INFORMATION ① 重要事実を知る前に締結さ れた契約の履行として売買 等をする場合(いわゆる「知 る前契約」) ② 重要事実を知る前に決定さ れた計画の実行として売買 今般の改正の 内容 今 般 の 改 正 は 、上 記 の 指 摘 を 踏 まえ、これまで適用除外されてき た類型に当てはまらない取引で あ っ て も 、イ ン サ イ ダ ー 取 引 規 制 上問題のない取引についてはこれ 従前の規制と 問題点 するパブリックコメントの結果 商法等ガイドラインの改正に対 除外に係る内閣府令案および金 金 融 庁 は 、去 る 平 成 年 月 日 、イ ン サ イ ダ ー 取 引 規 制 の 適 用 か る 形 式 的 な 規 制 を 貫 く と 、上 場 禁 止 す る も の で あ る 。し か し 、か 公表前の株券等の取引を一律に 重要事実を知ったことをもって、 金商法のインサイダー取引規 制 は 、上 場 会 社 の 会 社 関 係 者 等 が はじめに ならびにインサイダー取引規制 会社の重要事実の存在と無関係 に行われる取引であることが外 に関するQ&Aの追加等を公表 した 。 ダー取引規制をめぐる制度整備 融・企業実務を踏まえたインサイ 本 改 正 は 、金 融 審 議 会 金 融 分 科 会 報 告「 近 年 の 違 反 事 案 及 び 金 対する投資者の信頼の確保とい 金融商品市場の健全性・公正性に なりかねない。そこで、金商法は、 必要な取引までが禁止の対象と 形 上 明 ら か な 取 引 な ど 、規 制 が 不 日 )に 観点から包括規定を新たに設け 外 に つ き 、取 引 の 円 滑 を 確 保 す る 「知る前契約・計画」に係る適用除 お け る 提 言 に 基 づ き 、① い わ ゆ る る(金商法166条 引規制の適用除外を用意してい まざまな類型のインサイダー取 がない場合を具体的に列挙し、さ う 規 制 の 趣 旨 に 鑑 み 、規 制 の 必 要 月 る と と も に 、② い わ ゆ る「 対 抗 買 年 い 」に 係 る 適 用 除 外 に つ き 、実 務 「知る前契約・計画」 は、 いわゆる こうした趣旨により定められた に つ い て 」( 平 成 面で利用し難いとの従前からの 適 用 除 外 の 一 つ で あ り 、具 体 的 に 項) 。 指摘を踏まえた解釈の明確化を 図るものである 。 「知る前契約・計画」 Ⅰ に係る包括規定の 新設 1 未公表の重要事実を知る前 に締結・決定された契約・計 画の存在 2 裁 量 性 の 排 除 の た め 、売 買 等 の 具 体 的 な 内 容( 期 日 及 び当該期日における売買等 の総額又は数)が、あらかじ め 特 定 さ れ て い る 、又 は 定 められた計算式等で機械的 項 号)。 & A 」と い う ) に 基 づ き 、各 要 件 引 規 制 に 関 す る Q & A 」( 以 下「 Q 66条 ら除外するものである(金商法1 インサイダー取引規制の適用か に列挙された類型のものにつき、 て 、か つ 、取 引 規 制 府 令 に 具 体 的 は 、以 下 に 該 当 す る 場 合 で あ っ 注3) のキーポイントを紹介する。 1「未公表の重要事実を知 る 前 に 締 結・決 定 さ れ た 契約・計画の存在」の要件 「未公表の重要事実」 こ こ で い う「 未 公 表 の 重 要 事 実」 とは、 当該 「 知 る 前 契 約・計 画 」 に従って売買等が行われる時点 約・計 画 を 締 結 し ま た は 決 定 す において知っている未公表の重 以 下 で は 、今 般 公 表 さ れ た「 コ メントの概要及びそれに対する 要 事 実 を 指 す 。逆 に い え ば 、契 く 売 買 等 で あ っ て も 、イ ン サ イ る 時 点 に お い て 、何 ら か の 重 要 注6)今般新たにQ&Aに追加されたのは、 「対抗買い」 の適用除外 に関する(問4) と「知る前契約・計画」 の適用除外に関する(問5) の二つである。 