和歌山大学教育学部 初任研高度化モデルタイムズ −「学び続ける教師像」の具現化を目指します!!− 第 20号 2014年12月 第10回合同カンファレンス 和歌山大学教育学部・和歌山県教育委員会連携協議会 第10回教育フォーラム開催 12月6日、和歌山大学教育学部・和歌山県教育委員会連携協議会の第10 回教育フォーラムが和歌山県情報交流センター Big・U(和歌山県田辺市新 庄町)で開催されました。県内の教員、教育委員会関係者、教育学部教員 等に加え、県外からの参加も得て170人近くが出席しました。 開会式では和歌山県教育委員会西下博通教育長より、「今回のフォーラム のテーマである「 『学び続ける教員』の育成と学校力の向上∼若手教員の育 成を軸にして∼」は、子どもたちの学ぶ意欲や規範意識、自律心の低下、社 会性の不足、いじめや不登校など直面する様々な教育課題を解決できる専門的力量を身につけた教員を育成するために極めて 時期を得たものと考えている。高い志と長期的な視点から活発な議論をお願いしたい。」との挨拶がありました。その後、前半は シンポジウム、後半は3つの分科会が開催され、熱気ある有意義なフォーラムとなりました。 シンポジウム「若手教員の育成を軸にした学校力の向上」 続いて、昨年度から県教委と連携して大学が取り組んでいる初任者研修の 高度化モデル事業の内容を中心に、5名のシンポジストによるシンポジウムが開 催されました。先ず、和歌山大学の片岡啓教授(モデル事業責任者・副学 部長)より、「初任研高度化モデル事業の現状」と題し、この事業の目標であ る省察的実践者の育成について、「授業力向上」の観点から取り組んだ内容 について報告がありました。続いて、静岡大学の梅澤収教育学部長より、「私 は、昨年度この高度化モデル事業の外部評価委員を務めさせていただいた。 全国初の取組ということでずっと注目してきた。この高度化モデル研修では大学 教員もその研修の中に入り、議論したり助言したりしながら新しいものを作ってい こうとしている。今までは理論と実践が分離していたが、ここでは教育における臨床がきちんと位置づけられている。」というご意 見をいただきました。次に、和歌山県教育センター学びの丘の上野晃所長より、初任研や若手教員育成に関する県の課題や研 修における近年の取組等が報告され、続いて、昨年度と今年度の初任研高度化モデルの対象校となっている和歌山市立四箇 郷北小学校の貴志年秀校長より、「高度化モデル事業の実際」というテーマで、2年間の取組とその成果の報告がありました。 その中では、 ①初任教員の学年配置の工夫による教員全体の実践力の向上②校内カンファレンスの充実による学校力の向上③ メンター制の活用による若手教員全体のレベルアップ④副担任制導入による成果の検証の4点について、「このモデル事業を受け たことが着実に教員全体の実践力の向上に繋がり、子どもが元気に生き生きしてきている。ぜひ初任者の授業を見に来てくださ い。 」とその成果を披露されました。最後に、文部科学省初等中等教育局教職員課教員免許室の山下恭徳室長から①「教員 免許制度」の改革の方向性②教員養成の充実方策について③教員採用における工夫について④教員研修の充実方策につい てなど、国の最新動向についてお話がありました。その中で、現在国では「初任者研修の抜本改革」に取り組んでおり、和歌 山の初任者研修高度化モデル事業に大いに期待していると激励のメッセージをいただきました。 (初任者の感想) シンポジウムは、行政、他大学、本プロジェクトに携わる大学教員や現場の管理職、様々な立場の方からそれぞれ の考えや実践、課題等を知る機会となりました。中でも特に印象に残ったのが、和歌山県の今後10年間に退職す る教員層から見えてきた課題です。私たちは、初任者研修が終わった後も教育の質を維持向上するために、必要な 力とは何かを考え、ベテラン教員や仲間から学び、高め合うために日々試行錯誤しています。しかし、日常におい ては目の前の子どもしか意識できていない自分がいます。視野を広げて和歌山の教育の現状と課題を捉える必要 性を、今回のシンポジウムをきっかけに改めて感じました。まさに、「虫の目」だけでなく、「鳥の目」「魚の目」を 持つ自分になりたいと思いました。 