時の情報システムは、事業
務面での一層の合理化/効率
化計画を立案、OSSを採用してそれまで各事業で個別に構築していたシステム基盤を
プライベートクラウド環境として統合した。その取り組みについて、取締役 IT部門長の
山口博澄氏に伺った。
ごとに異なる4 つのメーカーの
化を推進することです。具体的
―今回のプロジェクトではシ
日本政策金融公庫は 2008
メインフレームを中心に構成さ
には、
ソフトウエアや開発言語、
ステム共通基盤の構築と並行し
年10月、国民生活金融公庫、農
れ、サーバーも業務面のニーズ
構築技法といった設計思想を
て、国民生活事業、農林水産事
林漁業金融公庫、中小企業金
によりその都度導入されていた
標準化した上で、オープンスタ
業、中小企業事業(融資/保
融公庫が統合して設立された
ため、稼動率の低いサーバーが
ンダード技術を適用すること、
険)
という3 事業 4 業務システム
政府系金融機関ですが、統合
乱立していました。また、データ
プライベートクラウド環境とし
をオープンな環境へ移行されま
後は、旧機関が培ってきた専門
センターやネットワークなども
て公庫共通基盤を確立し、各事
した。まず始めに、今回のプロ
性を活かしつつ、統合による効
事業ごとに維持され、システム
業の業務システムをマイグレー
ジェクトに至った背景について
果をどのように創出していくか
要員も事業ごとに抱えていまし
ションすること、さらには、経理
お聞かせください。
が経営課題でした。そのため、 たので、統合の対象は多方面に
や人事給与システムなど管理
オープンスタンダード、
デファクトスタンダードの技術で共通基盤を統合し、
システムの柔軟性とITコストの低減を実現
Success story for your business
系システムの統合や、電子決
この点において、銀行合併など
言うまでもなく、最も大きかっ
裁・ペーパレス化などの BPR 施
では、合併以前のいずれかのベ
たのはコスト削減効果ですね。 ネジメントではなく、自律的に
策を実施することで、事務の合
ンダーを選択してメインフレー
システム全体の運用コストは、 プロジェクトマネジメントを行
理化/効率化を図るというもの
ムを残しつつ、必要な機能を追
約 3 分の 2 にまで削減すること
い、リスクや課題に適切に対処
です。また、各事業の情報シス
加する
「片寄統合型」を採用す
ができました。バックアップ対
できる人材を育てていく必要が
テム部門を機能別組織に再編
るケースも多く見受けられます
象のシステムを増やすことがで
ありました。
し、計画的にIT人材を育成する
が、なぜあえて大きな転換に踏
きたのも、全体のコスト削減が
そこで「IT 部門」の発足に伴
ことも重要なテーマでした。
み切ったのでしょうか。
見込めたためです。13台あった
い、
「ITアカデミー」
というIT 部
メインフレームは全廃し、物理
門における将来の幹部候補を
最新技術の導入には
人材育成が必要不可欠、
「ITアカデミー」設立によって
スペシャリストを育成
Hirozumi Yamaguchi
―プロジェクトを推進する上
確 か に従 前 の 発 想であ れ
サーバーも770台から300台に
育成するためのプログラムを創
ば、特定のベンダーに依存する
まで集 約 することができまし
設し、高い次元で業務を遂行で
形で今回のプロジェクトを進め
た。また、各事業の情報システ
き、マネジメントを主導できる
「IT部門」
に統合し、企
るという判断もあったでしょう。 ム部門を
画/開発/運用の機能別組織
このプログラムは2年間の教育
祥策 前総裁)は、特定のベン
に再編しました。これにより、業
カリキュラムで、これまでに 12
ダーに依存することなくオープ
務の共通化や標準化が図られ
名が卒業し、現在管理職や各グ
ンな技術を採用することが、ベ
るとともに、システム運用の自
ループの中心的な役割を担っ
ンダー間の競争を促し、将来に
動化やシステム改修の効率性
ています。この他にもIT 部門で
わたってシステムコストの低減
も向上しました。
は、入門・基礎、初級、スキル
につながるという考えで、オー
今回、システム基盤をオープ
アップという3 つの研修コース
プンスタンダード、デファクトス
ンソースにしたことで、今後新
を設けるなど、人材育成に積極
タンダード技術の採用を基本
たに業務アプリケーションを導
的に取り組んでいます。IPA が
方針としたのです。我々は政府
入する際にも、特定のベンダー
実施している情報処理技術者
系金融機関としてコスト削減
ではなく各分野に強みを持つ
試験においては、最難関のレベ
を重視しつつ、メインフレーム
企業に参加してもらうことが可
ル 4 の資格を延べ人数で IT 部
と同等の信頼性や安定性を確
能となります。当然我々自身に
門の約半数が取得しているな
保することを目標に、システム
目利き の力は求められます
ど、
着実に効果が出ています。
共通基盤を構築することに取
が、システム構築の自由度が格
り組みました。そこで結果的に
段 に増したことは 、将 来 にわ
―最後に、レッドハットに対す
採 用した技 術そして製 品 が 、 たってシステムを進化させてい
る期待やご要望についてお聞
レッドハット製品だったという
く過程で何よりのメリットだと考
ことです。
えています。
かせください。
我々のようなユーザー企業
―初の取り組みとなるオープ
―まさに今お話の出た「目利
にとって、最新の技術動向や IT
ンソースソフトウェアの導入に
きの力」についてですが、今回
活用手法などに関する情報を
もっとも難易度が高かった点
際し、金融機関としてシステムの
新しいテクノロジーとしてオー
リアルタイムで収集していくこと
は、最大 10のプロジェクトを同
安全性についてはどのようにお
プンソースを採 用するにあた
は実に重要なので、そのような
時並行で実施するということで
考えでしょうか。
り、社内で使いこなすための専
情報提供についてはぜひレッド
門知識やスキルが求められた
ハットに期待したいところです。
金融機関のシステムは処理
と思います。この課題について
また今回のプロジェクトで、
現するためです。しかしながら、 の規模が大きく、オンライン即
は、どのように取り組まれたの
経理システムと人事給与システ
でしょうか。
ムは全社共通の業務システム
した。
これは、統合による効果を
最大化し、かつ早期に効果を実
10ものプロジェクトを同時並行
時処理の信頼性も求められます
で進めるとなると、あるプロジェ
ので、多くの機関がメインフレー
としてプライベートクラウド上
クトに遅延が発生すれば、他の
ムを利用しています。我々は、最
特定のベンダーに依存せず、 に再構築しましたが、これから
プロジェクトに影響する可能性
適化計画の策定段階で、サー
自ら主体的にプロジェクトを運
もこういう形で共通化できるア
がありますので、プロジェクトの
バーの性能がメインフレームと
営/管理していくためには、人