等をする場合(いわゆる「知 を円滑に行うことができるよう、 に決定されること 3 契 約・計 画 に 従 っ て 売 買 等 6 ハ 当該契約の履行又は当該計画の実行として行う売買等につ き、 売買等の別、 銘柄及び期日並びに当該期日における売買 等の総額又は数 (デリバティブ取引にあっては、これらに相 当する事項) が、 当該契約若しくは計画において特定されて いること、又は当該契約若しくは計画においてあらかじめ 定められた裁量の余地がない方式により決定されること。 る前計画」) 取引規制府令において次の 1 ~ 3 を要件とするより包括的な適 用除外規定を新設するものであ 12 金融庁の考え方」(以下 「パブコメ」 が執行されること 注6) ダー取引規制の適用除外の対象 (3) 当該契約又は計画が法第百六十六条第四項に定める公 表の措置に準じ公衆の縦覧に供されたこと。 たとえ 「知 ここで注意すべきは、 る 前 」に 締 結 さ れ ま た は 決 定 さ れ る 。これにより、上場会社以外の 1 (2)当該契約又は計画に確定日付が付されたこと(金融商 品取引業者が当該契約を締結した者又は当該計画を決定し た者である場合に限る。 ) 。 た 契 約・計 画 で あ っ て も 、取 引 規 2 事実を知っている場合であって 者 の 間 で の「 知 る 前 契 約 」に 基 づ 9 27 (1) 当該契約又は計画の写しが、 金融商品取引業者 (法第二十 八条第一項に規定する第一種金融商品取引業 (有価証券関 連業に該当するものに限り、 法第二十九条の四の二第十項に 規定する第一種少額電子募集取扱業務のみを行うものを除 く。 ) を行う者に限る。並びに第六十三条第一項第十四号ロ (1) 及び(2) において同じ。 ) に対して提出され、 当該提出の日 付について当該金融商品取引業者による確認を受けたこと (当該金融商品取引業者が当該契約を締結した相手方又は当 該計画を共同して決定した者である場合を除く。 ) 。 制府令に具体的に列挙された類型 27 2 と い う )お よ び「 イ ン サ イ ダ ー 取 ロ 業務等に関する重要事実を知る前に、次に掲げるいずれか の措置が講じられたこと。 のものでなければ、「知る前契約・ 注7) 制作/レクシスネクシス・ジャパン企画制作部 注4)横畠裕介 『逐条解説 インサイダー取引規制と罰則』 (商事法 務研究会、 1989) 162頁。 計 画 」に 係 る 適 用 除 外 を 利 用 す る 注1) イ 業務等に関する重要事実を知る前に締結された特定有価証 券等に係る売買等に関する書面による契約の履行又は業務 等に関する重要事実を知る前に決定された特定有価証券等 に係る売買等の書面による計画の実行として売買等を行う こと。 となり得ることとなった。 注5)具体的な条文の文言は以下のとおりである。次に掲げる要 件のすべてに該当する場合に限り、いわゆる「知る前契約」 「知る 前計画」 に係る適用除外の対象となる(改正取引規制府令59条1 項14号) 。 ことはできないという点である 6 丹羽 大輔 注3)三國谷勝範 『インサイダー取引規制詳解』 (資本市場研究会、 1990) 114頁。 (この基本的な建付けについては、 今回の改正において何ら変更はな い )。そ し て 、も と も と「 知 る 前 契 約」 の適用除外は、 例えば銀行等が 融資を行うとともにその融資先の 注7)パブコメNo.5、 Q&A問5 発行する株券を保有するいわゆる 政策投資のような場合を想定した 規 定 で あ っ た た め 、「 知 る 前 契 約 」 に な り 得 る の は 上 場 会 社( 上 記 の 例でいえば政策投資等の融資先) との間で締結する契約に限定され て お り 、実 務 上 の 支 障 が 生 じ て いるとの指摘があった。 25 注2) 02年北海道大学法学部卒業。05年弁護士登録。10年 南カリフォルニア大学ロースクール卒業( LL.M. )。 