業務完了報告書 - JICAナレッジサイト

平成 27 年 2 月 26 日
専門家業務完了報告書
専門家氏名:
上倉
健司
本邦所属先:
農林水産省
<専門家活動報告>
1
派遣国:東ティモール
2
配属機関:農業水産省
3
指導科目:農業政策
4
派遣期間:2013 年 7 月 30 日-2015 年 2 月 28 日
5
活動内容、成果:
専門家は、農業水産省の組織管理、中長期計画の実効性ある促進に関わる政
策提言が行われ、農業水産省の運営管理能力が強化されることを目的に派遣さ
れた。
委託業務契約書に書かれている活動内容及び成果、並びに、活動内容に沿っ
て行った主たる活動のうち、情報収集に関するものは以下の通りである。
5.1 活動内容
5.1.1 農業水産省の組織運営を分析し、指示命令系統、各組織の責任範囲他を
分析する。
5.1.2 組織運営に関し、日本、もしくは他国と比較を行い、課題が見られる部
分について改善のための提言を行う。
5.1.3 各組織の事業内容とその優先度および課題を明らかにする。
5.1.4 農業水産省の上記を踏まえた包括的な分析を行い、組織運営管理に対し
5.1.5
5.1.6
5.1.7
5.1.8
て提言を行う。
農業水産省が策定する中長期開発計画及びこれに基づくアクションプ
ランの内容を分析し、計画の熟度の向上、精緻化を図るとともに、これ
に基づく行政施策の実施促進に係る助言を行う。
他ドナーによる各組織への支援状況について情報収集する。
優先度の高い事業についての課題、他ドナーの支援状況を整理した上で
実施促進を行う。
JICA の実施済み農業案件にかかるレビューを行うほか、実施中・実施予
定案件の調整、実施促進を行う。
5.1.9 2008 年から 2 年間派遣されていた農業政策アドバイザーの活動、特に、
「一村一品運動」、
「農業普及員制度」、
「農業機械化」にかかるフォロー
アップ及び提言を行う。
1
5.1.10 農業水産省の方向性、他ドナーの支援の方向性の分析、JICA の実施中・
実施予定の分析を行い、JICA の農業セクターに対する協力の方向性に
関し、提言を行う。
5.2 成果
5.2.1 農業水産省の組織管理が強化される。
5.2.2 農業水産省の政策立案と実施能力が強化される。
5.2.3 農業開発にかかる JICA の協力の方向性が明らかになる。
5.3 主な活動項目(会議出席、情報収集等)
5.3.1 農業水産省の組織運営を分析し、指示命令系統、各組織の責任範囲他を
分析する。各組織の事業内容とその優先度および課題を明らかにする:
大臣アドバイザーのコンスタンチーノ氏から、1)現在検討されている農業
水産省の組織変更案は、局の数が増えすぎ、業務内容がはっきりしないことも
あり、局ごとの重複がさらに増えるだろう、2)局長、DG、Secretary of State
の業務の違いがはっきりしていない、との情報を収集した(2013 年 8 月)
(別添
5.6)。
豪州支援プロジェクト Seeds of Life のジョン・ダルトン氏から、1)農業
水産省の人的資源は少ない。農業水産省の戦略も農業水産省職員ではできない
のでドナー側が急いで作った、2)農業水産省の政策の決め方はルールが無く、
整合性も取られていない、との情報を収集した(2013 年 8 月)(別添 5.7)。
世界銀行コンサルタントのフィリップ・ヤング氏から、1)雇用すること自
体が農業水産省の業務の一つになっているので人材育成の考えが無い、2)研
修は皆無、との情報を収集した(2013 年 10 月)(別添 5.16)。
農業水産省組織法に基づいて、各局の業務に係る規定を収集した(別添 5.17)。
農業水産省オクタビオ政策計画局長から、1)大臣決裁が必要なものは、政
策の方向性、政策、予算、補助金額、2)職員の評価は行っている。職員は、
業務計画を毎日、毎週、毎月作成し、活動報告を上司に、毎日、毎週、毎月行
う。上司は、職員の評価を行っている、3)予算は四半期ごとに、各局のプロ
ジェクトごとに配分している、との情報を収集した(2013 年 11 月)
(別添 5.18)。
農業水産省オクタビオ政策計画局長から、1)他省庁の政策に口出しするこ
とはできない、調整することもない、2)政策決定は、コンサルタント等当該
2
政策分野の専門家にアイデアを伝え、専門家が政策案を作成する。政策案は関
係者会合で議論するものの政策決定はどちらかと言うとトップダウンである、
との情報を収集した(2013 年 11 月)(別添 5.18)。
新しい農業水産省組織法の審議について、11 月 21 日に案が固まるとの情報を
得た(2013 年 11 月)(別添 5.19)。
新しい農業水産省組織法の情報を収集した(2013 年 11 月)(別添 5.20)。
農業水産省幹部候補者インタビュー日程の情報を収集した(2014 年 5 月)
(別
添 5.31)。
農業水産省幹部人事の情報を収集した(2014 年 7 月)(別添 5.35)。
農業水産省新組織における各局の課の構成情報を収集した(2014 年 8 月)
(別
添 5.41)。
5.3.2 組織運営に関し、日本、もしくは他国と比較を行い、課題が見られる部
分について改善のための提言を行う。農業水産省の上記を踏まえた包括的な分
析を行い、組織運営管理に対して提言を行う:
6 つの提言を作成し、内容について、大臣、オクタビオ政策計画局長/政策計
画担当 DG、バレンティノ政務官等に説明、意見交換を行った(随時)
(別添 2.1)。
大臣の指示に基づきアウグスト大臣アドバイザーに対して、6 つの提言を説明
した。アウグストアドバイザーは概要をテトゥン語に直して大臣に渡すことと
なった(2014 年 2 月)。
農業水産省を巡る最近の状況をペーパーにまとめ、日本大使等に説明した
(2014 年 5 月)(別添 5.32)。
5.3.3
農業水産省が策定する中長期開発計画及びこれに基づくアクションプ
ランの内容を分析し、計画の熟度の向上、精緻化を図るとともに、これ
に基づく行政施策の実施促進に係る助言を行う:
農業水産省 Medium Term Operation Plan (MTOP)の目標達成に向けた詳細目
標について整理した(別添 5.10)。
3
大臣から、農業水産省 Strategic Plan(MAFSP)はできているが、実際の政策
の優先順位、実行をどうするかはっきりしていない、MAFSP で定められている 5
つのプログラムがどう進められているのか検証したい、との話があった(2013
年 9 月)(別添 5.11)。
農業水産省オクタビオ政策計画局長から、1)米の生産は減少傾向にあり危
機的である、2)米の生産目標は 2020 年に 12 万トンとしているが、現在の生
産量 52 千トンから判断すると非現実的だ、3)作付面積目標 7 万 ha も現実の
24 千 ha から考えると非現実的だ、4)米生産の最大の阻害要因は輸入米だ、等
の情報を収集した(2014 年 6 月)(別添 5.33)。
Development Policy Coordination Mechanism (DPCM ) Economic Strategic
Sector(ESS)農業サブセクター会合に参加して情報を収集した(2014 年 6 月)
(別添 5.34)。
予算のカテゴリーについて情報を収集した(2013 年 10 月)(別添 5.14)。
MTOP に沿った形での予算案の情報を収集した(2014 年 10 月)(別添 5.15)。
5.3.4
他ドナーによる各組織への支援状況について情報収集する:
ドナー国/機関が開催する会合への参加、意見交換等を通じて情報収集に努め
た(随時)。
Seeds of Life 会合に参加し、1)種子政策が 3 月に農業水産省により承認さ
れたこと、2)6 月に種子証明、種子品質に関するガイドラインが策定されたこ
と、3)これから本システムに則った種子証明制度を普及させること等の情報
を収集した(2013 年 8 月)(別添 5.7)。
農業水産省主催のドナーハーモナイゼーション会合に参加し、農業水産省側
の考えとして1)本会合で農業水産省とドナーの情報交換を行い、実態、問題
点を議論し解決したい、2)プロジェクトの持続可能性を考えた支援を行って
ほしい、ドナーの支援が重複したり、職員が重複して使われることが無いよう
業務内容、活動地域を調整してほしいとの意向が示された。ドナー側からは、
農業水産省側の主体性欠如に関する発言が相次いだ(2013 年 8 月)
(別添 5.8)。
4
GIZ、CAMOES、USC-CANADA、HIVOS、Seeds of Life 等が集まり地域住民参加型
地域振興に関しての意見交換会に参加し、1)地域住民参加型で流域を対象と
した持続的天然資源管理のプロジェクトは今後のモデルとなる手法であり、情
報交換しながらプロジェクトを効果的に行っていきたい、2)流域管理評議会
の手法は有効でモデルとなる手法と考えている。同評議会は、村の代表者、県
の代表者等がメンバーとなって農業水産省、ドナー、NGO と協力する仕組みで効
果的である、3)参加型手法は、地方が自らの発展計画を作成する際のモデル
となる。JICA 支援の継続を期待する、3)Seeds of Life も 2 つのパイロット
村で参加型手法を活用したいと考えている、等の情報を収集した(2013 年 9 月)
(別添 5.9)。
FAO の食料安全保障政策やゼロハンガーチャレンジ、National Information
and Early Warning System (NIEWS)の調査団対応、会合参加、情報収集を行っ
た(随時)
(別添 5.13、別添 5.28)。
世銀コンサルタントのフィリップ・ヤング氏から、MAF Developing Partners
(MDP)の中で、主要な役割を担っている JICA、FAO、Ausaid、世銀、GIZ(EU)、
FAO が協力して東ティモール支援をする必要があるとの情報を収集した(2013
年 10 月)(別添 5.16)。
Seeds of Life のジョン・ダルトン氏から、1)農業水産省組織再編は今年に
入ってから、宙ぶらりんの状態だ。新しい組織の人事が決まらず、毎日が休業
状態だ。新しい体制が決まらないと、何も決められない。2015 年予算も作れず、
1 年間休業状態が続くことになってしまう、2)農業水産省が休業状態なので、
我々は、コミュニティーレベルの活動に力を入れるしかない。MTOP 実行に向け
た県の計画づくりを支援することが必要。村レベルでも、CBNRM 等の活躍ですば
らしい成果が出ている。傾斜地にテラスが作られ、すばらしい農業が行われ、
あるいは、村人の意識が変わって自分たちで村を発展させるという気概を持っ
た人が多く現れている、3)コミュニティーレベルの成功事例を農業水産省に
示していくことが大切、例えば、各村民が1ドルずつ基金を溜めてその総額が
何万ドルにもなっている例がある。村民がお金を溜めて大きな金額になる経験
を通じて、節約するとお金が溜まり大きな投資ができるマインドに変わってい
くこと、鶏や豚は子供をたくさん作るのですぐに増え、手っ取り早い現金収入
源となっていること、4)世銀が、MAF Institutional Strengthening Project
(MISP)を始めることとなっている。このプロジェクトは、どちらかというと
地域レベルでの組織、職員の人材育成に焦点を与える。組織レベルで地方分権
に対応することとしている、との情報を収集した(2014 年 4 月)(別添 5.26)。
5
世銀プロジェクト MAF Institutional Strengthening Project(MISP)の内容
骨子を入手した(2014 年 4 月)(別添 5.27)。
オーストラリアコンサルタントのフィリップ・ヤング氏から、1)オースト
ラリア政府から受託したライスボールアプローチによる米戦略の有効性に関す
る分析を行うことになった、2)契約は 1 ヶ月間で、集中的にライスボールに
政策を傾注するアプローチの有効性をモデルを使って分析する、2)農家の所
得と米生産量の増加の程度を見て有効性のメルクマールとする、3)輸入米が
入ってくる等価格のインセンティブがない中で有効性を出すのは難しいが、モ
デルを駆使してやってみる、4)水が利用できるかどうかも関係するので、地
域ごとに分析することになる、との情報を収集した(2014 年 5 月)
(別添 5.30)。
USAID のデニス・ベスナー氏から、1)Cooperative Café Timor (CCT)によ
る珈琲生産、DAC による地域振興を行っている、2)Watershed、気候変動に注
目していて、今後は園芸に力を入れて地域農民の所得を増やしていく、3)持
続性の観点から民間部門の発展に力を入れる、4)研修生の米国での受け入れ
を拡充して、農業生産、農業ビジネス、農産物加工などの能力強化をしていく、
との情報を収集した。
ワールドビジョンの三浦氏から、NZ の支援でワールドビジョンが行っている
Economic Development Project では、農家と流通業者の仲介をする活動、生産