プリケーションは共通化を図っ
推進にあたっては、品質を確保
同等レベルであることの確認
材の育成が大きな鍵を握りま
ていきたい。今回はレッドハッ
し、進捗管理を徹底することが
や、レガシー資産をオープン系
す。事業ごとにシステム部門が
トとコンサルティング契約を結
特に重要になります。職員には
のプログラム言語にマイグレー
あった当時は、人材育成の方針
んでさまざまな場面でサポート
「情報の共有」、
「問題意識の共
ションする際の実現性なども調
や人員配置時の判断基準が異
してもらいましたが、これからも
有」
を繰り返し指示し、一寸とし
査していましたので、安全性や
なり、さらには各々が特定ベン
よきパートナーとして、具体的
た気づきやプロジェクト遅延の
性能面なども十分に考慮された
ダーの開発手法やルールに頼
なご 提 案 を い た だ き た いと
らざるを得ないという状況でし
思っています。
兆候があれば、速やかにエスカ
計画であったと思います。
レーションすることを徹底しま
ただ、金融機関としてやはり
した。また、早期にリスクや課題
システムを止めることはできま
を発見するため、PMOとして全
せんので、可用性の確保につい
▼ 業務システムは、
システム設計思想やアーキテクチャーを統一し、
システム共通基盤(プライベートクラウド)環境に統合
体を横串で捉え、プロジェクト
ては相当な議論を重ねました。
の円滑化や調整を行うグルー
また東日本大震災の教訓もあ
業務アプリケーション
プを設置し、的確な状況把握が
り、今回のシステム最適化計画
サービス連携基盤
できる枠組みを整えました。
では事業継続性について十分
に検討を行い、バックアップ対
―全社共通のシステム基盤
象のシステムを増やすという対
をプライベートクラウド環境と
策も採りました。
して実現され、その際にOSとし
てRed Hat Enterprise Linux、 ―実際に今回のプロジェクト
ミドルウェアとしてRed Hat JBoss
で得られた効果は、どのような
Middlewareを採用されました。 ものだったでしょうか。
2 OPEN EYE
人材の育成に取り組みました。
しかし当時の経営トップ(安居
で困難だったのはどのような点
ですか。
た。我々は、ベンダー任せのマ
国民業務
システム
農林業務
システム
中小業務
システム
ミドルウェア
Red Hat JBoss EAP
データベース
仮想化
KVM
オペレーティングシステム
Red Hat Enterprise Linux
ハードウェア
(サーバー、
ストレージ)
ネットワーク回線
システム共通基盤
(プライベートクラウド)
共通
システム
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
ユーザー事例
Success Story
日本政策金融公庫
全社共通
システム基盤の構築
レッドハット製品の採用により特定ベンダー
に依存しない柔軟性を確保。
サーバー台数は
約6割削減、運用コストも約3分の2に
3 事業の統合により4 種類の業務システムを運用していた日本政策金融公庫では、情報シ
ステムのあり方を抜本的に見直し、共通のシステム基盤構築を計画。OSとミドルウェアに
レッドハット製品を採用した。
る入札制度の中でシステムを構築していく必要があ
背景
特定ベンダーへの技術依存を排し、
全社システムの最適化を検討
ります。その際には入札業者間で公平性を確保しつ
つ、どれだけ競争性が働くかが重要なポイントとな
りますが、そこでオープンスタンダード、デファクトス
2008 年 10 月設立の日本政策金融公庫では、3 機
タンダードな技術をベースにすれば、数多くのベン
関の統合により国民生活事業、農林水産事業、中小企
ダーに参加してもらうことが可能となります。目指し
業事業(融資/保険)
という3 つの事業を展開してい
たのはまさにベンダーロックインの排除で、これに
るが、これまでシステムは個別に構築、運用されてい
よって将 来 的にシステムコストの低 減を確 保しつ
た。当時の課題について、株式会社日本政策金融公
つ、
より多くのベンダーから有益な提案を受けること
庫 ITプランニングオフィス IT 戦略グループ グループ
も可能となりました」。
株式会社日本政策金融公庫
システムインテグレーションオフィス
マネージャー
(公庫共通基盤・
共通システム担当)
渡邊 英己
リーダーの佐藤功司氏は、次のように振り返る。
「一番悩ましかった点は、各事業部のシステムが特
定ベンダーの技術に依存しており、サーバーも乱立
していたことです。またメインフレームとオープン系
システムが混在し、度重なる改修でシステムのメンテ
株式会社日本政策金融公庫
ITプランニングオフィス
IT戦略グループ
グループリーダー
レッドハット製品の導入による効果
メインフレームを全廃、
サーバーを約6割削減
運用コストは約3分の2に
ナンス性も悪くなっていました。そこで 2010 年 10
同社は 2011 年 11 月から2 段階に分けて共通シ
月、全社システムの最適化計画を策定したのです」。
ステム基盤の構築に取り組み、プライベートクラウ
最大の目的は、より低コストでシステムの柔軟性
ド環境を実現、2014 年 5 月に最終リリースした。か
および拡張性を確保すること。業務面でも、一層の
つて 13 台あったメインフレームを全廃し、RHELと
効率化を推進していくことを目指した。具体的な解
Red Hat JBoss EAP に加えて Linux 標準の仮想化
決策は大きく2 つで、1 つ目がプライベートクラウド
技術である KVM を採用、サーバーの集約を進めた
氏
佐藤 功司
氏
今後の展望/レッドハットへの期待
IaaSの基盤となるOpenStack、
Docker搭載のRHEL 7 にも注目
環境を構築してシステム基盤を全社共通化するこ
ことで、770 台あった物理サーバーを約 300 台に減
と、そして2つ目が、基盤共通化に先駆けて着手して
らすことにも成功した。
同社にとって初となる OSS の採用にあたっては、
いた各業務システムのマイグレーションを推進する
「ネットワーク環境やバックアップセンターなども統
レッドハットのエンジニアやコンサルタントに相談
ことだ。同社はこの他にも全社共通の経理システム
合したことで、トータルの運用コストは約 3 分の2にま
し、英 Micro Focus の COBOL サーバーとJava サー
や人事給与システムの開発など、合計で 10 にのぼ
で低減することができました。
レッドハット製品の採用
バーの連携方法など、多くの場面でサポートを得た
るプロジェクトに同時並行で取り組んだ。
によってソフトウェアのライセンスコストを下げること
という。
ができたのも、大きな貢献要因です」
(渡邊氏)。
「仮想環境を効率よく管理するという観点から、
また渡邊氏は運用面での効果として、ライブマイ
最近では IaaS の基盤となる OpenStack に注目して
オープンスタンダード、