11年ニューヨーク州弁護士登録。12年~14年証券 取引等監視委員会に勤務し、国内外機関投資家に よるインサイダー取引・相場操縦等の不公正取引 の審査・調査等に従事した経験を有する。 弁護士 Niwa ●Daisuke モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 伊藤 見富法律事務所 (外国法共同事業事務所) 注2)インサイダー取引規制に係る適用除外は、 会社関係者等に よるインサイダー取引規制 (金商法166条) と公開買付者等関係 者等によるインサイダー取引規制 (金商法167条) とでほぼ同様 の内容であることから、本稿では専ら金商法166条の適用除外 に焦点を当て解説するものとする。 26 2015.10 2015.10 27 注5) (1) 2 ――「知る前契約・計画」 に係る包括規定の新設 ――「対抗買い」 に係る解釈の明確化 注1)金融庁ウェブサイト平成27年9月2日公表 「 「有価証券の取引 等の規制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令 (案) 」 及び 「金融商品取引法等に関する留意事項について」 (金融商品取引法等 ガイドライン) の一部改正 (案) に対するパブリックコメントの結果 並びにインサイダー取引規制に関するQ&A の追加等について」 (http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20150902-1.html) インサイダー 取引規制の 適用除外の改正 注4) ごとに実態に即して判断すべきで あ る が 、計 画 を 実 行 す る 意 思 の も 2「裁量性の排除のため、 売 買 等 の 具 体 的 な 内 容( 期 日及び当該期日における 売買等の総額又は数)が、 あらかじめ特定されてい る 、又 は 定 め ら れ た 計 算 式等で機械的に決定され ること」 の要件 どのような段階で計画を 「決定」 し ものではない。 他方、 個人の場合に 締役会における決定に限定される た も の で あ れ ば 足 り 、必 ず し も 取 権限分掌規程等に基づき決定され 法人の場合における 「決 そして、 定 」と は 、基 本 的 に 、法 人 に お け る ま た 、売 買 等 の 実 行 に 一 定 の 条 件が付されている場合において、 定されたとはいえない。 裁量の余地がない方式により決 か じ め「 期 日 」が 特 定 さ れ ま た は た「期間」を定めるのみでは、あら ここでいう「期日」とは、 日の ことであり、 か月や 年といっ くても構わない。 な お 、当 該 金 融 商 品 取 引 業 者 に よる契約・計画の確認の方法につ い て は 、法 令 上 特 段 の 定 め は な 件の成就の期日に関して裁量を も の と は い え な い 。な お 、実 行 条 がない方式により決定している つ い て 確 認 を 受 け る こ と 、② 確 定 取 引 業 者 に 対 し て 提 出 し 、日 付 に 該 契 約・計 画 に つ き 、① 金 融 商 品 契約・計画のバックデートを防 ぐ た め 、重 要 事 実 を 知 る 前 に 、当 義務を負わないとされる。 内容や真正性等につき確認する けた日付を確認すれば足り、その 者 は 、当 該 契 約・計 画 の 提 出 を 受 「あらかじめ」 有 す る か 否 か は 、個 別 事 例 ご と に 日付を付すこと、または③金商法 い。提出を受けた金融商品取引業 実態に即して判断される。 166条 ②確定日付の付与 準じ公衆の縦覧に供することの 選 択 肢 の 二 つ 目 は 、契 約・計 画 に確定日付を付す措置である。 様 に 当 て は ま る 。か か る 者 は 、売 ①金融商品取引業者への か か る 措 置 を 利 用 で き る の は 、改 正 府 令 案 か ら 修 正 が 加 わ 買等の期日に関しても裁量を有 提出・確認 計画を決定した者である場合」 当該契約を締結した者又は当該 り 、条 文 上「 金 融 商 品 取 引 業 者 が することになるためである。 