者組合を作って生産者の発言力を強める活動、生産者組合で貯蓄する仕組みの
導入などを行っているとの情報を収集した。
Seeds of Life のジョン・ダルトン氏から、1)EU は、気象変動関係プロジ
ェクトの対象地域をバウカウ県の東 Lago からマテビアン山流域にすることを考
えているが、大臣が自分の地元ラオテム県 Loro で行うよう強く主張している、
2)Center for Agricultural Community Development(CDCA)に関しては、予定
の1割程度の達成率と考えている。インドネシアのコンサルを入れて技術指導
をすればうまくいくという考えで始めたものと思うが、上手くいっていない、
3)農村開発のためには、農業水産省地方職員、村人の能力開発がまず必要で、
そのためには時間がかかり、人材を育てながらだんだん対象村の数を増やすこ
とが必要で、いきなり全国展開はできない、との情報を収集した(2014 年 10 月)
(別添 5.43)。
Raumoko 流域のプロジェクトに関する会合に参加し、会合では、1)大臣
6
がプロジェクトサイトに関して強引に大臣の地元である Raumoco 流域に誘
導しようとする姿勢が見受けられる、2)大臣に再考を促し正しく判断で
きるような新たな情報を提出することが必要、3)大臣の意向も尊重した
統合プランにすることが現実的等の意見が出された。
(2014 年 10 月)
(別添
5.44)。
Timor-Leste Development Partners’ Working Group in the Agriculture and
Fisheries Sector (DP-AGWG) に 参 加 し て 、 MAF Institutional Reform and
Transformation Project (MIRT)に関して、1)MIRT は世界銀行(世銀)の
Institutional Development Grant によるプロジェクトであり、2)地方への権
限移譲及び農業集落に対する政策の実施を目的とする、等の情報を収集した
(2014 年 12 月)(別添 5.48)。
5.3.5
優先度の高い事業についての課題、他ドナーの支援状況を整理した上で
実施促進を行う:
重要政策に関して、考え方、方向性、日本の事例等に関してその都度ペーパ
ーを作成して、大臣等に説明しつつ情報収集した(随時)。
ア ジ ア 各 国 の 農 業 政 策 の 動 き に 関 し て Monthly Agricultural Policy
Development in Asia を作成して、大臣等に説明しつつ情報収集した(毎月)
(別
添 3.13)。ペーパーの狙いは、農業水産省が他国の動きを把握することのみなら
ず、農業水産省が東ティモール農業政策の動き等を対外的に説明するときの説
明資料の見本を示すことも含んでいる。
2014 年の日本の農業政策の動きに関して大臣等に説明しつつ情報収集した
(2014 年 7 月)(別添 3.11)。
大臣から、1)マナツトの成果を全国展開したい、2)今後の政策は、生産
から集荷、販売までのシステム作りで、地域ごとに強みのある農畜産物を選び、
それを中心に支援したいとの話があった(2013 年 8 月)(別添 5.1)。
大臣から、1)地域ごとに優位性がある農畜産物を決め、2)生産支援だけ
でなく、加工、流通、市場等を含めたトータルな支援を行いたい、との話があ
った(2013 年 8 月)(別添 5.2)。
農業水産省局長等会議で、地域ごとの農畜産物別の規模、農家人口、農家グ
7
ループ、灌漑、道路整備等を基本に地域ごとに優位性がある農畜水産物を考え
ることが必要とされた(2013 年 8 月)(別添 5.3)。
大臣から、1)フォーカスエリアを定めて地域支援を行う、2)生産後の加
工、流通、販売を考える、3)飼料作物も重要、4)JICA の灌漑整備、稲作振
興のプロジェクトを歓迎する、との話があった(2013 年 8 月)(別添 5.4)。
Seeds of Life のジョン・ダルトン氏から、1)安価なコメの輸入は国内農業
政策と競合していて問題、2)国民が各種名目で年金のようなものを受け取っ
ているので、農家でさえ米を作るより安価なコメの購入を選好している、3)
家畜は資産となっている、4)販売用の米、トウモロコシをどうやって作らせ
るか、4)資金効率から河川灌漑に反対している人がいる、4)農業水産省の
能力強化は世銀が長いこと行っている、5)地方の政策作成に関してコミュニ
ティーレベルでの能力の強化が大切、との情報を収集した(2013 年 9 月)
(別添
5.12)。
世銀コンサルタントのフィリップ・ヤング氏から、1)農業水産省の農業機
械に関する政策は破滅的で、過去に農家に配布された農業機械が、どのように
使われたのか、現在どうなっているのか、誰も知らない、2)灌漑については、
お金をつぎ込んでいるだけ。大規模灌漑が必要なところは大規模灌漑を進める
必要があるが、そうでない所は管井戸等小規模の灌漑で十分である。大規模灌
漑して水田を増やせばいいというものではない、との情報を収集した(2013 年
10 月)(別添 5.16)。
Seeds of Life のジョン・ダルトン氏にから、大臣が 40 村で行う一村一品(SIPI)
プロジェクトを実行するに当たってのドナーからの支援体制を作ってほしいと
いう意向持っている、との情報を収集した(2014 年 1 月)(別添 5.22)。
SIPI に関する局長会合に参加した。対象村、対象農産物を決定する会合とな
り、ドナーの支援体制に関しては議論に至らなかった(2014 年 1 月)
(別添 5.23)。
大臣から、Center for Agricultural Community Development (CDCA)に関し
て、インドネシアから 10 人の専門家を呼び、本省から地方に 200 人の職員を送
り、各村にセンターを設置することとし、インドネシアの専門家と普及員とチ
ームを組んで進める、との話があった(2014 年 2 月)(別添 5.24)。
大臣から、1)輸入米の流入と補助金米の流通の 2 点が米の生産減少をもた
8
らしている、2)関税は輸入をコントロールする有効な手段、3)農業水産省
による米の買い入れ制度は今後の政策の一つと考えられる、との話があった
(2014 年 7 月)(別添 5.36)。
Center for Agricultural Community Development(CDCA)のインドネシア人
コンサルタントとから、1)各村で戦略的に生産することとなっている特定農
産物の生産に関して、作付計画から収穫までの一連の作業を研修している、2)
特定農産物の選定は村人の意見を聞きながら決めるべきであるが既に農業水産
省側で決めている、3)NGO との連携はしていない、との情報を収集した(2014
年 7 月)(別添 5.38)。
CDCA の会合に参加し、CDCA にかかわっているインドネシアコンサルタントの
これまでの活動に関して情報を収集した(2014 年 8 月)(別添 5.39)。
大臣から、ダムに関して、1)東ティモールにおいては乾季に水を供給する
ダムが不可欠で、大金をかけて建設する灌漑施設を有効利用するためには乾季
にも使用する必要がある、2)マスタープラン・灌漑開発計画においては、ダ
ムについても十分な検討を行うべき、3)世銀が地下水の利用を主張している
が、地下水では水田を賄うことはできない、地盤沈下の問題もある、4)アフ
リカで見てきたダムは、ダムを作って灌漑用水を供給し、ダムからパイプで、
山を越えて水を供給している、との話があった(2014 年 10 月)(別添 5.45)。
農業センサス戦略会合に参加し、2015 年の人口センサスに農業関係の質問と
して 10 の項目を入れる、との情報を収集した(2014 年 10 月)(別添 5.46)。
Chief of Staff of Minister アイレス氏から大臣の日本訪問希望要請があっ
た。大臣は日本の支援に感謝していること、日本を訪問して日本の技術や制度
を見たいと強く思っていることから、何らかの見通しを立てる方向で検討に入
った(2013 年 8 月)(別添 5.5)。
Chief of Staff of Minister アイレス氏から、大臣日本訪問に関して日程等
の希望があった(2014 年 2 月)(別添 5.25)。
5.3.6
JICA の実施済み農業案件にかかるレビューを行うほか、実施中・実施予
定案件の調整、実施促進を行う:
灌漑稲作プロジェクトフェーズ 2(IRCP2)に関して情報収集に努め、また、
9
JCC 会合、TV 会合、短期専門家の活動、調査団の活動等の機会を通じて、意見
交換やコメントを提出した(隋時)。
農業マスタープラン灌漑開発計画プロジェクトに関して情報収集に努め、ま
た、インセプションレポート、インテリムレポート等各種ドキュメント作成、
TV 会合等を通じて、意見交換やコメントを提出した(随時)。
農業マスタープランにおいて検討中の米生産見通しのシミュレーション案に
関して大臣に説明した。農業水産省による米の買い入れに関しては既に説明済
みであったことから、大臣から特段の意見は無かった(2014 年7月)
(別添 5.37)。
農業マスタープランに係る米政策に関する閣議説明資料に関して大臣の意向
を確認した(2014 年 11 月)(別添 5.47)。
ブルト灌漑施設プロジェクトに関し情報収集に努め、関係者と意見交換、現
地準備等業務支援を行った(随時)(別添 5.21)。
Community-based Development Initiatives Center(NGO)が行っている緑の
コミュニティー新生プロジェクトの進捗状況に関して情報収集した(2014 年 8
月)
(別添 5.40)。
日本での集団研修に参加したオクタビオ政策計画局長から成果等に関して意
見を聞いた。オクタビオ局長から、1)生産から消費まで一貫したシステムの
農協に感動した、2)卸売市場があれば農家は安心して農産物の生産ができる、
3)共同利用制度は素晴らしい、個別農家への補助ではなく、共同利用に対し
ての支援が大切だ、4)研修施設がコストをかけずに運営されていた、等の話
があった(2014 年 8 月)(別添 5.42)。
5.3.7
農業水産省の方向性、他ドナーの支援の方向性の分析、JICA の実施中・
実施予定の分析を行い、JICA の農業セクターに対する協力の方向性に
関し、提言を行う:
日本政府に対する 2014 年度要望調査に関しては、農業水産省から、1)農業
関係は現在 JICA による支援が行われているので、今年は新たな要請は行わない、
2)本年度は「農業マスタープラン・灌漑開発計画策定プロジェクト」を行う
こととしているのでその内容に応じて新たなプロジェクトを検討したい、との
説明を受けた(2013 年 8 月)。
10
大臣から、1)地域ごとに特産物を開発する一村一品のプロジェクトの考え
方は今後も継続したい、2)地域に根付いていないものを無理やり持ってきて
も無理で、村人が生産の仕方を知っているものを活用して村の経済を良くして
いく必要がある、3)農業マスタープラン灌漑開発計画プロジェクトに関して
は、灌漑施設を活用してどのようなコメの生産システムを導入するか、どう経
済を良くするかが大切、4)灌漑の現状だけでなく灌漑可能面積についての把
握も大切との話があった(2013 年 9 月)(別添 5.11)。
JICA 研修のコース選定等に関して、イポリト農業教育局長から、研修に関し
て JICA が農業水産省の各局に個別に対応しているので、全体が把握できない状
況を改善したいとの話があった(2014 年 4 月他)。
日本政府に対する 2015 年度要望調査に関して対応した。副大臣がアグリビジ
ネスと農業機械化関連のプロジェクトを提案するようにと職員に対して言って
いたようであるが、農業水産省は誰も対応せず、この案件に関する農業水産省
からの要望はなかった。担当の政策計画局では、国際関係は新しい組織の食料
安全保障室が行うこととなっているので、本件についてほとんど対応していな
い状況にある。最終的には、森林局から持続可能な天然資源管理能力向上プロ
ジェクト(CBNRM)の後継案件、灌漑局から農業生産向上プロジェクト及び灌漑ア
ドバイザー要望の合計3つの要望が農業水産省から提出された(2014 年 8 月)。
6 達成状況:
6.1 農業水産省の組織業務運営、事業運営の実態分析(活動内容 1 及び3)
東ティモールには、基本となる農業政策は無く、基本的な農業政策を作成す
る体制もない。Strategic Development Plan (SDP)や Medium Term Operation Plan
(MTOP)はあるものの、これは政府が将来にわたって行おうとしている政策の基
本ではなく、現時点における欲しいものリスト的なものであり、さまざまなメ
ニューの寄せ集めにすぎない。例えば、米の自給が SDP に掲げられていても、
それが農業政策の基本方針として認識されていないことから、政策が米の自給