デファクト
スタンダードな技術を採用し、
競争性を確保
グレーションの機能を高く評価する。
おり、セミナーなどで情報収集を続けています。また
「共通基盤の構築と並行して各業務システムのマ
集 約 率をさらに高めるという点では 、仮 想コンテ
イグレーションも進め、完了したものから順次基盤
ナー技 術の D o c k e r をサポートした R H E L 7 への
レッドハット製品を選んだ決め手
全社共通のシステム基盤構築にあたり、同社は OS
に載せていくという方法を採ったのですが、その過
アップグレードも検討事項ですね」
( 渡邊氏)。
としてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)、ミドルウェ
程で少なからずパフォーマンスの問題が発生しまし
「パッケージ製品によっては、OSS で動作保障し
アとして Red Hat JBoss Enterprise Application
た。各システムで運用のピークが重なり、リソース不
ないため採用できないケースもある。更なるコスト
削減を実現するため、レッドハットをサポートする
Platform(Red Hat JBoss EAP)
を採用した。その理由
足が起きたのです。その際、ライブマイグレーション
について、日本政策金融公庫 システムインテグレー
によってシステムを止めることなく仮想サーバーの
パッケージ製品が増えるよう努力いただけるとうれ
ションオフィス マネージャー(公庫共通基盤・共通シ
最適な配置を行うことができました。プロジェクトの
しいです ね 。これ は 我々だ けでなく、多くの ユ ー
ステム担当)
の渡邊英己氏は次のように説明する。
性質上、このライブマイグレーションの機能も実に
ザー企業のメリットにも繋がるのではないかと思い
「我々は政府系金融機関なので政府調達、いわゆ
有用でした」
( 渡邊氏)。
ます」
( 佐藤氏)。
全社共通システム基盤の構築
01
背景
02
レッドハット製品を
選んだ決め手
03
レッドハット製品の
導入による効果
特定ベンダーへの技術依存
を排し、全社システムの最適
化を検討
オープンスタンダード、
デファ
クトスタンダードな技術を採
用し、競争性を確保
メインフレームを全廃、サー
バーを約6割削減
運用コストは約3分の2に
・最大の目的は低コストと柔軟性/
拡張性の確保
・プライベートクラウド環境で全社
共通のシステム基盤を構築
・目指したのはベンダーロックイン
の排除
・将来的にわたるシステムコスト
の低減も確保
・レッドハット製品の採用でライセ
ンスコストも大幅に削減
・ライブマイグレーションで仮想
サーバーの最適な配置を実現
04
今後の展望/
レッドハットへの期待
IaaSの基盤となるOpenStack、
Docker 搭載の RHEL 7 にも
注目
・セミナーなどでOpenStackに関す
る情報を収集
・集約率を高める仮想コンテナー
技術にも強い関心
OPEN EYE 3
Success story for your business
ユーザー事例
Success Story
中国電力
プライベートクラウド
の構築
高止まりしていたITのコスト構造を
OSSによって将来的に変革。
IT活用をビジネスの革新に繋げる
中国地方を中心に電力事業を展開する中国電力株式会社では、レッド
ハット製品を採用して社内のインフラ環境をプライベートクラウド「エネル
ギアクラウド」へと移行。同社におけるIT 構想、また IT が果たす役割につい
て、中国電力株式会社 執行役員 情報通信部門(情報システム)部長 丹治
邦夫氏に伺った。
―昨今の電力業界は、発送電分離や電力小売市場
を踏まえて練り直した結果、
「信頼確保」、
「費用低
の完全自由化が予定されるなど、激しい環境変化の
減」、
「業務革新」
という3 つのコンセプトを設定しま
中に置かれています。そのような状況で、IT はビジネ
した。まずはお客様に低価格で電気をお届けするた
ス部門からどのような役割を期待されているとお考
めにITコストを低減することを中心に据え、さらにIT
えでしょうか。
Kunio Tanji
で確実な業務運営を支援することで信頼を確保す
る。この2つを軸に業務を革新し、新たなサービスの
中国電力では数十年以上も前からIT を利用して
提供を目指すというものです。
きており、もはや IT なくして電気事業は成立し得な
この中の費用低減の取り組みの一環として、エネル
いと言えます。そのような中でITの役割としては大き
ギアグループ(=中国電力グループ)全体で共通のシ
く2つの視点があり、まず1つが、業務の効率を高め
ステム基盤を作り、集中化、共有化を進めるという目
てさまざまなコスト低減に繋げていくこと、そしてもう
標を掲げました。これがグループ共通のプライベート
Linuxには20年以上の実績があります。変化の激し
1つが、社内の業務情報を、必要な人により速く正確
クラウドの構築で、高止まりしていた開発コストを解
い ITの歴史において、20 年にわたりLinux OS が持つ
に届けるということです。IT を活用してこうした改善
消することが最大の狙いでした。そこで採用したの
本来の機能に関して何らかの 致命的な欠陥 が見つ
や改革を積み重ねることが、
ビジネスの大きな革新、
が、OSSであるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)
と
かったという話は聞いたことがありません。特に先進
すなわちイノベーションに繋がると考えています。
Red Hat JBoss Enterprise Application Platform
的な技術領域には手を出さないまでも、確実に安定
例えば現在、我々はITによって、万一停電が発生し
(Red Hat JBoss EAP)
です。
稼動し、かつ他の企業でも採用されている実績がある
のなら、当然利用できるはずだと考えました。
た際にその状況を即座に検知し、停電区間を自動的に
狭めていくという制御を実現しています。2014 年から
― OSS を選択された一番の目的は、やはりコスト
実は私は、個人的にLinuxは10年以上前から、KVM
は、どの地区で約何戸が停電しているのか、復旧状況
削減だったということでしょうか。
も5年以上前から使用してPC環境を構築しているので
すが、そのきっかけとなったのは、PCを購入するたび
はどうなっているのかといった情報も、事務系システム
にデータ連携することで、停電の約 5 分後からWebで
確かに ITコストの削減は優先順位として高く、そ
に OSもくり返し買わなければならないことに疑問を
閲覧が可能です。
こうした仕組みも、日々の改善を何十
こで OSS の利用がきわめて有効だった点も事実で
持ったからなのです。自分で使ってみて、OSSの有用性
年も積み重ねてきたからこそ、
実現できた結果です。
す。ただ我々が目指した費用低減は一時的なもので
を実感していたことも大きかったかもしれません。