に限定される点に注意が必要で 「期日及び当該期日における を 禁 止 す る も の で は な い 。た だ る契約・計画を準備すること自体 本要件 2 は、複数の期日に分け て売買等を行うことを内容とす 一種少額電子募集取扱業務のみ を 行 う 第 一 種 金 融 商 品 取 引 業( 第 商 品 取 引 業 者 は 、有 価 証 券 関 連 業 当該措置のため契約・計画を提 出 し 、確 認 を 受 け る 先 と な る 金 融 る 場 合 の よ う に 、金 商 業 者 が 契 「 知 る 前 計 画 」の 共 同 決 定 者 で あ 締結した相手方であるかまたは とは、金商業者が「知る前契約」を 該計画を決定した者である場合」 売買等の総額又は数」 し、そのように複数の期日に分け を 行 う も の を 除 く )に 限 定 さ れ 約・計画にいわば主体的に関与す ここでいう「金融商品取引業者 が当該契約を締結した者又は当 て売買等を行う方式の場合には、 る 。も っ と も 、当 該 金 融 商 品 取 引 る当事者となる場合を指すため、 日単 業 者 は 、実 際 に 買 付 け の 注 文 を 行 当該期日ごとに(すなわち 位 で )「 売 買 等 の 総 額 又 は 数 」が あ 措置である。 選 択 肢 の 一 つ 目 は 、契 約・計 画 を金融商品取引業者に対して提 項 に 定 め る「 公 表 」に さらに、このような判断枠組み は、ある事実の公表の期日と連動 いずれかの措置を取ることが要 注13) ある 。 て 裁 量 を 有 す る 者 に つ い て も 、同 して売買等の期日が決定される 1 求される。 1 出 し 、日 付 に つ い て 確 認 を 受 け る 4 単に株式売買等の委託契約を締 注14) 注12) う相手方となる証券会社等でな 注11) 28 2015.10 も 、そ の こ と の み を も っ て お よ そ「 知 る 前 契 約・計 画 」に 係 る 適 と書面により作成すれば、通常「決 定」したと言えるとされる。 用除外が利用できなくなるわけ ではない。 「契約・計画の存在」 ここでいう「契約・計画の存在」 は 、条 文 上「 書 面 」に よ り 証 さ れ る 例 え ば 、契 約・計 画 の 締 結 ま た は決定の時点においてある重要 「知る前契約・計画」に基づく売買 必 要 が あ る と こ ろ 、電 磁 的 記 録 に 事 実( A )を 知 っ て い た と し て も 、 等の時点までに当該重要事実 知る前に「決定」 ここでいう「決定」には、法人が 決 定 し た も の の み な ら ず 、個 人 が た と み る か に つ い て は 、個 別 事 例 余地がない方式により決定され 「期日」 実行条件の成就の期日に関して 決定したものも含まれ得る。 面」に含まれないとされる。 より作成されたものはかかる「書 ことは許容される。 売買等を履行しまたは実行する も 、「 知 る 前 契 約・計 画 」に 基 づ く り、これが未公表のままであって よ り 後 に 別 の 重 要 事 実( B )を 知 約・計画の締結または決定の時点 れている場合には、たとえ当該契 ( A )が す べ て 公 表 ま た は 中 止 さ 注9) ていなければならない。 