に向けて一貫せず、自給達成ができない状況にある。また、その時々の為政者
やドナーの考えで政策の優先順位が変わってしまう可能性を常に含んでいる。
基本的な農業政策不在のまま、さまざまな施策が国際機関やドナー国から持
ち込まれ、東ティモールの政策に沿ったものであるか否かを検討することなく
受け入れられている実態である。
オーストラリア外務貿易省コンサルタントのフィリップ・ヤング氏は、各ド
ナー国が考えている優先順位が高いと思われる項目として次の 17 項目を挙げて
11
いる:1)農業統計、2)地方分権(権限移譲)、3)ドナー間の協力関係の醸
成、4)持続的な農業生産手法の改善、5)有機農業に関する政策確立、6)
灌漑の効率化、水資源の効果的活用、7)土地保全型自然資源計画管理の導入、
8)農産物の輸出、9)珈琲部門へのさらなる支援、10)余剰穀物の国内使用、
11)水産資源開発等、12)公共及び民間パートナーシップによる新しい林業部
門、13)輸入と生産拡大の矛盾の解決、14)生産インプット補助金の明確化、
15)計画、予算、報告に関する農業水産省能力の改善、16)農業水産省予算拡
充への支援、17)地方から都市への人口の移動の影響。この 17 項目を見るだけ
でも様々なレベルのものがあることが分かる。ドナー間での意見交換でも各国
の思惑で議論されるために、議論が堂々めぐりすることが多い。結論に至らな
い理由は、議論の出発点が各国の基準や思惑から始まっているからである。東
ティモール国の農業基本政策があれば、そこから議論を出発していくことがで
きるので議論が堂々めぐりすることが無くなる。
このことはまた、農業水産省が義務として行うべきことが法律で明確に決ま
っていないことを意味し、従って、農業水産省の思惑で業務が行われているこ
とを許していることとなっている。
また、MTOP に各種の到達指標が設定されているが、指標の背景となる基本的
政策が不明瞭なため、指標を到達することの意味の捉え方が人によってまちま
ちである。
2014 年は Center for Agricultural Community Development (CDCA)が農業水
産省主導で行われているが、これは、2014 年予算要求の時期に施策の内容を検
討して行ったものではなく、悪く言えば思いつきで行われている。首相府筋か
らからの突然の予算配分(40村、3百万ドル)であり、従って目的とする内
容も、具体的な施策の骨子もはっきりしないまま進んでいる状況である。おそ
らく、地域の要望に沿って、市場志向型の農業を目指して、農家グループと政
府、民間が一体となって開発を行なおうとしているのではないかと想像するが、
また、実際ドナー側からは、地域が主体的に計画を立て、地域の要請に則った
施策を行う絶好の機会と言う声も聞かれたが、実施に当たってはドナー国から
の協力を排除するような形で行われている。その意味では主体性があるように
見えるが、実態は、配分された予算の消化が目的となっていて、何をもって成
果とするかわからず、成果がでるとは思えない。集落に研修用建物を建てて終
わりとならないよう期待したい。40村での成果が上がれば全国展開する予定
である。
毎年の予算作成も、政策に則ったものではなく、日常的に必要と思われる費
用を積み上げて要求しているだけである。そもそも、農業水産省には、予算要
12
求のための政策を作成する過程が存在しない。必要と思われる経費を要求して
いるだけで、政策を作成したうえで予算要求をしているわけではないので、予
算額が査定されても、それを覆すだけの理由がない。
また、予算が少ないために、各局の予算要求の関心は。少ない予算をどうや
って自分の局に配分するかにあると言われている。すなわち大臣の受けが良い
予算を提案することによって配分を増額することを念頭に置いて予算を考える
傾向にあると言われている。本当にそうなっているかについては更なる分析が
必要であるが、財務省に要求することを念頭に置いた予算要求ではないために
財務省への一貫した論理的な説明ができず結果として農業資産省の予算が停滞
していることにつながっている可能性は否定できない。
農業水産省は毎年業務を遂行しているように見えるが、農業水産省が何をし
ているのかは外部の者にはわからず、政策ごとの予算がどうなっているのかも
わからない実態にある。昨年の予算の内容や講じた施策、今年の予算の内容や
講じようとする施策に関して、外に向かっての説明責任を果たしていない。今
年はどのような施策を重点的に行うとか、MTOP との関係で予算がどうなってい
るかの説明は最低限すべきである。
農業水産省がドナー国/機関を集めて予算不足を説明する時も、「MTOP に記載
された額の予算に満たない予算しか確保できなかったので足りない分を出して
下さい」的内容の会合でしかなく、金額を提示するだけで、予算を必要とする
施策の具体的な内容が欠けている内容で、検討することができないような説明
である。あるいは、2015 年予算案を説明する時も、予算要求額の内訳として、
人件費、物品購入費、出張旅費、投資等の額が示されただけで、政策ごとに予
算を分割したものではないので、何を目的とした予算要求かわからないような
内容のものしかできない現状である。
また、東ティモール農業実態に関しての農業水産省公式ペーパーがないこと
から、その時々に応じて様々なデータが使われている実態にある。データは作
りっぱなしになっていて、作られたデータの蓄積が行われないために、毎回デ
ータを一から集め直している。このため農業水産省自身が作成しているにもか
かわらず、使用データに一貫性が無く数値にかなりの混乱が生じている。この
ことは、農業水産大臣でさえ農業の実態を把握していないことを意味し、間違
った政策判断を導くこととなる。農業水産省として農業実態ペーパー公式版を
作成して、少なくとも農業水産省内でのデータ統一は必要と考える。農業統計
の整備を急ぐ必要があるが、とりあえずの公式ペーパーは最低限必要である。
説明責任を果たしていないことは、農業水産省内職員に対しても同様である。
職員のほとんどは農業水産省の方針を共通認識として持っていない状況にある。
13
大臣の考えがペーパーになって配布されることはないので、大臣が今何を考え
ているのかほとんどの職員は知らない。知っていたとしても、噂として知って
いる程度である。会議等における大臣挨拶の内容ですら、その場に居合わせた
人間以外がその内容を知ることは無い。また、大臣アドバイザーが大臣発言原
稿を作成するので、それ以外の者が発言内容を知ることは無い。
職員間で、情報を共有するシステムは存在しない。職員間に情報が共有され
ていないため、職員が進むべき方向が分からない状況にある。職員にコンピュ
ータが一人一台貸与されていないが、それ以前の問題として、各自に机と椅子
が割り当てられていないために、出勤してきても行き場がない職員が多い。勤
務時間を管理する者もいないので、出勤しない職員や昼ごろに帰宅する職員も
多い。出勤しなくても、定期報告を怠らなければ首になることは無い。兼業に
従事していて職務に専念できない者も見受けられる。
2014 年 2 月に農業水産省組織改正が行われた。組織改正の内容については、
MTOP の内容に沿って行われたが、事務次官の数を 1 人から 3 人に増やし、また、
事務次官相当職や局の数を増やしたものとなっていて、組織が肥大化したと言
わざるを得ない。また、局内の課の数も増加しているが、課ごとの業務分担は
曖昧なままとなっている。
また、MTOP では Ministerial Agricultural Advisory Council を設置するこ
ととなっているが、農業水産省内での検討はされていない。
2014 年 2 月に行われた組織改正に伴う人事に関しては、突然、公募制度で行
うこととなった。応募、面接は 5 月初めまでには行ったが、最終決定が大幅に
遅れ、結局 10 月末になって人事が発令された。これほどまで人事を伸ばした責
任がどこにあるのかは曖昧にされているが、2014 年の農業水産省業務は完全に
停滞した。新しい人事が決定するまではそれまでの人が担当することとされて
いたが、実際には異動する可能性があるために、新たな方向を向いた業務は行
われず、予算の消化のための業務のみが行われていた状況にある。
組織内で、各局は政策の優先順位が分からず、従来通りの施策を実施してい
るだけである。政策作成とそれに伴う予算要求というプロセスが欠如している
ために、新たな政策が作成されず、従って、実施されていない状況にある。ま
た、MTOP の目標指標を達成しなければならないという意識はなく、達成したか
否かのモニタリングは行われていない。
そもそも MTOP を作成しているが、それぞれの活動を誰が行うかは決まってい
ない状況にある。どの課が担当しているかに関してさえ不明瞭である。
このような状況下で、2014 年は多くのドナーが農業水産省本省を相手にせず、
14
地方へ活動の場を変えるケースが目立った。
オーストラリア、EU、米国は、新たな東ティモール支援方針を検討中である
が、いずれも農業水産省から地方に活動の場を移し、村レベルで直接住民を対
象とした支援を基本にする方向である。また、カウンターパートに農業水産省
職員ではなく NGO を選んで支援をする傾向にある。これは、農業水産省職員に
業務遂行のインセンティブがなく、幹部職員も組織を動かす能力がなく、また、
農業水産省は地方住民の要求を把握できず、普及システムも機能していないこ
とに大きな要因がある。
6.2 組織、人材に対する提案(活動内容2及び4)
農業水産省組織の改善に対しては、以前 GIZ が農業水産省政策計画局の能力
向上プログラムを実行し、また現在世銀が Institutional Development Fund を
使用して MAF Institutional Strengthening Project(MISP)を行うこととして
いるところである。MISP に期待し、集中的に行ってほしいところであるが内容
的には、コンサルタントを使って地方職員の能力強化をすることに主眼を置い
ていて、農業水産省の現状を改善する仕組みは見当たらない。なお MISP は、MAF
Institutional Reform and Transformation Project(MIRT)と名称変更される
予定である。
組織能力強化プロジェクトが絵に描いた餅に終わらせないためには、地道に
組織内の仕組み及び職員の意識を一歩でも前進させることが必要である。組織
強化、人材育成に関して試行的に簡単な改善を行ってみて、その結果を見て、
本格実施することを念頭に、改善のための第一歩として 6 つの提案を行った(別
添 2.1)。
6 つの提案は、それぞれの内容を実行することによって組織として行うべきこ
とが何であるかが自然に分かるようになっている。また、半年か 1 年間やって
みた結果によって、さらに本格的に実施することが可能なものとなっている。
6.2.1 提案1 農業政策作成の基本となる方針(案)の作成
この提案は、農業政策作成の基本となる原則(案)を作成することを内容と
する。
第 1 に、Strategic Development Plan (SDP)や Medium Term Operation Plan
(MTOP)その他農業水産省の政策等の中から基本原則と呼べるものを抽出し、政
府が行うべき政策の基本となる原則を規定した法律(案)を作成する。この作
業を通じて、職員の能力が向上することとなり、かつ、農業水産省が行うべき
責務についての認識も高まることとなる。
第 2 に、第 1 の作業で作成した基本原則を国の施策として採用することとな
15
れば次の段階に進むことができる。すなわち、農業政策基本方針(案)を農業
基本法とし、それ以降の農業政策はすべて、農業基本法に則って行うこととな
る。毎年、政策の作成も優先順位も全て法律に則って行うこととなる。
なお、農業基本法の所管は、今後設置が予定されていながら全く検討が行わ
れていない Ministerial Agricultural Advisory Council に委ねられることが
望ましく、農業基本法に同 Council の位置づけを規定すべきと考える。
6.2.2 提案2 個人ごとの MTOP 実施に向けた業務計画の作成
この提案は、MTOP の実施を個々の職員レベルまでおとしてリンクさせること
にある。各職員が MTOP のどの部分を受け持ち、半年ごとに業務計画を作り、個々
人の進捗状況を把握することを通じて次の半年間の実施計画を作成することを
繰り返して MTOP の進捗を確保することを目的とする。指標をモニタリングする
だけでは達成した/しないで終わるが、各職員の業務計画ごとに進捗を見ていく
ので、具体的な進捗が見込まれる。いくつかの局で試行的に行った後に全省的
に本格実施することが考えられる。
第 1 に、職員ごとの業務計画の基となる計画を作成する。すなわち、半年ご
とに、農業水産省として達成すべき成果(局の数と同じ数)を明らかにし、そ
れに基づいた各局が達成すべき成果(課の数と同じ数)、それに基づいた各課が