はなく、高止まりしていた当時のコスト構造を将来
―今回、社内インフラ環境を独自のプライベートク
にわたって変えていこうとするものでした。そこで考
―これまでOSSの利用経験がない企業では、
その有
ラウドに移行されましたが、その背景にはどのような
えるべきは、特定ベンダーの技術に依存したシステ
用性や導入効果を十分に理解していても、実際の導
ム開発から脱却し、自分たちでシステムを作り、運用
入には二の足を踏むという状況もあるかと思います。
課題意識があったのでしょうか。
していくことです。今では安価でも優れたソフトウェ
実は 2010 年から5カ年計画として IT 構想を策定
アが数多く提供されていますが、それを選ぶのは、
例えば初めてプールに入った時、泳いだ経験のな
し始めていたのですが、翌年に発生した東日本大震
ユーザーである私たちであるべきです。ベンダー環
い人は少なからず怖いと感じるでしょう。しかし水に
災によって骨子が大きく変わりました。震災の教訓
境に深く浸かったままでは、社内のシステム環境も
入って、息を止めて潜ってごらんと教えてもらい、そ
統一できませんし、自分たちでコントロールすること
こで足を動かせば、浮くという体験ができる。
もままなりません。我々が能動的にシステムを作り
OSS の採用についても同様で、水に入る瞬間の怖
上げ、使いこなしていくうえでも、OSS の採用は避け
さはあると思いますが、怖がらずに入ってみて、経験
て通れなかったと言えるでしょう。
することで成功体験が増えれば抵抗はなくなると思
います。また、人の多いところなら安心です。まだ人
―一方で、社会インフラとして必要不可欠な電力
のいない場所は深みや危険があるのではと不安に
を供給するという、絶対的なシステムの安全性の担
なりますが、レッドハット製品はまさにこの人の多い
保が必要だったと思いますが、この点でレッドハット
場所であって、それを顕著に物語っているのが数多
製品をどのように評価されたのでしょうか。
くの導入実績です。
能動的にシステムを作り上げ、使いこなして
いくうえでOSSの採用は避けて通れない
中国電力株式会社 執行役員 情報通信部門(情報システム)部長
丹治 邦夫
4 OPEN EYE
氏
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
―エネルギアクラウドは2012年の稼動開始から約
例やOSSコミュニティの情報などによって裏打ちされて
繋がりの場を提供し続けていただきたいと思います。
3 年が経過しました。現在までのレッドハットに対す
います。我々にとって特に参考となるのは、ユーザー会
また世界中のあらゆる業種の企業と、システムの
る評価、また今後の要望についてお聞かせいただけ
での情報交換ですね。自分たちのIT が今、どの辺りに
根幹であるOSを提供するという立場で関わる企業と
ますでしょうか。
いるのか、また他業種でも、同規模の企業はどこを目
して、どうすればそれぞれの国や企業、人々が、幸福
指しているのかなどを知ることができる。自分たちの取
かつ効率的に企業活動や社会生活を送ることがで
製品の信頼性については、
レッドハットが発信す
り組みについて、ユーザー企業が集まって直接話せる
きるのか、という視点を失わずに今後も活動してい
る情報だけでなく、さまざまなユーザー企業の導入事
というのは貴重な機会です。今後もユーザー企業間の
ただきたいと思います。
物理サーバーは300台から90台へと7割削減、
レッドハット製品でベンダーロックインから脱却
サーバーも商用製品からRed Hat JBoss Enterprise
中国電力では、IT資産の効率的な運用を
Application Platform(Red Hat JBoss EAP)へとリ
実現するためにグループ全体の共通システ
プレースした。
ム基盤としてプライベートクラウドの構築を
計画、さらに高止まりしていたITコストの低
減と特定ベンダーの技術からの脱却を目指
して、
レッドハット製品を採用した。
背景
5カ年のIT構想で掲げた費用低減に向けて
グループ共通のシステム基盤構築を計画
2011 年、中国電力では 5カ年計画となるIT 構想
を立案、費用低減による顧客メリットの創出と、シ
ステムの安定稼動による信頼性確保の 2 点を基軸
に、業務革新を推進した。特に費用低減については
「 エンタープライズでの利 用に耐え得る O S S の
中国電力株式会社 情報通信部門(情報基盤担当)
Linuxといえば RHELしかないという判断で、採用に
坂本 邦雄
至りました。信頼性、安全性の面からも全く問題ない
と判断しました。またWebアプリケーションサーバー
を商用製品からRed Hat JBoss EAP へ置き換えた
討していると話す。また現在、同社では商用パブリッ
のは、まさにベンダーロックインからの脱却を図るた
ククラウドサービスの利用も部分的に開始している
めです。それまでは特定ベンダーの世界に縛られて
が、坂本氏はその利用状況も睨みながら、将来的に
いたのですが、OSS であるレッドハット製品なら、将
は今回構築したプライベートクラウドをパブリックク
来にわたって我々自身でシステムのデザインを行っ
ラウドサービスに移行する可能性もあるという。
ていくことが可能だと判断したのです」。
「商用パブリッククラウドサービスを利用するの
は、今回が初めての試みですが、
これがうまくいけば
レッドハット製品の導入による効果
物理サーバーを300台から90台に削減、
アプリケーション領域のサポートも評価
具体的な目標として、高止まりしている IT コストの
プライベートクラウド環境を構築したことで、中国
構造改革を図ること、グループ全体のシステム基盤
電力では 300 台あった物理サーバーを 7 割も削減、
を構築すること、そして特定ベンダーの技術からの
90 台にまで減らすことができた。今では仮想化によ
脱却という3 つの柱を設けた。当時の状況につい
り、90台の物理サーバー上で900の仮想サーバーが
て、中国電力株式会社 情報通信部門(情報基盤担
稼動している。
当)の坂本邦雄氏は次のように説明する。
「我々が担当する基盤では、プライベートクラウド
「当時は約 300 台の物理サーバーを抱えていた
のカットオーバーから大きなトラブルは全く起きて
のですが、まずこれらを集約してハードウェアコスト
いませんが、レッドハットは業務アプリケーション側
を下げること、さらにベンダーロックインからの脱却
のサポートに関しても直接丁寧に対応してくれるの
を図って、より低廉で有用なソリューションの選択
で、ユーザー企業としては本当に助かっています」。
の幅を広げることが大命題でした」。
参考までに、同社では Windows 環境も併用して
我が社でのパブリッククラウド利用もさらに広がる
でしょう。その際にはレッドハットの OpenStack や
OpenShiftソリューションも選択肢として入ってくる
と考えています」。