「 期 日 」に 関 し て も 裁 量 を 有 す る こ と と な る た め 、あ ら か じ め「 期 3 場 合 に お い て 、公 表 の 期 日 に 関 し 日 」が 特 定 さ れ ま た は 裁 量 の 余 地 (3) 裁 量 を 有 す る と き に は 、売 買 等 の 注10) 注8) らかじめ特定されまたは裁量の 1 2015.10 29 (3) (1) (2) (2) 注8)パブコメNo.1、 No.2 注9)パブコメNo.7 注10)パブコメNo.24、 No.26、 No.27 注11)パブコメNo.29、 No.30 注12)パブコメNo.8-14 注13)パブコメNo.15-17 注14)パブコメにおいて、 例えば、 あらかじめ同条件で複数の契約・計画を準 備したうえでそれぞれに確定日付の付与を受け、インサイダー情報を得た 後、これに基づき不利なものを解除する一方で有利なもののみを実行するこ とにより規制の潜脱が可能であり、 実効性が低いのではないかという指摘が なされ、本文中記載のとおり、金商業者が主体的に関与する当事者となる場 合に限定する趣旨の修正がなされた(パブコメNo.19) 。 結した相手方が金商業者である という場合には、「知る前契約・契 3「 契 約・計 画 に 従 っ て 売 買 等 が 執 行 さ れ る こ と 」の 要件 「契約・計画に従って」 る措置である。 できなかったようなケースが想 ければならないという点である。 定 め る「 公 表 」に 準 じ て 行 わ れ な 場 合 に は 、基 本 的 に 売 買 等 が「 契 の取引しか行えなかったような りやむを得ず計画に満たない数 条 さ れ て い る こ と か ら 、例 え ば 、当 他 方 、「 金 商 法 1 6 6 条 項 に 定 め る 公 表 に 準 じ 」と の 限 定 が 付 本的にインサイダー取引規制に さ れ な か っ た 場 合 で あ っ て も 、基 かの事情で履行されまたは実行 約・計 画 に 従 っ て 」行 わ れ た こ と 該契約・計画を記載した大量保有 違反することはないが(禁止行為 定 さ れ る 書 類( 例 え ば 、有 価 証 券 報告書を公衆の縦覧に供しても、 で あ る「 売 買 等 」が 行 わ れ て い な が否定されるものではないとさ ここでいう公表措置には該当し い以上、むしろ当然である)、さら 届出書、有価証券報告書、臨時報告 な い 。ま た 、報 道 機 関 に 対 し て 公 に 進 ん で 、「 知 る 前 契 約・計 画 」を れる。 開 す る 措 置 や 、売 買 等 を 行 う 者 の 履行しまたは実行しないことに 書 等 )に 当 該 契 約・計 画 の 内 容 を ホームページ上に公開する措置 ついての裁量を有していた場合 記載して行われることになろう。 も、ここでいう公表措置には当た 次に、いったん締結しまたは決 定した「知る前契約・計画」が何ら 具 体 的 に は 、金 商 法 項に規 定されるところ、そのようなケー ス で あ っ て も 、外 部 的 な 事 情 に よ に満たない数量の取引しか実行 な い な ど の 事 情 に よ り 当 該「 数 」 まず、計画において一定の「数」 を 特 定 し た も の の 、約 定 が 成 立 し 注16) 注 意 す べ き は 、契 約・計 画 の 公 衆 縦 覧 が 、金 商 法 1 6 6 条 項 に 「 公 表 」に 準 じ 公 衆 の 縦 覧 に 供 す (1) 約 」に 確 定 日 付 を 付 し て も 適 用 除 外の要件を満たさない。 ③「公表」に準じた公衆縦覧 選 択 肢 の 三 つ 目 は 、契 約・計 画 を金商法166条 項に定める 注15) 4 1 約・計画に従って売買等が執行さ 足するか否かが判断されること で き ず 、発 行 会 社 側 に と っ て 著 し 社は有効な防衛措置を取ることが らない。 由 か ら 、実 務 面 で 利 用 し 難 い と の か判断がつきかねること等の理 であっても、 そのことをもって 「契 指摘があった。 る。そこで、たとえ未公表の重要事 実を知っている会社関係者等で あ っ て も 、発 行 会 社 の 取 締 役 会 が 決定した要請に基づく限りにおい 改正の内容 く不利になるという不均衡が生じ となる。 るということはないとされる。 