達成すべき成果(係の数と同じ数)を明らかにする。
第 2 に、各職員は各課の計画に基づいて、上司と相談しながら半年間の成果
を明らかにした業務計画を作成し、それに基づいて業務を遂行する。
第 3 に、半年ごとに課長は各職員の進捗状況を評価し、MTOP の進捗状況を把
握するとともに局長へ報告し、各局長は結果を農業水産省へ報告する。この内
容を受けて、農業水産省は次の半年間の計画を作成して以上のサイクルを繰り
返す。
6.2.3 提案3 農業水産省の成果に関する説明責任の改善
この提案は、農業水産省の説明責任を改善し、政策担当者、国民等に農業水
産省の施策や予算、農業実態に関して農業水産省が政策担当者、国民等に説明
するペーパーを作成することを内容とする。この作業を通じて、職員の能力が
改善することとなる。
第 1 に、予算及び施策に関する説明ペーパーを作成する。MTOP ごとの重点施
策が分かるようにし、それぞれの予算額もわかるようにする。年度開始前に来
年度に講じようとする重点施策と予算、年度終了後に昨年度に講じた施策と予
算ペーパーを作成する。
第 2 に、農業実態に関する説明パーパーを作成する。東ティモール農業の特
徴的な事項(トピック)ごとに 1 枚紙を作成する。トピックごとに証拠となる
16
統計等を掲載し、必要に応じて説明を入れる。これらを束ねて説明ペーパーと
する。
第 3 に、出来上がったペーパーは常に更新し続け、大臣はじめ農業水産省職
員が常に携帯して農業実態に対する共通認識を持つようにするとともに、農業
水産省外に対して発信する。
6.2.4
提案4
農業政策の作成過程と実施過程の分離による農業政策の作成
この提案は、農業水産省の政策を作る過程を農業水産省の業務に取り入れる
ことによって、来年度の優先政策を作成し予算要求に臨み、次年度が始まるま
でに政策の詳細まで作り上げ、次年度に当該施策を一斉に実施する体制に入る
サイクルを作り出すことをねらいとしている。そのために、先ずは政策作成過
程が大切であるということを農業水産省幹部に認識させることが必要であり、
その上で、以下の政策作成過程を導入することとなる。
第 1 に、年度初めから農業水産省幹部は次年度の政策作成準備に入り、当該
政策の骨子を作成し、担当部署を決定し、次年度予算の積算を行い予算要求を
行う。
第 2 に、予算要求と並行して、MAF 幹部は引き続き当該施策の運営要領、実施
細則を次年度が始まるまでに作成する。また、各施策実施に必要となる農業基
本政策、農業金融政策、食料管理政策、付加価値農業政策、農業協同組合政策、
農業土地利用促進政策、農業統計等の政策インフラの整備も行う。
第 3 に、次年度に入ったら、担当部署は、決められた施策の運営要領、実施
細則に基づいて業務を実施する。農業水産省幹部は業務の実施に忙殺されるこ
となく、その次の年の新しい政策に向けて検討に入る。
6.2.5
提案5
職員による大臣発言原稿の作成
この提案は、農業水産省の方針を職員が認識するための一つの方法であり、
次の過程を通じて大臣発言原稿を職員が作ることをその手段としている。なお、
現時点では、大臣発言原稿は必要に応じて大臣アドバイザーが作成している。
第 1 に、大臣挨拶等の原稿案は、局長、課長を通じて、全ての農業水産省職
員に合議し、職員からの意見を求めて最終原稿とし、これを再度全ての職員に
わたるようにする。
第 2 に、第 1 の過程を一定期間行ったのち、大臣挨拶原稿は、会合の担当部
署の職員が作成することに変更し、挨拶原稿案を課長、局長を通じて大臣の最
終了承を得て最終原稿とし、これを再度全ての職員にわたるようにする。
6.2.6 提案6 ICT 戦略の作成
この提案は、農業水産省に職員間の連絡網を作ることにあるが、これ以前の
17
問題として、多くの職員には執務するための机と椅子がないという問題の解決
が優先されよう。しかしながら、今のうちから ICT 戦略に関してブレインスト
ーミングをしておくことが必要である。
第 1 に、ICT 戦略を作成し農業水産省としての考えをまとめる。以下の第 2~
第 5 は、戦略の事例である。
第 2 に、一人 1 台のコンピュータを持つようにし、農業水産省内のすべての
文章はコンピュータで閲覧できるようにする。
第 3 に、全ての職員がメールアドレスを持ち、農業水産省独自の閉じたネッ
トワークシステムを構築する。
第 4 に、農業水産省ネットワークシステムを通じて、情報の共有を行う。
第 5 に、大臣のメッセージを送付するための有線テレビ網又はネットワーク
システムを構築する。(以上)
6.3
中長期開発計画等の分析(活動内容5)
6.1 で前述したとおり、SDP、MTOP に沿った業務の進捗状況を農業水産省が報
告できる状態ではない。そもそも MTOP に沿って積極的に業務を行っている状況
にはない。モニタリングも行われていない。
先ずは、6.2 で記述した6つの提案のうち「個人ごとの MTOP 実施に向けた業
務計画の作成」を通じて、MTOP を進めることが必要であり、また、
「農業水産省
の成果に関する説明責任の改善」を通じて、農業水産省の農業実態の把握と業
務の進捗状況の公表が急務と考える。
モニタリングに必要となるデータの整備の必要性は言うまでもないが、そも
そも統計システムの整備はモニタリングのためと言うより政策作成のための大
前提である。
上記 6.1 で前述した Center for Agricultural Community Development (CDCA)
が、唯一農業水産省が行っている新たな政策と言える。ドナーからの支援は受
けていない。
CDCA の目的は、村ごとに優先する農林水産物を選定し当該農水産物の生産振
興を行うこととしている。これに加えて、農業集落の生計向上を目的にしてい
る可能性もあるがはっきりしない。40 村を対象に事業を行い、これがうまくい
けばこれを全ての村に展開していく計画である。
2014 年から試行錯誤しながら進めている。40 村及びそれぞれの村の優先農林
水産物の選定にあたっては、情報を総合的に勘案して農業水産省が主体的に行
った。トップダウン的な選定であるが、農業水産省によれば、農業水産省が全
18
ての村の状況を把握しているので村の希望に沿った選定になっているとのこと
である。優先農林水産物生産のための研修は、インドネシアから呼び寄せた 10
名のコンサルタントが行っている。呼び寄せられたコンサルタントも来た当初
は、何のために来たのか分からない状況で、また、研修機材もない状況であっ
た。
しっかりした制度設計がなく、村ごとの単品農産物を支援するスキームであ
ること、優先農産物はトップダウンの選定であること、市場の位置づけ、生計
向上の仕組みがはっきりしないこと、関係者との連携がはっきりしないこと等
農家が必要とする目的に沿った支援となるとは考えられない。
また、各村に農業コミュニティー開発センターの建物を建てることとしてい
て、目的達成との関係が希薄である。
ドナーの一部は、この機会を利用して、地域が主体的に計画を立て、地域の
要請に則った仕組みを作り上げる方向で農業水産省に提案しているが、実施に
当たってはドナーの協力を排除される形で行われている。
現在進行中のプロジェクトであり現時点で評価することは時期尚早であるが、
地域の要望に沿って、生計向上を目指して、農家グループと政府、民間が一体
となって開発を行う方向への舵取りをしてほしいものである。
6.4
他ドナーによる各組織への支援状況(活動内容6)
東ティモールでは様々な国や機関が支援を行っている。特に、来る 2015/2016
年は主要なドナー国が支援の重点の置き方を、農業水産省に対して支援する考
えから農村を直接対象とする農村開発へ方向転換する兆しが見える点が注目に
値する。具体的には次のような動きがある。
世銀は、2013 年に農業水産省からの要請を受けて Global Agriculture Food
Security Program (GAFSP)による支援を検討している。GAFSP は世銀のプログラ
ムで、Sustainable Agriculture Productivity Improvement Project (SAPIP)
への支援を目的としていて、農業計画、政策、研究、開発等に係る組織改革並
びに農業普及強化、農家及び民間部門支援を行っている。東ティモールの
Strategic Development Plan(SDP)が目的としている食料安全保障、貧困削減、
自給的農業から商業的農業への移行の達成に向けて、各ドナーの支援方針を見
ながら引き続き検討が加えられていて、2016 年頃承認されると言う話が出てい
る。承認されれば 5 年間で 25 百万ドル程度の規模になる可能性がある。
ま た 、 農 業 水 産 省 の 組 織 能 力 の 改 善 の た め に 、 世 銀 は Institutional
Development Grant を使って MAF Institutional Reform and Transformation
Project (MIRT)による支援を行う予定となっている。
19
オーストラリア Department of Foreign Affairs and Trade(DFAT)は、2011
年から 25 百万ドルを投じてきた Seeds of Life 3 が 2016 年に終了することか
ら、向こう 5 年間の新たなプロジェクト To’os ba Moris Diak(TOMAK)(農家
生計向上)を検討している。新たなプロジェクトにおいては、農村の生計向上
を中心とした農村開発に焦点を当て、商業的農業、個々の農家の食料安全保障
を中心に、農業、市場、道路、水、地方分権等の開発を行うことを検討してい
る。一部は 2015 年から始めたいとしている。
EU は、2016 年から Europe Development Fund XI(EDF11)による地域開発プ
ログラムを検討中である。これは、現在農業普及制度に焦点を当てて農村開発
を行っている Rural Development Program Phase 4(RDP4)の後継プログラムに
なる予定である。
USAID においては、Development of Agricultural Community(DAC)プロジェ
クトが進行中で、野菜生産と市場の連携を中心に農家の生計向上を支援してい
る。現在、新たなプロジェクトとして、Integrated Food Security, Climate
Change Adaption, and Private Sector Competitiveness プロジェクト(AVANSA)
を検討中である。
FAO は USAID と連携して、環境保全型低投入農業の導入を目的として、
Enhancing Food and Nutrition Security and Reducing disaster Risk through
the Promotion on Conservation Agriculture プロジェクトを検討している。
国際農業開発基金(IFAD)は、現在トウモロコシ保存用のドラム缶を配布す
るプロジェクトで 42,000 本のドラム缶を配布してきた。2016 年から第 2 フェー
ズに入ることとなっている。
その他の国、機関においても様々な支援があり、珈琲豆生産、大豆生産、水
産物養殖等のプロジェクトが行われている。
農業分野に係るドナー国等の情報交換の場として Timor-Leste Development
Partners’ Working Group in the Agriculture and Fisheries Sector (DP-AFWG)
が開催されている。これは、ドナー国、NGO、国際機関等開発関係機関の開発方
針に関する情報を交換することを目的として月一回開催されている非公式の会
合である。2013 年も似たような会合は行われていたが、2014 年に入って新組織
人事発令の遅れ等から開催のモメンタムが無くなり行われなくなっていたもの
を再編成したものと位置づけられる。DP-AFWG 再開の直接の契機は、農業水産省
20
がドナー国等を集めて開催した会合の内容が、MTOP を実施する予算が少ないの
でドナーの支援が欲しいという趣旨の会合でありながら、どこまで業務が進捗
し今後何のためにいくら予算が足りないかと言う積算がないお粗末のものであ
ったことから、ドナー国等が集まって今後の対応策を考える必要があると言う
ことで EU が音頭を取って開始したものである。農業水産省側からはドナー国等
が集まって足りない予算を支援するための会合にしてほしいとの思惑はあった
ものの、DP-AFWG はそれに応える議論はしていない。DP-AFWG を単なる情報交換
の場として機能するだけではなく、調整機能としての役割を担うことも期待さ
れている。すなわち、東ティモールに対する支援はどのドナー国等がどの分野
をどのように支援するかに関してドナー国等が一体となって整合的に行うため
の調整の場として機能することを志向している。DP-AFWG のメンバーには韓国及
び中国は参加していないが、中国は既に支援の名の下にハイブリッド米の売り