▼ エネルギアクラウド:費用低減への取り組み
中国電力
各業務主管
物理
サーバー
物理
サーバー
ストレージ
ストレージ
エネルギアクラウドへの
移行の推進
中国電力
各業務主管
依頼が来るのは、その多くが OSとしてRHELを選択
安定稼動に対する信頼性を評価、
ベンダーロックインからの脱却も視野に
そこで同社はグループ共通のシステム基盤として
独自のプライベートクラウド
「エネルギアクラウド」の
構築を決定、OSとして Red Hat Enterprise Linux
中国電力
各グループ会社
各業務主管/各社での
独自環境構築
いるが、ユーザー部門から仮想マシン作成の新規
レッドハット製品を選んだ決め手
氏
したものだとのことだ。
中国電力
各グループ会社
資源の共同利用
仮想
サーバー
今後の展望
OSSの仮想化ソリューションも選択肢に。
将来はパブリッククラウドの採用も検討
(RHEL)を採用し、仮想化技術も利用して物理サー
坂本氏は今後、OSSのメリットをさらに享受できる
バーの集約を図った。エネルギアクラウドの稼動開始
という観点から、現行の商用仮想化製品をレッド
は2012年秋で、翌2013年にはWebアプリケーション
ハットの仮想化ソリューションに置き換えることも検
仮想
サーバー
仮想
サーバー
仮想
サーバー
物理サーバー群
共有ストレージ
(高速)
共有ストレージ
(中速)
エネルギアクラウド
プライベートクラウドの構築
01
背景
02
レッドハット製品を
選んだ決め手
03
レッドハット製品の
導入による効果
04
今後の展望
5カ年のIT構想で掲げた費用
低減に向けてグループ共通の
システム基盤構築を計画
安定稼動に対する信頼性を
評価、ベンダーロックインか
らの脱却も視野に
物理サーバーを300台から
90台に削減、
アプリケーショ
ン領域のサポートも評価
OSSの仮想化ソリューション
も選択肢に。将来はパブリッ
ククラウドの採用も検討
・ 物 理サーバーの集 約でハード
ウェアコストを下げる
・ベンダーロックインからの脱却を
図る
・エンタープライズでの利用に耐え
得るOSとしてRHELを選択
・OSSの採用で自社でのシステムデ
ザインを可能に
・物理サーバーのハードウェアを
7割削減
・アプリケーション領 域もレッド
ハットが直接フォロー
・レッドハットの仮想化ソリューショ
ンも検討
・OpenStackやOpenShiftソリュー
ションの採用も視野に
OPEN EYE 5
Success story for your business
ユーザー事例
Success Story
三菱総研DCS
統合基幹業務
システムの構築
統合基幹業務システムに
Red Hat JBoss Middlewareを採用。
開発工数を削減し、OSSノウハウも獲得
三菱総合研究所
(MRI)
のグループ企業でSI事業を展開する三菱総研DCSは、金融機関やカード業界、一般事業法人を対象に、コンサルティングからシ
ステム設計/開発/運用に至る循環型のバリューチェーンを構築してトータルなITソリューションを提供している。
ロンドンとシンガポールにも事業所を設
置し、2014年9月期における連結ベースの売上高は574億円、社員数
(連結)
は約2,550名にのぼる。
同社ではこれまでにもレッドハット製品を活用して社内システムや顧客企業向けSaaS 基盤を構
築してきたが、今回MRIと共同利用する大規模な基幹業務システム構築プロジェクトを計画、ここで
もレッドハットのJBoss製品を採用してフロントエンド処理とポータル機能を実装した。
の各システムに商用パッケージを適用し、フロントエ
背景
保守期間の終了を契機に、
基幹業務システムの共通化を目指す
ンドやポータルなどの領域にOSSを利用することにし
三菱総研 DCSとMRIでは、これまで各々に基幹業
名、123万8,000ステップという大規模開発となった。
た。プロジェクトは 2011 年 11 月から要件定義を開
始、2014 年 9 月にカットオーバー、最大要員数 172
務システムを構築・運用していたが、2014年9月から
当時の状況について、三菱総研 D CS 株式会社 ソ
リューション事業本部 ソリューション開発部 副部長
開発および保守コストの削減効果、
さらに社内の技術者育成にも繋がる
三菱総研 DCS では、フロントエンドやポータル、
データ連携、ログ管理やジョブの自動実行などの各機
順次、保守期間の終了を迎えるという状況にあり、改
めてシステム環境を見直す必要性に迫られていた。
レッドハット製品を選んだ決め手
能領域にOSSを採用、フロントエンドの処理とポータ
システム要件
アプリケーションには商用パッケージを優先、
1インスタンスで共用システムを稼動
ル機能を実現するためにRed Hat JBoss Enterprise
Middleware を選択した。その理由について、同社
ソリューション事業本部 ソリューション開発部の石井
の渡辺哲弘氏は次のように説明する。
同社では、まず各基幹業務システムについては、標
「システムの保守期間切れを迎えるにあたって、
準業務のノウハウが詰まっているという観点から商
「アプリケーションの開発において、パッケージ製品
MRIのシステムも担当していた我々は、三菱総研DCS
用パッケージの適用を優先した。
の利用ではカバーできない業務機能についてはフ
とMRIで同じ基幹業務システムを共用できるだろうと
「例えば財務会計では、パッケージ製品をできるだ
レームワークを活用したWebアプリケーションの開発
孝義氏は、次のように説明する。
考えました。その統合は運用コストの低減に加え、業
け提供形態のまま適用することで、標準的な業務プ
を検討しました。レッドハット製品は、他社のフレーム
務プロセスの標準化や共通化を図ることで両社業務
ロセスをサポートすることを目指しました。また連結
ワーク製品よりも開発および保守コストの削減効果が
の生産性向上にも繋がります。プロジェクトとしては
会計では、三菱総研 DCSとMRIとで各計数の定義や
期待できました。また社内に数多くの Java EE 技術者
かなり大がかりなものになりますが、我々の将来を見
マスター類を可能な限り統合した上で、機能の優れ
を要していたことも大きなアドバンテージでしたね」
。
た連結会計パッケージを導入することにしました」
同社では、OSSを利用した受託開発を SI 事業にお
越した上でもきわめて重要な取り組みでした」。
(渡辺氏)。
ける主要戦略の 1 つとして位置付けており、JBoss 製
同社では共通化/標準化された業務をサポートす
品の採用が自社の技術者の育成とノウハウの蓄積、
共用ITの開発/運用コストを低減し、
業務プロセスをサポートできるシステムが必要
るシステムを コモンキッチン・シェアドサービス と呼
開発力の強化、さらには同社標準の開発フレーム
んでいるが、業務プロセス改革によって業務の標準化
ワーク
「ExPaRT」の拡充にも寄与すると判断した。実