ただし、殊更に「知る前契約・計 画 」の 適 用 除 外 の 要 件 を 満 た し 得 る 取 引 を 利 用 し 、脱 法 的 な 取 引 を 行 う よ う な 場 合( 例 え ば 、① あ ら を 行 っ て い る と は 認 め ら れ ず 、当 の履行または実行として売買等 として見れば「知る前契約・計画」 外 の 要 件 を 満 た し て い て も 、全 体 ついては、たとえ形式的に適用除 を 行 わ な い と い っ た 場 合 な ど )に 行 う 一 方 、不 利 な 期 日 に は 売 買 等 う え で 、有 利 な 期 日 に は 売 買 等 を 内容とする契約・計画を準備した 日に分けて売買等を行うことを のような要請に基づき役職員らが することが考えられるところ、そ 員や取引銀行等に対抗買いを要請 は、これに対抗するため、その役職 発行会社が公開買付け等を仕 掛 け ら れ た 場 合 、発 行 会 社 と し て 引規制の適用から除外している。 等 を 行 う 場 合 を 、イ ン サ イ ダ ー 取 決定した要請に基づいて買付け るため被買付企業の取締役会が い わ ゆ る「 対 抗 買 い 」に 係 る 適 用 除 外 は 、公 開 買 付 け 等 に 対 抗 す い 」に 係 る 適 用 除 外 と な り 得 る の しても自己の買付け等が「対抗買 た 、対 抗 買 い の 要 請 を 受 け た 者 と ものか判断がつきかねること、ま 対抗買いの要請を行ってもよい き な い た め 、被 買 付 企 業 と し て は の存在を確定的に知ることがで いて自社に対する公開買付け等 た だ し 、「 対 抗 買 い 」に 係 る 適 用 除 外 に つ い て は 、被 買 付 企 業 に お のである 。 ものである 。 除外されることを明らかにした インサイダー取引規制の適用が たす場合に、 「 対 抗 買 い 」と し て 業による要請が以下の要件を満 正 す る こ と に よ っ て 、被 買 付 企 品 取 引 法 等 ガ イ ド ラ イ ン )を 改 す る 留 意 事 項 に つ い て 」( 金 融 商 ま ま に「 金 融 商 品 取 引 法 等 に 関 今 般 の 改 正 は 、上 記 の 指 摘 を 踏まえ、 「 対 抗 買 い 」に 係 る 解 釈 て対抗買いをできることとしたも 該適用除外を受けられないもの 行 う 買 付 け 等 は 、一 般 的 に 企 業 防 かじめ複数の契約・計画を準備し とされる。 されている。ところが、このような な お 、既 に 締 結 し ま た は 決 定 さ れ た「 知 る 前 契 約・計 画 」を 修 買付け等にインサイダー取引規制 行 し ま た は 実 行 す る 一 方 、不 利 な 契約・計画は履行しまたは実行し 166-2 166-1の要請を受けた者が、 公開買付け等がな いことを知りながら行う買付けその他の有償の譲受け は、 金商法第166条第6項第4号の規定による買付けそ の他の有償の譲受けに該当しないことに留意する。 注18) 166-1 上場会社等の取締役会 (これに相当するもの として金商法施行令第31条の2で定める機関を含む。 167-1において同じ。 ) が決定した要請 (監査等委員会 設置会社にあっては会社法第399条の13第5項の規 定による取締役会の決議による委任又は同条第6項の 規定による定款の定めに基づく取締役会の決議によ る委任に基づいて取締役の決定した要請を含み、 指名 委員会等設置会社にあっては同法第416条第4項の規 定による取締役会の決議による委任に基づいて執行 役の決定した要請を含む。 167-1において同じ。 ) が、 公 開買付け等 (当該上場会社等の株券等 (金商法第27条 の2第1項に規定する株券等をいう。 ) に係る同項に規 定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場 合に限る。)又はこれに準ずる行為として金商法施行 令第31条で定めるものをいう。 166-2において同じ。 ) があることについての合理的な根拠に基づくもので あり、かつ、 当該公開買付け等に対抗する目的をもっ て行われたものである場合には、 当該要請は、金商法 第166条第6項第4号の規定による要請に該当するこ とに留意する。 な い と い っ た 場 合 や 、② 複 数 の 期 衛のための正当な行為であると解 金商法第166条 (会社関係者の禁止行為) 関係 (公開買付け等に対抗するための上場会社等の要請に 基づく買付けその他の有償の譲受けを行う場合) 注17) 注18)今般の 「金融商品取引法等に関する留意事項に ついて」 (金融商品取引法等ガイドライン)の改正は、 以下の規定を新設するものである。 た う え で 、有 利 な 契 約・計 画 を 履 正 す る 場 合 に は 、新 た に「 知 る 前 を 適 用 す る と 、対 抗 買 い を 行 う 者 注17)前掲注4) ・横畠149頁 を 明 確 化 す る た め 、法 令 は そ の 契 約・計 画 」を 締 結 し ま た は 決 定 のほとんどが会社関係者等として 2 す る 場 合 と 同 様 、当 該 修 正 の 時 従前の規制と 問題点 「対抗買い」に Ⅱ 係る解釈の明確化 れ る こ と 」の 要 件 に 該 当 し な く な 4 取 引 を 禁 止 さ れ て し ま い 、発 行 会 注16)パブコメNo.30、 No.37、 No.38 30 2015.10 2015.10 31 4 25 点で改めて適用除外の要件を充 注15)パブコメNo.21-23 1 1 公開買付け等があることに ついての合理的な根拠に基 づくものであること 2 当該公開買付け等に対抗す る目的をもって行われたも ●当該企業以外の者が公開買 付け等を行うことについて の決定をした事実を裏付け る具体的な報道が行われた 場合 が 挙 げ ら れ て い る ほ か 、特 に 、買 関が行った対抗買いの要請を行 うことについての決定に係る公 今般の取引規制府令に係る改 正 は 、平 成 年 月 日 付 で 公 布 1 および 2 の要件を満たすか否 に関する留意事項について(金融 ている。また、「金融商品取引法等 日から既に施行され か に つ き 、適 切 に 判 断 す る 必 要 が 日から既に適用が開始さ 商 品 取 引 法 等 ガ イ ド ラ イ ン )」は 、 示義務の存在が不実開示のリスク を恐れる被買付企業による対抗買 いの要請を実務上困難にしている のではないかという指摘があっ Ⅳ まとめ 今 般 の 改 正 は 、上 記 の と お り 平 成 年 月の金融審議会金融分 も 、上 記 指 摘 に お い て 被 買 付 企 業 平成 科会報告で示された提言のうち、 年金商法改正までに対応 による公表が対抗買いの要請を受 た 。し か し 、今 般 の 改 正 に よ っ て 同月 あるとの指摘がなされている。 さ れ 、同 月 2 れている。 表 等 に 基 づ い て 、当 該 要 請 が 上 記 9 こ の 点 、対 抗 買 い の 要 請 を 行 う こ と に つ い て の 決 定 は 、イ ン サ イ 品取引所の適時開示事項となって のであること 集め行為により公開買付者等の を超えている事実について「合理 いるところ 、従前から、かかる開 ダー取引防止等の観点から金融商 的 な 根 拠 に 基 づ く 」場 合 の 具 体 例 株券等所有割合が100分の 以 下 、同 様 に 、各 要 件 の キ ー ポ イントを紹介する 。 として、 他 方 、要 請 を 受 け た 者 が 買 付 け 等を行うに当たっての留意事項 が挙げられている。 的な報道が行われた場合 超えた事実を裏付ける具体 所有割合が100分の5を ●当該企業以外の者の株券等 を受けた場合 とについての具体的な通知 が100分の5を超えたこ 外の者から株券等所有割合 た 場 合 の ほ か 、当 該 企 業 以 が提出されたことを確認し 外の者から大量保有報告書 ● 被 買 付 企 業 が 、当 該 企 業 以 まず、1 にいう「公開買付け等 が あ る 」と は ど の よ う な 状 態 を い う か と い う 点 に つ き 、原 則 と し て 、公 開 買 付 者 等 が 公 開 買 付 け 等 を行うことについての決定をし た 事 実 が あ れ ば 、公 開 買 付 け 等 が あることとなるとの考え方が示 さ れ た 。