8000 ベクレルをめぐる疑惑と問題点

発表資料
日時
タイトル
8000 ベクレルをめぐる疑惑と問題点
サブタイトル
作者
蔵田計成
[本文]
下記の資料は、東京都が「自治体向け説明会」のときに配付したものであるが、問題にするべき
部分は、「A4」一枚のチラシのうち「右半分」である。自治体関係者への説明・講習向け基本テキ
ストになっている。(下線は引用者)
放射性物質汚染対処特措法に基づく指定基準(8000Bq/Kg)
廃棄物を安全に処理するための基準
原子力発電所の事故に伴って環境に放出されたセシウムに汚染された廃棄物について、一般
的な処理方法(分別、焼却、埋め立て処分等)を想定し、安全に処理するために定めた基準。
8000Bq/Kg 以下の廃棄物は、従来と同様の方法により安全に焼却したり埋め立て処分したり
することが可能。焼却施設や埋め立て処分場では排ガス処理、廃水処理や覆土によって環境中
に有害物質が拡散しないように管理が行なわれていることから、周辺住民の方にとって問題なく安
全に処理が可能。
8000Bq/Kg 以下の廃棄物を焼却した結果、焼却灰の放射能濃度が 8000Bq/Kg を越えた場
合は、特別な処理が必要。広域処理により、焼却する場合は、そのようなことがないよう、対象とす
る廃棄物の目安を 240Bq/Kg-480Bq/Kg としている。
(なお、この「東京都配布資料」(テキスト)の参考原資料は「環境省 HP」に掲載されている。検
索タイトルは「二つの基準、環境省」である。
◆上記、末尾下線部「廃棄物の目安 240Bq/Kg、480Bq/Kg」について
町田市の焼却炉型式(流動床式焼却炉)の濃縮率は「16.7 倍」というのが環境省の公表値とな
っている。この数字の意味は、ゴミを燃やして灰にする場合、焼却灰のセシウム含有限度が
「8000Bq/Kg」と定めているから、焼却灰の線量を、それ以下の限度値にするには、燃やす前の
可燃ゴミ限度値を「240Bq/Kg 以下」にしなければいけない。他の多摩地区や 23 区はストーカー
式焼却炉なので、セシウム濃縮率は 33.4 倍である。したがって、燃やす前の可燃ゴミ線量限度値
は「480Bq/Kg 以下」となる。(ただし、この濃縮率 16.7 倍とか 33.4 倍はという数字は、環境への
セシウム排出量が「ND」であることが前提)
発表資料
◆東京都の「配付資料」のトリック
東京都は、環境省「通達」の都合のいい個所だけを取り出して資料を作成して、配布した。これ
が自治体関係者の手本となっている。自治体関係者の中には、「8000Bq/Kg 以下の廃棄物は、
従来と同様の方法で処理が可能」「一般ゴミと変わらない」という自己暗示にかかっている人もい
る。
たとえば、ある自治体関係者は「燃やすゴミは、一般ゴミと考えている。汚染ゴミは扱わない」と
いういい方があるように、広域処理問題に関する放射性汚染廃棄物の扱いにはあいまいさがあ
る。そのあいまいな認識を解消するには、放射性物質としては取り扱わない上限値=「クリアラン
スレベル」(100Bq/Kg)があることを明記すべきである。明らかに、クリアランスレベル 100Bq/Kg
以上~8000Bq/Kg 以下の廃棄物は、放射性廃棄物である。先のような誤解の「原典」は、やは
り、環境省通達にあるのではないか。
◆環境省の返答
「東京都配布資料」「環境省作成資料」の2つの内容のあいまいさについて、環境省対策部に
問い合わせたら、意外な返答であった。以下その応答。(対応:環境省廃棄物リサイクル対策課)
質問
環境省作成資料が「8000Bq/Kg 以下の廃棄物」というときの「廃棄物」とは、焼却灰をふくめた
すべての廃棄物という意味であるとはいえ、この表現は、明らかに混同した解釈という誤解を与え
る。たとえば、自治体の現場では「8000Bq/Kg 以下のゴミは、現在、法的な規制を受けないで処
理・移動できるので、放射性汚染廃棄物とは思わない。一般ゴミを燃やしているに過ぎない」という
いい方がある。このような誤解の責任は、環境省が作成した資料にある。「8000 ベクレル/Kg 以下」
という高い線量限度値は、濃縮された「焼却灰」の線量限度ではないのか。その証拠には、
「8000B ベクレル/Kg 以下の汚染焼却灰を管理型処分場に埋め立てた跡地には居住できない」と
いう利用制限がついていた。ところが、東京都の配付資料では「8000Bq/Kg 以下の廃棄物は…
従来通り…分別、焼却、埋め立て可能…で安全」と思い込ませるような、紛らわしい文章になって
いる。このような解説は、一般ゴミと放射性汚染廃棄物の解釈に混乱を生む原因になる。環境省
HP上の解説文は撤回すべきである。
返答
いわれるとおり、誤解を生む。書き直すべきかも知れない。一般ゴミといえども、100Bq/Kg(クリ
アランスレベル)を越えたゴミは放射性廃棄物である。8000Bq/Kg 以下であっても、取扱規制を
受けていないから、一般ゴミといういい方は乱暴である。正確にいえば、災害廃棄物は 3 種類あ
る。
①再利用可能な廃棄物:100Bq/Kg(クリアランスバランス)以下の再生廃棄物。
②不燃物:金属・コンクリート・ガラスなどのクズ。セシウム含有率 8000Bq/Kg 以下で、埋め立
てや堤防などに利用できる廃棄物。
③可燃物:焼却する前の線量が「240Bq/Kg、480Bq/Kg 以下」の廃棄物。焼却炉の型式に
よって濃縮率が違うので、燃やせる線量は 2 種類ある。
発表資料
この 3 種類を明記すべきであった。HP 資料の可燃廃棄物のべクレル数が「8000Bq/Kg 以下の
廃棄物」といういい方は、誤解を与えるのでまずい。正確には、広域処理向けの可燃性焼却廃棄
物の基準線量は、焼却炉の性能によって違う場合があることをはっきり書くべきであった。また、廃
棄物を「瓦礫」と呼ぶべきではないという見解(定義)には、別な意味で同感。大切な想い出を、
「役に立たないもの」(瓦礫)と言われたくない、という電話を沢山いただいている。
◆問題点提起
1)町田市小山田焼却場の計測線量は、飛灰、もえがらの合算値「約 420Bq/Kg」(4/5 日)であ
った。この線量を単純に濃縮率「16.7 倍」で逆算すると、焼却前の線量は「約 25Bq/Kg」という計
算になる。ゴミ焼却法定限度値「480Bq/Kg」までにはかなり開きがある。だが、この町田「25Bq/
Kg」を、あるときの女川の放射性汚染廃棄物の線量(「133Bq/Kg」2 月頃の都の説明)と比べる
と、5.3 倍の開きがある。一説では、女川の汚染廃棄物の線量は 300~400Bq/Kg という(青山貞
一講演 DVD)。これに対して、都が現地で計測/管理しているベクレル数は、低くなっているとい
うのが、町田清掃工場の説明。だが、野ざらしになっている汚染廃棄物の放射線が、雨で洗い流
されるわけではない。酸、塩、珪酸と化合し、廃棄物に固着していく。線量は高くなることはあって
も、低くなることはないだろう。ガイガーカウンターで周辺の空間線量を測るだけでは全く不十分で
ある。水に溶けて、水酸化セシウムが水とともにしみこんで、固着した線量を丸ごと測ることが重要
である。線量計測法とべクレル数の検証が必要である。