を図り、パッケージ製品を適用することで、まさにこの
際に採用した製品は、システム共通基盤として Red
今回のプロジェクトは、保守切れが 1 つの契機に
コモンキッチン・シェアドサービスの実現を目指した。
Hat JBoss Enterprise Application Platform、ワーク
なっているものの、両社とも開発および運用コストの
「コスト低減の観点からは、2 社の基幹業務システ
フローエンジンとしてRed Hat JBoss Enterprise SOA
低減はかねてからの懸案事項として挙げられてい
ムを1つに集約し、同一ハードウェア/同一ソフトウェ
Platform、ビジネスルールエンジンとして Red Hat
た。より高度な連結経営を実現するためには、連結
アの1インスタンスで稼動させることで、
システム構築
JBoss Enterprise BRMS、そしてポータル機能を提供
ベースでの計数捕捉や事業管理を迅速かつ正確に
から保守・運用に至るトータルの ITコストを削減する
するRed Hat JBoss Portalだ。
課題
行うことが必要だ。また基幹業務システムの共用にあ
ことを考えたのです」
(渡辺氏)。
たっては、業務プロセスそのものを改革して標準化を
またエンドユーザーの利便性を確保するという
図り、その上で新たな業務プロセスをサポートできる
点では、システム共通認証基盤を導入して統合的
システムが求められる。その際には、エンドユーザー
な認証を可能とし、さらに統合ポータル画面を提供
の使い勝手に十分配慮することも重要だ。
することで、利用する業務アプリケーションを意識
これらの課題を解決するため三菱総研 DCS では、
することなく各種情報の参照や手続きができること
JBoss製品の採用によって、
同社では既に多くの社内
まず両社で共用する財務会計、連結会計、経理管理
を目標にした。
技術者が理解していたJava EEフレームワークを使っ
レッドハット製品を導入したメリット1
JBossなら新たなスキルセットの習得が不要、
オープンソースの思想のより深い理解にも効果
統合基幹業務システムの構築
01
背景
02
課題
03
システム要件
04
レッドハット製品を
選んだ決め手
保守期間の終了を契機に、基
幹 業 務システムの共 通 化を
目指す
共用 ITの開発/運用コストを
低減し、
業務プロセスをサポー
トできるシステムが必要
アプリケーションには商用パッ
ケージを優先、1インスタンス
で共用システムを稼動
開発および保守コストの削減
効果、さらに社内の技術者育
成にも繋がる
・基幹業務システムの統合でコスト
低減
・業務プロセスの標準化/共通化が
生産性向上にも繋がる
・財務会計、連結会計、経理管理には
商用パッケージを適用
・フロントエンドやポータルなどの領
域にはOSSを利用
・ コモンキッチン・シェアドサービス
の実現を目指す
・システム共通認証基盤の導入や統
合ポータル画面の提供も
・フロントエンドの処理とポータル機
能にレッドハット製品を選択
・数多くの Java EE 技術者を擁してい
たこともアドバンテージ
6 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
てアプリケーション開発を行うことが可能となった。
「Java EE ベースの JBoss なら技術者が新たな知識
を習得する必要がなく、我々自身の開発案件や運用
業務を通じてさらなるノウハウを蓄積していくことも
可能です」
(渡辺氏)。
ちなみに同社では、初級編、中級編など技術者の
スキルに応じたJava EEシステム構築講座を開くなど
の社員教育を実施している。また毎年数十人規模の
技術者がレッドハットの JBoss 関連トレーニングを受
講しており、育成した人材は来年には 300 名規模に
三菱総研DCS株式会社
ソリューション事業本部
ソリューション開発部 副部長
のぼるという。
「Red Hat JBoss Middleware を活用してシステム
を構築したことで、オープンソースの思想が技術者た
渡辺 哲弘
ちにも伝わったと思います。今回のプロジェクトでは、
氏
三菱総研DCS株式会社
ソリューション事業本部
ソリューション開発部
石井 孝義
三菱総研DCS株式会社
技術推進事業本部 技術企画統括部
アプリケーション共通グループ
菅野 洋介
氏
氏
内部設計が終わって適用範囲が決まった段階で多く
の新入社員を合流させましたが、彼らだけでなく、プ
ロジェクトの中心メンバーたちにとってもよい勉強に
JBoss BRMS の採用により、業務担当者との認識の
て、菅野氏は次のように評価する。
なったと思います」
(渡辺氏)。
すり合わせが実に楽になったという。この点につい
「Red Hat JBoss Middleware の管理機能の使い
て、同社 技術推進事業本部 技術企画統括部 アプリ
やすさは運用担当者に好評で、緊急時のデプロイ作
レッドハット製品を導入したメリット2
ケーション共通グループの菅野洋介氏は次のように
業やサービスの再起動は全てグラフィカルなユー
コンサルティングやサポートを評価
Red Hat JBoss BRMSの使いやすさも
工数削減に貢献
説明する。
ザーインタフェース(GUI)を介して行うことができま
「Red Hat JBoss BRMSでは、業務部門から申請さ
した。英語ベースのコマンドラインを入力する必要も
れたワークフローを判定する際、データやロジックに
ありません。そのおかげで、JBoss に初めてさわる運
落とさずにExcelで記述することができるので、業務
用担当者でも簡単に操作することができました。運用
コスト削減のために目指した基幹業務システムの
部門や IT 部門とのコミュニケーションがとても取りや
負荷を大幅に軽減するという観点からも、JBoss 製品
2 社共通化だが、その際にはレッドハットのコンサル
すかった。またテストでバグが発見された時も、Excel
は高い効果をもたらしてくれます」。
タントに相談してサブシステムを横串でチェックして
を見れば判定設定の誤りが一目瞭然なので、プログ
もらったという。
ラムをトレースする手間を省くことができました。こ
「両社で同じ機能なら、デザインを含めて共通化で
れも開発工数の削減に貢献したメリットの1つです」。
今後の展望/レッドハットへの期待
社外向けPaaSの提供に向けて
OpenShiftに高い関心
きないかを調査してもらいました。レッドハットの提
案が、従来のハードウェア環境を可能な限り活かして
レッドハット製品を導入したメリット3
システムを構築する内容だった点も高評価でした。お
英語ベースのコマンドラインの入力が不要、 今回のプロジェクトにより、同社では開発工数の低
減と運用負荷の軽減を実現したが、今後、さらなる短
GUIで運用管理も容易に
かげで、開発工数を約 15%削減することができまし
た」
(渡辺氏)。
納期と省コストを実現する手段として外部の PaaS 利
さらに今回のプロジェクトでは100近いデシジョン