込みに入ってきているし、韓国も農業支援に興味を持っているので、メンバー
として入れて両国の方針を共有する必要がある。
6.5
優先度の高い事業についての実施促進(活動内容7)
優先度が高いと思われる政策の考え方等に関して、以下の通り、その都度ペ
ーパーを作成して大臣等と意見交換し、また、国際機関等に対して意見を随時
提出し、実施促進に努めた。
6.5.1 米政策
6.5.1.1 日本が米の自給を達成した理由
日本が米の自給を達成した大きな要因は、非農家との所得均衡政策を背景と
した食管制度と篤農家の存在にある。また、それを可能にした 6 つの前提があ
る。6 つの前提とは、
1)土地改良、
2)苗代技術、
3)水管理技術、
4)小麦、菜種、タマネギ等裏作作物の国内生産の確保による米作の確保、
5)飼料作物、緑肥作物の裏作による地力の増強、
6)堆肥及び家畜による循環型農業
である(別添 3.1)。
6.5.1.2 東ティモールにおけるコメ自給の可能性
年間の一人当たりの精米の消費量を 100kg とすれば、120 万人で 12 万トンの
精米が必要となる。精米 12 万トンは籾換算(換算率 0.6)で 20 万トンになり、
例えば 1ha 当り収量を籾4トンとすれば 5 万 ha の収穫面積があればよいことに
21
なる。1ha 当り収量と収穫面積の組み合わせはいろいろあり、これに精米換算率
を組み合わせるとさらに組み合わせの数は増える(別添 3.7)。面積も単収も決
して不可能な数値ではなく、米の自給は不可能ではない。
しかしながら、安価な輸入米が無制限に国内に出回っているために、多くの
人が米を生産するより購入することを選択している実態を認識する必要がある
ことである。安価な輸入米の無制限な流入により需要量は増え続けているため、
輸入米の無制限の流入下での米の自給は不可能である。
6.5.1.3 米の国境政策、買い入れ政策等の必要性
現状として、輸入米の無制限な国内への流入により国内米生産が毎年減少し
ている。従って米生産を増やすためには、輸入米の流入を止めるか、生産基盤
の整備と政策手段の確保を行うことである。即ち、1)輸入米の関税引き上げ
を行うか、2)米の増産に向けて相当量の財政資金を投入していく必要がある
(別添 3.9)。
関税引き上げに関しては、東南アジア等で行われている様々な関税制度を参
考に、東ティモールにふさわしい制度とする必要がある。また、関税引き上げ
に伴う負の影響に対する対応策も検討することが必要である。
財政資金の投入政策としては、
1)農業水産省による国産米買い入れ制度、
2)農家に対する直接所得補償制度、
3)米在庫制度、
4)国際的米不足による価格急騰時対策、
5)不耕作地解消政策、
6)農地保全制度
が必要となる。
6.5.1.4 米の関税政策
輸入米が無制限に流入している状況の中で国産米の自給率を高めることは不
可能に近い。米の自給を目標をとして掲げているからには、関税制度の適切な
運用により、米の輸入量を制御することが必要である。
関税制度は輸入米の価格を上げることにより、1)輸入米の流入を削減し、
2)国内輸入米価格を引き上げ、3)米需要を国産米にシフトさせる効果があ
る。また、4)国産米価格が上昇するために、農家に対する財政支出を減らす
ことができ、5)関税収入と相まって関税引き上げに伴う負の影響を軽減する
ための財源を創出することができる。
なお、ASEAN 加入後に関税を引き上げることはほぼ無理と考えられるので、米
の自給目標を捨ないのであれば、ASEAN 加入前にある程度の国境措置を確保して
22
おく必要がある。
6.5.1.5 農業水産省主導による米買い入れ政策
MCIE による米の買い入れ制度が行われているが、人道支援、学校給食、食料
安全保障上の在庫を目的に行われている。農業政策は MCIE の業務ではないこと
から、同買い入れ制度は米の生産増加を目的としているものではない。米の自
給を目指す政策の一つとして米の買い入れ制度は選択肢の一つとなるが、農業
水産省が制度運営を行う必要がある。
MCIE による国産米の 2013 年の買い入れ数量は、1県当り 91 トンで、対象と
なる農家数はごくわずかである。精米の価格は 0.75 ドル/kg で買い入れ、ディ
リ倉庫価格 0.9 ドル/kg での販売となっている。
MCIE は、輸入米の買い入れを主に行っている。2013 年の取扱数量は、8,176
トンと言われているが、別の推計ではこの 2 倍くらいになり、人道支援に 1,000
トン、学校給食 4,000 トン、単なる地方への販売が 11,000 トンである。 人道
支援と単なる地方への販売の区別ははっきりせず、コメ生産県のバウカウ、ビ
ケケ、ボボナロ、コバリマにも含め各県に流通している。精米の価格は、政府
は輸入米を 0.55 ドル/kg で購入し、業者にディリ倉庫価格 0.4 ドル/kg で各県
2-3 の指定民間業者に販売している。業者は、この米を 0.48 ドル/kg で販売す
ることとなっている。
なお、食料安全保障のための在庫は、19,000 トンに定められている。これは、
国民の 3 割が毎日 7.5kg のコメを 3 カ月にわたって供給するために必要となる
量である。在庫は政府が在庫しているわけではなく、民間にこれだけの在庫が
あると言うことのようである。
米の自給目標を達成するための米の買い入れ制度は農業水産省主導の制度を
創設する必要がある。米の自給を目的として掲げる必要があり、国産米だけを
買い入れ、米の増産を目的とした買い入れ政策にする必要がある。また、条件
不利地域の米を中心に買い入れるのか、買い入れ価格をどの水準におくのか、
あるいは入札による価格形成にするのか、品質をどう考慮するのか、買い入れ
た米の販売手法等一つ一つ検討する必要がある。
農業水産省が行う買い入れ制度の内容が固まったとしても、制度の運用をど
こが行うのか、それを農業水産省が行うのか、MICE が行うことが可能か、ある
いは新たな買い入れ機関を創設するのか等の検討も必要である。
6.5.1.6 米の生産を増加するために販売面で優先して行うべき政策
米の生産を増加させるために販売面で優先すべき事項は精米の包装である。
国産米を市場流通させている農家は、国内のあちこちで見受けられるが、そ
の多くは、農家自らが市場へ米を持って行って販売しているか、米を収集する
23
ために生産地を回っている米の買入業者(その多くは大手精米業者)に対する
販売である。
実際、東ティモールにおける国産米の人気は高く、価格は輸入米よりある程
度高く、地域によっては輸入米の2倍以上の価格で売られている。
しかしながら、多くの農家は、運搬手段がなく自分で市場へ持っていくこと
ができず、また、米の買入業者に販売できる機会に恵まれていないのが実態で
ある。
買入業者が買いに来るためには、販売用の米が必要であるが、実態は、精米、
選別した米もなく、袋に入っているわけでもないので、普通の流通業者が買い
に来ることはない。自分で精米して包装することができる一部の精米業者だけ
が農家を回って米を集めているのが実態である。
従って、農家又は農家グループが、袋詰めにした米を用意することができれ
ば、流通業者も米を買いに来ることが可能となる。さらに、流通業者が農家一
軒一軒を回る必要がないよう一カ所で購入できるようにすればさらに多くの流
通業者が買いに来やすくなる。
販売面から米生産を増加させるためには、農家グループが行う包装機材等に
対して支援する政策が優先される。
6.5.1.7 生産した米の需要確保政策
国産米の需要を増やすことによって、農家の米生産意欲を刺激するアプロー
チも必要でさる。
そのためには、1)現金を使う人の創出、2)米の新たな需要の創出の 2 つ
アプローチが優先される。
1)現金を使う人を増やすためには、民間部門の産業振興等固定的給与所得
者を増やす必要がある。都市部はもちろんのこと、農村においても、加工販売
飲食業のようなコンスタントな収入源を確保する必要がある。
2)米の新規需要を増やすためには、新たな加工品の開発、米料理の普及、
工業的利用を含む新たな米の利用方法の開拓が必要である。例えば、米粉麺、
ビタミン強化米、煎餅、酒等の開発、くず米の新たな用途の開拓、玄米やもち
米食の普及等が考えられよう。
これらのためには、国による民間部門への支援、生産農家グループ等の販売
組織の強化が重要である。そのためには農家グループの組織化、農業協同組合
法の制定等の検討が必要である。
6.5.1.8 種子政策
種子政策に関しては、オーストラリアの支援により種子政策がすすめられて
いる。東ティモールにおいては、種子政策は現時点における優先政策ではない
24
という意見がある。優先施政策ではないとする根拠は、優良種子は産地のブラ
ンド化に必要であって自給的農家には必要ない、というものである。確かに、
作物がそのまま種子となるので自家採取の種子を使用することは合理的選択で
あろう。コストをかけて優良種子を使用する理由は見いだせないかもしれない。
種子政策を推進する理由は大きく分けて 2 つある。1)生産の増加と2)品
質の統一である。
生産の増加に関しては、例えば米の自給目標達成にとって不可欠である。優
良種子の供給は、供給すべき米の品種改良の促進につながる。種子更新をする
ことは、生産が安定し、病害虫の発生率を低くさせる。種子の供給体制の確立
は、種子の安定供給、流通の適正化をもたらす。
品質の統一に関しては、産地化、ブランド化の信頼の向上にとって不可欠で
あり、そのためには種子更新は産地の当然の責務である。種子更新により品種
特性が変化することなく一定の食味を確保することができる。
東ティモールにおける問題は、政府が優良種子を有していないことにある。
支援国が供給する種子に頼っているのが現実で、品種はその時々の支援国の都
合次第になっている。
東ティモールで行うべき種子政策は、次の 4 点を推進すべきと考える。
1)地域ごとの気候や土壌条件、営農計画に適応した品種の開発育成(在来品
種を含む)、
2)自国での優良種子の安定的、計画的確保、
3)優良種子生産技術の向上として、職員及び契約栽培農家の技術水準の向上、
種子圃場及び資機材の更新、種子品質管理システムの向上、
4)自給的農家の自家採取技術の普及。
6.5.1.9
アジア各国における米を巡る農業政策
米はアジア各国にとっても大切なものであり、様々な政策がとられている。
毎月の動きを FAO 資料から抜粋して農業水産省に示した。農業水産省が各国の
政策を学ぶことにより、各国で様々な政策が行われていることを知ってもらう
ことと、東ティモールの政策を考えるきっかけになることを期待して行った(別
添 3.13)。
日本の 2014 年の農業政策に関しても示した。日本の現状として、1)農業者
の高齢化が進み 50 歳未満の農民は 10%、2)米生産集落の半分以上は農業就業
者がいない、3)耕作放棄地の増加、4)食料自給率は 39%。このため 2014 年
に取った政策は、1)農地中間管理機構の創設、2)経営所得安定対策の見直
し、3)水田フル活用と米政策の見直し、4)日本型直接支払制度の創設。
(別
添 3.11 )
25
6.5.2 付加価値農業
付加価値農業の狙いは3つ。すなわち、1)農家生計の向上、2)農業によ
る就業/雇用機会の創出、3)地域資源を活用した農業活性化。
そのためにすべきこととして、1)農業・流通・食品産業・観光を結び付け
た付加価値農業の開発、2)市場開拓・新加工品等商業的農業の開発、3)ブ
ランド化・品質管理・衛生管理等による需要開拓、4)付加価値農業を行う農
家グループに対する融資制度の創設、5)共同利用施設の整備、6)農家と食
品産業の連携、7)付加価値農業を支援する食品産業に対する融資制度の創設
等、並びに、8)市場アクセスの改善、9)需要の大きい農産物生産の選択的
拡大、10)農家と食品産業が連携して共同出資する企業支援、11)食生活・薬
草・遺伝資源・再生可能エネルギー等地域資源の開拓等が考えられる(別添 3.4、
3.5)。
6.5.3 農業基本法
6.2.1 で前述した農業基本法の必要性等は次の通りである(別添 2.1 の
Appendix 1)。
第 1 に、農業基本の必要性として、1)東ティモールにおける食料、農業、
農村の位置づけを明確にしたうえで、政府が行う様々な農業政策の核となる施
策目標等基本的な考えを示すことにより、東ティモール政府が行う全ての農業
政策を矛盾することなく行う必要があること、2)政府が将来にわたって行う
農業政策の目標と手段を国民に示すことによって、農業者の営農や農業関連産
業の経営計画の明確な長期的指針となる必要があること、3)政府が農業政策
を行うに当たっての法的義務を与える必要があること、4)政府が行う農業政
策に法的な根拠を与える必要があること。
第 2 に、農業基本法で定めるべき、農業政策の枠組みとして、1)農業政策
は、基本理念と基本計画の 2 本立てとすること、2)基本理念は、農業政策と
して行うべき事項に関して、それぞれの核となる基本的な考え方を定めること、
3)基本計画は、今後 5 年間に行うべき政策の計画を定めること、4)施策は
