X 線管技術の新たな開発の道のり

X 線管技術の新たな開発の道のり
Metalix 方式と回転陽極
ているものであった。キャニスターの両端はガラ
ス管に融着され、それぞれ陽極と陰極を支えてい
1927 年 4 月に Philips Gloeilampenfabrieken
た。クロム鋼キャニスターを十分な厚さの鉛容器
が C.H.F. Müller を 引 き 継 い だ と き、Philips
が覆っており、利用線 束 以 外の X 線に対する一
の歴 史に 新しい決 定 的 な 1 ページが 開かれた。
定の防護になっていた。Metalix 方式とは、つま
C.H.F. Müller は 1909 年 か ら 化 学 者 の Max
り放電チャンバーを金属封入する技術によるもの
Liebermann 博士が所有する私企業であったが、
であり、ハンブルクとアイントホーヘンの工場で
Philips が独占株主の株式会社になった。アイン
15 年間にわたって主流を占める技術であった。
トホーヘンの Bouwers 教授が開発した Metalix
方式という新技術の導入が、ハンブルクの工場に
抜本的な変革をもたらした。
まず、Metalix 管の製造には、真空遮蔽のために
クロム鋼とガラスを融着させることが不可欠で
あった(図 62)。
Metalix 管は従 来の構 造とは異なり、ガラス
射出窓の付いたクロム鋼シリンダーを持ってい
た。このシリンダーは一 般に“キャニスター”
と呼ばれ、陽極と陰極の間の放電空間を納め
図62
水冷式Media Metalix管。1927年の
フィリップス・システム。
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X 線管中央での 1 点支持方式の登場
後の Rotalix 管も Metalix 方式に基づいて作ら
れ た。1929 年 に Rotalix 管 が 登 場 する前 に、
Metalix 管と Metalix 完 全 防 護 型 X 線 管 容 器
Philips は X 線管の完全な防護策と並行して、診
が 開 発され た。Metwa Metalix の 金 属 容 器 は
断用 X 線管の高出力における光学特性の改善に
治療用 X 線管の製造にも進歩をもたらし、200
も取り組んだ。
kV もの高い動 作 電 圧を可能にした。診 断用の
一方、X 線管を中央の 1 点で支持する方式の登場
Metalix 完全防護型容器は、最初の接地(アース)
によって、装置とスタンドの機械的な接続性が大
された金属 X 線管容器であった。
幅に向上した(図 63)。
長い間、X 線管はむき出しの高電 圧ケーブルで
Rotalix 管の構造が単純で管の中心支持による効
高電圧発生装置に接続されていた。医師も患者
率が良かったことから、スタンドや他の診断用 X
も、高 電 圧 から守ら れてい な かった。しかし、
線装置の製造に新たな可能性がもたらされた。こ
Metalix 完全防護型容器では、金属容器と X 線
こでも、Philips は非常に先駆的な働きをしたこ
管の高電圧部品との間に絶縁の役割を果たすエ
とになる。
ア・ギャップを持っていた。高電圧導線には、接
地(アース)されたフレキシブルな金属被覆の絶
縁ケーブルが用いられた。
図63
床-天井スタンドに取り付けら
れたMedia Metalix管
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