JBoss製品の採用は開発フェーズだけでなく、運用
用も視野に入れているという。
テーブルが用意されたが、先に紹介した Red Hat
面でも大きな効果をもたらしたという。この点につい
「そういった観点では OpenShiftも選択肢の 1 つで
あり、特にOSSという点で高いコスト削減効果が明白
になれば、優先順位としては当然上位にくると思いま
▼ 基幹業務システムへのOSS適用
す」
(渡辺氏)。
オープンソース開発+商用パッケージ製品で構成
またSI 事業を展開する同社は、過去や今回のプロ
商用製品
フロントエンド、ポータル機能にRed Hat JBossを採用
ジェクトを通して得られた知見やノウハウをベース
OSS
に、まずは社内案件向けの PaaSを提供し、自社利用
既存社内
システム
基幹業務システム
データ連携
画面の描画
ポータル
人事給与
固定資産
MRI固有
DCS固有
フロントエンド
営業・プロジェクト管理
ID管理
事業管理
伝票申請
Red Hat JBoss Middleware
利用者
共通
認証
基盤
財務
・
会計
ログ
管理
向けのPaaSとしてもリリースしたい考えだ。
さらに現在、Red Hat Enterprise Linux 7 がサ
ポートする仮想コンテナー技術の Docker についても
注目していると三氏は口を揃える。
「Docker を活用することで、プロジェクトごとにミ
ドルウェアを構築する負荷が低減できると考えてい
連結会計
ます。また将来的には、パブリッククラウドとDocker、
経営管理
リポジトリ兼コミュニケーションサイト
を通してブラッシュアップした上で、将来的には外部
JBoss 製品を組み合わせて利用することも、検討して
リリースサーバー
運用
保守
いくべきテーマだと認識しています。レッドハットには
サポート対象のパブリッククラウドを増やすとともに、
これからもさらにバックアップしていただきたいと思い
ます」
(渡辺氏/石井氏/菅野氏)
。
05
レッドハット製品を
導入したメリット1
06
レッドハット製品を
導入したメリット2
07
レッドハット製品を
導入したメリット3
JBossなら新たなスキルセットの
習得が不要、オープンソースの
思想のより深い理解にも効果
コンサルティングやサポートを
評価。Red Hat JBoss BRMSの
使いやすさも工数削減に貢献
英語ベースのコマンドライン
の入力が不要、GUIで運用管
理も容易に
・Java EEフレームワークでのアプリ
ケーション開発が可能に
・多くの新入社員もプロジェクトに参
加してOSSを勉強
・コンサルタントに相談してサブシス
テムを横串でチェック
・Red Hat JBoss BRMSの採用で業務
担当者との認識のすり合わせも楽に
・管理機能の使いやすさが運用担当
者に好評
・JBossに初めてさわる運用担当者で
も簡単に操作できる
08
今後の展望/
レッドハットへの期待
社外向けPaaSの提供に向けて
OpenShiftに高い関心
・社内案件向けの PaaSを提供して、
ブラッシュアップ
・パブリッククラウドとDocker、JBoss
製品を組み合わせた利用も検討
OPEN EYE 7
Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
○ レッドハット 最新レポート
レッドハット、福岡に西日本支社 九州・中国営業所を開設!
レッドハットは2015 年 5月、九州に新たな営業拠点として西日本支社 九州・中国営業所を開設した。
2009 年 12月に設立した西日本支社(大阪市淀川区宮原)
に続き、九州・中国・沖縄地域での顧客サービ
スの向上と、
さらなる市場拡大を目指す。
新たに開設される営業所は、商業地域に近く利便
深く貢献していく意向だ。
性の高い福岡市博多区中洲に位置する。当初は数名
2015年5月19日、現地では同営業所の開設を記念
の営業、ソリューション・アーキテクトとサポート要員
して、開所記念式典が行われた。当日は、多くのお客
でスタートし、今後ビジネスの成長に合わせて順次拡
様やパートナー様にご参加いただき、会場は新営業
大していく予定だ。
所に対する期待で熱気に包まれた。
同地域には大手電力会社や鉄道、製造、銀行など
がビジネスを展開しており、これらのお客様へさらな
レッドハットはこれまでも、西日本地区のお客様、コミュニティおよび、パートナー企業の皆様と共に成長してまいりました。
今回、九州・中国営業所開設により、さらに皆様へのご支援と協業を強化することができる事は無類の喜びです。
また、弊社の持つ
オープンソースソフトウェアおよびクラウド基盤にまつわる技術が、より地元企業や IT 産業に貢献し、地域の経済発展に寄与する
ことができれば、大変光栄です。
レッドハット株式会社 代表取締役社長
るサービスやサポートを提供していくほか、新たな現
地の産業、企業へのアプローチも強化していく。また、
廣川 裕司
この地域からのオープンソースコミュニティへの参画
を深めつつ、地元 IT 産業や地域経済の発展にもより
サポートコメント(官公庁、企業名五十音順)
福岡県
福岡県知事
福岡市
小川 洋 氏
福岡市長
髙島 宗一郎 氏
オープンソースソフトウェア企業として世界を舞台に活躍するレッドハット株式会社が東京・大阪に次
オープンソース業界のグローバルリーディングカンパニーであるレッドハット株式会社様が、福岡市の
いで本県に進出することを決定されました。今回の決定は、わが福岡県をグローバル展開におけるアジア
豊富な人材、低廉なビジネスコスト、アジア諸都市への近接性、コンパクトで住みやすい点などを高く評
の重要な拠点と位置付けられてのものであり、心から感謝申し上げます。本県では、Rubyを核としたソフト
価され、福岡市に拠点を設立いただくことに深く感謝申し上げるとともに、心より歓迎いたします。今回の
ウェア産業とコンテンツ産業の一体的な振興に取り組んでいます。レッドハット社の優れた技術と経験を
拠点設立は、福岡市が目指す「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」の実現を強く
生かして、地元企業との連携・協力が進んでいき、Ruby産業をはじめとする地元IT産業の発展につながる
後押しするものであり、福岡市としてもできる限りの支援をしてまいります。レッドハット株式会社様の成
ことを大いに期待しております。今後ますますの事業の発展をお祈り申し上げます。
功並びに今後益々のご発展をお祈りしております。
九州電力株式会社
情報通信本部 情報システム部長 理事
九州旅客鉄道株式会社
植村 隆文 氏
この度は九州・中国営業所開設、誠におめでとうございます。弊社ではRed Hat Enterprise Linuxを始めとするRed Hat製品
を導入しており、これからの電力自由化に向けたスマートメーター運用管理システムなどの社会インフラとなるシステムにお