基本計画に基づいて実行されること。
第 3 に、既存の SDP、MAFSD、MTOP 等の戦略や計画との関係は、SDP 等に含ま
れるもののうち、普遍的な政策の基本的な考えを抽出したものが基本理念とな
る。また、SDP 等に含まれる優先順位が高い政策は基本計画に含まれる。
また、日本の旧農業基本法(1961 年)には、1)生産性の向上、2)農業生
産の選択的拡大、3)農家所得の他産業従事者との均衡を基本理念とした法律
となっていて、旧農業基本法が想定したシナリオは、1)農業人口が他産業に
吸収される結果、農家戸数が減少、2)離農又は規模縮小を行う農家の農地を
規模拡大を志向する農家に集積することにより、農業の生産性が向上、3)農
26
業生産の重点は、需要の伸びが期待される農産物に選択的にシフトし、総生産
も増大、4)この結果、他産業従事者と均衡する生活を営むことができる自立
経営が広範に育成され農業と他産業との間の生産性や生活水準の格差が解消、
と言うものであった(別添 2.1 の Appendix 1)。
6.5.4 需給表
食料安全保障に関する国内横断的な調整機関である National Council on Food
Security, Sovereignty and Nutrition in Timor-Leste (KONSSANTIL)が採用し
ている需給表には米の不足量が含まれている。従って、過去の現実の需給実態
が把握できず、需給の将来予測ができない。期首在庫、生産量、輸入量、消費
量、輸出量、期末在庫だけを構成要素とした需給表を作成する必要がある。
例えば、次の Agriculture Food Security Information System (AFSIS)が作成
している米の需給表の東ティモール版を作成する必要がある。
ASEAN Supply & Demand Situation (Milled Rice)
Unit: Million tons
2013
Supply
2014
2015
164
169
175
28
35
40
134
133
133
2
2
2
164
169
175
114
111
113
Export
16
18
19
Ending Stock
35
40
44
Beginning Stock
Production
Import
Demand
Domestic Utilization
Source: AFSIS, Agricultural Commodity Outlook, December 2014
6.5.5 農業統計
農業統計に関しては、最優先で整備すべき政策インフラであり、政策の作成、
モニタリングに際して不可欠のものである。
2013 年 10 月に、FAO コンサルタントが「Manual of Crop Assessment, August
2012」を完成させることを目的に東ティモールを訪問した。同マニュアルは、
生産統計調査の様相を呈しているが、内容的には生産量を把握できない手法が
書かれているので、詳細なコメントを提出するとともに、コンサルタントと内
27
容について意見交換し実施促進に努めた(別添 4.1)。その後、同マニュアルは
進展がない。
2014 年 7 月に、東ティモールで実施可能な内容の生産統計の整備案として
「Recommended Package of Rice Production Survey For Timor-Leste」を作成
した(別添 2.2)。
農業統計は FAO にまかしているという意識が農業水産省にあることが統計整
備の不備の原因の一つであるが、FAO アジア太平洋地域事務所(FAORAP)の理解
を得るため、FAORAP に対しても「Recommended Package of Rice Production Survey
For Timor-Leste」を送付した。同案には、面積調査に関してドット標本調査法
と言う画期的な手法で人的資金的資源の無い国においても正確なデータが取れ
る手法を採用しているが、まだ、世界に普及していないことから採用に消極的
で あ る 。 FAORAP か ら は 、「 My approach is building a sound system of
agricultural statistics based on agricultural census which has many-many
uses. But your work does not seem contradict with FAO’s work in anyway.
We will need to discuss synergies with FAO activities before you start
implementing this approach, because the Government has very limited
manpower resources to be engaged with external partners.」という回答を
得ている。その後、累次のやり取りで、ドット標本調査法についての FAO の理
解が深まってきている処であるが、FAO として従来から提唱している農業センサ
スを母集団にして調査を行う手法の呪縛から逃れられない状況にある。ローマ
の FAO 本部にも働きかけていて理解を広げているところである。
2014 年 10 月に、農業センサスの準備のために必要な事項をまとめ提出した。
農業水産省は、農業センサスに関しては FAO にまる投げの意向である。多くの
予算が FAO コンサルタントに取られることを避けるためにも、最低限農業水産
省として考えておくべきことを示した(別添 2.3)。結局農業センサスに関して
は、2015 年人口センサスに 10 項目加えて終わりにすることになりそうである。
農業センサスの代わりに人口センサスを活用することは次善の策としてあり得
る選択であるが、人口センサスで調べる 10 項目を農業水産省としてどう活用す
るのかを検討した上で 10 項目を決めることが大切である。また、人口センサス
から得たデータを活用する具体的な準備にすぐに着手して、必要な調査を 2016
年に実施できるようにする必要がある。
2014 年 11 月に、Timor-Leste Development Partners’ Working Group in the
Agriculture and Fisheries Sector (DP-AFWG)の場で、ドット標本調査に関し
て説明を行った(別添 2.4)。これは、DP-AFWG の世話人である EU からの求めに
応じて行ったものであるが、他のメンバーからも多くの反応があった。
2014 年 12 月に、FAO アジア太平洋事務所に対して、“Estimation of Area and
Yield, and Monitoring of Crop Condition” に関してコメントを提出し、ド
28
ットサンプリング手法の理解促進を行った(別添 4.7)。
6.5.6 食料安全保障政策
FAO が作成した食料安全保障政策に関して、コメントを提出した(別添 4.2)。
意見の中で、食料安全保障政策は、国の基幹をなす政策であり、政府機関横
断的な施策であることから、担当組織の義務と責任を含めて基本理念を作成し、
それを法律にすべきである旨主張し、考えられる基本理念として、次の 6 点を
挙げた:
1)将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければ
ならない、
2)食料安全保障は、農家の生計向上と貿易赤字の減少を行いながら、米、ト
ウモロコシ等主要農産物の生産の増加を通じて、確保されなければならな
い、
3)国民に対する食料の安定的な供給については、国内の農業生産の増大を図
ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われな
ければならない、
4)農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展を総合的
に図ることを通じ、需要に即して行われなければならない、
5)国民が最低限度必要とする食料は、国内における需給が相当の期間著しく
ひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の
円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければな
らない、
6)農産物輸出にも焦点が当てられなければならない。
6.5.7
農業金融制度
東ティモールに金融機関はあるものの、農業の特殊性を考慮した金融制度は
存在しない。今後、農業を発展させていくために農業金融は政策のインフラと
して不可欠のものとなるので、今のうちから、あるべき農業金融制度の全体像
を検討しておく必要がある。
具体的には、次の4つの農業金融制度を構築する必要がある。
1)石油基金を原資とするもの:
・土地改良や圃場整備等返済に時間がかかり民間金融機関が融資しない
長期資金
・政策の方向に農家等を誘導するための政策的金融
・災害時の負債借換資金
2)民間金融機関の貸し出しに利子補給するもの:
・機械や建物等償却期間が比較的短い分野で民間金融機関が融資可能な
29
中期資金、
3)税金を原資とするもの:
・新規参入者や新規分野等リスクの高い金融に対するベンチャー金融
4)信用保証保険制度
・担保を必要とする民間金融機関のための信用保証保険機関の設立
6.5.8
卸売市場制度
卸売市場は、野菜、果物、魚、肉など日々の食卓に欠かすことのできない生
鮮食料品等を国民に円滑かつ安定的に供給するための基幹的なインフラである。
卸売市場には、次の 4 つの機能がある。
1)集荷(品揃え)、分荷機能:全国各地から多種・大量の物品を集荷。実需
者のニーズに応じて、迅速かつ効率的に必要な品目、量へと分荷。
2)価格形成機能:需給を反映した公正で透明性の高い価格形成。
3)代金決済機能:販売代金の出荷者への迅速・確実な決済。
4)情報受発信機能:需給に係る情報の収集、川上・川下への情報の伝達。
6.5.9 耕作放棄地
耕作放棄地が生じる大きな理由は、
1)水田に水が来ないこと、
2)土地所有者が集落に不在となっていること、または、土地所有者がはっき
りしないこと、
3)農地の借料が高いこと
が挙げられる。
水田に水が来ないことは、灌漑施設の整備により解決できるが、残りの問題
は、耕作放棄地再生のための政策を推進する必要がある。このため、1)土地
所有者の確定のための仕組みを作ること、2)土地所有者から農地を買入れ又
は借入れして規模拡大を希望する農家に対して農地を効率的に利用できるよう
調整したうえで農地の売渡し又は貸付けを行う仕組みを作ること、3)農地借
料に関して、標準小作料制度、実勢小作料報告公表を制度化すること等の政策
が必要である。
なお、土地所有者がはっきりしないことに関しては、国の土地か民間の土地
かどうかさえはっきりしていないことが多い。実際、土地の所有を巡って争い
や予期せぬ土地所有者が現れることが良く起こっている。このため、土地を担
保として行う金融の発達が妨げられている。
6.5.10 農業機械化
農業機械化は、生産コストの増加につながる。農業機械の使用に当たっては、
30
農家の生産条件に応じて機械の規模を決定することが大切で、従って、個々の
農家の機械所持能力に応じて農家自らが機械を購入することが大切である。
政府が行うべき農業機械化政策の方向として、以下の点が大切である。
1)機械の購入は農家自らの判断で行うこととし、政府が供与することは行わ
ない。
2)農作業の請負農家グループ(農業サービス事業体)に対する機械購入を支
援する。
3)機械の共同利用グループに対する機械購入を支援する。
4)生産を増加させた農家に対して機械の維持費の一部に対する支援を行う。
5)民間企業が参入しない次のような分野の開発支援を通じて民間の農業機械
産業を育成する。
-東ティモールの気候、地質等に合った機械の開発をする。
-農業機械費の低減対策を行う。
-農業機械の環境負荷軽減対策、安全対策を行う。
6.5.11
地方分権
東ティモールでは大幅な地方への権限移譲をすることとなっていて、中央か
ら地方レベルへの政策、予算、施策、実施、モニタリングが移行することとな
っている。しかしながら農業水産省においては現在行われている中央から地方
への命令系統がどの様な方向を目指して変更されることになるのか検討されて
いない。
また、地方職員は現在農業水産省の職員であるが、地方分権されれば、
District Manager と密接な関係を持って農業部門の発展業務を行うこととなる。
地方職員と農業水産省との関係がどうなるのか検討されていない。
また、中央から地方職員へ相当数の職員を移動することが想定されるが、検
討されていない。
現在、オエクシ県でかなり地方分権的な Special Zone on Social Market
Economy(ZEESM)が進められているが、 農業部門と農業水産省との関係がどう
なるのか不明な点がある。完全に農業水産省から離れて農業政策を進めるのか