初任者が成長していくには、考えられた素晴らしい講義や先生方からのアドバイスがあったとしても、「自ら」学ぼ うとしなければ、本当に成長することはできないと山下室長さんがおっしゃっていたように、今回この事業に参加 する中でもっともっと自ら学んでいかなければならないと感じています。副担任という立場から、多くの先生方か ら学び、多くの実践をこの目で見ることを3学期には積極的に行っていきたいと感じました。 分科会で4名の代表者が取組を報告 後半の分科会では、初任者研修や若手教員の育成、教師集団の力量形成 という一連の取組に対応した三つのテーマで分科会が行われました。初任者研 修高度化モデル事業を取り上げた分科会では、本事業に参加している3組4名 が意欲あふれる実践報告や、研修への熱い思いを発表しました。先ず、和歌 山市立明和中学校の東阪健史教諭(初任者)がこの事業に参加した動機と、 合同カンファレンスや校内カンファレンスを通じて刺激を受け成長できたことを発表 しました。特に、他の中学校の初任者がワークシートや小テストを工夫することで、 生徒の学びが深いものになっていることから学び、自分の授業にも取り入れたこ となどを報告しました。続いて、紀伊コスモス支援学校の丸山実紗教諭(初任者) と山本享代教諭(2年次)が、今年度同じ中学部で担当した音楽の授業を通 した取組等を発表しました。丸山先生は、この事業に参加して様々なことを学 んだこと、そして身近にいる先輩の山本先生と協働することでの成長を報告しま した。山本先生は、2年間この事業に参加して同じ目的を持ち専門性を高め合 う仲間が出来たことで、自分と向き合い、生き方を考える中で、人間性を高める ことができたことを報告しました。最後に、岩出市立山崎北小学校の熊代悟志 教諭(2年次)が、この事業での自分の成長の軌跡を報告しました。4月と翌 年3月の2枚の板書写真をスクリーンに映しながら、4月当初は授業も学級経営 もうまく行かずに悩んでいたが、校内カンファレンスや合同カンファレンスを通して 「子ども主体の授業」へ転換していくことの大切さに気づき、実践を積み重ねる 中で明らかに成長できたことを披露しました。また、この事業は、レベルもハード ルも高く大変な道のりであったが、だからこそ楽しいと思えるようになり、今では 大変満足している。そして、この事業で学んだ①スポンジ精神②ロングラン精 神③アクティブ精神④ボトムアップ精神を次の世代にも伝えていきたいと抱負を語 りました。これらの報告について助言者の梅澤教育学部長からは、「このモデル 事業は大変うまく行っていると思う。課題としては、この事業に参加していない 初任者や学校関係者がどのようにこの事業を評価しているかを検証してほしい。 そして、和歌山大学で開設予定の教職大学院の取組へと継承していくことが 大切である。 」と講評をいただきました。また、文科省の山下室長からは、「本 当にいい発表が聞けた。先生方の堂々とした発表ぶりは素晴らしく、感銘を受けた。高度化モデル事業の中心課題である自己 省察が研修を通じてしっかりと身につきながら成長をしていると思う。」と、高い評価をいただきました。 (初任者の感想) 今回の発表を行うにあたって、紀伊コスモス支援学校では初任者・2年次が集まり意見を共有しながら発表の内容 を構成しました。また、他校種の小学校の発表者も勤務後に集まり意見を共有しながら発表の構成を考えました。 呼びかけてくれる仲間がいたからこそ意見の共有ができ、ひとつのものが深まった状態で創りあげることができた と思います。それぞれの得意な分野を活かしひとつのものを創り上げていくことは、今回の発表だけでなく日常生 活の授業づくりや学校の仕事にも通ずることだと感じました。 やはりこの高度化モデル事業に参加することができて本当に良かったと思いました。先生方が邁進する姿を見て私 も負けてられないなと感化されました。今まで、「他人のアドバイスを聞き入れない固い頭で、自分の強い想いか ら改善されない授業」をやってきたことを反省し、3学期に向け自分の設定した研究課題を念頭に、すべては子ど もたちの学びと未来のために精進していくことを決心しました。
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