こ れ は 、イ ン サ イ ダ ー 取 引規制における決定事実の解釈 と同様の考え方であると思われ る。 また、同じく 1 にいう「合理的 な 根 拠 に 基 づ く 」場 合 の 具 体 例 と して、 ●被買付企業が当該企業以外 の者から公開買付け等を行 と し て 、要 請 を 受 け た 側 と し て は 、被 買 付 企 業 の 業 務 執 行 決 定 機 16 27 意が必要である。 ら緩和されるものではない点に留 ついての決定に係る開示義務が何 よる対抗買いの要請を行うことに さ れ て い る と お り 、被 買 付 企 業 に 断 」す る 際 の 基 準 と な る こ と が 示 けた者が要件の存否を「適切に判 新設された「知る前契約・計画」 の適用除外に係る包括規定につ は完了したものと評価できる。 ダー取引規制をめぐる制度整備 企業実務を踏まえたインサイ て 、近 年 の 違 反 事 案 お よ び 金 融・ 行 っ た も の で あ り 、こ れ に よ っ しきれなかった事項の手当てを い て は 、改 正 府 令 案 が 公 表 さ れ た 段階では必ずしも明らかでな か っ た 事 項 も 、今 般 公 表 さ れ た パ 中 止 す る こ と に よ っ て 、緊 急 避 難 も 、土 壇 場 で 当 該 売 買 等 の 実 行 を て残存するような場合であって 知っていた重要事実が依然とし でその締結または決定前から 売買等を実行しようとする時点 た。特に、いざ契約・計画に基づき なりの部分で解釈が明確化され ついての決定を行いこれを公表 て対抗買いの要請を行うことに に も あ る の だ と す れ ば 、依 然 と し てこなかった理由がこの点以外 れまで対抗買いの適時開示をし な っ た と は い え 、被 買 付 企 業 が こ すれば足りることが明らかに 在は合理的な根拠をもって判断 追 加 に よ っ て 、公 開 買 付 け 等 の 存 Ⅲ 公布・施行日等 的にインサイダー取引規制に違 する事例の発生・増加には直ちに ブコメおよびQ&Aにおいて、か 反する事態を回避する途が残さ 結びつかない可能性がある。 を示すものではない。 は 所 属 し て い た 組 織・団 体 等 の 見 解 人 的 見 解 で あ り 、筆 者 が 所 属 し ま た ※本稿の意見にわたる部分は筆者の個 れていることが明らかとなった。 こ れ に よ っ て 、契 約 の 締 結 ま た は 計画の決定の段階における心理 的負担が小さくなるなどの理由 か ら 、今 後「 知 る 前 契 約・計 画 」の 適 用 除 外 に 係 る 包 括 規 定 は 、実 務 において広く活用されるものと 予想する。 他 方 、「 対 抗 買 い 」の 適 用 除 外 に 係 る 解 釈 の 明 確 化 に つ い て は 、従 注20)例えば、 東京証券取引所では、 有価証券上場 規程402条1号y所定の適時開示事項である。 前から当該適用除外の利用を実 務上困難にしている原因の一つ と 指 摘 さ れ て き た 、被 買 付 企 業 に よる対抗買いの要請を行うこと についての決定に係る開示義務 は依然として残されている点を 被買付企業がどうとらえるかが 問題となる。 今般の金融商品取引法等ガイ ドラインの改正およびQ&Aの 注19)Q&A問4 うことについての具体的な 提案を受けた場合 注20) 32 2015.10 2015.10 33 2 5 2 25 25 注19)
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