どうかが今後の地方分権化の一つの事例になるのかどうか、しっかりした方針
を立てて進める必要である。
6.5.12
農業水産省の国際協力対応
農業水産省の国際協力対応基本方針を作成すべきである。基本方針がないた
めに、ドナー国/機関に対する対応が行き当たりばったりとなっている現状にあ
る。支援を受けるにあたっての基本方針として、1)受けるべき支援の基本方
針、2)受けるべき支援の重点分野を明確にする必要がある。
31
農業水産省がドナー国/機関に対して情報共有することは大切で、次の 4 点に
関して情報共有することが必要と考える。1)農業水産省が優先すべき政策、
2)昨年度に農業水産省が講じた施策、予算、3)本年度に農業水産省が講じ
ようとする施策、予算、3)農業水産省の組織の現状、4)東ティモール農業
の現状と課題。
現在 4 半期に一回を目途に開催されているドナー国/機関との Harmonization
Meeting の場を活用して情報共有し、農業水産省は積極的に、農業水産省とドナ
ー国/機関の力を結集し、どのような政策を農業水産省として推進したいのか、
その中で農業水産省ができること、ドナーに期待したいこと等を提示しながら、
将来の国際協力を考えていくことが必要と考える。
6.6 JICA 農業案件の調整、実施促進(活動内容8)
JICA 農業案件として、Irrigation and Rice Cultivation Project Phase-II
(IRCP2)、農業マスタープラン灌漑開発計画プロジェクトを中心に対応した。
IRCP2に関しては、累次の JCC、終了時評価調査、運営指導調査等の機会等節
目となるような時を中心に、TV 会議の場やドキュメントへの修文等を通じて意
見を提出した。また、「マナツト農家の米生産意欲の向上案について」(2014 年
1 月)、
「青木専門家の Report に対するコメント」
(2014 年 7 月)を別途提出し、
実施促進のための提言を行った(別添 4.3、4.6)。
農業マスタープラン灌漑開発計画プロジェクトに関しては、随時、TV 会議の
場やドキュメントへの修文等を通じて意見を提出した。また、
「農業マスタープ
ラン骨子(案)に関するコメント」(2014 年 4 月)、「MP 取りまとめ方針検討会
議資料に対する意見」
(2014 年 6 月)を別途提出し、内容充実のための提言を行
った(別添 4.4、4.5)。また、マスタープランの内容と大臣の考えに齟齬が出な
い様大臣とのすり合わせを行った(別添 3.10)。
Community-based Development Initiatives Center(NGO)が行っている緑
のコミュニティー新生プロジェクトの進捗状況に関してコメントを提出し、実
施促進のための提言を行った(2014 年 8 月)(別添 5.40)。
6.7 「一村一品運動」、
「農業普及員制度」、
「農業機械化」にかかるフォローア
ップ及び提言(活動内容9)
3つの活動とも 2008 年から 2010 年にかけて行われたものである。それぞれ
の現在に至る経緯と提言は以下の通り。
32
6.7.1 「一村一品運動」活動
「一村一品運動」については、農業水産省、商工省、NGO(加工食品支援)、
農家からなるタスクフォースを作り、連携を取りあって、ジャム、ソラマメチ
ップス、バナナチップ、蒸し魚等の売れそうな品と支援するターゲットグルー
プを選定し、その商品を販売するプロジェクトである。本プロジェクトによる
支援として、包装機材供与のほか、生産計画、会計処理、食品衛生、包装技術
の技術移転、スーパーマーケットの陳列棚の確保を行っている。
本プロジェクトの主眼は、売れそうな品を探し出し、選定された生産者をタ
ーゲットに、技術供与、販売促進支援を行うプロジェクトであり、商品の販売
促進をして生産者の収入を増やすということに置かれているということができ
る。
本活動で作り上げたタスクフォースは 2011 年に既に無くなっていたが、地
域住民や NGO により一村一品的な商品は存在していた。2011 年から JICA の青年
海外協力隊員により、商品の流通販売モデルの作成と販売促進が行われ、クマ
ネックスーパーマーケットでの販売が行われていて、空港でのパイロットショ
ップでの販売も行われた。このときの流通販売モデルは、指定民間業者が包装
資材供給業者から包装資材を購入し生産者に供給し、生産者から商品を受け取
り、指定民間業者は、パイロットショップやスーパーマーケットで販売する、
というものであった。
持続的な制度とするためには、次の 3 点を提言したい。
1)第 1 に、「一品」を探すだけのプロジェクトからの脱却が必要である。「一
村一品運動」と言いながら、
「一村」が枕詞になっていて、一部商品生産者
のための販売促進プロジェクトになっている。
「一村」にも意味があるプロ
ジェクトにする、即ち、産品の生産に携わっている一部の人たちのためだ
けのプロジェクトにならないよう、最終目標を地域振興とする仕組みを構
築する必要がある。目的は、生産技術や販売ノウハウの移転ではなく、地
域全体の地域振興能力の強化とすることが必要である。地域の人々の地域
振興能力を強化する過程を通じて、人々の意識を高め、それを地域の財産
とし、その一つの結果として、産品づくりや商品関発が行われるというも
のである。
2)
「一品」にこだわるのであれば、商品開発、販売促進に目的を絞って、政府
を対象にするのではなく民間を対象にしたプロジェクトとして構築する必
要がある。簿記、食の安全、料理教室、グループマネージメント、ビジネ
スマネージメント等必要と思われるトレーニングを行う組織に対する支援
も含まれる。選定した生産者/生産者グループを成功に導くことによって他
の生産者へ波及する効果を狙うというものである。この場合、税金を使っ
て特定の民間部門を直接益することになるので、プロジェクトの構築に慎
33
重さが求められよう。
3)政府を対象にするのであれば、販売促進支援業務が政府の業務となるよう
制度的枠組みを作成することを内容とするプロジェクトとして構築し、政
府はその制度的枠組みの推進をすることになるようにする必要がある。プ
ロジェクトが無くなっても制度的枠組みがあることにより業務が継続され
るというものである。
6.7.2 「農業普及員制度」活動
「農業普及員制度」に関しては、2008 年に既に、普及員ガイドライン、普及
員の採用の開始、普及員の研修計画の作成が GTZ(現 GIZ)により行われており、
結局、本活動では研修の一部を行っただけとのことである。
現在の普及員制度は、EU の Rural Development Program Phase 4(RDP4)の
支援により行われている。各村に在村普及員を置き、当該普及員は全ての作物
を担当するというものである。RDP4 に係る普及員の給与、研修費用等の多くは
RDP4 により支援されている。
現在の普及員制度に関する問題点として以下の2点が考えられる。
1)RDP4 は農産物生産技術の普及に焦点を当てているが、農業水産省の政策を
遂行する上で、普及員が行うべき事項に関して農業水産省としての明確な
方針は無い。ドナー国/機関がどこまで普及員に業務内容を期待していいも
のか不明瞭である。例えば、栄養指導をさせていいものか、農家グループ
の設立にどこまで関わることができるのか等。
2)普及員活動に対する農業水産省の予算が少なく、普及員が管轄の村に行く
ことができない事態がしばしば起こっている。例えば、ドナー国/機関が本
来は OJT による普及員の能力向上を予定していたとしても、実際は普及業
務を行う者や NGO を自前で雇うという事態がしばしば生じている。
従って、以下の 2 点を提言する。
1)普及員が行うべき事項に関して基本的な方針を作成することによって、普
及員が行うべき業務、権限の範囲を明確にすることが必要である。
2)普及員の管内移動手段等活動に必要となる資金の確保は急務と考えられる。
6.7.3 「農業機械化」活動
「農業機械化」に関しては、農業機械に関する研修が実施され、また、農業
機械化のガイドラインが作成された。これは、農業水産省が 2008 年から 2010
年にかけて、2,869 台の耕運機、404 台の中型大型トラクターを無料で配布して
いたが、本施策の目的や運営の仕方、期待される成果等に関する規則がなかっ
たこと、機械に関する研修が行われていなかったことから行われたものである。
農業水産省による機械化政策は失敗に終わったと評価されている。30 百万ド
34
ル近い予算が農業機械化のために使われたとされているが、米の生産は増えず
当初目的とされていた 5 年以内のコメ等の自給達成という目標は達成されてい
ない。
農業水産省による機械化施策には以下の問題がある。
1)農家に機械を配ることと生産増加を結び付けた仕組みとなっていない。
2)機械化により、生産コストが増加する。
3)機械の使用方法、維持管理方法、修理方法が分からない。
4)機械の転倒等が頻繁に起こる。
5)燃料代、修理費等の資金がないために機械が使われず眠っている。
6)農産物の生産増加に向けた動機付けがないことから、機械が利用されない。
7)現金を得るために機械の転売が行われる。
今後の機械化の方向として 6.5.10 の繰り返しとなるが、次の点を提言する。
1)機械の購入は農家自らの判断で行うこととし、政府が供与することは行わ
ない。
2)農作業の請負農家グループ(農業サービス事業体)に対する機械購入を支
援する。
3)機械の共同利用グループに対する機械購入を支援する。
4)生産を増加させた農家に対して機械の維持費の一部に対する支援を行う。
5)民間企業が参入しない次のような分野の開発支援を通じて民間の農業機械
産業を育成する。
-東ティモールの気候、地質等に合った機械の開発をする。
-農業機械費の低減対策を行う。
-農業機械の環境負荷軽減対策、安全対策を行う。
6.8
JICA の農業セクターに対する協力の方向性に関する提言(活動内容 10)
活動内容7「優先度の高い事業についての実施促進」及び活動内容9「「一村
一品運動」、「農業普及員制度」、「農業機械化」にかかるフォローアップ及び提
言」の提言事項を今後の農業セクターに対する協力の方向として提言する。そ
の際、活動内容6「他ドナーによる各組織への支援状況」の他ドナー/機関の今
後の支援の方向性が考慮事項となる。
協力に当たっては、東ティモール国の要望を十分に組み上げる必要がある。
このことに関して以下の 3 点を提言する。
1)要望を確実に吸い上げるためのタスクフォースを立ち上げる。タスクフォ
ースのメンバーは、1)Instituto Nacional da Administração Púbulica
(INAP), Ministério da Administração Estatal、2)日本大使館、3)JICA 事
務所とする。
2)タスクフォースは、要望を確実に吸い上げるために要望調査に向けてのス
35
ケジュールを 2 月頃に作成する。スケジュールは、次のようにする。農業
水産省はプロジェクト要望の骨子(プロジェクトの目的、成果、活動のみ
を記したもの)3 つを限度に 6 月中旬までにタスクフォースへ提出する。タ
スクフォースは提出された骨子を検討して要望候補として採用するプロジ
ェクトを決定し、正式な次年度要望書を 8 月末までに日本政府に提出する
よう農業水産省に指示する。農業水産省は正式な要望書を 8 月末までに日
本政府に提出する(別添 3.8)。
また、このスケジュールに合わせて、農業水産省の各局は、プロジェク
ト要望の骨子を 5 月末までに政策計画室へ提出し、政策計画室はその内容
を検討して、6 月中旬までに要望候補プロジェクトを 3 つ選択する。
3)JICA 研修への対応に当たっては、農業水産省の省内取りまとめ窓口を定め
る。例えば政策計画室、あるいは農業教育局とする。JICA 研修に関しては
省内取りまとめ窓口が省内取りまとめ及び JICA との連絡を行う。
JICA 研修コースの選定に関しては、JICA 事務所が一方的に選定するので
はなく、農業水産省からの要望を調査した上で決定する。具体的には来年
度開講予定の研修コース一覧を農業水産省に示し、農業水産省は希望する
コースに関して優先順位をつけて JICA 事務所へ提出する。
JICA 研修候補者の選定にあたっては、省内取りまとめ窓口が候補者を取
りまとめる。必要であれば、語学能力の確認のため JICA 専門家の意見書の
添付を候補者選定の条件とする。なお、省内取りまとめ窓口は、JICA 研修
生の帰国後の報告会開催の指導と JICA 研修経験者名簿を整理する。
7 具体的成果品リスト
7.1 業務計画
7.1.1 Work Plan for JICA Expert
7.2 ドキュメント
7.2.1 Six Capacity building Projects for Strengthening Administrative
Management of MAF and Ability on Policy Making and Policy
Implementation