いても同製品を活用していく予定です。身近な福岡において技術支援を受けられることを大変嬉しく思います。今後のレッド
ハット様の更なるご発展を祈念いたします。
西部ガス株式会社
情報通信部長
この度は九州・中国営業所の開設、誠におめでとうございます。オープンソースソフトウェアのリーディングカンパニーである
貴社が、九州の地に新たな拠点を設置されることは、より一層充実したサポートサービスの受け入れが可能となり、地域にとっ
て非常に意義深い事だと考えます。近年では、OS のみならずクラウド、ミドルウェア、アプリケーションの領域にまでオープン
ソースソフトウェアの活用が進んでいると聞き及んでおり、今後は是非、貴社からの知見を拝借できればと期待しております。
レッドハット様のご健勝、
ご活躍を心よりお祈り申し上げます。
中国電力株式会社
執行役員 情報通信部門(情報システム)部長
丹治 邦夫 氏
この度の九州・中国営業所開設にあたり、心よりお喜び申し上げます。弊社では、低廉で安定した電力供給を支えるIT基盤と
してエネルギアクラウドを構築し、Red Hat Enterprise Linux によるサーバー群を稼動させています。現在、電力自由化に合わ
せ導入するスマートメータから30分検針値を受取るシステム開発を行っており、
ここでもRed Hat Enterprise Linuxが活躍する
予定です。九州・中国営業所は中国地域も担当していただけるので、今まで以上のサポートを期待するとともに、御社の更なる
ご発展と社員の皆様のご健勝を祈念します。
西日本鉄道株式会社
経営企画本部 IT推進部長
ITソリューション本部 インフラシステム部 部長
経営戦略本部 IT戦略部 部長
永野 義昭 氏
この度は九州・中国営業所開設、誠におめでとうございます。弊社は以前より、Red Hat Enterprise Linux を始めとするRed
Hat 製品を導入してきましたが、今後九州地区に根付いたサポートサービスが受けられるとお聞きして、一層の安心感と信頼
を覚えています。
これからの弊社基幹システムの再編成にむけて、オープンシステムの技術支援を期待しています。今後のレッ
ドハット様の九州地区での益々のご発展・ご活躍を祈念いたします。
株式会社 西日本新聞社
執行役員 システム技術局長
一木 弘信 氏
九州・中国営業所開設、おめでとうございます。ネットワークであらゆるものが繋がり、ビッグデータやクラウドが一般化した
今日、各種システムへのオープンソースソフトウェア活用は不可欠と感じています。最新の調査では国内企業の 3 割が導入、4
割以上が前向きとのこと。九州でも利用の拡大は自明です。そうした時期に、また地域創生が叫ばれる中、オープンソースソフ
トウェアのリーディング企業である貴社が九州に拠点を開かれたことは有意義です。当社としてもこれから、さまざまな形で連
携をさせていただき、共に地域の発展に尽くしていきたいと思います。貴社の当地域での活躍を期待します。
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 経営企画部 部長
株式会社福岡銀行 総合企画部 部長 河 幸徳 氏
中垣 満政 氏
九州地区での拠点開設おめでとうございます。社会及び企業において加速度的に IT があって当たり前の状況になってき
ている昨今、世界中の開発者がオープンな環境で開発を進めているオープンソースソフトウェアは普及していく可能性を秘
めていると思います。今回、九州にオープンソースソフトウェアの企業であるレッドハット様が営業所を開設する事は地元企
業にとってよい刺激になると思います。
レッドハット様が九州でご活躍をされる事を期待しております。
マツダ株式会社
香月 裕司 氏
この度は九州・中国営業所開設、誠におめでとうございます。弊社では平成25年に策定したシステムグランドデザインの中で、
オープンソースソフトウェアの積極的な活用を一つの柱として掲げております。これまでもレッドハット様から製品、技術支援も頂
いておりますが、今後はより近い場所からサポートが受けられるようになるとお伺いしており、より安心してオープンソースソフト
ウェア導入を加速させる事ができると大変嬉しく思っております。
レッドハット様の九州地区での更なるご発展を祈念致します。
総合メディカル株式会社
清川 澄人 氏
総合企画本部 IT推進室 室長
この度は九州・中国営業所の開設、おめでとうございます。金融機関においてもIT は無くてはならないものとなっており、IT
をいかに駆使して経営に生かし、立ち向かっていくかが非常に重要な課題となっています。加えてそれを支えるIT人材の育成
は業界共通の至上命題となっています。そういった状況のなか、レッドハット様が提供されている製品群はオープンソースソ
フトウェアの標準技術であることや、既に世界中の金融機関のシステム基盤で使用されていること、加えて貴社の高い開発力
と手厚いサポート力は非常に心強いものです。今後は福岡に拠点が開設されたことにより今まで以上に密接なご支援を頂け
るものと期待しております。
レッドハッ ト様の更なるご発展をお祈りしております。
株式会社 安川電機
松岡 正樹 氏
マツダ株式会社はこの度のレッドハット様の九州・中国営業所の開設を歓迎いたします。オープンソースソフトウェアは今
後の IT 戦略を考える上で決して欠かす事のできない重要な選択肢であると認識しています。営業所開設により、これまで以上
によきアドバイザーとしてご支援を頂けるものと期待しています。
レッドハット様の更なるご発展を祈念しております。
生産・業務本部 業務部長
松本 豊樹 氏
この度のレッドハット様の九州・中国営業所開設、誠におめでとうございます。また心より歓迎いたします。弊社は2002年よ
り貴社のRed Hat Enterprise Linuxを導入、利用しておりますが、九州地区にエンジニアも常駐されると聞き、非常に心強く感
じております。これを機としたサービス強化はもとより、新技術や活用事例の紹介等により、一層の刺激をいただけるものと大
いに期待しております。九州での貴社のご活躍、
ご発展を祈念します。
◎ レッドハットの製品、
サービスに関するお問い合わせはこちらまで >>> セールス オペレーションセンター ☎ 0120-266-086(携帯電話からは ☎ 03-5798-8510)
〔受付時間/平日9:30∼18:00〕 e-mail: [email protected]
◎ OPEN EYEの配送先変更、
配送停止、
その他お問い合わせはこちらまで >>> マーケティング本部 e-mail: [email protected]
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及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。
OPEN EYE Vol.19
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