7.2.2 Recommended Package of Rice Production Survey For Timor-Leste
7.2.3 Proposed Preparation For Agricultural Census in Timor-Leste
7.2.4 Dot Sampling Method using Google Earth - What you can do with the
Dot Sampling Method 7.3 農業水産省説明用資料
7.3.1 How to achieve self-sufficiency of rice in Japan
36
7.3.2
7.3.3
7.3.4
7.3.5
7.3.6
7.3.7
7.3.8
Idea of Value added-agriculture
Preparation for the Food Festival
Idea of Value added-agriculture
- Farming as a business An Example of specific policies for value-added agriculture
Conversation with Ambassador
Table of Production by Yield and Area
Proposal on Preparation for JAPAN’S TECHNICAL COOPERATION 2015
7.3.9
7.3.10
7.3.11
7.3.12
7.3.13
Comment on border measures for rice
Schedule of Agriculture Master Plan
Four Reforms on Agricultural Policies 2014 in Japan
Rice policy in Agriculture Master Plan
Monthly Agricultural Policy Development in ASIA(May-December2014)
7.4 主要コメント
7.4.1 Comments on Manual of Crop Assessment
7.4.2 Comments on National Food and Nutrition Security Policy
7.4.3
7.4.4
7.4.5
7.4.6
7.4.7
マナツト農家の米生産意欲の向上案について
農業マスタープラン骨子(案)に関するコメント
マスタープラン取りまとめ方針検討会議資料に対する意見
IRCP2 青木専門家の 1st Week Report に対するコメント
Comment on “Estimation of Area and Yield, and Monitoring of Crop
Condition”
7.5 情報収集
7.5.1 農業水産大臣表敬訪問
7.5.2
7.5.3
7.5.4
7.5.5
7.5.6
7.5.7
農業水産省幹部会
Zoning 準備会合概略
田中専門家大臣表敬における大臣発言
打合せにおける Mr.Aires の発言
コンスタンティーノアドバイザーの話
Seeds of Life 主 催 の ”Orientation & Planning Workshop for
Socializing the National Seed System for Released Varieties in
Timor-Leste”
7.5.8
7.5.9
7.5.10
7.5.11
ドナーハーモナイゼーション会合について
Piloting CBNRM-WSM in Aileu and Lautem District 会合
Detailed Goals of MAF based on Medium Term Operation Plan
Work Plan サイン時における農業水産大臣の話
37
7.5.12
7.5.13
7.5.14
7.5.15
7.5.16
7.5.17
7.5.18
Seeds of Life, John Dalton 氏の話
Timor-Leste Food Security Policy Review 会合
2014 Budget Categories and Expense Items in Timor-Leste
MAF 2015 Budget (Draft)
コンサルタント、フィリップ・ヤング氏の話
Duties/Responsibilities of Directorates of MAF 2008 年組織法
政策計画局長オクタビオ局長の話
7.5.19
7.5.20
7.5.21
7.5.22
7.5.23
7.5.24
7.5.25
7.5.26
7.5.27
農業水産省組織法に関するコンスタンンチノ氏の話
農業水産省組織法
ブルト灌漑施設に係るアイレス氏の話
SIPI 技術支援グループ(TSG)に関するジョン・ダルトン氏の話
SIPI(40 村)に関する局長会合
Center for Community Development 等に関する農業水産大臣の話
大臣日本招聘に関するアイレス氏の話
MISP 等に関するジョン・ダルトン氏の話
農業水産省組織強化計画(MISP)の作業プログラムについて
7.5.28 Timor-Leste National Food and Nutrition Security Policy Validation
Workshop 会合について
7.5.29 コンスタンティノ氏の話
7.5.30 ライスボールアプローチに関するフィリップ・ヤングの話
7.5.31 農業水産省幹部候補者インタビュー日程
7.5.32 農業水産省を巡る最近の状況
7.5.33 オクタビオ施策計画局長の話
7.5.34 DPCM ESS 農業サブセクター会合の概要
7.5.35 アンジェラ(アドバイザー)の話
7.5.36
7.5.37
7.5.38
7.5.39
7.5.40
関税に関する農業水産大臣の感触
マスタープランシミュレーションに関する大臣の感触
インドネシアコンサルタントの話
CDCA 会合の概要
マメウタ村「緑のコミュニティー新生プロジェクト」に対するコメン
ト
7.5.41 農業水産省新組織各局の課の構成
7.5.42 日本研修に関するオクタビオ政策計画局長の感想
7.5.43
7.5.44
7.5.45
7.5.46
ジョン・ダルトン氏の話
Raumoko 流域に関する情報交換会の概要
ダムに関する大臣の話
農業センサス戦略会合の概要
38
7.5.47 マスタープラン米政策に関する閣議用資料案に対する大臣の意向
7.5.48 MAF Institutional Reform and Transformation Project (MIRT)に
ついて
7.6 JICA 報告資料
7.6.1 Progress Report (30 July 2013 –31 January 2014)
7.6.2 Progress Report (1 February 2014 – 31 July 2014)
7.6.3 月例業務報告(平成 25 年 9 月-平成 26 年 12 月)
39
<専門家活動報告(詳細情報)>
1
専門家指導分野およびその関連分野にかかる受入国、協力先、カウンター
パートの配属時点と活動終了時の状況の変化:
受け入れ国に状況に関しては、2012 年から継続していた東ティモール国 The
Fifth Constitutional Government が、2015 年 2 月 16 日(予定)から東ティモー
ル国 The Sixth Constitutional Government に変更となった。
協力先は農業水産省で変更は無いが、2014 年に新たな農業水産省設置法が制
定され、組織改革が行われた。
カウンターパートに関しては、大臣は 2015 年 2 月 8 日まで変化がなかったが、
2013 年末から首相が辞任を宣言し、その後、内閣改造、閣僚人数の大幅削減を
ほのめかしたため、職員が、職務に集中しにくい環境になった。2014 年末から、
2015 年 2 月に内閣改造が行われる話があり再び省内の業務が停滞した。2 月 2
日に大臣が辞任し、後任の大臣は 2 月 18 日に着任したため、この間新たな業務
は行われていない。
また、カウンターパートのオクタビオ政策計画局長に関しては、新たな農業
水産省設置法に基づく人事異動により政策計画局から改組された大臣直下の政
策計画モニタリング担当次官となった。国際関係の担当は、食料安全保障担当
次官に移ったが、はっきりとした業務の移管が 2015 年に入っても行われていな
い。
C/P 氏名(所属): マリアノ・アサナミ・サビノ農業水産大臣
オクタビオ・アルメイダ政策計画モニタリング担当次官
2
専門家活動計画と達成状況に齟齬があった場合、その理由:
専門家業務に関する合意書付属書に記された業務の内容はほぼ達成したもの
と考えられるが、さらにその先にある農業水産省の組織を変革することに関し
ては、6 つの提案を行って種は蒔いたものの、まだ芽は出ず、一つも実行に移す
ことができなかった。
その理由としては、次のようなことが考えられる。
1)専属的に業務に取り組み協力先で核となって動いてくれる有能な者を確保
することができなかったこと。
カウンターパートの大臣は、話はよく聞いてくれて適宜職員に指示は出
してくれてはいたが、大臣の指示でもあまり職員は動かず、また、政策計
画モニタリング担当次官は自ら積極的に動くことがなかった。専属的に動
く者を早くつけてもらうようお願いすべきであったと反省している。
1
2)職場内の情報収集に非常に手間取り、実態把握に相当時間がかかったこと。
会議や通常の会話は、テトゥン語、インドネシア語、ポルトガル語、地
方言語がまじりあって使われているために情報収集が困難で、実態がなか
なかつかめなかった。
会議後などに内容を訳してもらい内容把握に努めるようにしていたが、
現地人同士であってもテトゥン語による理解に違いがあるように感じる。
3)情報収集した内容に矛盾することが多く、確認するのに時間がかかること。
多くの人から同じことについて情報を収集して総合的に内容を理解する
ように努める必要がある。ペーパーがあれば訳してもらうだけで済むが、
ペーパー無しで業務が行われていることから口頭確認しか最終確認する術
がなく、結局わからずじまいなことが多い。職員間でも共通認識が醸成さ
れていないように感じる。
4)2014 年の 2 月に新たな農業水産省設置法ができたが、それに伴う幹部人事
がずるずると引き延ばされ、結局 10 月末になって幹部人事が行われ、その
間業務が進まなかったこと。
人事が決まるまでの間、ほとんどの幹部は責任を持って仕事に取り組む
ことができず、従って、省内業務が停滞した。また、それに続く 11 月、12
月は休日が多く、また、内閣改造の話が出て業務の停滞が続いた。
5)組織能力強化のための6つの提案を行い、自らがそのために行動するとい
う意識にさせることができなかったこと。
6つの提案に関しては、政策計画モニタリング担当次官にその必要性を
理解してもらうことはできた。本提案は、勝手に行うことはできず、農業
水産省自らの参画がないとできない内容のものである。確かに、人がいな
いという状況下では何もできない可能性もあり、頭が痛いところである。
プロジェクトが人件費を費用負担してやっと物事が進むような感じを受け
る。
3 専門家指導分野及びその関連分野で、今後受入国が取り組む必要があると
考える課題:
報告書「6.2 組織、人材に対する提案(活動内容2及び4)」、
「6.5 優先度
の高い事業についての実施促進(活動内容7)」等に記述した。
4
類似プロジェクト、類似分野への今後の協力実施にあたっての教訓、提言
等:
1)いままでのところ、いかなるプロジェクトを実施しても、東ティモール政
府がプロジェクトを主体的に行うことは考えられない。いかに日本側で東
ティモールの発展を考えてプロジェクト案を作成しても、東ティモール側
2
自らが参画することは考えられない。東ティモールにプロジェクト作成の
技術移転をし、技術移転の結果として、東ティモール政府がプロジェクト
を作成するようにならない限り、同じことが繰り返される。
2)プロジェクトを見ていると、カウンターパートが全く動いていない例が多
い。カウンターパートの主体性の欠如もさることながら、カウンターパー
トがそもそも職場に出勤して来ない例が多い。
3)ドナー国が手足となるスタッフを自ら雇う事例、あるいは、NGO を手足とし
て使う事例が増えている。これは、農業水産省職員が主体的に動かないた
めにプロジェクトの結果を出すことができないことに対するドナー国の対
策の一つと考えられる。しかしながら、この方法は農業水産省職員の能力
強化にはつながらないので、プロジェクトの目的によっては慎重に検討す
る必要がある。
5
専門家指導分野及びその関連分野でのドナー・国際機関の動向:
報告書「6.4 他ドナーによる各組織への支援状況(活動内容6)」に記述し
た。
6
供与、携行機材リスト(プロジェクト専門家以外):
供与、携行機材はない。
3